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相続の知識

相続人が行方不明!不在者財産管理人を選任する方法と注意点を解説

相続が発生した際、相続人の中に連絡が取れなかったり行方不明になっていたりする人がいれば、遺産分割協議が進められず、困ってしまいます。
この記事では、「不在者財産管理人」として選任される人の条件や裁判所への申し立て方法についてまとめました。制度の概要、職務内容や期間、注意点なども併せて解説します。

不在者財産管理人とは

不在者財産管理人とは「不在者財産管理人」とは、まったく連絡が取れず、自分の住居に帰ってくる見込みのない不在者に代わって財産を管理する人のことです。場合によっては行方不明者の財産を処分する権利もあるため、誰でもなれるわけではなく、家庭裁判所により選任されるのが特徴です。

相続による遺産分割協議では、一部の場合を除き、相続権を持つすべての相続人が協議し、それぞれの相続分について同意しなければなりません。不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を取り、行方不明になっている相続人の代わりとして協議に参加することが可能です。

失踪宣言との違い

行方不明で連絡が取れなくなる、という意味では、「失踪宣言」という言葉も耳にしたことがあるかもしれません。しかし、失踪宣言を受けた場合と不在者財産管理人が付いた場合とでは、対応方法が異なるため区別を理解することが必要です。

不在者財産管理人の場合の「不在者」は、連絡がまったく取れない行方不明者であり、現時点で亡くなっているかどうかは分かりません。あるタイミングで戻ってきたり、亡くなったことが判明したりした場合、不在者財産管理人としての役割は終了します。

一方、失踪宣言は行方不明になってから7年が経過した際、真偽は別として、形式上は「亡くなった」ものとして扱われることが特徴です。相続人の中で失踪宣言された相続人がいたとき、遺産分割協議は、行方不明者以外の相続人で進められることになります。行方不明者は死亡したのと同様に扱われるため、状況によっては行方不明者の子が代襲相続することになるでしょう。

代襲相続については、下記の記事もご覧ください。

不在者財産管理人が必要な状況

では、不在者財産管理人を選任しなければならない状況として、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。必要とされるのは、以下のようなケースです。

  • 相続人の中に行方不明者がいる場合
  • 行方不明者と共同名義で所有している不動産を売却したい場合

ポピュラーな例としては、相続が発生し、行方不明者(不在者)が共同相続人の一人として遺産分割協議に参加しなければならない状況になったときが挙げられます。原則的に遺産分割協議では、共同相続人全員が、それぞれの相続分について協議して同意することが必要です。
ほかにも、不在者と共同で所有している土地を売却したい状況では、不在者の許可を得る必要があります。不在者が所有する建物の老朽化が進み、解体や修繕をしたい場合などもあるでしょう。

このように、所有者と連絡が取れないことで、さまざまな弊害が生じることがあるため、利害関係が生じている人は裁判所へ申し立てを行い、不在者財産管理人を選任してもらうことが可能です。
ただし、連絡先や住所が分からないといっただけでは申請できませんので、注意しましょう。戸籍を確認したり、警察へ捜索願を出したりと、調査をしたうえで見つからない場合に限ります。

不在者財産管理人に与えられる職務

家庭裁判所から選任された際、不在者財産管理人に与えられる職務のうち、特に重要な以下の4つの職務について解説します。

  1. 不在者の財産管理
  2. 遺産分割協議への参加
  3. 財産目録の作成
  4. 裁判所への報告

1.不在者の財産の管理

不在者が所有する動産や不動産などの資産を保存、管理することです。たとえば不動産を賃貸に出していた場合、誰も管理しなければ不法滞在者が現れるかも知れません。もちろん、賃料の徴収も必要です。建物が老朽化している場合、補修しなければならない箇所があるのに放置すると、最悪倒壊の危険さえ出てきます。不動産などのローンを返済していた場合、支払いが滞れば差し押さえのリスクも発生するでしょう。
このように不在者財産管理人は、不在者になり代わり、返済や財産の維持のために、必要に応じて不在者の財産の中から支払いを行うこともあります。場合によっては、家庭裁判所の権限外行為許可を得て、所有している不動産を売却することも可能です。

2.遺産分割協議への参加

前述したように、不在者財産管理人は家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって遺産分割協議に参加できます。これは民法907条で、遺産分割協議には相続人全員が参加しなければならず、一部の相続人を除いてなされた協議は無効だと定められていることが、根拠にあります。
不在者は、行方不明であるだけで死亡しているとは確定していません。不在者財産管理人は不在者の不利益にならないよう、法定相続分を確保するように遺産分割を求める必要があります。

3.財産目録の作成

不在者財産管理人は、行方不明になっている不在者が戻ってくるか、「亡くなった」と判断されるまで、不在者の財産が適切に保存されるように管理することが求められます。そのため、不在者にはどのような財産がどれくらいあるのかを記した「財産目録」を作成しなければなりません。併せて「収支報告書」を作成し、不在者の財産から返済や支払いをした場合は記載しなければなりません。

4.裁判所への報告

不在者財産管理人は、不在者の財産状況について裁判所へ定期的に報告することが義務付けられます。裁判所は報告をチェックし、不在者の財産が適切に管理されているかどうかを確認します。

不在者の財産状況を定期的に調べ、保存し、報告まで行うには相当の手間を要します。一般的に、不在者財産管理人は負担が大きいと敬遠されるのは、こうした所以でしょう。そのため、弁護士や司法書士が選任された場合、その作業にかかる報酬を不在者の財産から支払うことになります。

不在者財産管理人の選任の申し立て

ここからは、不在者財産管理人の選任が必要になった際、どのような流れで裁判所へ申し立てるのかについて解説します。

申立人

まず裁判所へ申し立てが可能な人として、不在者がいないことで問題が発生する「利害関係者」が該当します。例えば以下のような人です。

  • 不在者の共同相続人
  • 不在者の配偶者
  • 不在者の債権者
  • 不在者が所有していた建物の使用者
  • 時効によって不在者の財産を取得した人
  • 不在者が所有する土地の担保権者
  • 不在者の隣の土地を所有している人

上記のような利害関係者のほか、検察官も申立人になれます。

申立先

不在財産管理人の選任にあたって、申立先は、不在者の住所地(生活の本拠としている場所)や居所地(一応住んではいるものの住所地ではない、いわゆるセカンドハウスのような場所)を管轄している家庭裁判所です。

申立費用

不在財産管理人の選任について、裁判所へ申し立てる際には、収入印紙を800円分用意する必要があります。また、裁判所とやり取りする場合に備え、連絡用の郵便切手も用意しなければなりません。切手の金額については、一律で決められているわけではありません。あらかじめ申立先の裁判所へ確認して、もれなく準備するようにしてください。

なお、不在者財産管理人が財産を管理するためにかかる費用は、基本的に不在者の財産から出すことになります。しかし、不足する可能性がある場合は、申立人が予納金を納めるように求められることがあります。

申し立てに必要な書類

申し立てする際には、かなり多くの書類を整えて提出することが求められます。
一般的には、以下のような書類が必要です。

  • 申立書
  • 裁判所が定めた形式にそって、申立人が記載します。
  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
  • 戸籍謄本は、人が出生してから死亡するまでの身分事項を証明したもので、戸籍の附票は、これまでの住所地の移転を履歴として残したものです。
  • 不在であることを証明する資料
  • 不在財産管理人を選任するには、まったく音信不通かつ行方不明であることが条件になるため、その旨証明できる事実を記載します。
  • 不在者の財産に関する資料
  • 金融機関の預貯金や有価証券の残高がわかる書類、不動産登記事項証明書などを用いて、どのような財産がどれだけあるのか目安として提出します。

上記と併せて、共同相続人による申し立ての場合には、「共同相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)」など、不在者が相続人であることや、相続関係がわかる資料も添付します。

不在者財産管理人を選任するときの注意点

不在者財産管理人を選任する際には、多くの資料を収集して整えることのほかにも、気を付けるべき注意点があります。以下のような点をしっかり確認した上で、申し立てをしましょう。

申し立てから職務開始までの期間が長い

書類をそろえて指定の家庭裁判所へ申し立てたとしても、不在財産管理人が選任され職務を開始するまでには時間がかかることを、あらかじめ認識しておくことが重要です。
一般的に、裁判所が不在者財産管理人を選任するまでは、約2~3ヶ月を要します。さらに選任後も、裁判所から「権限外行為許可」を得ない限り、管理人は遺産分割協議に出席したり、不在者の不動産を処分したりすることはできません。許可が下りるまでにはさらに6ヶ月ほどかかるため、結局遺産分割協議などを開始できるのは、約8~9ヶ月後になるでしょう。

選任された不在者財産管理人を変更できない

家庭裁判所により不在者財産管理人が選任された後で、万一不在者の親族が、「不在者財産管理人との相性が悪く、変更したい」と要望したとしても、一度選任された不在者財産管理人は変更できません。親族とうまくいくかどうかは関係がなく、不在者財産管理人はあくまで不在者の権利や財産を守るために行動することが求められています。

報酬によるトラブルが発生しうる

不在者財産管理人は裁判所の監督下で選任されるシステムです。もし弁護士や司法書士などの専門家が選任されると、月額数万円の報酬を支払わなくてはなりません。報酬は不在者の財産から支払われることになるため、何も知らない不在者が戻ってきたとき、トラブルが起きがちです。不在者財産管理人の選任を申し立てる際には、このような報酬に関するトラブルが生じるリスクがあることも、あらかじめ理解しておく必要があります。

不在者財産管理人の申し立てをすべきかどうか迷ったり、自分では対応が難しいと感じたりした場合は、思いきって専門家へ相談し、任せることも一案です。

不在者財産管理人の期間が終わるタイミング

では、不在者財産管理人は、いつ裁判所から職務を解かれるのでしょうか。

不在者は、現時点では行方不明であるものの、いつの日か現れれば、不在者財産管理人の役目を終えられます。ほかにも、不在者の死亡が実際に確認されたときや、不在者について「失踪宣言」がされたときも「不在者がもはや戻ってくることはない」と見なされるため、職務は終了します。

つまり、不在者と連絡が取れるようになるか、真偽は別として「亡くなった」と判断される状況になることが必要です。裏を返せば、そのような状況にならない限り、不在者財産管理人としての職務と、それに伴う負担は続いていくことになります。たとえば、相続問題を解決することを目的として選任されたとしても、相続終了後に職務を終えるわけではないので注意が必要です。

おわりに:

共同相続人の中に不在者がいると、遺産分割協議が進みません。そこで不在者財産管理人を選任してもらえるように申し立てを行うことが可能です。ただ、申し立てをするにはさまざまな資料を収集、準備する必要があり、高いハードルを感じてしまうかもしれません。そういった場合は無理をせず、弁護士などの専門家に相談し、適切な遺産分割協議を進められるようにしましょう。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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