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相続の知識

嫡出子とは?非嫡出子との違いや認知方法、相続分についても解説

相続において、嫡出子は非嫡出子と比べて何が違うのでしょうか。この記事では、嫡出子と非嫡出子の具体的な相違点や、関連する制度について解説します。嫡出子の種類や、認知の概要、非嫡出子はどういう不利益を受けるかもしれないのか、正しい知識を得ましょう。

嫡出子とは? 非嫡出子との違い

親子関係は、生物学上の実子以外に、養子縁組や法律上の結婚によっても成立します。
嫡出子とは、結婚した夫婦の間に生まれた血のつながりがある子どもです(なお、この記事における「結婚」は、民法上の婚姻を意味します)。戸籍には、夫婦の子として記載されます。

非嫡出子は結婚していない男女から生まれた子どもです。例を挙げると、事実婚などの内縁関係や、不倫関係などです。詳細は後述しますが、じつは法定相続分について見ると、嫡出子と非嫡出子の扱いは変わりません。ただし、非嫡出子にはさまざまなデメリットが存在することを押さえておきましょう。

嫡出推定制度について

推定される嫡出子出産する母親と子どもの親子関係は明白ですが、生まれたのが必ず父親の子どもとは限りません。
しかし、すべての子どもに血縁関係の証明が義務化されれば、大変な手間がかかります。また、生まれて間もない子どもの権利や利益を守るのは困難になります。

嫡出推定制度とは、早い段階で法律上の父子関係を安定させ、家庭の平和を保つための制度です。
この制度により、結婚期間に妻が妊娠して生まれた子どもは、生まれた時点から嫡出子としての扱いを受けます。この制度により、嫡出推定が及ぶならば、実際には血のつながりがない場合にも法律上の父親の子どもとされます。

民法772条では、以下の場合において嫡出推定を受けることを定めています。

結婚期間に妻が懐胎(妊娠)した場合

結婚期間に妻が懐胎した場合は、夫の子どもとしての扱いを受けます。

婚姻届けを提出した日から200日後に子どもが生まれた場合

結婚成立の翌日から数え始めて200日までに生まれた子どもには、嫡出推定は及びません。201日以降に生まれた子どもは、結婚中に妻が懐胎したとみなされるため、夫の子どもとして扱われます。

結婚解消・取り消しがあった日から300日以内に子どもが生まれた場合

離婚の翌日を1日目として数えて、300日以内に子どもが生まれた場合は、嫡出推定が及びます。
生まれた子どもは、結婚期間に妻が懐胎していたと考えられるからです。この規定によって、妻が離婚前に夫以外の男性との子どもを懐胎しても、法律上の父親は、前の夫になります。
一方、離婚後に別の男性との子どもを懐胎しても、早産で生まれる場合があります。このようなケースでは、医師による「懐胎時期に関する証明書」があれば、法律上の父親を前の夫にしない出生届が可能です。

嫡出子の種類

嫡出子とひとことで言っても、全部で以下の3種類に分けられます。

  1. 推定される嫡出子
  2. 推定されない嫡出子
  3. 推定の及ばない嫡出子

それぞれの嫡出子について解説していきます。

1.推定される嫡出子

「推定される嫡出子」とは、結婚している男女間に生まれた子どもです。前述の通り、該当するのは以下の3つです。

  • 結婚期間に妻が懐胎した子ども
  • 婚姻届けを提出した日から200日後に生まれた子ども
  • 結婚解消・取り消しがあった日から300日以内に生まれた子ども

上記のケースでは、調停・裁判を起こすことによって、嫡出推定を否定、あるいは取り消せるかもしれません。

嫡出否認の調停を申し立てられるのは以下の人とされています。

  • 夫の成年後見人,成年後見監督人
  • その子どものために相続権を害される者その他夫の三親等内の血族(夫が子どもの出生前又は否認の訴えを提起できる期間内に死亡したとき)

調停で解決しなかった場合、嫡出否認の訴えを提起できます。提起できるのは父親だけであり、妻や子どもによる申し立てはできません。嫡出否認には期限があり、子どもの出生を知った日から1年以内と定められています。

出典:裁判所『嫡出否認調停』

2.推定されない嫡出子

結婚している男女間に生まれたけれど、夫の子どもであるという推定がされない子どもが「推定されない嫡出子」です。例として挙げられるのは、交際している男女が女性の妊娠後に結婚する、いわゆる「授かり婚」です。婚姻届の提出前にすでに妊娠しており、結婚後200日以内に子どもが生まれた場合は夫の子どもであるとは扱われないことになります。

しかし、男女が民法上の結婚をしていれば出生届は受理され、嫡出子として扱われます。もし後で父子関係に疑問が生じ、父子関係を取り消したい場合には、裁判所への申し立てが必要になります。家庭裁判所に、親子関係不存在確認調停を申し立てて、合意を形成できなければ訴訟を提起します。

調停・裁判を申し立てられるのは以下の人です。

  • 子ども
  • (戸籍上の)父親
  • 母親
  • 親子関係について直接身分上利害関係を有する第三者

嫡出否認の期限は父親が子どもの出生を知ってから1年以内ですが、親子関係不存在の訴えには期限がなく、いつでも申し立てられます。

3.推定の及ばない嫡出子

嫡出推定の期間内に生まれたものの、父子関係が不明確な子どもが「推定の及ばない嫡出子」です。例えば、父親が長期の海外出張をしている間に妻が懐胎した場合や、結婚解消の数年前から別居し、夫婦の実態が失われていた場合などです。このような事例では、妻が妊娠したのは夫の子どもではないことは明白ですが、夫婦が民法上の結婚をしていれば、子どもは嫡出子としての地位・身分を得られます。
父子関係を否定するには、嫡出否認の調停・訴訟、もしくは親子関係不存在確認調停・訴訟を申し立てなければなりません。

【2013年改正】嫡出子と非嫡出子の相続割合は平等に

嫡出子と非嫡出子では、相続割合はどのように異なるのでしょうか。
かつては、非嫡出子に認められる相続割合は嫡出子の半分でした。出生時の子どもの戸籍や親の関係は、子どもに責任がないにもかかわらず、相続割合で不平等が生じます。この不平等が違憲であると指摘され、さまざまな裁判が行われました。
憲法14条で定めている法の下の平等に反しているとして、2013年に民法の一部が改正され、非嫡出子の相続割合の規定が削除されました。この改正により、非嫡出子の相続割合は嫡出子と平等になりました。

仮にある男性が死亡したと仮定してみましょう。
Aさんには配偶者との間に子どもが1人いましたが、じつは別で愛人との間にも子どもが1人いました。
Aさんが亡くなった際の遺産総額が2,400万円だった場合、民法改正前と改正後では、子どもの相続分は下記のように異なります。

改正前

配偶者:相続割合1/2、相続額1,200万円
嫡出子:相続割合1/3、相続額800万円
非嫡出子:相続割合1/6、相続額400万円

改正後

配偶者:相続割合1/2、相続額1,200万円
嫡出子:相続割合1/4、相続額600万円
非嫡出子:相続割合1/4、相続額600万円

ただし、非嫡出子が相続権を得られるのは「父親が認知している場合」のみです。例えばAさんが愛人との子ができたことを知らされておらず(認知しておらず)、生涯を終えた場合は愛人との子である非嫡出子に相続する権利がないため、戸籍上の配偶者と子(嫡出子)のみで遺産を相続することになります。
「じゃあ愛人との子がいることを知っていればいいの?」と考えるのも最もですが、認知というものはそれほど簡単なものではないのです。次の章で詳しく見ていきます。

子の「認知」とは

認知とは、結婚していない男女の間に生まれた子どもに対して、父親(まれに母親)が自分の子どもであると認めることです。母親は自ら子を産んでいるので、認知となる場合は捨て子のような特殊な例のみで、ほとんどの認知は父親が行います。

認知は、法律上の父子関係を生じさせるために必要な手続きです。非嫡出子は、認知によって相続権が発生し、養育費を請求できるようになります。戸籍の記載も変わりますし、父親が希望すれば子どもとの面会が可能になります。認知の手続きは、自動的には行われません。市区町村の役所に認知届と必要書類を提出する必要があります。

認知の種類

認知は、大きく分けて2種類に分けられます。

  1. 任意認知
  2. 強制認知(裁判認知)

それぞれの認知の概要や手続きについて、ポイントを押さえましょう。

1.任意認知

父親が自分の意志で非嫡出子を認知するのが「任意認知」です。任意認知は父親のみで進められるため、母親または未成年の子どもの同意は必要ありません(ただし子が成人以上の場合は、本人の承諾が必要です)。なお、父親側が未成年、もしくは成年被後見人であっても認知が可能(民法780条)です。

任意認知の手続きには、以下の書類が必要です。

  • 認知届書
  • 届出人(父親)の印鑑と本人確認書類
  • 認知する父親の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
  • 認知される子の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)(届出をする市区町村に本籍がない場合)

子どもが成人している場合は、子本人の承諾書が必要です。
民法785条により、認知をした後には、基本的に認知の取り消しは認められません。

また父親側が主体的にする認知には、以下のような種類もあります。

胎児認知

子が生まれる前、つまり胎児の時点での認知(胎児認知)をすることも可能です。ただし胎児認知には、胎児の母親の承諾と承諾書が必要であり、届出をするのは母親の本籍地になります。

死亡した子の認知

父親よりも子どもが先に死亡した場合に、死亡した子の認知も可能ですが、認められるのは子どもに直系卑属(子・孫など)がいる場合のみです。

遺言による認知

遺言認知とは、父親の死後、遺言によって子を認知する方法です。事情があって父親の存命中に認知できなかった場合にこの方法がとられます。認知の効力が生じるのは、遺言した父親の死亡時です。
父親は遺言書に以下の項目を記載したうえで、遺言執行者を指定します。

  • 子を認知する意思
  • 子の母親
  • 子の住所や氏名、生年月日
  • 子の本籍と戸籍筆頭者

遺言書が発見されたら、遺言執行者は就任から10日以内に届出をする必要があります。届出には、認知届書や遺言書の謄本などが必要です。
認知された子どもは、相続人としての権利・立場を獲得します。しかし、他に父親の相続人がいた場合は、争いが起こる確率が高いです。遺言書に財産配分について明記するなど、トラブルを避けるための工夫が必要になるでしょう。

2.強制認知(裁判認知)

強制認知(裁判認知)は、父親が明らかなのに認知を拒否する場合、強制的に子どもを認知させる方法です。家庭裁判所に認知調停を申し立てて、父親の合意を得られれば法律上の父子関係が生じます。
調停を申し立てられるのは、以下の人です。
① 子
② 子の直系卑属
③ ①または②の法定代理人
調停の結果、合意が形成できなかった場合に認知訴訟を提起するという流れになります。裁判では基本的に、父子関係を証明できるDNA鑑定の結果などの客観的証拠が求められます。
審判または判定が下されれば、調停の申立人(訴訟の原告)が、審判(裁判)の確定した日から10日以内に手続きをしなければなりません。役所には、前述の任意認知に必要な書類に加え、審判書謄本(訴訟の場合は裁判の謄本)および確定証明書を提出しましょう。

ちなみに、非嫡出子側から父親の死後に認知を請求することもできます。「死後認知」と呼ばれ、認知請求の訴状を家庭裁判所に提出して検察官に対して訴訟を起こし、認められれば相続権を得ることができます。
死後認知について詳しくは以下の記事もご覧ください。

非嫡出子のデメリット

非嫡出子にはいくつものデメリットが存在し、認知されていないことで、デメリットはより多くなります。どのような点で不利益を被るのかについて、以下の項目で解説します。

戸籍が空欄になる

非嫡出子の子どもは母親の戸籍に入るため、父親の姓ではなく母親の姓を名乗ります。そのため、戸籍上の父親の欄は空欄です。
父親が認知した場合は、子どもの戸籍には父親の名前が追加されます。しかし、父親の戸籍に入ったり、父親の姓を名乗ったりできるわけではありません。
父と子どもの戸籍には、それぞれ以下の項目が追加されます。

  • 認知日
  • 認知者の氏名
  • 認知者の戸籍

戸籍を見れば父親が認知をしたことは明白ですが、転籍などにより新たな戸籍が作成された場合には、認知の記載は引き継がれません。相続時に認知をした子どもの存在を調べるには、父親のすべての戸籍をさかのぼって調べることになります。

父親の相続人となれない

前述の通り、嫡出子と非嫡出子の相続割合は平等です。しかし前述した通り、非嫡出子は認知されていなければ父親の相続人になれません。理由は、法律上の父子関係が成立しないからです。
そのため、子どもの中では、嫡出子と認知された非嫡出子だけが、父親の財産を受け継ぐ資格を持ちます。

養育費の請求ができない

結婚した夫婦には、子どもを扶養する義務があります。結婚を解消した場合でも、夫婦で養育費を分担しなければなりません。離婚後に父親が養育費の支払いを拒否したならば、母親は調停もしくは訴訟によって養育費の支払いを請求できます。
非嫡出子の場合、認知されていなくとも、父親から合意を得て養育費をもらうことはできます。しかし、父親が養育費の支払いを拒否した場合には、嫡出子と異なり調停や訴訟を起こせません。父親には非嫡出子に対する扶養義務はなく、養育費請求の法的な根拠も存在しないからです。

認知された後に養育費を請求すれば、子どもの出生時点までさかのぼって請求できる可能性があります。養育費は、子どもにかかる生活費、教育費用や医療費で構成されます。養育費の有無によって、子どもの生活水準や受けられる教育レベルは大きく変わるはずです。
出生時からの養育費の合計は相当な金額になるため、父親が認知してくれるように、働きかけるとよいでしょう。もし合意が得られなければ、強制認知を行うことも視野に入れるとよいでしょう。

まとめ:非嫡出子がいる相続ではもめるケースが多い。悩んだら専門家に相談を

嫡出子とは法律上結婚している夫婦間の子であり、それ以外の子が非嫡出子です。非嫡出子でも、認知によって父親の子と認められます。嫡出子と非嫡出子の相続割合は同じです。しかし、相続人の資格や養育費の請求において、非嫡出子はさまざまな不利益を被ります。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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