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相続の知識

貸金庫は相続税の対象!開けるときの流れやケース別の対処法

相続が発生したとき、貸金庫の取り扱いをどうすればよいのか知らない人も多いのではないでしょうか。貸金庫は相続税の対象なので、相続発生時の適切な取り扱いを知っておくことが大切です。

本記事では、相続した貸金庫を開ける際の手続きや注意点、よくある問題の対処法を詳しく解説します。

貸金庫の中身は相続税の対象となる

故人が所有していた資産価値のある財産は、基本的には全てが相続税の対象となります。これは、貸金庫に預けられていたものも例外ではありません。つまり、現金や貴金属、証券などが貸金庫に入っていた場合は、それらも相続税の対象に含まれます。

また、契約者である故人が亡くなったことにより、貸金庫の料金支払いが滞っている場合もあるかもしれません。この場合、その未払い料金は故人の債務ということになります。相続をする際は借金などの債務も引き継ぐことになるので、貸金庫の未払い料金があった場合は原則的に相続人が支払わなければなりません。

貸金庫の種類

貸金庫には一般的に全自動・半自動・手動の3種類があります。
全自動は個室ブースで貸金庫カードや暗証番号を使うことで、対象の貸金庫が自動でレールに乗って届く仕組みです。半自動は、貸金庫カードなどを使って自分で金庫室に入り、貸金庫を利用します。手動の場合は、銀行の担当者の立ち会いや手続きのもとで、金庫室に入庫して利用する形です。

また貸金庫と言えば、銀行や信用金庫などの金融機関を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実際にはそれ以外の民間企業でも提供しています。もしも故人が貸金庫を使っていたことだけ聞いていたが、どこのものか不明な場合は、そうした可能性もあることを覚えておきましょう。

相続人が故人の貸金庫を開けるときの流れ

基本的に貸金庫は契約者だけが開閉できるものなので、契約者が亡くなった後に相続人が開けたい場合には特別な手続きをしなければいけません。また、貸金庫の中身は相続財産に該当するので、相続人が複数人いる場合は、相続トラブルを避けるためにその扱いはより慎重さを要します。そこで以下では、故人が遺した貸金庫を開ける際の流れと注意点を解説します。

1. 相続人全員から同意を得る

最初のステップは、相続人全員から開扉の同意を得ることです。誰が何を相続するのか遺言書などで指定されていない場合、あるいは遺産分割協議で合意形成ができていない場合、貸金庫に保管されているものは、相続人全員が相続する権利を共有しています。

したがって、一部の相続人が勝手に貸金庫を開けて中身を持ち去ってしまった場合、他の相続人の権利を侵害することになります。たとえ確認するだけでも、のちに本当に金庫のものが全てかどうか(一部を勝手に持ち去っていないか)疑念を持たれてしまう可能性は否定できません。

銀行としても、そうした相続トラブルに巻き込まれないように、全ての相続人による合意がないと貸金庫を開けられないように措置を講じています。そのため、相続トラブルを避けるためにも、実務上の都合のためにも、貸金庫の取り扱いに際しては原則的に相続人全員から同意を得ることが必要です。合意形成ができたら、遺産分割協議書などにその事実を記して書面で証明できるようにしましょう。

2. 貸金庫解錠の手続きを行う

金融機関ごとに手続きの詳細は異なる場合がありますが、相続する貸金庫の解錠をする際には一般的には以下の書類が求められます。

  • 故人の除籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明
  • 貸金庫の鍵
  • 遺産分割協議書や相続人全員の同意書

手続きに際しては、銀行などの貸金庫を提供する機関の窓口に事前に問い合わせ、必要な書類や手続きの流れを確認しておくことで、スムーズに手続きを済ませやすくなります。基本的には、書類提出などの手続きをしてから銀行側が開扉の許可を出すまでには一定の期間を要するので、早めに手続きを済ませるのが望ましいです。というのも、遺産相続の手続き(相続放棄などの手続き)は相続開始から3か月以内に行わなければいけないからです。

3. 相続人全員の立ち会いのもと開ける

貸金庫の中身は重要な相続財産に当たるので、公平性の確保のため、その確認の際には基本的に相続人全員の立ち会いが求められます。ただし、相続人全員の同意書があれば問題ない場合や、欠席する相続人の委任状や司法書士などの代理人が立ち会えばよい場合など、銀行ごとに対応が異なります。どうしても全員が集まるのが難しい場合は代替措置について銀行側に確認するようにしましょう。

なお、生前に故人が貸金庫の管理を代理人に委託していた場合でも、故人が亡くなったと同時にその代理人の権限は失効します。したがって、銀行が故人の死を知った後は、代理人でも独断で貸金庫を利用することは通常困難になるのでご注意ください。

4. 遺言がある場合は指定された遺言執行者が開ける

上記のように、貸金庫の確認は相続人全員の立ち会いのもとで行うのが原則ですが、遺言書で貸金庫の開扉に関する執行者が明確に指定されていた場合は例外です。執行者は遺言の内容に従い、特例的に貸金庫を開ける権限を持ちます。ただし、このような場合でも、遺言書の具体的な指示や権限の範囲をしっかり確認することが必要です。

例えば、遺言に「貸金庫を開け、その中身を取り出し、貸金庫の解約を行う」という指示があれば、執行者はこれらの手続きを単独で行う権限を持ちます。しかし、他の財産に関する執行指示はあっても、貸金庫に関しては何も指示がないような場合は、銀行側から通常の対応(相続人全員の立ち会い)が求められる可能性が高くなります。

したがって、もしも遺言書を作成する際は、貸金庫の扱いについても詳細に記述するのが望ましいです。遺言の内容が明確であれば、貸金庫の扱いも含めて、遺された人々は相続時の手続きをスムーズに進めやすくなります。
なお遺言書は貸金庫に入れておかないことをお勧めします。せっかく貸金庫の開扉に関する執行者が指定されている遺言書を貸金庫に入れてしまっていては、遺言書を使って開扉することができないため全く意味がありません。

貸金庫の相続でよく問題となるケースの対処法

貸金庫でよくある問題としては、「相続人が集まれない」「そもそも相続人と連絡が取れない」といったケースが挙げられます。こうした場合は、通常とは異なる対応が求められるので注意が必要です。

相続人が集まれない場合

「遠方に住んでいる」「体調の問題で外出が難しい」などの理由で、相続人全員が一堂に会するのは難しい場合も考えられます。そのような場合には、委任状を利用して代理人を立てる方法があります。代理人としては、法律の専門家である弁護士や司法書士などを選ぶのがよいでしょう。

また、金融機関によっては、公証人の立ち会いを求められることもあります。公証人とは簡単に言うと、ある事実について公的な証明を行うための専門職です。公証人がいる場合は、貸金庫の中に何が入っていたか、貸金庫を開けるに際して財産の隠蔽などの不正な行為が行われなかったかを、「事実実験公正証書」を作成して証明してくれます。

相続人と連絡が取れない場合

相続人との連絡が取れない、または所在が不明の場合、以下の対応策を取ってみましょう。

1. 戸籍の附票で住所を追う

戸籍の附票には、個人の住所変更などの履歴が記録されているため、取り寄せることで連絡が取れない相続人の現住所を調べることが可能です。順番としては、戸籍謄本を取り寄せて本籍地を確認し、その後で本籍地の自治体から戸籍附票を取り寄せます。戸籍の附票に記載されている現住所を頼りに連絡を取ってみましょう

2. 行方不明の場合は不在者財産管理人選任を申し立てる

附票の住所情報をもとにしても相続人を見つけられない場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる方法があります。

不在者財産管理人とは、家庭裁判所によって選任される者で、行方不明となった相続人に代わって、遺産の管理や遺産分割協議を進める役割を担います。貸金庫の確認手続きにも立ち会えるので、相続人が行方不明で相続手続きを進められない場合は活用を検討しましょう。

不在者財産管理人について、詳しくは下記の記事もご覧ください。

アンカーテキスト:不在者財産管理人選任

おわりに:貸金庫は事前に相続人に共有を

故人が貸金庫で保管していた資産も相続財産の一部であるため、開扉の手続きが必要です。手続きに際し、相続人が集まれない場合や連絡が取れない場合は、専門的な知識と経験が求められることが少なくありません。相続手続きは一定期間内に済ませる必要があるため、複雑な手続きや疑問点については、専門家に相談することを推奨します。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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