相続の知識

贈与税の計算方法を3つのステップで解説!贈与税が非課税となる方法8つも紹介

個人から個人へと一方が自分の保有している財産を無償で相手方に与え、それが相手方に受諾されることを「贈与」といいます。両親から子へ、あるいは祖父母から孫へと財産を与えることも贈与となり、その額によっては「贈与税」を支払わなければならないケースも生じてきます。贈与税は自己申告なので、もし支払う義務があるにもかかわらず、それを怠っていると税務署から指摘を受けることになります。
では、実際にどのような時に贈与税の支払い義務が生じ、その税額を算出していくのでしょうか? この記事では贈与税のあらましと税額の計算方法、贈与税が非課税となる方法について解説いたします。

贈与税とは?課税方法は2種類

贈与税の対象となる「贈与」とは、個人が個人に対して無償で財産を贈り与えることです。贈与をする人のことを「贈与者」、渡される人のことを「受贈者」と呼びます。一般的には親御さんが贈与者で、お子さんが受贈者となるケースが多いといえるでしょう。

この個人間の贈与が行われた時にかかってくる税金が「贈与税」で、原則として1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与に対して課せられます。支払いの義務が生じるのは受贈者です。なお、夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費のために渡された通常必要とみなされる財産は、贈与税の対象とはなりません。

贈与税の支払い義務が生じた場合、税務署に申告をして納付を済ませなければならないのですが、これを怠ると申告漏れ・脱税とみなされてしまいます(ペナルティも科せられます)。
ただ、贈与を受けた人すべてが贈与税を支払わなければならないわけではありません。贈与税には「非課税枠」が設けられており、その範囲内の贈与なら支払い義務が生じないためです。
贈与税の課税方法としては「暦年課税」「相続時精算課税」がありますが、いずれにおいても非課税枠が設定されています。それぞれについて解説していきましょう。

①暦年課税

贈与税の通常の課税方式は「暦年課税」です。この場合、1年間(1月1日から12月31日まで)の受贈額が110万円以下であれば課税の対象とならず、申告の必要もありません。
注意すべき点としては、複数の人からの贈与があった場合です。たとえば父親と母親からそれぞれ100万円を贈与されたとします。どちらも受贈額は110万円以下ですが、両方を合計すると非課税枠の110万円をオーバーします。この場合、200万円から110万円を控除した(差し引いた)額の90万円に贈与税がかかってきます。
また、110万円以下の受贈であっても、毎年決まって受けとることにしていると「定期贈与」とみなされ、贈与税を課せられることになるので、これも注意が必要です。年ごとに贈与する時期や金額を変える、贈与契約書を作成しておく、など定期贈与と指摘されないような対策が必要です。

②相続時精算課税

相続時精算課税は受けとった財産の合計額(1年間に限りません)から2,500万円(特別控除額)を差し引いた額にかかる税金です。税率は一律20%となっています。たとえば、3,000万円の贈与を受けたとすると、課税対象は特別控除額を差し引いた500万円となり、その20%である100万円が贈与税となるわけです。2,500万円以下なら支払い義務は生じません。
ただし、この場合の財産額はのちに相続が発生した時に相続税の課税対象となってきます。大きな財産を贈与する際には活用したくなる制度ですが、節税になるわけではないので注意が必要です。

贈与税の計算に使用する2種類の税率表

相続時精算課税は特別控除額を差し引いた額に対して税率は一律20%とシンプルですが、暦年課税の場合は額によって税率や控除額が変わってきます。また、贈与者が誰かによっても異なります。暦年課税には「特例税率」と「一般税率」の2種類の税率があるのです。具体的には以下のとおりです。

①特例税率は両親・祖父母から受けた特例贈与財産に適用される
②一般税率は特例贈与財産以外に適用される

それぞれに見ていきましょう。

①特例税率は「両親・祖父母から受けた特例贈与財産」に適用される

特例税率とは、両親や祖父母が贈与者となり、子どもや孫が受贈者となる場合に適用される税率です。つまりは「直系尊属からの贈与」です。この場合、贈与を受けた年の1月1日時点で子ども・孫は20歳以上である必要があります。税率は以下のようになっています。

特例税率

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
200万円超400万円以下 15% 10万円
400万円超600万円以下 20% 30万円
600万円超1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

②一般税率は「特例贈与財産以外」に適用される

一般税率とは、特例税率以外の贈与に関して適用される税率です。贈与者は直系尊属以外となり、たとえば親族以外や兄弟姉妹からの贈与がこれに当てはまります。また、直系尊属からの贈与であっても、子ども・孫が未成年の場合は一般税率を適用することになっています。税率は以下のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
200万円超300万円以下 15% 10万円
300万円超400万円以下 20% 25万円
400万円超600万円以下 30% 65万円
600万円超1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

贈与額の計算方法を3つのステップで解説!

それでは具体的に贈与税をどのように計算していくのかを見ていくことにしましょう。ここでは暦年課税を適用した場合の算出方法を紹介していきます。ステップとして次の3つがあります。

①課税価格を計算する
②課税価格に対する税率と控除額を確認する
③贈与税額を計算する

①課税価格を計算する

まずは「課税価格」を明らかにします。課税価格とは税金がかかる対象となる金額のことです。贈与された額そのものではなく、ここから非課税枠の110万円を差し引きます。
たとえば、300万円の贈与を受けた場合は 300万円−110万円=190万円 となり、この額に対して課税されるというわけです。

【課税価格=贈与額−110万円(基礎控除)】

なお、1年間に一般贈与と特例贈与があった場合は両方の合計額から基礎控除額を差し引きます。それぞれから110万円を控除するのではないので注意してください。

例)30歳の男性が父親から500万円の贈与を受け、兄からも500万円の贈与を受けた場合

【500万円+500万円−110万円=890万円(課税価格)】

②課税価格に対する税率と控除額を確認する

次に、算出した課税価格に該当する税率と控除額を確認します。先に掲げた特例税率と一般税率の表を参照してください。

例1)30歳の男性が父親から500万円の贈与を受けた場合(特例税率)

【500万円−110万円=390万円(課税価格)】 

上記の表で課税価格が、200万円超400万円以下の税率が「15%」で、控除額は「10万円」であることを確認。

例2)30歳の男性が兄から500万円の贈与を受けた場合(一般税率)

【500万円−110万円=390万円(課税価格)】

上記の表で課税価格が、300万円超400万円以下の税率が「20%」で、控除額は「25万円」であることを確認。

③贈与税額を計算する

最後に、課税価格に該当する税率をかけ、その金額から控除額を差し引くと贈与税額が算出されます。

【贈与税額=課税価格×税率−控除額】

例1)30歳の男性が父親から500万円の贈与を受けた場合(特例税率)
【課税価格:500万円−110万円=390万円】 
【贈与税額:390万円×15%−10万円=48万5,000円】

例2)30歳の男性が兄から500万円の贈与を受けた場合(一般税率)
【課税価格:500万円−110万円=390万円】
【贈与税額:390万円×20%−25万円=53万円】

この例でもわかるように、同じ金額の贈与を受けていても、特例税率と一般税率では贈与税額も変わってきます。

なお、同じ年に30歳の男性が父親から500万円の贈与を受け(特例税率)、兄からも500万円の贈与を受けた場合(一般税率)は、次のような計算になります。

【課税価格:500万円+500万円−110万円=890万円】

父の贈与分(特例税率)【(890万円×30%−90万円)×(500万円÷1,000万円)=88万5,000円】
兄の贈与分(一般税率)【(890万円×40%−125万円×(500万円÷1,000万円)=115万5,000円】

【贈与税額:88万5,000円+115万5,000円=204万円】

贈与税が非課税となる8つのケースを紹介

これまで解説してきた贈与税ですが、じつは一定額が非課税になる特例がさまざまに設けられています。すでにふれた暦年課税の110万円や相続時精算課税の2,500万円に加えて、特例を使うことによって贈与税を払わなくていいケースもあるので、ぜひ活用したいものです。
以下の8つのケースを見ていくことにしますが、なかには相続税の対象になってしまうなど注意すべき点もあります。そうした注意点もあわせて解説していきます。

①1年間に110万円未満の贈与
②相続時精算課税制度を利用した贈与
③結婚・子育て資金の一括贈与
④教育資金の一括贈与
⑤住宅取得等資金の贈与
⑥夫婦間での居住用不動産・資金の贈与
⑦生活費の贈与
⑧障害者への贈与

①1年間に110万円未満の贈与

すでに解説したように、1年間(1月1日から12月31日まで)に受けた贈与財産の額が110万円以下の場合は、暦贈贈与の非課税枠が適用されるため、贈与税を支払う必要はありません。
ただし、毎年一定の時期に一定の額を贈与された場合は「定期贈与」とみなされ、非課税枠が認められるないこともあるので要注意です。また、贈与者が死亡した場合、それ以前の3年以内の贈与財産は110万円以下であっても相続税の課税対象となります。

②相続時精算課税制度を利用した贈与

相続時精算課税は「相続財産の前渡し」と考えるとわかりやすいでしょう。「将来の相続を待つのではなく、いま必要なお金を渡しておきたい」という要望に応えるものといえます。
この場合、2,500万円までは非課税で、この額に収まる財産なら贈与税を支払う必要はありません。ただし、あくまでも前渡しなので、相続が発生した時は相続税の課税対象となります。節税対策にはならないことも覚えておきたいことです。
注意点としては、非課税枠を使うことで贈与税を支払わなくてもいい場合でも申告は必要だということです。また、一度相続時精算課税を使うと、それ以降は暦年課税が使えなくなります。利用をする際にはよくよく考えたうえで決めたほうがいいでしょう。

③結婚・子育て資金の一括贈与

「結婚・子育て資金の一括贈与」とは、結婚や子育てに使うために贈与された資金に関しては1,000万円までは非課税になる特例です。導入されたのは平成27(2015)年で、比較的新しい制度といっていいでしょう。
非課税の対象となるのは、令和5(2023)年までに、20歳以上50歳未満であり、両親や祖父母から資金を贈与された人たちです。1,000万円までが非課税となりますが、結婚のための資金の非課税枠は300万円までです。

この特例を使う場合は受贈者が金融機関で「結婚・子育て資金口座」を開設する必要があります。金融機関を経由して税務署に届け出ることになるので、贈与された資金はこの口座で管理します。
必要に応じて引き出せますが、その際には結婚・子育て費用の領収書を金融機関に提出する決まりになっています。

④教育資金の一括贈与

「教育資金の一括贈与」とは教育に関するものに使うために贈与された資金に対する特例で、1,500万円までが非課税となります。具体的には入学金や授業料、学用品の購入などに用いる資金です。
対象となるのは令和5(2023)年までに、30歳未満であり、両親や祖父母から資金を贈与された人たちです。

この特例を使う場合は受贈者が金融機関で「教育資金口座」を開設する必要があります。金融機関を経由して税務署に届け出ることになるので、贈与された資金はこの口座で管理します。
必要に応じて引き出せますが、その際には教育費用の領収書を金融機関に提出する決まりになっています。

⑤住宅取得等資金の贈与

住宅の取得に関する贈与では「住宅取得等資金の非課税の特例」があります。この特例を使うと最大1,500万円までの贈与が非課税となります。
その非課税限度枠ですが、マイホームの購入時期や消費税率、住宅の性能(耐震性やバリアフリーなど)によって数字も変わってきます。以下の表を参考にしてください。

消費税が10%の住宅を取得した場合の非課税限度枠

住宅用家屋に係る契約の締結日 一般の住宅の場合 省エネ等の住宅の場合
2019年4月1日~2020年3月31日 2,500万円 3,000万円
2020年4月1日~2021年12月31日 1,000万円 1,500万円

上記以外の住宅を取得した場合(個人間で住宅を取得した場合など)の非課税限度枠

住宅用家屋に係る契約の締結日 一般の住宅の場合 省エネ等の住宅の場合
~2015年12月31日 1,000万円 1,500万円
2016年1月1日~2020年3月31日 700万円 1,200万円
2020年4月1日~2021年12月31日 500万円 1,000万円

なお、特例の適用を受けるには自分の両親や祖父母からの贈与であり、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であること、贈与を受けた年の所得金額が2,000万円以下であること、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに贈与された全額をあてて住宅を購入し住み始めることなどの条件があります。また、贈与税の申告もしなければなりません。

住宅取得等資金の特例に関する詳細は、下記の記事もご覧ください。

⑥夫婦間での居住用不動産・資金の贈与

「夫婦間での居住用不動産・資金の贈与」は「おしどり贈与」とも呼ばれています。20年以上連れ添った(事実婚ではなく婚姻関係がある)夫婦であれば、居住用の不動産あるいはその購入のための資金は2,000万円までが非課税になるという制度です。暦年課税との併用も可能で、2,110万円までを非課税とすることができます。

贈与は夫からでも妻からでもかまいません。贈与を受けた人は翌年3月15日までに該当する不動産で暮らす必要があります。なお、この特例を使うには贈与税の申告が必要です。
たとえ非課税枠の適用で贈与税を支払わなくてもいい場合でも申告はしてください。

⑦生活費の贈与

本来、生活費は贈与税の対象にはなりません。夫婦や親子、あるいは兄弟姉妹など家族の間で扶養(生活の面倒を見ること)に必要なお金に対して税金を課すことは適切なこととはいえないためです。したがって「生活費の贈与」は基本的に非課税です。
ただし、生活費として渡されたお金であっても、その使途によっては生活費と認められないケースもあります。たとえば、次のようなケースです。

  • 不動産や車、株などの有価証券の購入に使う
  • 学資保険など生命保険の保険料に使う
  • 余った生活費を預貯金に回している

このような場合は贈与税の対象となるので注意が必要です。

⑧障害者への贈与

障害者に贈与をする場合は、3,000万円または6,000万円までが非課税となります。
6,000万円までの非課税枠が適用されるのは「特別障害者」で、「特別障害者以外の特定障害者」に対しては3,000万円までの非課税枠が適用されます。

特別障害者

  • 児童相談所や知的障害者更生施設などで重度の知的障害者とされた障害者
  • 精神障害者保健福祉手帳の障害等級が1級の障害者
  • 身体障害者手帳が1級または2級の障害者 など

特別障害者以外の特定障害者

  • 児童相談所や知的障害者更生施設などで知的障害者とされた障害者
  • 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている障害者 など

この特例を使う場合は信託銀行に資金を信託し、金融機関を経由して税務署に届け出ます。信託口座の資金は受贈者となる障害者の生活費や医療費として定期的に払い出されることになります。

おわりに:贈与税の計算は自分でも簡単にできる!非課税制度を使って節税しよう

親から子へ、あるいは祖父母から孫へと財産が渡ると、それは「贈与」とみなされ、財産の額によっては「贈与税」の支払い義務が生じることがあります。贈与税は自己申告なので、贈与を受けた時には課税されるかどうかを確認し、支払い義務があると判明したら自身で税額を算出して申告を行わなければなりません。その際には、贈与税に設けられているさまざまな「非課税枠」も活用しましょう。

この記事では贈与税の計算方法と非課税が適用されるケースを解説してきました。ぜひお役立ていただきたいと思いますが、なかには自分で贈与税の計算をしたり非課税制度を活用した申告を行うことに不安を感じる方もいるかもしれません。そういう場合は専門知識が豊富な税理士への相談も検討してみてください。
税理士は申告のサポートをするだけではなく、有効なアドバイスもさまざまに提供してくれます。また、将来的に相続まで含めた節税対策の助言にも期待ができます。税理士の力を借りることで、より安心できる贈与税対策ができるといっていいでしょう。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修  天野 隆税理士法人レガシィ 代表

<総監修  天野 隆>税理士法人レガシィ 代表

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