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相続の知識

相続税や贈与税計算時の基準「相続税評価額」とは?基本知識や考え方を解説

相続が発生した時、亡くなった方(被相続人という)が遺した財産によっては相続税の支払い義務が生じる場合があります。その相続税を算出する元となるのが「相続税評価額」です。
財産と一口にいっても現金や土地、建物、株式などさまざまなものがあります。これらの財産それぞれについて相続税評価額を出し、その合計金額を元に相続税がいくらになるのかを導き出すというわけです。
財産にはそれぞれに応じた評価方法が決められており、なかには複雑な計算式を使わなければならないものもあります。この記事では相続税評価額の基本的な知識や各種評価方法について解説いたします。

相続税評価額とは?

相続税の支払い義務が生じるかどうかを判断するには、そもそも被相続人が遺した財産にどれくらいの金銭的価値があるのかを把握しなければなりません。
財産と呼ばれるものには現金や預貯金、土地、家屋、有価証券などさまざまものがありますが、これらを一つひとつ評価することで財産の総額がわかります。その評価方法は財産ごとに決められており、その評価方法に従って計算した財産の価額を「相続税評価額」といいます。この「相続税評価額」の合計額に基づいて相続税の支払いが必要か否か、必要だとすればいくらになるのかを明らかにしていくわけです。

遺産の時価調査と相続税評価額の関連性

相続税評価額の評価方法は財産の種類によって異なりますが、基本的な考え方は同じで、原則として「時価」で計算することになっています。
たとえば、現金1億円の時価がいくらになるかといえば「1億円」です。こんな風に簡単に時価がわかれば話は早いのですが、財産の特性によっては評価が一筋縄ではいかないこともあります。
相続税評価額は相続税額を左右するものですから、正確な額を算出しなければなりません。そのため、どのような財産が遺されたのかというしっかりとした調査と、それぞれの財産の評価方法を把握しておくことが大切なポイントとなってくるわけです。その評価方法については、次に説明します。

なお、それぞれの評価方法については国税庁が詳細なルールを定めています。同庁のホームページでも確認できるので参考にしてみてください。

【参考】国税庁ホームページ『財産評価』

評価方法の種類

ここからは、さまざまな財産のなかでも代表的なものをピックアップしながら相続税評価額の評価方法を見ていくことにします。

取り上げるのは、以下の8つの財産です。

  1. 土地
  2. 貸地
  3. 建物
  4. マンション
  5. 上場株式
  6. 預貯金
  7. 生命保険金
  8. 退職手当金

土地の評価

土地の評価は相続税評価額を算出する際に最も難しいものといわれています。土地には一つとして同じものがないという特性を備えていることに加えて、評価額を算出するためのルールが複雑であることが、その理由です。

さて、その土地の評価方法としては次の二つがあります。

  1. 路線価方式
  2. 倍率方式

それぞれに解説していきましょう。

路線価方式

路線価とは「道路に面する土地1㎡あたりの評価額」のことを指します。この路線価に基づいて土地を評価する方法が「路線価方式」というわけです。路線価方式による土地の相続税評価額は次の計算式を用います。

【路線価×各種補正率×土地面積】

例えば、以下のような土地があった場合、
路線価:15万円
各種補正率:1.0
土地面積:100㎡
相続税評価額は【15万円 × 1.0 × 100】で1,500万円となります。

路線価は国税庁のホームページで確認することができます。

【参考】国税庁ホームページ『路線価図・評価倍率表』

倍率方式

「倍率方式」とは、前述した路線価が定められていない地域に関する土地の評価方式です。この方式による土地の相続税評価額は次の計算式を用います。

【固定資産税評価額×倍率】

「固定資産税評価額」とは市区町村から毎年送られてくる納税通知書に同封されている「固定資産税課税明細書」に記載されています。明細書の土地の「価格」の欄の額が「固定資産税評価額」です。

例を出してみましょう。
固定資産税評価額が1,000万円で倍率が1.1の土地を相続したとします。
すると、相続税評価額は【1,000万円 × 1.1】で1,100万円となるわけです。

なお、倍率も路線価と同じように国税庁のホームページで確認することができます。

路線価図・評価倍率表(国税庁)

貸地の評価

土地を誰かに貸していた場合の相続税評価額は、貸していない場合に比べて低くなります。この場合の土地の相続税評価額は次の計算式を用います。

【更地の評価額×(1−借地権割合)】

ここでいう「更地」とは、土地を貸していない(借地権のない)状態の土地を意味します。その評価額は上記の「路線価方式」または「倍率方式」で計算します
一方「借地権割合」ですが、これは国税庁が地域ごとに30〜90%の間で定めており、一般的に土地の利用価値が高いエリアは借地権割合も高い傾向があります。

例を出してみましょう。更地の評価額が5,000万円で、借地権割合が50%の土地(貸地)を相続したとします。すると、相続税評価額は次の計算で算出できます。

【5,000万円×(1−50%)=2,500万円】

相続税評価額は2,500万円となるわけです。

建物の評価

建物(家屋)の評価はいたってシンプルです。相続税評価額は以下の計算式で算出できます。

【固定資産税評価額×1.0】

「固定資産税評価額」は土地の評価の項目で記載したように、市区町村から毎年送られてくる「固定資産税課税明細書」に記載されています。
たとえば価格に「2,000万円」と記載されていた場合、相続税評価額は次のようになります。

【2,000万円×1.0=2,000万円】

すなわち相続税評価額は2,000万円ということです。

ただし、相続した建物が賃貸アパートであったり、第三者に貸していたり、あるいは被相続人が亡くなる前にリフォームをしていた場合などは計算式が異なってきます。詳しくは下記の記事をご覧ください。

マンションの評価

相続をした家がマンションの場合の評価方法は戸建てと同じで、家屋と土地それぞれに分けて行います。家屋の評価方法は市町村から送られてくる「固定資産税課税明細書」の「価格」の欄の額が該当します。計算式は次のとおりです。

【固定資産税評価額×1.0】

たとえば価格に「3,000万円」と記載されていた場合、相続税評価額は次のようになります。

【3,000万円×1.0=3,000万円】

すなわち家屋部分の相続税評価額は3,000万円ということです。

一方の土地ですが、路線価とマンション全体の敷地における所有する占有部分の割合(敷地権割合)に基づいて評価されます。敷地権割合は不動産の全部事項証明書に記載されていますし、一般的にマンション売買契約書でも確認できます。マンションの土地の相続税評価額は、次の計算式を用います。

【路線価×土地の面積×敷地権割合】

例を出してみましょう。路線価が40万円でマンション全体の土地の面積が2,000㎡、敷地権割合が8,000/400,000とします。すると相続税評価額は次の計算式で算出できます。

【40万円×2,000㎡×8,000÷400,000=1600万円】

この1,600万円に家屋分の相続税評価額を加えれば、相続したマンションの相続税評価額が出るというわけです。

上場株式の評価

「上場株式」とは、金融証券取引所に上場されている株式のことです。その評価方法としては、次の4つの中から最も低い額を採用することになっています。

  1. 相続日(被相続人が亡くなった日)の最終価格(終値)
  2. 相続日の月の最終価格の月平均額
  3. 相続日の月の前月の最終価格の月平均額
  4. 相続日の月の前々月の最終価格の月平均額

たとえば被相続人が3月30日に亡くなったとします。その日の上場株式の終値は1,500円でした。同じ株式の3月の終値の平均額は1,300円、前月2月の終値の平均額は1,000円、前々月1月の終値の平均額は1,400円でした。
この場合、最も低い額は2月の終値の平均額1,000円なので、この額を採用します。もし上場株式を1万株もっていたとしたら【1,000円×1万株】で1,000万円が相続税評価額ということになります。

預貯金の評価

預貯金は「普通」と「定期」に大きく分けられます。このうち、利子が少ない普通預貯金に関しては、相続開始日の残高が相続税評価額となります。
一方、定期預貯金は相続の開始時点で解約をしたとみなし、元本に利子(源泉徴収税を差し引いた額)を加えた額を相続税評価額とします。

生命保険金の評価

被相続人が亡くなったことで受け取る生命保険金(死亡保険金)は、受け取った額が相続税評価額に相当します。ただし、この場合は「死亡保険金の非課税枠」という税制上の特典があります。これは法定相続人一人あたり500万円が非課税になるというものです。

【500万円×法定相続人の数=非課税限度額】

たとえば、保険金が3,000万円おりたとし、法定相続人は配偶者と二人の子どもだったとします。この場合は次のように計算します。

【3,000万円−500万円×3人=1,500万円】

相続税評価額は1,500万円ということになります。

非課税枠が設定されているのは、死亡保険金に遺族の暮らしを守るという役割があるためです。なお、法定相続人のなかに相続を放棄した人がいても、その人も非課税枠の計算上、法定相続人の数に含まれることになっています。

生命保険関連で注意が必要なのは、被保険者が被相続人以外の保険です。たとえば、契約者と受取人が被相続人、被保険者が妻とする生命保険がわかりやすいでしょう。
この場合、被相続人が亡くなると、相続人の誰かが保険の契約を相続して継続するか、契約を解約することになります。保険を解約すれば「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」を受け取ることができますが、その解約返戻金相当額が相続税評価額になり、上記の被保険者が被相続人の生命保険金とは異なり、非課税枠の特典が適用されません。そのほか、前納保険料や剰余金の分配などがあれば加算します。

退職手当金の評価

退職手当金は本来なら(亡くならなければ)被相続人が受け取っていたお金です。そのため、被相続人が亡くなった後で退職手当金が支給された場合は、被相続人の財産とみなされ、相続税の課税対象となります(死亡後3年以内に支給が確定したものに限る)。

ただし、この死亡退職金にも先の生命保険金と同じく非課税枠が設けられています。算出方法も同じで【500万円×法定相続人の数=非課税限度額】となっています。

もし退職手当金が3,000万円で、法定相続人は配偶者と二人の子どもだった場合は次のように計算します。

【3,000万円−500万円×3人=1500万円】

相続税評価額は1500万円ということになります。

小規模宅地等の特例を使って税金を抑える方法

相続税評価額を大きく減額できる制度として「小規模宅地等の特例」があります。この特例を使うと、相続した土地の相続税評価額を最大で80%まで減額することができます。たとえば土地の相続税評価額が4,000万円だった場合、条件にもよりますが、800万円にまで引き下げることも可能なのです。その意味でも、土地を相続する方にとっては、ぜひ活用したい特例といえます。

なぜこのような特例があるのかといえば、土地を相続したことで、逆にその土地を手放さざるをえなくなる事態を防ぐためです。一般的に土地は高額なので、相続税も多額になりがちです。相続税は現金一括払いが原則ですから、なかには土地を売却しないと現金が用意できない人もいます。
そうなると、住まいを失ってしまうことにもなりかねません(相続する土地は多くの場合、家屋とセットです)。そうした状況に陥らないための特例が、この「小規模宅地等の特例」というわけです。

「小規模宅地等の特例」は被相続人が事業を行っていた土地と、住まいとして使っていた土地によって適用の要件が異なってきます。詳しくは下記の記事も参考にしてください。

おわりに:相続税評価額は種類によって計算式や考え方が異なる

相続税を計算する時の基準となる相続税評価額。その評価方法は財産の種類によって異なります。相続人が亡くなった時、すべての財産を調べ出し、それぞれの評価方法で相続税評価額を算出していかなければなりません。 そこには相応の労力と時間がかかることが予想されますが、相続税の申告期限(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)に間に合うように進めていくことが大切です(申告期限を過ぎるとペナルティーが課せられます)。

もし、相続税評価額に関して不安や戸惑い、疑問があれば専門知識の豊富な税理士にご相談することをおすすめします。評価方法に関してしっかりとサポートしてくれますし、記事中でふれた「小規模宅地等の特例」のように相続税評価額を抑えるためのさまざまなアドバイスも期待できます。無料相談を実施しているところもあるので、ぜひご検討ください。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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