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相続の知識

タックスヘイブンとは? 海外への資産移転で相続税・贈与税を軽減する方法

タックスヘイブン(Tax Haven)という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。収入や財産が多い方は日本では税金の負担がかなり大きくなるため、税金の安いタックスヘイブンと呼ばれる地域に会社を設立したり、資産移転したりすることで、節税できます。
今回は、タックスヘイブンの仕組みや利用方法、注意点等について説明します。

タックスヘイブンとは?

そもそも、タックスヘイブンとはどのような意味なのでしょうか。よく、タックスヘイブン(Tax Heaven/税金天国)と勘違いする方もいますが、そうではありません。タックスヘイブン(Tax Haven)は、直訳すると「税金(Tax)避難所(Haven)」という意味になります。転じて法人税や所得税、相続税等の租税がゼロか、もしくは限りなくゼロに近い国や地域、つまり「租税回避地」「低価税地域」のことを指します。
日本やその他、税金の高い国や地域ではかかるはずの法人税や源泉徴収税、相続税、贈与税等の租税がほとんどかからないため、節税対策として多国籍企業が拠点を置いたり、富裕層が資産移転したりする先がタックスヘイブンなのです。

なぜ節税できる? タックスヘイブンで租税を回避する仕組み

タックスヘイブンを通すことでなぜ節税になるのでしょうか。その仕組みを解説します。
先にも述べた通り、節税になるポイントは、タックスヘイブンの国や地域は租税がゼロか、もしくは限りなく低いことにあります。
例えば、タックスヘイブンに存在する主な税優遇には次のようなものがあります。
まずは「無税」。他国間との健全な投資や経済交流のための“租税条約”を締結しておらず、タックスヘイブンの中でも、税金が全額免除される国や地域のことを指し、俗に「タックスパラダイス」と呼ばれています。

次に、特定の会社や事業活動に限り、税制上の優遇措置をとっている国や地域。こちらは「タックスリゾート」と呼ばれており、例えば海運業のみ、金融業のみといったように、国・地域ごとに優遇される業種が違います。
そして「国外源泉所得には優遇措置を行う」とする国や地域は「タックスシェルター」と呼ばれています。

他にも、租税条約は提携しているが税率が低い等、さまざまな種類の税優遇措置をとっている国・地域があり、程度の差はあるもののすべてが「タックスヘイブン」です。
それらの国や地域で会社を設立し、資産移転することによって、日本をはじめとする税金の高い国では納めなければならない各種税金が免除される、もしくは低く抑えられます。また、タックスヘイブンに銀行口座を開設し、資産を移すことで、日本の銀行よりも高い利率が適用されることもあります。

タックスヘイブンにあたる国・地域の一覧

では、具体的にどのような国や地域がタックスヘイブンにあたるのでしょうか。
基本的に、産業や資産・資源が少ない発展途上国や、小さな国や地域がタックスヘイブン国となっています。税制を優遇することで海外の企業が集まった結果、そこに雇用が生まれたり、会社を設立する際に生じる代行サービス業務や銀行業務等の利益が得られたりするためです。そのため、節税しようとする企業や個人だけでなく、タックスヘイブン国や地域にもメリットがあるのです。
現在タックスヘイブンに該当する国や地域は50ほどあると言われています。その例を一覧で紹介しましょう。

①無税の「タックスパラダイス」
バハマ、バミューダ、バーレーン、ケイマン諸島、ブリティッシュ・バージン・アイランド、マーシャル諸島等

②特定の会社や事業活動に限り優遇される「タックスリゾート」
オランダ、イギリス、ルクセンブルク、リヒテンシュタイン、アイルランド等

③国外で生じた所得が非課税になる「タックスシェルター」
パナマ、マレーシア、リベリア、コスタリカ等

④低税率国(法人税が低い国、地域)
香港、マカオ、台湾、シンガポール、アイルランド、キプロス、モンテネグロ等

最後の「④低税率国」は「自国(主に先進諸国)と比べて」という相対的な基準です。

タックスヘイブンで節税を図ることに問題はない?

2016年、パナマの法律事務所が作成した「パナマ文書」が流出したことで、世界各国の首脳や富豪のタックスヘイブンに関する取引が明るみになり、一時タックスヘイブンにはネガティブなイメージがつきまといました。国民が納税で重い負担をしている一方、国の上層部がタックスヘイブンで税金を逃れていることに対する批判や、グレーな方法で税金逃れをする超富裕層に対する不満もあるでしょう。時に、反社会的勢力のマネーロンダリングに利用されることもあります。
ただし、各国における法律の範囲内で、正当に行われているのであれば違法性はありません。

タックスヘイブン対策税制により租税回避は難しくなりつつある

日本と相手のタックスヘイブン地域の法律に基づいていれば、合法であり、正当な節税となります。しかし、2017年の税制改正によってタックスヘイブンを利用した租税回避を規制する「タックスヘイブン対策税制」の適用範囲が広がり、より複雑になりました。

例えば、タックスヘイブン地域で法人登記はされていても、実際に現地で事業活動を行っていない、いわゆる「ペーパーカンパニー」についてです。以前は特定の名目でペーパーカンパニーの売り上げを計上することで、大幅に節税できるケースもありました。しかし、現在はペーパーカンパニーを含む「特定外国関係会社等」についても規制の範囲が広がり、その対象となると、すべての所得を合算して課税されてしまいます。
他にも細かい規制があり、租税回避は年々難しくなってきています。タックスヘイブン対策税制の内容を深く知ることが、合法的にタックスヘイブンを利用する上で非常に重要になるのです。

タックスヘイブン対策税制の対象となる“ペーパーカンパニー”の判定方法

では、どのような企業がペーパーカンパニーと判定され、タックスヘイブン対策税制の対象になるのでしょうか。具体的に以下のような場合が挙げられます。

  • 法人の登記はしているものの、事務所が存在しない
  • 金融資産の保有を目的とし、現地で事業を行っていない

上記に該当しなかった場合でも、現地で実際に経済活動を行っているかの基準も含めて判断されます。

  • どの国でも営める事業かどうかの「事業基準」
  • 本店所在国または地域に事業に必要な事務所があるかの「実態基準」
  • 本店所在国または地域で自ら事業の管理が行っているかの「管理支配基準」
  • 主な事業を本店所在国または地域で行っているかの「所在地国基準」

これらと、本店所在国または地域での税率等を総合的に判断して、一部の利益、もしくはすべての利益が日本での所得に合算されることになります。

タックスヘイブンの利用で相続税の支払いを回避できる条件

日本では財産を自分の子に相続したり、贈与したりする場合、最大で55%もの相続税や贈与税がかかってきます。タックスヘイブンを利用することで、所得税だけでなく相続税も回避できる場合があります。ここでは、相続税が回避できる条件を説明します。

日本国内に居住していない「制限納税義務者」であること

相続人・被相続人ともに「制限納税義務者」となっていれば、相続時に課税されるのは日本の財産のみとなります。さて、制限納税義務者と認定されるにはどのような条件が必要なのでしょうか。
それは、資産を持っている本人と相続させる相手のすべてが、10年以上外国に在住していることです。以前は5年以上の居住で認められましたが、2017年の税制改正で10年以上の居住が必要であると厳格化されました。そのため、相続直前に外国に移住しても相続税回避策は使えません。
10年以上海外に居住した場合でも、日本国内の財産に対しては相続税がかかります。現金は事前に送金しておく等の対策ができますが、不動産は売却する際に譲渡所得税がかかりますので、相続税とどちらの方が安いか比較する必要があります。

また、ここで一つ注意しておきたい点があります。その年の12月31日時点で、海外に5,000万円以上の財産がある場合は、翌年の3月15日までに国税庁に国外財務調査書を提出することが義務付けられています。これを拒否もしくは申告漏れがあった場合は、1年以下の懲役か50万円以下の罰金が科せられますので、十分注意してください。
これらの条件は日本国籍者の場合で、外国籍者は条件が異なります。
参考:国税庁ホームページ『相続人が外国に居住しているとき』

ただし、日本からの出国時にかかる所得税がネックに

制限納税義務者の条件をこれから満たそうとする場合も注意点があります。
2015年度の税制改正によって「国外転出時課税制度」が創設されました。これはどのような制度かというと、日本国外に転出をする居住者(日本に住居、居所を有していない)が、1億円以上の有価証券等の対象資産を所有している場合、国外転出時に資産の譲渡等があったものとみなされ、含み益に所得税及び復興特別所得税が課税されるのです。なお、この有価証券には非上場株式(いわゆる自社株)も含まれます。

例えば、1億円以下で買った株式でも、値上がりして1億円を超えた場合は課税されます。国外転出予定日の3か月前の価格が適用されるため、ぎりぎりで超えてしまいそうな場合等は、余裕があれば1億円を超えないように調整するのもよいでしょう。

参考:国税庁ホームページ『国外転出時課税制度』

日本に居住しながらタックスヘイブンで相続税・贈与税を軽減する方法

日本に住居を持たず、タックスヘイブンの国や地域に10年以上居住するというのは、現実的に難しいという方も多いでしょう。しかし、日本に居住しながらタックスヘイブンで相続税・贈与税を軽減できる方法があります。

「一時所得」の枠で財産の生前贈与を行う

タックスヘイブンに設立した法人を通して、個人に生前贈与を行うことで、贈与税の課税を回避する方法があります。具体的な流れを説明しましょう。
まず、タックスヘイブンに会社を設立し、個人から会社に資産を移します。その後会社から親族へ贈与します。この方法を日本で行ったとしても、寄付金という扱いになり法人税が発生しますが、非課税のタックスヘイブンであれば法人税はかかりません。
ここで注意したい点があります。個人から会社に資産移転しただけでは、その会社の株式などを子が相続することになってしまいます。会社の株式に対しては相続税が発生しますので、必ず、会社から親族へ贈与することが重要です。
ただし、贈与された個人に対して、贈与税はかからなくても「一時所得の所得税等」が発生します。一時所得の所得税は次の計算式で求めることができます。

一時所得の計算方法

一時所得=総収入金額-支出金額-特別控除額(最高50万円)

さらに、他の所得と合算する場合は、この計算方法で産出された一時所得の2分の1をかけます。この「2分の1」がポイントです。例えば、10億円を直接贈与された場合、贈与税の最高税率55%をかけて、5.5億円ほどの贈与税がかかります。しかし、会社を通して贈与することで、一時所得に2分の1がかけられるため、課税対象は最大5億円となります(他に収入がなかった場合)。
ここに、所得税+住民税の最高税率55%をかけると一時所得の所得税は2.75億円となり、直接贈与した場合と比べて半分の課税になるのです。
出典:国税庁ホームページ『一時所得』

おわりに:租税回避行為の指摘を受けないためには専門家へ相談を

これまで紹介した方法は、もちろん日本の税法には触れません。しかし注意しなければならない点も多くあります。例えば、タックスヘイブンに設立した個人に贈与を行う会社が同族法人等の場合、給与所得等とみなされ、一時所得以外の所得として課税される恐れがあります。
さらに、少しでも贈与行為に不審な点があると判断された場合には、一連の計算が否認される可能性もありますし、違法性はなくとも、税務署から「租税回避行為」と指摘されるリスクもあります。
このように、タックスヘイブンの利用には複雑なルールがつきまといます。税務署から細かい部分を指摘されないためにも、実行する前には税理士等の専門家に相談しましょう。

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タックスヘイブンをはじめとして様々な節税方法の引き出しがあります。相続税を少しでも減らして資産を有効活用したいという方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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