相続登記にかかる費用の相場は?司法書士に依頼するといくらかかる?
Tweet土地や建物などの不動産の相続が発生した際は、相続登記を行う必要があります。相続登記は相続人がご自身で行うこともできますが、専門家に依頼することも可能です。いずれも手続きには費用が発生しますが、相場が分からないという人も多いでしょう。この記事では、相続登記手続きにかかる費用相場について解説します。
目次
相続登記は不動産名義を変更するための手続き
相続登記とは、土地や建物などの不動産を相続した際に、被相続人から相続人へ名義変更をするための手続きです。土地や戸建て、マンションなどの不動産を相続したら、相続人に名義変更を行う必要があります。この名義変更を一般的に相続登記と呼びますが、正しくは「相続による所有権登記」と言います。
不動産の登記には、その不動産が誰のものであるか、権利が明記されます。相続登記をすることで、その不動産に関する権利が、被相続人から相続人へ移転したことを、第三者に対して証明できるようになります。相続登記を行わないと所有者が誰なのか不明確な状態になり、相続人が売りたいと思った場合に売却できなくなる、などのリスクがあります。
相続登記は義務化が決まっている
相続税の申告が必要な場合、相続開始から10か月以内に行うということが法律で決まっていますが、相続登記はいつまでに行えばよいのでしょうか。
実は、これまで相続登記に手続きの期限は定められておらず、義務化されていませんでした。しかし、2021年の不動産登記法改正によって、2024年4月1日以降、相続登記が義務化されることが決定しました。不動産の相続を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。もし、正当な理由なく相続登記を期限内に行わなかった場合には、10万円以下の過料の対象となります。
相続登記の義務化について、詳しくはこちらもご覧ください。
相続登記で生じる費用は誰が支払うもの?
相続登記の手続きで必要な費用を誰が負担するのかについては、法律では特に定められていません。相続人が一人の場合は明確ですが、複数の相続人で不動産を相続した場合は、相続人同士で協議して決めることになります。
たとえば複数の相続人のうち、ひとりが不動産を相続する場合であれば、不動産を取得する人が支払うケースが一般的です。自分が取得する不動産の手続き費用なので、自分で支払うという考え方です。
一方で、相続しても誰も住まないうえに固定資産税の支払いが高額など、不動産の相続が負担になるケースもあります。そういった場合は、不動産を相続しなかった他の相続人にも相続登記の費用を負担してもらうことがあります。また、複数の相続人が共同で相続した後に売却し、その代金を分ける際に相続登記の費用も一緒に分けることもあり、状況に応じて様々です。いずれにしても、遺産分割協議の際に相続人同士で話し合って決めておきましょう。
相続登記に必要な費用3種
ここからは、相続登記にかかる主な費用3つについて解説します。費用の種類を大きく分けると、以下の3つになります。
1.書類を取得するための手数料等
2.登録免許税
3.司法書士への報酬
1.書類を取得する際の手数料等
まずは、相続登記に必要な書類を取得するための費用です。役所などで書類を取り寄せる際に手数料がかかりますので、どのような書類が必要で、どれくらいの費用がかかるのかご紹介します。
相続する不動産に関する書類
- 固定資産評価証明書: 1通200円~400円
- 登記事項証明書:1通600円
- 名寄帳:1通200円~400円
被相続人に関する書類
- 戸籍謄本:1通450円
- 改製原戸籍(原戸籍):1通750円
- 住民票の除票:1通300~400円
相続人に関する書類
- 戸籍謄本:1通450円
- 住民票:1通300~400円
- 印鑑証明書:1通200~400円
まず不動産関連の書類として、「固定資産評価証明書」と「登記事項証明書」は、相続登記の際に添付書類として提出が必要になります。「名寄帳」とは、個人の所有する不動産が一覧で確認できる台帳のことです。もし、被相続人が複数の不動産を所有していた場合は取得した方が良いでしょう。
次に、被相続人関連の書類についてですが、被相続人の「戸籍謄本」は、出生から死亡時までのものが必要になります。これは、被相続人に認知している子がいるかなど、誰が相続人なのかを明確にするためです。また「改製原戸籍」は、改正前の項目が記載されている戸籍のことです。戸籍はこれまでに何度か法改正によって様式が変化しており、現在の戸籍には過去にあったいくつかの項目が削除されていますので、その確認を行うために取得します。「住民票の除票」は、死亡して住民登録から除かれたことを証明する書類です。
最後に、相続人関連の書類について説明します。相続人については「戸籍謄本」、「住民票」、「印鑑証明書」などが必要で、該当の不動産の相続人が複数いる場合は全員分の書類を取得します。
このように、必要書類の取得には1通あたり数百円程度の手数料が発生します。全て1通ずつ取得したとしても、4~5,000円程度というところでしょう。被相続人が本籍を何度も移していた場合や、相続する不動産・相続人の数が多ければ、それに比例して書類の取得にかかる金額も大きくなります。
相続登記の必要書類については、遺言か遺産分割協議かなど、どのように相続するかによって変わる場合があります。詳しくは、下記の記事もご覧ください。
2.登録免許税
相続登記の申請にあたって、登録免許税という税金を支払わなければなりません。不動産のほか、船や飛行機、会社、資格などを取得した際に、法務局で登記することによって、所有していることを証明できます。登録免許税とは、この登記の手続きにかかる税金のことです。
不動産の場合は、取得時の他、内容変更時も登記が必要になるため、相続で所有者が変更された場合は登記しなければならず、それに伴い登録免許税が発生します。
相続登記の登録免許税は、申告する人が自分で計算して支払います。納付しないと登記申請が却下されてしまうため、金額を正確に計算し、必ず納付するようにしましょう。
相続登記の登録免許税は、以下の数式で求められます。
不動産評価額×0.4%
土地と建物1セットで相続した場合の、登録免許税を計算してみましょう。
(例)評価額が土地31,500,200円、建物5,005,500円の場合
31,500,200円+5,005,500円=36,505,700円
1,000円未満を切り捨てるので、不動産価格は【36,505,000円】です。
36,505,000円×0.4%=146,020円
100円未満を切り捨てるので、登録免許税は【146,000円】となります。
相続登記の登録免許税には免税措置がある
相続登記の登録免許税には、一定の条件においての免税措置があります。一定の条件とは次の2つです。
- 相続登記をする前に相続人が死亡した場合
- 相続する土地の価額が100万円以下の場合
たとえば、祖父が亡くなって父が実家を相続したものの、相続登記がされないまま父が亡くなって自分がその家を相続することになった場合、祖父から父への相続登記の登録免許税は免除されます。ただし、この場合、父から自分への相続で発生する登録免許税は免除になりません。
免税措置には適用期限があり、2022年度の税制改正では2025年3月31日までに延長されました。免税を受けるには、管轄の法務局に対し、免税の根拠となる法令の条項を記載した申請書を提出する必要があります。
3.司法書士への報酬
最後に解説するのが、専門家へ手続きを依頼する際の費用です。誰にどこまで依頼するか、難易度などによって金額は変わりますが、相場をご紹介します。
相続登記の専門家は司法書士です。司法書士への依頼費用は事務所や依頼範囲によって金額が変わるため一概には言えませんが、相続登記のみ依頼する場合の相場は、5~10万円ほどです。
この他に不動産の調査や戸籍などの書類の収集を依頼すれば、別途費用が発生します。
相続登記に関しては司法書士への依頼となりますが、相続に関わる手続き全てを専門家に依頼する場合は、司法書士だけでは対応できません。全てを専門家に任せる場合は、弁護士や税理士への依頼も必要になります。依頼する範囲が広い場合や、相続が複雑で難易度の高い場合であれば、それだけ費用がかかってきます。
相続手続きで誰に何を依頼して良いのか分からない、という場合は下記の記事も参考にご覧ください。
相続登記は専門家に依頼するべきか
結局のところ、相続登記は専門家に依頼したほうがよいのでしょうか?自分で行う場合と専門家に依頼する場合のメリット・デメリットについて解説します。
専門家依頼のメリット・デメリット
もし相続内容が複雑でなく、相続人がひとりしかいない場合は、自分で手続きすることも難しくはないでしょう。専門家に依頼せず、全て自分で手続きを行えば、費用が抑えられるのがメリットです。
ただし、申請するために必要な書類は多くあり、平日の昼間に役所や法務局などに足を運ぶ必要があります。仕事などで忙しい人には難しいかもしれません。
相続人が複数いたり、相続する不動産が複数あったりする場合、相続人同士で協議することもあり、申請自体もすぐにはできません。時間と労力がかかる点はデメリットです。
メリット | デメリット | |
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専門家に依頼する場合 |
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自分で行う場合 |
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専門家への依頼がおすすめのケース
次に、費用をかけても、専門家に依頼した方がよいケースをご紹介します。
①相続人が多いケース
相続人が多い場合、戸籍などの書類を全員分取り寄せるための時間がかかります。人数が多ければ、相続人のなかには協力的ではない人もいるかもしれません。全員の書類がそろわなければ、相続登記が認められません。
②相続人が遠方に居住しているケース
被相続人の住居地とは異なる県や海外に相続人が住んでいる場合、郵送でのやり取りになります。書類を送ってから確認するまでにタイムラグがあり、万が一不備があった場合には郵送のため余計に時間がかかります。
③不動産が多いケース
多くの不動産を相続する場合、各不動産の調査から始まり、名寄帳を取り寄せたり、不動産の権利関係を確認したりと大変な労力がかかります。
④遺産分割協議に不安があるケース
相続では不動産以外にも遺産があるケースが多く、相続人同士で協議しても話がまとまらないことも少なくありません。遺産分割協議書の作成において、専門家のアドバイスを受けた方がよいケースもあります。
おわりに:費用と自分が費やせる時間のバランスを見ながら、専門家依頼を検討しよう
相続登記に必要な手続きや費用相場、専門家に依頼した方がよいケースなどについて解説しました。2024年4月からは義務化されますので、不動産の相続が発生したら必ず相続登記する必要があります。日常生活を送りながら自分で相続登記の手続きを行うのが難しい場合は、専門家に依頼するのがよいでしょう。
相続専門で長年の実績がある「税理士法人レガシィ」は、相続税申告に関わらず、相続登記などの手続きについてもサポートします。レガシィが窓口となって司法書士と連携し、相続登記をはじめとして、戸籍収集や銀行手続きなども代理できますので、ぜひご相談ください。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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