贈与税の時効はいつ成立する?6年・7年の違いや申告漏れのペナルティを解説
Tweet無償で財産を渡すことを「贈与」といいます。贈与によって財産を受け取る人を「受贈者」、財産を渡す人を「贈与者」と呼びます。個人から財産の贈与を受けた場合、暦年課税では、原則として1年間に受け取った財産の合計額が110万円を超えると贈与税の申告・納税が必要になります。
では、贈与税の申告が必要なことを知らなかった場合や、申告を忘れてしまった場合はどうなるのでしょうか。贈与税には、税務署が課税処分を行うことのできる期間に制限があり、一般に「贈与税の時効」と呼ばれています。ただし、一定の期間が経過すれば、必ず税金を支払わなくてよいというわけではありません。
この記事では、贈与税の時効が成立するまでの期間や申告期限、申告漏れによるペナルティ、申告を忘れた場合の対処法などを解説します。
目次
税金の時効は原則として5年
日本国憲法第30条では、国民の納税義務が定められています。一方、税務署が申告内容を調査し、税額を更正・決定できる期間には法律上の制限があります。
税務署が税額の更正や決定などを行うことのできる期間を「除斥期間」といいます。一般的な国税では原則5年とされていますが、税目や不正行為の有無などによって期間が異なります。
なお、除斥期間は、すでに確定した税金を徴収する権利の時効とは異なります。贈与税については、一般的な国税よりも長い期間が設けられています。
贈与税の時効は原則6年、不正行為がある場合は7年
贈与税について、税務署が更正や決定を行うことのできる期間は原則6年です。また、偽りその他不正の行為によって税金を免れた場合などには、原則7年となります。申告を忘れた場合と、不正行為があった場合では取り扱いが異なります。
原則として6年
贈与税の暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の価額を合計し、基礎控除額110万円を差し引いた金額をもとに贈与税を計算します。
申告が必要であるにもかかわらず申告していなかった場合でも、税務署が更正・決定を行うことのできる期間には原則6年という制限があります。ただし、期間内に申告漏れが判明した場合には、本来の贈与税に加えて無申告加算税や延滞税などが課される可能性があります。
偽りその他不正の行為がある場合は7年
財産を隠したり、虚偽の書類を作成したりするなど、偽りその他不正の行為によって贈与税を免れた場合には、更正・決定ができる期間が原則7年となります。
ただし、単に申告を忘れていたことや、申告していなかったことを認識していたという事情だけで、直ちに7年になるわけではありません。不正行為に該当するかどうかは、具体的な事実関係に基づいて判断されます。
家族間の贈与であっても、相続税の税務調査などを通じて過去の資金移動が確認されることがあります。申告漏れに気づいた場合は、そのまま放置せず、適切に対応することが重要です。
贈与税の時効はいつから数える?
贈与税の時効を考えるうえで重要なのが、期間を数え始める「起算日」です。贈与税の更正・決定ができる期間は、原則として贈与を受けた日からではなく、法定申告期限を基準に計算します。
贈与税の申告期間は、原則として贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。申告期限が土曜日・日曜日・祝日などに当たる場合は、原則として翌開庁日が期限となります。
例えば、2025年中に贈与を受けた場合、贈与税の申告期限は2026年3月16日(月)です。このように、贈与を受けた日と申告期限は異なるため、期間を確認する際には注意が必要です。
なお、実際の期間制限には例外的な取り扱いが生じる場合もあります。過去の贈与について判断する際は、贈与の成立時期や申告状況などを確認することが重要です。
贈与から長期間が経過していても注意が必要なケース
贈与から長い年月が経過していても、必ずしも税金の問題がなくなるわけではありません。特に注意したいのが、贈与が成立していないケースです。
例えば、親や祖父母が子ども・孫名義の預金口座を開設し、本人に知らせずお金を積み立てている場合があります。このように、預金口座の名義人と実質的な所有者が異なる預金は「名義預金」と呼ばれます。
預金の名義が子どもや孫であっても、実質的には親や祖父母の財産と判断される場合があります。その場合、親や祖父母が亡くなった際に、相続税の課税対象となる可能性があります。
贈与が成立しているかどうかは、当事者の意思や財産の管理状況などによって判断されるため、預金の名義だけで判断することはできません。
贈与税の申告漏れで発生する税金4つ
贈与税の申告や納税を適切に行わなかった場合、本来納めるべき贈与税に加えて、次の税金が課されることがあります。
①無申告加算税
②過少申告加算税
③重加算税
④延滞税
なお、延滞税は加算税とは異なり、納付が遅れたことに対して課される税金です。それぞれの内容を解説します。
①無申告加算税
無申告加算税は、申告期限までに必要な申告をしなかった場合に課される税金です。税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合と、税務調査によって申告漏れが判明した場合とでは、税率が異なります。
2024年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについて、基本的な税率は次のとおりです。
| 申告者の状況 | 納付すべき税額の部分 | 税率 |
|---|---|---|
| 税務調査の事前通知前に自主的に期限後申告 | 原則として全額 | 5% |
| 税務調査の事前通知後、更正・決定を予知する前に申告 | 50万円以下 | 10% |
| 50万円超300万円以下 | 15% | |
| 300万円超 | 25% | |
| 税務調査による更正・決定を予知した後の申告など | 50万円以下 | 15% |
| 50万円超300万円以下 | 20% | |
| 300万円超 | 30% |
※上記は基本税率です。過去の無申告加算税や重加算税の賦課状況などによって、税率が加重される場合があります。また、期限後申告であっても、法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、一定の要件を満たす場合には、無申告加算税が課されないことがあります。
②過少申告加算税
過少申告加算税は、期限内に申告した税額が本来納めるべき税額より少なかった場合に課される税金です。計算誤りや財産の申告漏れなどによって発生することがあります。
税務調査の事前通知前に自主的に修正申告をした場合は、原則として過少申告加算税は課されません。基本的な税率は次のとおりです。
| 申告者の状況 | 追加で納付する税額の部分 | 税率 |
|---|---|---|
| 税務調査の事前通知前に自主的に修正申告 | 全額 | 原則なし |
| 税務調査の事前通知後、更正を予知する前に修正申告 | 期限内申告税額または50万円のいずれか多い金額以下 | 5% |
| 上記を超える部分 | 10% | |
| 税務調査による更正を予知した後の修正申告など | 期限内申告税額または50万円のいずれか多い金額以下 | 10% |
| 上記を超える部分 | 15% |
※上記は基本税率です。個別の申告状況などによって取り扱いが異なる場合があります。
③重加算税
重加算税は、課税対象となる財産を意図的に隠したり、事実を偽装したりするなど、隠蔽・仮装があった場合に課される税金です。無申告加算税や過少申告加算税に代えて課されます。
基本的な税率は次のとおりです。
・無申告の場合:40%
・過少申告の場合:35%
また、過去の加算税の賦課状況などによっては、税率が10%加重される場合があります。重加算税の対象となるかどうかは、具体的な隠蔽・仮装の事実などに基づいて判断されます。
④延滞税
延滞税は、贈与税の納付が法定納期限に遅れた場合に課される税金です。納付が遅れた日数に応じて計算されます。
2026年1月1日から12月31日までの延滞税率は次のとおりです。
| 対象期間 | 2026年の税率 |
|---|---|
| 納期限の翌日から2か月を経過する日まで(原則) | 年2.8% |
| 上記の期間を経過した日以後 | 年9.1% |
※延滞税率は年によって変わる場合があります。また、期限後申告や修正申告、更正・決定があった場合には、延滞税の計算上の納期限や計算期間が異なることがあります。過去の年分の延滞税を計算する場合は、それぞれの年の税率を確認してください。
出典:国税庁「延滞税の割合」
贈与税を申告していなかった場合の対処法
過去の贈与について申告漏れに気づいた場合は、そのまま放置せず、贈与の内容や申告状況を確認することが重要です。税務調査の事前通知前に自主的に申告することで、加算税の負担が軽減される場合もあります。
過去の贈与内容や申告状況を確認する
まずは、いつ、誰から、どのような財産を、いくら受け取ったのかを確認しましょう。預金通帳の入出金履歴や贈与契約書、過去の申告書などが参考になります。
また、暦年課税と相続時精算課税では取り扱いが異なるため、どの課税方式が適用されるかも確認する必要があります。
期限後申告や修正申告を行う
申告期限までに贈与税の申告をしていなかった場合は、期限後申告を検討します。一方、すでに申告しているものの、税額が少なかった場合には修正申告が必要になることがあります。
申告が必要な場合は、できるだけ早く適切な手続きを行いましょう。
判断が難しい場合は税理士に相談する
贈与の成立時期や財産の評価、申告義務の有無などは、個別の事情によって判断が異なります。特に、長期間にわたる家族間の資金移動などが関係する場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
贈与税の申告漏れが悪質な場合は刑事罰の対象になることも
贈与税の申告漏れがあった場合、加算税や延滞税が課されるだけでなく、悪質な脱税行為などについては刑事罰の対象となる可能性もあります。
ただし、申告を忘れたすべてのケースで刑事罰が科されるわけではありません。刑事罰の適用には、法律で定められた犯罪の成立要件を満たす必要があります。申告漏れが判明した場合には、早めに適切な対応を行うことが重要です。
贈与税の時効と相続税の関係
贈与税の時効と相続税の課税関係は、別々に考える必要があります。贈与税の更正・決定ができる期間が経過していても、過去の贈与が相続税の計算に影響する場合があります。
生前贈与の加算対象期間は段階的に7年へ延長
相続や遺贈などによって財産を取得した人が、亡くなった方から一定期間内に暦年課税による贈与を受けていた場合、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算する制度があります。
2024年1月1日以後の贈与については、相続税への加算対象期間が従来の相続開始前3年以内から7年以内へ段階的に延長されています。
| 相続開始日 | 加算対象となる贈与の期間 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 2027年1月1日~2030年12月31日 | 2024年1月1日から相続開始日まで |
| 2031年1月1日以後 | 相続開始前7年以内 |
なお、相続開始前3年以内の贈与以外で、新たに加算対象となった期間の贈与財産については、その価額の合計額から総額100万円までは相続税の課税価格に加算されません。加算対象となる人や財産には一定の要件があり、贈与税の基礎控除額110万円以下の贈与であっても、相続税への加算対象となる場合があります。
この制度は、贈与税の時効が7年に延長されたという意味ではありません。
出典:国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
贈与税の算出と申告方法
贈与税の計算方法は、適用する課税方式によって異なります。ここでは、暦年課税による基本的な計算方法を紹介します。
暦年課税では、1年間に受け取った贈与財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引き、残った金額に税率を適用して贈与税を計算します。
【贈与税額=(贈与財産の課税価格-110万円)×税率-控除額】
贈与税の税率には「一般税率」と「特例税率」があります。ここでは、父母・祖父母などの直系尊属から、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上※の子・孫などが贈与を受けた場合に適用される「特例税率」の表を掲載します。
※2022年4月1日以後の贈与から、特例税率の年齢要件は20歳以上から18歳以上に引き下げられました。2022年3月31日以前の贈与については、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であることが必要です。
特例税率の速算表は次のとおりです。
特例税率
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | 0円 |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
例えば、特例税率が適用される人が年間500万円の贈与を受けた場合、基礎控除額110万円を差し引いた390万円が課税対象となります。この場合、贈与税額は「390万円×15%-10万円=48万5,000円」です。
贈与税の申告書は、原則として受贈者の住所地を管轄する税務署に提出します。e-Taxを利用した電子申告も可能です。納税は原則として金銭による一括納付ですが、一定の要件を満たす場合には延納が認められることもあります。
贈与税の計算については以下の記事もご覧ください。
贈与税の時効に関するよくある質問
Q1. 贈与税の申告期限はいつですか?
贈与税の申告期間は、原則として贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。申告期限が土曜日・日曜日・祝日などに当たる場合は、原則として翌開庁日が期限となります。
Q2. 贈与税の申告を忘れた場合はどうすればよいですか?
申告期限を過ぎていても、期限後申告を行うことができます。申告漏れに気づいた場合は、できるだけ早く申告することが重要です。自主的に申告することで、無申告加算税の負担が軽減される場合があります。
Q3. 110万円以下の贈与であれば申告は不要ですか?
暦年課税では、1年間に受け取った贈与財産の合計額が110万円以下であれば、原則として贈与税はかからず、申告も不要です。ただし、贈与税の特例を適用する場合や、相続時精算課税を利用する場合などは、申告や届出が必要になることがあります。
Q4. 生前贈与加算の7年と贈与税の時効は同じですか?
異なります。贈与税の時効は、税務署が贈与税について更正・決定を行うことのできる期間に関するものです。一方、生前贈与加算の7年は、相続税の計算において一定期間内の贈与財産を加算する制度です。それぞれ別の制度として理解する必要があります。
おわりに:贈与税の時効を正しく理解し、適切な申告を行いましょう
贈与税には、税務署が更正・決定できる期間に制限があり、原則6年、不正行為がある場合は7年とされています。ただし、贈与の成立状況や過去の申告・納税状況などによって、取り扱いは異なります。
また、贈与税の申告漏れがあった場合には、無申告加算税や延滞税などが課される可能性があります。2024年以降は無申告加算税の税率区分が見直されており、申告漏れによる負担が大きくなる場合もあります。
贈与税の時効を待つのではなく、贈与を受けた時点で申告義務の有無を確認し、適切に手続きを行うことが重要です。過去の贈与について不安がある場合や、申告漏れに気づいた場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
当社は、コンテンツ(第三者から提供されたものも含む。)の正確性・安全性等につきましては細心の注意を払っておりますが、コンテンツに関していかなる保証もするものではありません。当サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、かかる損害については一切の責任を負いません。利用にあたっては、利用者自身の責任において行ってください。
詳細はこちら
陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
