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相続の知識

相続税で使える主な特例・控除とは?一覧でまとめて解説

この記事では相続税の特例や控除制度についてご説明します。相続税には、一般的に知られている基礎控除の他にも小規模宅地等の特例などさまざまな制度があり、税負担を軽くできる場合があります。ご自身のケースでどの制度を利用できるのか、この記事を参考にしてみてください。

相続税で利用できる主な控除6つ

相続税にはそれぞれの条件に応じて減額してくれる控除の仕組みがあります。以下では6つの代表的な控除制度をご紹介します。

  1. 基礎控除
  2. 配偶者の税額軽減
  3. 未成年者の税額控除
  4. 障害者の税額控除
  5. 相次相続控除
  6. 贈与税額控除

1.基礎控除

基礎控除とは、相続税の課税対象財産を計算する際に、被相続人の遺産総額から一定の金額を差し引くことができる制度のことです。
控除額の計算式は以下の通りです。

【3,000万+600万×法定相続人の数】

この分だけ遺産総額から控除されます。遺産総額から基礎控除を除いた金額がプラスであれば相続税が課税され、ゼロまたはマイナスであれば課税されない、ということになります。

具体的に計算してみましょう。

例:総額7,000万円の遺産を法定相続人3人が相続する場合

このとき、基礎控除額は【3,000万+600万×3人=4,800万円】です。これを遺産総額から控除すると、【7,000万(遺産総額)-4,800万(基礎控除額)=2,200万円】となり、相続税は【2,200万円】に対して課税されます。

一方、総額4,000万円の遺産を、法定相続人3人が相続する場合はどうでしょうか。この場合も基礎控除額は4,800万円ですが、遺産総額が基礎控除額を超えないため、相続税の課税はありません。

2.配偶者の税額軽減

被相続人の配偶者の相続財産が1億6,000万円、もしくは法定相続分の範囲内までは相続税が非課税になる制度です。
前述したように、相続税は遺産総額から基礎控除を引いた金額がプラスの場合に課税されます。
しかしプラスの場合でも、配偶者控除を用いると、配偶者の相続金額が1億6,000万円までは課税されません。また、1億6,000万円を超えても配偶者の法定相続分以内の金額であれば課税されません。

法定相続分について詳しくは、下記の記事もご覧ください。

例えば夫が亡くなり、妻が1億円を相続するケースを想定します。妻には配偶者控除が適用されますので、1億円は非課税です。
また別のケースで、妻と長男の2人が相続人だった場合に、妻が法定相続分(遺産総額の50%)として50億円を相続したとします。50億円は1億6,000万円を超えていますが、法定相続分の範囲内なので非課税となります。

このように、配偶者が相続する場合は配偶者控除が適用されるため、相続税がかからない場合が多いのです。ただし、税額が0円でも相続税の申告は必要になりますのでご注意ください。

詳しくは以下の記事も参考にしてください。

3.未成年者の税額控除

相続人が未成年である場合に相続税の額から一定額が控除される制度です。たとえ未成年者であろうと相続税は発生しますが、未成年者には教育費や養育費などさまざまなお金が必要です。こうした事情を考慮して未成年者には控除の仕組みがあるのです。

控除額の計算方法は以下の通りです。

【(18歳-相続時の年齢)×10万円 】

例えば相続時に15歳だった場合は「(18歳-15歳)×10万円=30万円」となります。
平成31年度の税制改正によって成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことにより、計算式も変更されました。令和4年(2022年)4月1日以降に発生した相続については、成人年齢が18歳となりますので、ご注意ください。

子にかかる相続税の軽減方法などを詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

4.障害者の税額控除

相続人が85歳未満の障害者である場合に相続税から一定額が控除される制度です。課税により障害者への負担を少しでも減らすことを目的としています。

控除額の計算方法は以下の通りです。

  • 一般障害者の場合
    【(85歳-相続開始時の年齢)×10万円 】
  • 特別障害者の場合
    【(85歳-相続開始時の年齢)×20万円 】

また、控除額を相続税額から引いて余りが出た場合、他の相続人でかつ扶養義務者の控除にまわすことができます。
具体的に見てみましょう。例えば、相続開始時に50歳の一般障害者の方の相続税額が300万円だったとします。控除額は【(85歳-50歳)×10万円=350万円】です。【300万円-350万円=-50万円】となり、控除額が相続税の額より大きくなりますので、余った50万円分は他の扶養義務者の相続税の額から控除できます。

詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

5.相次相続控除

相次相続控除とは、最初の相続の発生から10年以内に次の相続が発生した場合に、相続税額から一定額を差し引くことができる仕組みです。相続税の支払いは基本的に現金一括払いです。そのため短期間で相続が続くと、最初の相続税に加えて次の相続税も払わなくてはいけなくなり、一家として大きな負担になります。そこでこの制度を適用させることで、負担を軽減できるのです。

適用条件は3つあります。
①今回の相続が前回の相続の10年以内に発生していること
こちらが「相次相続」という名前にも関係している、一番基本となる条件です。前回の相続が発生してから10年以内に「相次いで」発生した相続の場合のみ対象となります。

②被相続人の相続人であること
相続人が相続放棄をしたり、相続人としての権利を失ったりした場合は適用できません。

③前回の相続時に相続税を納税していること
いくら相続が10年以内に2回発生していても、前回の相続で相続人が財産を受け取ったときに相続税を納めていなければ適用できません。例えば、祖父が亡くなった際に相続人だった父が、祖父の相続開始から10年経たずに亡くなった場合、父が相続税を少なからず納めていれば、子は控除の対象です。一方、父が亡くなりその2~3年後に母が後を追って亡くなった場合、もし母が配偶者控除を利用して相続税が0円だった際には、子は母の相続時にこの控除を適用できないということになります。

控除額の計算式は以下の通りです。

【 A×C÷(B-A)×D÷C×(10-E)÷10 】

A:今回の被相続人が前回の相続時に課された相続税の額
B:今回の被相続人が前回の相続時に取得した財産額
C:今回の相続で相続人や受遺者の全員が取得した財産の合計額
D:控除を受ける相続人が今回の相続で取得する財産額
E:前回の相続から今回の相続までの期間

計算式と財産額の算出が少し複雑ですので、基本的には税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

6.贈与税額控除

贈与税額控除は、相続税と贈与税を二重に払わなくて済むように、相続税から控除できる仕組みのことです。贈与税とは、個人から贈与により財産を取得した場合にかかる税金です。もし亡くなった方から生前に財産を贈与された場合は、相続税ではなく贈与税がかかります。

相続税の計算ルールでは、3年以内にされた贈与、または相続時精算課税制度を利用した贈与財産については、相続財産と合算されて計算されます。贈与税と相続税が二重に課されてしまうため、二重課税を排除しようというのがこの制度です。

なお、税務署は税金を余分に支払っても教えてはくれません。ご自身できちんと計算し申告する必要があるため、不安がある方は相続専門の税理士にご相談ください。

相続税で利用できる主な特例2つ

ここからは相続税の節税や納税にあたって利用できる主な特例をご紹介していきます。

  1. 小規模宅地等の特例
  2. 納税猶予の特例(農地等の納税猶予制度)

1.小規模宅地等の特例

相続財産には金銭だけでなく、土地や建物なども含まれます。土地を相続するときには「小規模宅地等の特例」という仕組みを利用できます。亡くなった人が住んでいた土地、事業をしていた土地、貸していた土地について、一定の要件を満たす人が相続したときに土地の評価額を最大80%減額できる仕組みのことです。

なぜこのような特例があるかというと、土地を相続したことで相続税を払えずに、住む場所がなくなってしまうことを防ぐ目的があるからです。土地の評価額は高額なケースが多いため、相続税も高額になります。相続税の支払いのために住む場所がなくなってしまわないように設けられています。

特例が適用される条件は、土地の用途によって3種類に分かれています。

①特定居住用宅地等(住宅で使っている土地)
特定居住用宅地等とは、亡くなった人または亡くなった人と生計を一にする親族が住んでいた土地のことです。土地の面積330㎡までの部分について、評価額が80%減額されます。

②特定事業用宅地等(事業をしていた土地)
特定事業用宅地等とは、亡くなった人やその生計一親族が事業を行っていた土地のことです。土地の面積400㎡までについて、80%減額されます。

③貸付事業用宅地等(貸している土地)
貸付事業用宅地等とは、亡くなった人やその生計一親族が貸している土地のことです。土地の面積200㎡までについて、50%減額されます。

小規模宅地等の特例の詳細は以下の記事を参考にしてください。

ちなみに亡くなった人と同居していなかった親族が相続した場合でも、小規模宅地等の特例が適用される仕組みがあります。これを「家なき子特例」といいます。 適用条件は以下の通りです。

  • 亡くなった人に配偶者及び同居親族(相続人)がいないこと
  • 相続する人は、相続開始前3年以内に自己または配偶者、3親等内の親族または相続する人と特別な関係がある法人の持ち家に住んだことがないこと
  • 相続した土地を相続税の申告期限まで所有していること
  • 相続開始時に住んでいる家を過去に一度でも所有したことがないこと

家なき子特例については、以下の記事もご覧ください。

2.納税猶予の特例(農地等の納税猶予制度)

日本の相続税は高額のため、場合によっては土地などの財産を手放さないと相続税の支払いが困難になるような状況も出てきます。特に農業で使われる農地は非常に面積が広いため、相続税や贈与税が課税されると税額が高く支払いができない可能性があります。また、納税のために農地を処分してしまうと農業後継者がいなくなり、日本の農業の衰退につながってしまう恐れもあります。
そんなときに利用できるのが、農地を相続した際に相続税の支払いを先延ばし(もしくは免税)できる「納税猶予の特例」です。

農地等の納税猶予の特例とは、農地を相続または贈与により受け取った後継者に対して、一定の条件下に置いて相続税や贈与税の納税を猶予する制度です。ただし、制度を利用できるのは「農家を継ぐ方」に限ります。農業をやめた際には利子付きで納税しなければなりません。

相続税の納税猶予においては、本来の農地の土地評価額ではなく、国税庁により主に都道府県別に定められている「農業投資価格」を用いて相続税額を算出し、前者との差額を納税猶予することができます。
例えば極端な例ですが、相続税の課税対象となる農地の評価額が通常「5億円」だったとしても、特例を適用した際の農業投資価格による評価額が「1,000万円」であれば、1,000万円に対して相続税が課税されるため、【5億円にかかる相続税額】-【1,000万円にかかる相続税額】の差額を猶予できるということになります。

また納税「猶予」とありますが、じつは条件を満たせば納税は実質的に免除となります。条件は以下の通りです。

  • 農地を相続した人が亡くなった場合
  • 後継者に生前一括贈与した場合
  • 相続人が20年間農業を継続した場合 ※特定条件下の土地のみ

基本的には、農地を相続した本人が亡くなるまで農家を継続すれば、実質その方の相続税は免除になるということです。相続人以外が譲渡された場合や耕作放棄した場合などは適用外となりますのでご注意ください。

特例の適用には農地の種類や相続人によって様々な条件がありますので、ご自身の農地が特例対象かどうかの確認については、下記の国税庁ホームページも参考にご覧ください。

【参考】国税庁ホームペー 『農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例』

おわりに:様々な控除や特例を有効活用して、相続税の負担を減らそう

相続税の控除制度や特例について解説しました。このような特例・控除制度を賢く使うことで、相続税の負担を減らすことができるでしょう。
しかし特例などの適用には、さまざまな条件があります。「自分は当てはまるだろうか」と疑問や不安を抱いている方は、ぜひ相続専門の税理士法人に相談することをおすすめします。

税理士法人レガシィは、相続専門で30年以上の実績がある税理士法人です。特に土地の相続に強みがあり、課税対象となる土地の評価額を抑えるようなノウハウを持った税理士が多数所属しています。
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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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