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相続の知識

相続税申告を自分で行うか検討中の方へ | 手続きの流れや判断基準、注意点などを解説

相続税が発生することを知って申告手続きを行う際、自分で手続きを行いたいと考える方も少なくありません。この記事では自分で相続税の申告手続きをする際に知っておきたい、基本的な手続き方法や必要書類、注意点などを解説します。

相続税とは

相続税は、一定額以上の財産を相続したときに納めなくてはならない税金です。身内の方が亡くなったこと(相続開始)を知った日の翌日から10カ月以内に、申告手続きをする必要があります。
また納税期限も同日ですので、併せて相続税の納付が必要です。
相続税の申告手続き自体は、相続人が自分で手続きすることも認められています。実際に相続税申告における税理士関与割合は約86%(令和3年度の国税庁実績評価書より)のため、約14%の人は自分で申告をしています。ただし、専門家に頼らず自分で手続きをする場合は、対応しなければならないことが数多くあるため、早め早めに準備をしていきましょう。

相続税の申告が必要なケース

まず相続税は、相続人自ら申告して納付する「申告納税制度」を取っているので、税務署から「あなたの支払うべき相続税は○○円です」と納税通知書が送られてくるものではありません。また遺産を相続したからといって、必ず相続税がかかるわけではありません。
相続税がかかるかどうかは、相続した財産の額によって決まります。相続財産の額が相続税の基礎控除額内に収まっていたり、控除できる特例が適用できたりすれば、相続税を納める必要はありません。ただし申告手続きは必要な場合があります。

相続税の申告が必要なケースは、主に以下の2つです。逆に言うと、当てはまらない場合は基本的に相続税の申告が不要ということになります。

①相続財産が基礎控除額を超えている場合
②特例・控除を受ける場合

①相続財産が基礎控除額を超えている場合

相続税の基礎控除額は【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】で計算します。相続財産が基礎控除額を上回っていれば、相続税の申告が必要です。上記の式の通り、基礎控除額は法定相続人の人数によって変わります。例えば父親が亡くなり、母親と子2人(計3人)が法定相続人となった場合、基礎控除額は【3,000万円+600万円×3=4,800万円】なので、4,800万円を超えた分の財産に相続税がかかります。

相続税の計算方法について、詳しくは以下をご覧ください。

②特例・控除を受ける場合

相続財産が基礎控除額を超えている場合でも、相続税には税額を軽減できる特例や控除がいくつかあります。例えば、残された配偶者のために用意された「配偶者の税額軽減」や、亡くなった方と同居していた方がその家を相続する際に利用できる「小規模宅地等の特例」などです。そのような特例・控除の適用を受けた結果、相続税は発生しない場合があります。ただし、相続税の特例・控除を受けるには、相続税の申告手続き自体が必要です。

相続税の申告で利用できる特例・控除について、詳しくは以下をご覧ください。

自分で相続税申告手続きをする際の流れ

相続税を申告するための手続きの流れを押さえておきましょう。主に以下のような順序で進めていきます。

  1. 相続人の確認(法定相続人は誰なのか、何人いるのかを明確にする)
  2. 相続財産の調査(相続財産は何があるのか、遺言書があるかの確認)
  3. 相続財産の評価
  4. 遺産分割協議の実施
  5. 相続税申告書の提出

1.相続人の確認

まずは基礎控除額を確定するためにも、誰が法定相続人になるのか、相続人は何人いるのかを確認しなくてはなりません。法定相続人になる権利を持つのは、被相続人(亡くなった人)の配偶者・子・親・兄弟姉妹です。配偶者がいる場合は必ず相続人になり、それ以外の優先順位は①子(孫)②親(祖父母)③兄弟姉妹(甥姪)の順です。内縁(事実婚)の妻や夫、離婚した元妻や元夫は、法定相続人にはなれません。

法定相続人の調査には、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本をすべて取り寄せて確認します。戸籍謄本は相続税の申告をする際にも必要な書類なので、取得後は申請まで失くさずに保管しておきましょう。

法定相続人を確定させる相続順位については、以下の記事もご覧ください。

2.相続財産の調査

故人が遺した財産について、何がどれくらいあるのかを確認するのは意外と大変な作業です。本人に聞けば簡単にわかるようなことでも、一つひとつ書類やデータを確認しなくてはいけません。相続財産のひとつとして、例えば本人が孫や子ども名義で預金通帳を持っていた場合でも、名義預金は原則として相続財産に含まれます。
また財産はプラスの財産だけでなく、借金などのマイナス財産も必ず確認します。隠れた財産が残っていると後々紛争の原因になるので、相続人全員が納得のうえで相続財産を確認しましょう。

財産調査については、以下の記事もご覧ください。

3.相続財産の評価

相続財産の洗い出しをしたら、今度は相続財産の評価額を算出します。相続税を計算するためには、相続財産をすべて金額(相続税評価額)になおさなくてはならないからです。不動産や有価証券は現金と違い価格が変動するため、決められた評価方法で計算する必要があります。
評価方法は、国税庁が定めた「財産評価基本通達」の評価方法に従い計算します。ここでは特に難しいとされている不動産と上場株式の評価方法を紹介します。

不動産

不動産は土地と建物(家屋)に分けて評価します。それぞれ以下の方式を使います。

土地:路線価方式もしくは倍率方式
家屋:固定資産税評価額×1.0

まず土地の評価額の計算は、1㎡あたりの土地価格(路線価)に面積をかけて算出する「路線価方式」が主流です。土地の路線価は毎年7月に国税庁から発表されます。路線価が定められていない地域の場合は、倍率方式で計算します。
路線価は相続が発生した年のものを利用しなければならない規定があるので、年の前半(1月~6月)に相続が発生した場合は、7月の発表まで待つ必要がありますので注意しましょう。
家屋は固定資産税評価額に1.0をかけて算出するので、価格は固定資産税評価額と同じです。

路線価方式、倍率方式については以下の記事も参考にご覧ください。

上場株式

株式の評価額については株価×保有数となりますが、銘柄それぞれにつき、次の4種類の時点で一番低い株価を採用して計算します。

  1. 相続開始日の終値
  2. 相続開始月の全終値の平均額
  3. 相続開始前月の全終値の平均値
  4. 相続開始前々月の全終値の平均値

株の相続税評価額の算出については、下記の記事もご覧ください。

4.遺産分割協議の実施

相続人と遺産総額(相続税評価額)が確認できたら、次はいよいよ遺産分割協議に入ります。遺言がある場合は、基本的には遺言に従って遺産を分割します。遺言がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を開いて、遺産分割の内容を決定します。遺産分割協議で決めた事項は必ず「遺産分割協議書」に明記し、相続人全員の実印を押し、印鑑証明書を添付します。

相続人全員の協議では一人ひとりの意見が食い違うことも多く、まとめるのは意外と難しいこともあります。特に故人への思いが絡んで感情的になってしまうと、話し合いがこじれてしまうこともあります。もめずに協議を進めるためには、経験・実績のある専門家(弁護士等)に依頼するのもひとつの方法です。

遺産分割については、以下の記事もご覧ください。

5.相続税申告書の提出

相続税申告書は所管の税務署に必要書類を添えて提出し、納税の際は納付書とともに納めます。相続税申告書のフォーマットは税務署の窓口で入手するか、国税局のホームページからもダウンロードできます。相続税申告書には相続人全員のマイナンバーを記載し、マイナンバーを証明できる書類を添付します。
申告書の書式や記入方法について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

また相続税は令和元年10月からe-Tax(電子申告)でも申請できるようになりました。平日は忙しく窓口に行けないという方でも、ご自宅から申告手続きができるようになります。
詳しくは以下もご覧ください。

相続税を申告する際の必要書類

相続税を申告する際に必要となる書類は何を相続したかによって変わるので、実際に必要な書類は個別で確認する必要があります。ここでは、参考として基本的にどのような書類が必要になるのかを紹介します。

基本的な書類

基本的な書類としては、相続税の申告書と遺産相続の状況がわかる書類を提出します。

(1) 相続税申告書
前述した通り、税務署の窓口もしくは国税庁のホームページからダウンロードして入手します。毎年申告書の様式が変わるため、必ず申告する年のフォーマットを利用するようにしましょう。

【参考】国税庁『相続税の申告手続』

(2) 遺言書または遺産分割協議書
遺言書がある場合は遺言書、遺言書がない場合は、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑登録証明書

(3) マイナンバー確認書類
マイナンバーカードがある場合:マイナンバーカードの表面と裏面の写し
マイナンバーカードがない場合:マイナンバー通知カード、または住民票+身元確認書類(運転免許証、パスポート、健康保険証など)

(4) 相続関係がわかる書類
すべての相続人を明らかにできる書類です。具体的には、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本、すべての相続人の戸籍謄本になります。または、法定相続情報一覧図(法務局で発行)でも大丈夫です。

法定相続情報一覧図については、以下の記事内でも概要を説明しています。

財産に関する書類

相続する財産によって、必要な書類が変わります。たとえば、土地と銀行預金を相続する場合は、不動産関係書類と預貯金関係書類を用意する必要があります。必要に応じて準備しましょう。

不動産関係書類

登記事項証明書、地積測量図、固定資産税課税明細書、名寄帳、賃貸借契約書(賃貸借契約がある場合)など

預貯金関係書類

金融機関口座の残高証明書、過去5年分の通帳・定期預金証書など

相続税の申告を自分で行う場合に注意すること

相続税の申告を自分で行う場合には、手続き内容やスケジュールをすべて自分で調べて把握しておく必要がありますので、もし期限が過ぎてしまっても誰も教えてくれません。また万が一内容に誤りがあり税務調査となった場合、自分で対応する必要性も出てきます。

申告期限は10か月

相続税の申告は被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があります。10カ月なら十分な期間と思われがちですが、葬儀などの死後の手続きなどを含めてなので、あっという間に過ぎていくと思います。また相続人が複数いる場合には全員の合意・手続きが必要です。繰り返しにはなりますが、なるべく早めに対処していきましょう。

生前贈与・名義預金は相続税の課税対象

被相続人の生前に行われた贈与でも、次の贈与は相続税の対象です。

  • 相続時精算課税制度を利用した贈与(被相続人が60歳以上のときに行った、子または孫への贈与)
  • 相続開始前3年以内※に行われた、被相続人から相続人への贈与

贈与の際に贈与税を納めている場合は、贈与税と相続税の二重課税を避けるために、贈与税額は相続税額から控除されます。
※2024年(令和6年)1月1日以降の贈与から、生前贈与の加算期間が従来の「死亡前3年」から「死亡前7年」に拡大されます。

また名義預金についても注意が必要です。名義預金とは、預金口座の名義人とは別の人がその口座を管理している預金のことです。例えば孫の名義で祖父母がお金を貯めている口座などがあれば、それは相続税の課税対象となります。預貯金が多ければ多いほど税務調査も入りやすくなると言われていますので、申告漏れがないようにしましょう。

誤りがあると過大申告やペナルティが発生する

ここまで見てきた通り、相続税は自ら計算してその納税額を確定させる必要があります。計算式や評価額にミスがあった場合、本来納めなくても良い税金を支払ってしまったり(過大申告)、また本来納めるべき税金よりも少なかった場合にはペナルティ(附帯税)が発生して追加の税金を払うことになったり、結果的に損をしてしまう事態にもなりかねません。自分で申告を行う場合は、慎重に取り組むようにしましょう。

税務調査の場合に自ら対応するリスクがある

申告時の内容に誤りがあり、過少申告となってしまったときには税務調査が入る可能性があります。税務調査が入るとその約9割が追徴課税となっているデータもあり、基本的には課税から逃れられません。特に税理士を通していない相続税申告では、税務署に一度脱税と疑われてしまうと、第三者でない相続人本人(申告者)の意見は信じてもらえない可能性が高まります。

一方、税理士が関与している申告の場合には、調査が入る前にまず担当税理士へ「意見聴取」の機会が与えられ、仮にそこで必要ないと判断されれば、調査自体も行われなくなることがあります。税務調査のリスクという点では相続人自ら申告する方が高まりますので、その点についても認識しておきましょう。

相続税の申告に関する相談先

相続税の申告に関して相談したい場合の相談先は、主に以下の3つになるかと思います。

①税務署

申告手続きの際に出向くため、申告書の書き方など基本的な申告方法の質問であれば、税務署の相談窓口へ問い合わせるのが良いでしょう。電話でも問合せができますが、書面を見ながら具体的な相談をするには、やはり窓口でされることをおすすめします。一方で、遺産分割の割合や節税の相談などには回答できない場合が多いでしょう。

②顧問税理士

個人の確定申告や法人決算をお願いしている顧問税理士がいらっしゃる場合、その方にまずは相談してみても良いでしょう。ただし、税理士も医者と同じように専門分野が分かれています。顧問の先生が会計専門という場合、相続税についてあまり詳しくないケースもあります。その点は留意しながら相談し、「相談したのに進める気配がない」「不動産評価について曖昧な回答をされた」など不安な場合は、次の相続専門税理士に相談をしてみることも検討してください。

③相続専門の税理士

税理士事務所、法人の中には、相続を専門としているところがあります。じつは税理士試験において、相続税法は取得必須科目ではありません。そのため、会計専門の税理士の中にはそもそも相続税法で合格していない方もいるのです。
相続専門の税理士法人・事務所では、相続税に特化した税理士が多く所属しています。相続税の知識やノウハウも蓄積することができ、様々な相続に対応する術が身についています。依頼報酬はかかってしまいますが、遺産分割や節税のアドバイスについても期待できますので、安心して相続を進めることができるでしょう。

相続税の申告を専門家に相談・依頼すべきか

どのような場合に自分で申告するのか、あるいは専門家に依頼するほうが良いのかを判断するには、いくつかのポイントがあります。それぞれのメリットとデメリットも併せて解説します。

自分で申告を行うと良いケース

自分で相続税の申告を行うほうが良いと思われるのは、以下の条件が満たされる場合です。

  • 相続人が自分一人である
  • 特例によって相続税が0円になる
  • 財産が預貯金のみ

相続人がご自身一人であれば、分割協議の手続きや争いに発展する心配もありませんので、自分でも十分対応が可能でしょう。また、特例などによって相続税が0円になるケースでは、遅れても追徴金などを支払う必要がないので、自分で申告しても良いでしょう。また評価額の計算が複雑となる財産がなく、預貯金のみというような場合にも自分で申告ができる範囲でしょう。

専門家に相談したほうが良いケース

専門家に依頼したほうが良いと思われるのは、以下の条件がある場合です。

  • 相続人が多数いる
  • 多額の相続税が発生する
  • 名義預金や生前贈与がある

相続人が多い場合はもめる恐れがあるため、遺産分割協議や相続税申告をスムーズに進めるには専門家に依頼するのがおすすめです。専門家は職業的な経験と知識で、すべての相続人が満足できる方向で解決策を探ってくれます。

また、多額の相続税が発生する場合は複雑な計算があることと、少しでも節税するために専門家の知識を頼ると良いでしょう。名義預金や生前贈与の扱いについても、実際にどの範囲が相続税の対象となるかについては状況によって異なりますので、判断はプロに任せたほうが安心できるはずです。

おわりに:相続税の申告を自分でやるかはケースバイケースで判断

相続税の申告は、相続人の方が自ら行うことが可能です。相続人が自分一人である場合や複雑な計算が発生しない場合はスムーズに済ませられます。しかし、ミスがあったときは修正の手間やペナルティ(附帯税)がかかることもあります。専門家に依頼して確実に済ませるほうがよいかもしれません。
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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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