相続の知識

おくやみコーナーとは?できることや導入状況について解説

おくやみコーナーは、全国の自治体で導入が進む行政サービスであり、死亡・相続に関する公的な手続きを効率的に行うことを目的としています。本記事では、おくやみコーナー導入の現状や利用法・注意点に加え、死亡・相続に関する必要な手続きも解説します。

おくやみコーナーとは

おくやみコーナーとは「おくやみコーナー」とは、死亡や相続に関する役所手続きの案内や申請書の作成サポート、各種証明書の取得サポートなどを行う総合窓口です。内閣官房IT総合戦略室(CIO、現在はデジタル庁の発足に伴い廃止)におけるデジタル・ガバメント実行計画の一環として推進された「死亡・相続ワンストップサービス」であり、全国の自治体で導入が進んでいます。

家族の死亡により、遺族はさまざまな手続きを行わなければなりませんが、相続は頻繁に起こることではないため、その煩雑さにより大きな負担が生じます。そもそもどのような手続きを行えばよいのかなど、分からない点も多いはずです。またいざ役所にいっても、各手続きで担当する課の窓口が異なり、手続きごとにどの窓口が担当かを調べなければなりません。

こうした遺族の疑問や負担を解決し、死亡に伴い発生する手続きをワンストップで支援するサービスが「おくやみコーナー」です。現在設置している多くの自治体がこの名称を使用していますが、自治体によっては同様のサービスを別の名称で設置している場合もあります。

政府によるガイドラインの設置

政府は令和2年(2020年)5月より、おくやみコーナー設置に関する「おくやみコーナー設置ガイドライン」および「おくやみコーナー設置自治体支援ナビ(おくやみコーナーを支援するソフトウェア)」の提供を開始しました。
しかし、おくやみコーナーの設置には、まず窓口を超えて案内できるサポート要員の教育が必要なこと、また支援ナビはデータベースの構築に専門性が必要であること、自治体ごとにカスタマイズしなければならないことなどの課題も多くあります。支援ナビは導入せずに、独自でおくやみコーナーの仕組みを最適化している自治体もあるようです。

おくやみコーナーの導入状況

おくやみコーナーを設置する自治体は年々増加の一途をたどり、政府CIOの資料によると、平成30年度の6自治体から、令和2年度は169自治体にまで増えています。一方、設置率で見てみると全国1,728の自治体がある中で、設置済みの自治体は9.8%とまだまだ少ないのが現状です。ですが、今後も全国で拡大していくことが予想されます。

出典:政府CIOポータル『死亡・相続ワンストップサービスの推進』

東京都23区内の設置自治体一覧 ※2024年6月現在

おくやみコーナーの設置はここ数年で急速に増加しています。2024年6月現在でおくやみコーナーを設置している東京都23区内の自治体一覧は、以下の通りです。

足立区 × 墨田区
荒川区 世田谷区 ×
板橋区 台東区 ×
江戸川区 中央区
※Web案内『手続きナビ』を導入
大田区 千代田区
※Web案内『手続きガイド』を導入
葛飾区 豊島区
北区 × 中野区
江東区 × 練馬区
品川区 文京区
渋谷区 × 港区
新宿区 × 目黒区
杉並区


※2024年9月開始予定

   

※本一覧は2024年6月18日時点で各自治体の公式サイトの情報より設置が確認できた区を参照しています。

おくやみコーナーと同様のサービスが荒川区は「届出サポートデスク」、港区は「ご遺族支援コーナー」という名称で設置されているようです。現在は未設置でも、今後はますます増えてくるのではないでしょうか。

おくやみコーナーでできる主な手続き

おくやみコーナーでは、公的な手続きがワンストップで行えます。自治体により異なることがありますが、たとえば以下のような手続きが可能です。

  • 世帯主変更届の申請
  • 印鑑登録証の返還、廃棄
  • 住民基本台帳カード、マイナンバーカードの返還
  • 被保険者証の返還(国民健康保険、後期高齢者医療保険など)
  • 身体障害者手帳、愛の手帳等の返還
  • 葬祭費の申請
  • 高額療養費の申請

自治体や手続き内容によって、おくやみコーナーで申請も同時にできるケースと、説明の上で各窓口へ申請をしに行くケースがあるようです。詳しくは該当の自治体へ問い合わせてみてください。

おくやみコーナーを利用する流れ

おくやみコーナーの概要が分かったところで、実際に利用する場合の流れについて見ていきましょう。大まかな流れは以下の通りです。

  1. 死亡届を提出して「おくやみハンドブック」をもらう
  2. おくやみコーナーの予約をとる
  3. 必要な手続きのヒアリングを受ける
  4. 申請書の作成と手続きをする

1.死亡届を提出して「おくやみハンドブック」をもらう

死亡届を提出したら、「おくやみハンドブック」をもらいましょう。おくやみハンドブックには亡くなった際に必要な手続きや今後の流れ、申請先が分かりやすくまとまっています。おくやみコーナーは設置していない自治体でも、ハンドブックのみ先に導入している自治体もあります。
おくやみコーナーの利用案内やその他の相続手続きについての記載がある場合も多いので、しっかり目を通しておきましょう。
このハンドブックは、死亡届の提出時に渡される場合や葬儀会社を通じて渡される場合があるほか、自治体のサイトから入手する方法もあります。

その前に死亡届について確認したい!という方は、下記の記事もご覧ください。

2.おくやみコーナーの予約をとる

おくやみコーナーはほとんどの自治体で「原則予約制」をとっています。必ず予約をしないといけないわけではありませんが、予約ありの場合と比べて手続きにかかる時間が長くなりますので、遺族の方々にとっても予約をしたほうが良いでしょう。
予約方法は前述のおくやみハンドブックに記載があるほか、自治体のHP等でも案内があります。

3.必要な手続きのヒアリングを受ける

おくやみコーナー設置自治体支援ナビが導入されている自治体であれば、ワンストップでのサポートを可能にするヒアリングを受けることができます。遺族は自治体の職員から約30項目の質問に答えることで、個別の状況に応じた手続きが明確になります。手続きにかける時間の短縮や精神的負担の軽減にも役立ちます。

4.申請書の作成と手続きをする

必要な手続きが明確になったら、実際の手続きに移ります。おくやみコーナーでは、申請書の作成サポートや各種証明書の取得サポートなども行っています。また、庁内で連携しているため、簡単な申請であればまとめて行うことが可能です。おくやみコーナーで受付が難しい手続きのみ個別の担当窓口に行く必要がありますが、従来、各種窓口を行き来して行っていた手続きがワンストップで行えることから、遺族の負担は大きく軽減します。

おくやみコーナー以外で必要な手続き

ここまで便利なおくやみコーナーの内容をご紹介しましたが、役所以外で必要になる手続きも多々あります。ここでは身近な人が死亡した際に行う、死亡・相続に関する主な手続きについて解説します。

死亡に関する手続き

死亡届以外にも、年金や保険などの公的なものや銀行関連、電気・ガスなどのインフラ、勤務先、学校関係など、必要な手続きは多岐に渡ります。

例えば、主に必要な手続きは以下の通りです。

  • 年金受給の停止
  • 公共料金等の名義変更、解約
  • クレジットカードの利用停止
  • パスポートの失効
  • スマートフォンの解約
  • 生命保険金の受取り

これらの手続きを忘れてしまうと、余分な費用が発生してしまう場合もあるので、優先順位を意識しながら取り組みましょう。

相続に関する手続き

亡くなった方の遺産相続に関する手続きは主に「遺産分割協議のために行う手続き」と「遺産分割協議後に行う手続き」の2つが必要です。

遺産分割協議に必要な手続き

  • 相続人や相続財産の調査
  • 不動産登記情報の確認
  • 遺言書の確認

など

遺産分割協議後に必要な手続き

  • 亡くなった方から相続する方への所有権移転登記(相続登記)
  • 亡くなった方の預金口座の名義変更、解約
  • 相続税の申告

など

なお相続税の申告は相続発生から10ヶ月以内の期限があるため、遺産分割協議の成立前に期限をむかえてしまう場合は、いったん期限内に未分割での相続税の申告をすると良いでしょう。未分割での申告については、信頼できる税理士もしくは相続を専門とする税理士に相談しましょう。

遺産相続で必要な手続き・流れについて、詳しくは下記の記事もご覧ください。

おわりに:相続税は専門税理士に相談を

おくやみコーナーは、身近な人が亡くなった際の手続きをワンストップで行える行政サービスです。利用することで、死亡や相続に関する煩雑な手続きがスムーズに行えることから、遺族の負担軽減に役立ちます。
一方、行政以外で相続に必要な手続きも多々あります。相続手続きに関して不明点がある場合は、専門家に相談することもおすすめです。

相続専門の税理士法人レガシィは、相続税の申告実績累計1.5万件以上のプロフェッショナル集団です。特に不動産の財産評価に強みがあり、節税対策もお手伝いできることでしょう。
また相続税申告だけではなく、付随する相続手続きについても代行可能です。もし自分で対応が難しそうな場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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