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相続の知識

相続不動産に必要な手続きと流れ | 必要書類や税金についても解説

不動産相続等により相続税の申告が必要な場合は、相続の発生を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告を行わなければなりません。しかし数ある手続きに追われ、なかなか手が付けられないという方も多いでしょう。そこでこの記事では、不動産相続の流れや必要書類などについて解説します。あらかじめ全容を把握して、スムーズな相続手続きを行いましょう。

不動産を相続する際の主な流れ

不動産相続を行うには、段階を追って手続きを進める必要があります。ここでは主な流れを6つのステップに分けて、順番に解説します。

  1. 遺言書の確認
  2. 相続人の確定
  3. 財産目録の作成
  4. 遺産分割協議
  5. 不動産の名義変更(相続登記)
  6. 相続税の申告・納付

1.遺言書の確認

相続の発生が分かった時点で、まずは遺言書の有無を確認しましょう。もし遺言書が見つかれば、基本的には書かれている内容に沿って相続の手続きを行うことになります。例えば、亡くなった母親の自宅を長男に相続させると書かれていれば、長男が家を相続する方向で進めることになります。
遺言書には以下の3種類があります。

①自筆証書遺言:自筆で作成する遺言
②公正証書遺言:公証人による内容証明のもと、公証役場で保管される遺言
③秘密証書遺言:内容を秘密にした状態で作成し、存在のみを公証役場で証明する遺言

それぞれ作成方法や保管場所が異なるため、被相続人の自宅や公正役場など、心当たりのある場所を探してみるとよいでしょう。
ただし遺言書が「自筆証書遺言」または「秘密証書遺言」の場合、家庭裁判所で「検認」の手続きをとり、遺言書の中身や状態を確認する必要があります。検認前に勝手に中身を開けてしまうと、5万円以下の過料を支払うことになる可能性があります。うかつに開封しないよう注意しましょう。

2.相続人の確定

遺言書がない場合は、遺産は法定相続人が相続します。相続の発生が分かったら、できるだけ早く相続人を確定させましょう。全ての相続人には相続の権利があります。そのため、もし後になって新たな相続人が見つかると、遺産分割協議を一からやり直さなければいけません。思わぬところから相続人が見つかることもあるので、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本を全て確認します。

被相続人が本籍地を変更していなければ、戸籍謄本は該当市区町村の役場で取得できます。しかし、転勤や引っ越しなどで本籍地を変更しているのであれば、各変更先の市区町村役場からその部分を取り寄せなければなりません。

相続人の確定については、以下の記事もご覧ください。

3.財産目録の作成

相続人の確定と並行して、財産目録の作成も進めておきます。財産目録とは、不動産だけでなく預貯金や株式からローンや未払いの税金まで相続財産の全容が一覧になったもののことで、基本的には誰が作っても問題はありません。作成の義務はないケースがほとんどですが、作っておくと公平でスムーズな分割協議の進行や、相続税の申告・納付が必要かどうかの確認にのちのち役立ちます。

相続財産に不動産が含まれるかどうかを調べるには、市区町村から届く固定資産税の納税通知書を確認することが一番早いでしょう。また、該当市区町村役場で「名寄帳(なよせちょう)」を取得すると、その地域にある不動産の全てを一覧でチェックできます。固定資産税がかからない不動産や、県外や遠方に不動産がありそうな場合は、思い当たる地域の名寄帳を取得して確認しておきましょう。

また不動産は預貯金と違い、その不動産の価値(評価額)を別で算出する必要があります。相続税の計算の際には「相続税評価額」という指標で不動産を金額に直したうえで、すべての遺産総額をもとに税額を計算します。
不動産の相続税評価については、下記の記事もご覧ください。

4.遺産分割協議

まず誰が不動産を相続するかを決める必要があります。遺言書があるのであればそれに従って遺産分割を行いますが、ない場合は法定相続人が遺産分割協議を行う必要があります。協議では全ての相続人の合意を得なければいけません。協議が合意に至ったら、遺産分割協議書を作成し、全ての相続人が署名・捺印(実印)します。

遺産分割協議書の書き方については、下記をご覧ください。

スムーズに進めば問題はありませんが、まとまらない場合は家庭裁判所にて遺産分割調停申し立てを行い、第三者を介した話し合いで解決を目指します。それでも不成立になってしまうときは、遺産分割審判へ移行し、裁判官に判断を委ねます。

5.不動産の名義変更(相続登記)

不動産を相続するには、相続登記の手続きをおこない、被相続人から相続人へ名義変更する必要があります。現在のところ、手続きに期限はありません(ただし、2024年4月1日以降は相続登記が義務化される予定です。よくある質問もご覧ください。)。しかし、その不動産を売却したり担保に入れたりするには所有権を明確にしなくてはならないため、早めの手続きが肝心です。

相続登記を行う際には、必要書類をまとめて法務局に提出します。必要書類については、後述しています。スムーズな手続きのために、専門家の力を借りることも一手です。

6.相続税の申告・納付

相続税の申告・納付は、相続の発生を知った日(一般的には被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内に税務署にて行います。相続税とは、相続財産のうち、プラスの財産からマイナスの財産(借金等)や葬儀費用などを差し引いた額に課税される税金のことです。もし申告期限に遅れたり納税額が不足したりすると、延滞税や加算税がかかるので注意しましょう。

相続税の計算については、下記の記事もご覧ください。

不動産の相続に必要な書類

不動産の相続では、相続登記の際に数多くの書類を集めなければなりません。必要な種類はケースバイケースですが、代表的なものをご紹介します。

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 出生から死亡時までのものを全ての本籍地で取得します。
被相続人の住民票の除票 不動産の所有者が被相続人であることを証明するために使用します。
相続人全員の戸籍謄本 被相続人の死去以降に各相続人の本籍地で取得します。
不動産取得者の住民票 相続人のうち、不動産を取得する人の住民票が必要です。戸籍の附票でも代用可能です。
遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書 相続人全員の署名・捺印とともに、全員分の印鑑証明を添付する必要があります。不動産のみ記載した遺産分割協議書(決定書)でも手続きできます。
相続登記の申請書 法務局のホームページからダウンロードしたものを使って作成できます。
固定資産評価証明書 相続登記時に納付する「登録免許税」の算出に使われるため、最新のものを用意します。相続人であれば誰でも取得できますが、申請時には自分の戸籍謄本を提示し、被相続人との関係性を証明する必要があります。
※不動産の全部事項証明書(登記簿謄本) 提出書類ではありませんが、取得しておくと不動産の正確な面積などを登記申請書に記入する際に役立ちます。法務局のホームページからオンライン請求もできます。
※相続人全員の住民票 法定相続割合で相続登記をする場合には、法定相続人全員の住民票か戸籍の附票が必要です。

詳細は以下の記事もご覧ください。


※戸籍法の一部改正により、2024年3月1日以降、戸籍謄本等の広域交付(最寄りの市区町村窓口での請求)が可能になります。(2024/2/19更新)


●戸籍証明書等の広域交付制度

今まで戸籍謄本等の証明書を取得するためには、本籍地の市区町村の役所窓口へ申請をする必要がありましたが、2024年3月1日以降、戸籍情報連携システム導入により、全国各地にある戸籍情報を最寄りの役所窓口で請求できるようになります。

【申請できる人】
・本人
・配偶者
・直系尊属(父母、祖父母など)
・直系卑属(子、孫など)
※兄弟姉妹はできません

【申請できる場所】
役所窓口のみ
※郵送、代理人申請はできません

【必要書類】
申請者の顔写真付き身分証明書
・運転免許証
・マイナンバーカード
・パスポート
など

出典:法務省『戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)

不動産の相続に関する税金

次に、不動産相続にかかる一連の税金も確認しておきましょう。

(1)相続税
相続した財産の額に応じて課税
(2)登録免許税
相続した不動産の相続登記時に必要

相続した財産の課税価格が相続税の基礎控除額を超えると、相続税が発生します。基礎控除額は【3,000万円+600万円×法定相続人の人数】で決まります。また、登記申請時には「登録免許税」の納付が必要です。相続の場合、不動産評価額の0.4%が課税されます。土地と建物を両方相続した場合には、それぞれが課税対象です。

続いて、相続した不動産を売却した場合にかかる税金についても確認しましょう。かかる税金は以下のとおりです。

(3)印紙税
相続した不動産売買契約書などに必要
(4)譲渡所得税
相続した不動産を売却した場合に課税
(5)住民税
相続した不動産を売却した場合に課税
(6)復興特別所得税
令和19(2037)年まで所得税に加算

不動産の価値と必要な税金・費用のバランスによっては、取得しても損ばかりすることもあります。あらかじめ費用負担がどのくらいかかるのかも明らかにしておき、場合によっては相続放棄も視野に入れましょう。

不動産の相続手続きに要する期間

特に問題なく進めば、不動産の相続手続きは1~3ヶ月程度で終わります。しかし、中には長期化してしまい、なかなか相続が進まないケースもあります。
期間の長さを左右するのは、主に「必要書類を集める期間」と「遺産分割協議にかかる期間」です。被相続人の戸籍謄本をとるため全国各地に請求する必要が出てくると、思った以上に時間が過ぎてしまいます。役場は基本的に平日しか開庁していないため、仕事をこなしながら手続きを進めるのは非常に手間がかかってしまいます。
また遺産分割協議においては、相続人が複数いる場合に全員の合意を得る必要があります。もし話がうまくまとまらなければ、解決までに相当な時間がかかってしまいます。
月並みな解決策となりますが、相続が発生したら早めに準備をするようにしましょう。

相続不動産の分割方法

現金などと違い、不動産は物理的に分割できない財産です。遺産分割協議で不公平を感じることのないように、いくつかの分割方法を知っておくと話し合いをスムーズに進めやすくなります。

現物分割

現物分割とは、不動産をそのまま1人の相続人が相続する方法です。例えば兄弟で財産を相続する場合、住居を兄が相続する代わりに預貯金を弟が相続するという選択肢は、非常にシンプルで分かりやすい方法です。ただし、どの財産を相続するかによって金額に不公平感が生まれやすい点には注意が必要です。

代償分割

代償分割は、1人の相続人が現物で不動産の全部を相続し、残りの相続人に対して相応の現金を支払うという分割方法です。現物分割のような不公平感が生まれる心配はありませんが、不動産の相続人に支払い能力がなければ成立しない方法とも言えます。

換価分割

不動産を売却して得たお金を分割するのが、換価分割です。現金化することで公平な分割ができます。相続が発生した不動産を誰も使用していない場合や、今後運用の予定がない場合には選択肢のひとつとして考えましょう。ただし、不動産の売却時や処分時には別途税金や費用が掛かるので、財産が目減りしてしまう点には注意が必要です。

共有分割

共有分割とは、財産を分配せず一時的に相続人で共有する方法です。この方法を選択すると、すぐに不公平が生まれることは回避できます。しかし、いずれ分割するものを先送りにしているだけの状態ともいえるため、あまりおすすめできません。
例えば相続人の1人が売却や運用を希望しても、全員の合意がなければ行動には移せません。また、相続人の誰かが亡くなった場合は新たな相続が発生し、さらに権利が複雑な状態になってしまう恐れもあります。

【Q&A】不動産の相続に関するよくある質問

ここでは、不動産の相続に関するよくあるQ&Aを紹介します。

自分で相続登記はできますか?

法律的には相続人自ら行うことはできますが、難易度は高いかもしれません。登記の専門家は「司法書士」になりますので、すでに分割協議がまとまっていて、あとは登記申請をするだけということであれば、司法書士に相談しましょう。
もし遺産分割の方法で揉めているなどがあれば「弁護士」、土地が値上がりして思ったよりも税金が高く節税したいなどの希望があれば「税理士」に相談するのが良いでしょう。それぞれの専門家同士でコネクションを持っている場合もありますので、一番悩んでいる課題に合わせて最初に相談する専門家を決めるのがおすすめです。

不動産の相続手続きを放置すると、どんな問題がありますか?

2023年4月現在では、法律的には問題ありません。しかし令和6(2024)年4月1日より相続登記が義務化されます。正当な理由なく放置したまま、相続を知った翌日から3年が経過すると、10万円以下の過料が課される恐れがあります。また、相続人の死亡などで新たな相続人が増え、問題がより複雑化することも考えられるので、早めの手続きをおすすめします。

相続登記の義務化については、以下の記事もご覧ください。

おわりに:不動産の相続は手続きが複雑なため、専門家への相談を検討しよう

不動産の相続手続きは、必要書類が非常に多いうえに状況に応じて準備する書類の種類が異なります。また、公平に分割することが難しいため、トラブルに発展すると遺産分割協議が長期化する恐れもあります。複雑な手続きをスムーズに進めるためには、専門家へ相談するのがおすすめです。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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