相続の知識

連れ子に相続権はない?相続させたいorさせたくない場合の注意点を解説

配偶者の連れ子に遺産を相続する権利はあるのか、遺産を渡したいときはどうすればいいのか、といった疑問や悩みをもつ方は意外と多いのではないでしょうか。
この記事では、連れ子の相続権をはじめ、連れ子に相続させたい・させたくない場合のそれぞれの方法、連れ子の相続における注意点などについて解説します。

連れ子に相続権はない

連れ子とは、前の配偶者との間に誕生した子がいる状態で再婚した場合に、子の実親ではない配偶者側から見た「再婚相手の子」の一般的な呼び方です。再婚をして戸籍上の夫婦関係が結ばれたとしても、再婚相手の連れ子と戸籍上の親子関係が自動的に結ばれるわけではないため、その連れ子に財産を相続する権利はありません。
一方、再婚後に相手との間に生まれた子どもは、当たり前ですが戸籍上の親子関係が成立するため、その子ども(実子)には相続権が発生します。

連れ子に相続させる方法

「戸籍上は親子関係ではない」とは言っても連れ子に愛情を注いで育てるケースは多く、連れ子に財産を相続させたいと考える方も少なくありません。そのような場合には、以下3つの方法で、連れ子に財産を残すことが可能です。

1.養子縁組をする

養子縁組とは、血のつながりはないが親子関係にある者同士が所定の手続きをすることで法律上、正式な親子関係が結ばれる制度です。これにより再婚相手の連れ子であっても養子縁組によって法律上の親子とみなされるようになるため、連れ子に相続権を与えられます。

養子縁組の種類には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つがあります。大きな違いは、養子と実父母との親族関係が、手続き後も続くかどうかです。前者は手続き後も、養子にした連れ子とその実父母との間に親子関係が継続されますが、後者は終了します。これは特別養子縁組が、子どもの福祉・利益を図ることを目的としているため、実親との関係を断ち、育ての親と新たな親子関係を結ぶ制度だからです。

また、養子にできる人数は民法上では無制限であるものの、相続税法上で基礎控除額の計算に用いられる「法定相続人」に認められる数には限りがあるため、注意が必要です。
例えば亡くなった方に実子が1人、養子が2人いる場合、相続人は実子と養子全員合わせた3人となりますが、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)を計算する際には、実子がいる場合には養子は1人、実子がいない場合は2人までしか法定相続人の数に含めることができません。つまり、この場合の相続税の基礎控除額は【3,000万円+600万円×2(実子1+養子1)=4,200万円】となります。

ここまでは一般的な税法上の養子の数の話になりますが、連れ子を養子にする場合は税法上の数の制限が無く、養子縁組後も実子の数に含まれます。例えば子の数が実子2人、連れ子の養子3人、他に養子2人だった場合、税務上の法定相続人の数は、実子5+養子1人=6人を含めることができます。

相続税について、詳しくは以下の記事もご覧ください。

2.遺言書を作成する

連れ子に遺産を渡したい旨の遺言書を被相続人が生前に作成しておけば、連れ子にも財産を引き継がせることができます。ただし、この場合、厳密には「相続」ではなく「遺贈(いぞう)」といいます。遺贈とは、遺言によって自身の財産を贈与することです。遺贈は、相続人へも、相続権を有さない相手に対しても行えます。

そのため、遺言書で相続権を有さない人に財産を渡す際には「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載するのが基本です。表現によっては故人の意図せぬ結果になる恐れがあるため、書く際には注意が必要です。また遺言書を作成するにあたり、遺留分を侵害しないよう配慮しましょう。実子の遺留分を侵害すると、そこからトラブルに発展するおそれがあります。

遺言には「自筆証書遺言」もしくは「公正証書遺言」が選ばれることが一般的です。前者は証人不要でいつでも作成でき、費用も用紙代・インク代のみで済みます。しかし正しく作成しないと法的に無効になる可能性があり、内容の改ざんや紛失のリスクもあります。一方、後者は証人2名が立ち会いのもと、公証人が作成する遺言です。費用はかかるものの、公証役場で安全に保管されます。また公証人が関与するため、無効になる心配はほぼありません。

3.生前贈与をする

自分の死後に財産を遺す「相続」とは異なりますが、生前贈与の制度を利用すれば自身が生きているうちに連れ子へ財産を渡せます。生前贈与とは、存命中に他者へ財産を無償で贈与することです。故人の財産を誰が相続するか(法定相続人)は法律で決まっていますが、生前贈与であれば誰に財産を与えるかに決まりはありません。

ただし、贈与には年間110万円という贈与税の基礎控除のハードルが設定されています。年間に贈与で受け取る金額が110万円までなら課税されませんが、それ以上の贈与を行うと贈与税が発生するので注意しましょう。また贈与税がかかるのは、財産を受け取った側です。父と母から同じ年に110万円ずつ贈与された場合、子は220万円を受け取ることになり、110万円の基礎控除を超えているため、贈与税を支払う必要があります。

生前贈与をする際には、贈与契約書の作成が一般的です。贈与自体は双方の合意があれば書面にする必要はないものの、税務署への証明や他の相続人とのトラブルを回避するためにも、生前贈与があった事実を書面で残しておきましょう。

【番外編】連れ子から請求できる「特別寄与料」

親側ではなく、連れ子側から「遺産を相続したい」と主張するときに利用できる制度もあります。特別寄与料とは、生前の被相続人に無償で尽くすことで、相続人へ寄与度に応じた金銭を請求できる制度です。例えば義理の親がまだ生きているときに、連れ子が介護や看病などを無償で行っていた場合、相続人に対して遺産の一部を請求できる可能性があります。

ただし、特別寄与料を請求するには定められている要件を満たさないと認められません。無償での労務(介護や看病等)を提供した、無償の労務によって被相続人の出費(ヘルパー代・入院代等)を抑えた、などの要件を満たす必要があります。有償で行っていた場合は、請求できません。

特別寄与料の請求方法は、連れ子自身が相続人と交渉する方法と、家庭裁判所へ調停を申し立てる方法があります。一般的に相続人との交渉でスムーズに話がまとまれば問題ありませんが、そうでない場合には処分調停を申し立てます。なお、特別寄与料を請求できるのは、相続の開始および相続人を知ってから6カ月と定められているため、早めの対処が必要です。

連れ子の相続における注意点

ここまで相続権がない連れ子に財産を相続させる、贈与する方法などを見てきましたが、通常の法定相続人への相続と違い、いくつか注意点もあります。確認しておきましょう。

相続税が2割加算される

一親等の血族でない人へ遺産を渡す場合、相続税が2割加算されます。そのため、養子縁組をしないまま遺言によって連れ子に財産を渡す場合、相続税が2割加算されるので注意が必要です。
2割加算の制度は連れ子だけではなく、兄弟姉妹が相続人となった場合にもかかります。詳しくは以下の記事もご覧ください。

数次相続の場合は養子縁組なしで相続権が与えられる

連れ子にはそのままだと再婚相手の相続権はありませんが、まれなケースで相続権が与えられる場合があります。それは「数次相続(すでに起きている相続の手続き途中に相続人の1人が亡くなり、次の相続が起きること)」が発生した場合です。

例えば、妻に連れ子がいる状態で夫と再婚し、夫が亡くなったあと、短期間で続けて妻も亡くなった場合、夫と連れ子の間で養子縁組をしていなくても、連れ子に夫の財産が渡ります。これは本来、夫の遺産を相続するはずだった連れ子の実親(妻)が亡くなることで、妻の相続権が連れ子へシフトするからです。もし夫に元妻との実子がいた場合、再婚相手の妻と元妻との実子に相続権があるため、連れ子へ渡る相続分は再婚相手の妻分と同等になります。

数次相続については、以下の記事もご覧ください。

実子との相続トラブルが起きやすい

連れ子の遺産相続(遺贈)においては、前述したような元妻・元夫との間に実子がいた場合など、他の相続人とのトラブルにも気を付けなければなりません。血縁関係がない子どもに遺産を渡すことを、面白くないと考える実子やその親などが相続人にいた場合、トラブルに発展するおそれがあります。トラブルを防ぐためには、再婚した親側が、それぞれの実子・養子との関係性について、事前に配慮しておくことが必要でしょう。

【Q&A】連れ子の相続に関するよくある質問

Q.連れ子に相続させたくない場合はどうすればいい?

連れ子には相続権がないため、養子縁組や遺言を書くことなどをしなければ相続は発生しません。すでに養子縁組をしているものの、連れ子に遺産を渡したくない場合には、離縁手続きが必要です。
離縁手続きは、養親と養子の話し合いで合意できれば特に問題ないですが、合意できずに調停や訴訟する場合、相応の理由がなければ、離縁が認められない可能性があります。

そのような場合には遺言書を作成し、連れ子へ遺産を渡さない内容にするのが有効です。ただし、養子にも遺留分の相続が認められているため、1円も渡したくないというのは不可能です。

遺留分については、以下の記事もご覧ください。

Q.連れ子に相続させる場合の相続分はどれくらい?

養子縁組をしているのであれば、実子と同じ扱いになるため相続分も実子と同じです。そして遺言書がなければ、法定相続分を目安に遺産分割することがほとんどです。
例えば配偶者と子ども1人が相続するのなら、それぞれ1/2を目安に遺産分割します。そのため、配偶者と実子2人、養子1人であれば、配偶者1/2、実子2人と養子1人にはそれぞれ1/6を目安に遺産分割します。

遺言書を作成するケースでは、遺産をどれくらい渡したいか自由に設定できます。そのため、連れ子にすべての財産を譲る、とすることも可能ではあるものの、現実的には遺留分が存在するため困難です。

おわりに:連れ子への相続には事前準備が必要

連れ子に相続権はないものの、養子縁組や遺言書の作成、生前贈与などといった方法で連れ子にも財産を渡せます。ただし、血縁関係がない子どもに遺産を渡すことを面白くないと考える相続人がいる場合、トラブルに発展するおそれがあります。安心して連れ子に相続させるためには、養子縁組などの法的な手続きがおすすめです。

相続手続きで分からないことは専門家へ相談するのがおすすめです。税理士法人レガシィは長きにわたって相続専門の税理士法人として対応しています。相続税でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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