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相続の知識

タンス預金は相続税対策には使えない! メリット・デメリットを解説

まとまった額の現金を自宅に保管するタンス預金のメリットは、いつでも必要な時にすぐにお金が使えることです。その一方で相続税対策に使えず、災害や盗難のリスクが高かったり、遺産相続のトラブルの種になったりするなどデメリットも少なくありません。
この項目では、タンス預金のメリットとデメリットを説明します。

タンス預金とは?

日本の家庭ではかつて現金をタンスに仕舞い込んでいたことから、まとまった現金を自宅に保管することを「タンス預金」と呼んでいます。現金の保管場所はタンスに限りません。金庫、仏壇、机の引き出し、冷蔵庫、屋根裏などでもタンス預金と呼ばれます。

日本銀行が2021年6月25日に発表した資金循環統計(速報)によると、2020年3月末時点における家計の金融資産は1946兆円。このうちタンス預金(現金)の金額は100兆円を超えているとみられています。(※)

※出典:日本銀行 資金循環統計『家計の金融資産』

タンス預金には次のような特徴があります。

  • いつでも自由に使える
  • 金利がつかない
  • 資金移動の記録が残らない
  • 金融機関の破綻の影響を受けない

記録が残らないということで、なかには相続税対策としてタンス預金をしている人もいるようです。タンス預金は相続税対策になるのでしょうか?

タンス預金は相続税対策にはならない

原則として、亡くなった人(被相続人)の正味の遺産総額(課税価格)が基礎控除額を超える場合、税務署に申告して相続税を納めなければなりません。

遺産が多ければ相続税額も高くなるため、ある程度の財産を保有している人のなかには、「税務署に見つからないように自宅に現金を隠しておけば相続税対策になる」と考える人もいます。「相続して得た現金を自宅に隠して相続税を申告しないようにしよう」とたくらむ相続人もいるかもしれません。

ところが、実際にはタンス預金は相続税対策にはならず、さらに大きなリスクを負うことになります。
誰かが亡くなった時、一般的には家族が市区町村役場に死亡届を提出します。その死亡届の内容は税務署に通知されることになっています。税務署は過去の申告内容などから、故人の資産をおおまかに把握しているため、相続人が相続税の申告をしなかったり、申告額が少なかったりすれば税務調査の対象となるのです。その結果、配偶者や相続人が重加算税などの追徴課税を受けるかもしれません。
こうしたことから、タンス預金は相続税対策にならないだけでなく、余計なリスクを負うことになるのです。

追徴課税など相続税のペナルティについては、こちらも参考にご覧ください。

タンス預金のメリット・デメリット

相続税対策にならないことはすでに述べたとおりです。では、あえてタンス預金をする意味はあるのでしょうか?
タンス預金のメリットとデメリット、それぞれ6つ紹介したいと思います。

タンス預金の5つのメリット

1 使いたい時に必要な額だけ取り出すことができる

銀行に預金している場合、ATMが閉まっていて使えない場合があります。また、営業時間外にお金を下ろそうとすると手数料が発生します。コンビニのATMで引き出す際も同様です。
これに対しタンス預金は、時間や場所の制限を受けず、手数料を気にせずに使いたい時に必要な額を取り出すことができます。

2 相続発生時に銀行口座が凍結されても支払いに困らない

被相続人が亡くなって相続が始まると、遺産分割協議が終わるまでは被相続人の預金口座が凍結されてしまい、現金を引き出すことができなくなります。家族が亡くなった直後は葬儀費用などで何かとお金が必要になるので、ある程度まとまったタンス預金があれば、現金での支払いに困らないで済みます。

銀行の口座凍結については下記の記事もご覧ください。

3 銀行が破綻しても資産を守ることができる

銀行が倒産した際に保証されている額は1金融機関につき1,000万円までです。そのため、1,000万円以上の預金がある人は保証額以外が消えてしまう可能性があります。
これに対してタンス預金は、銀行が破綻しても資産を守ることができます。
ただし、これは複数の銀行に口座をもっていればいいだけの話ではあります。

4 税金がかからない

銀行預金や財形貯蓄の場合、利子によって生まれた利益(利子所得)に対して、20.315%(所得税15%、復興特別所得税:0.315%、地方税5%)の税金がかかります。これに対してタンス預金は利子が増えることがないため、税金はかかりません。

5 国に知られずに貯蓄ができる

ある人がマンションを購入したり、有価証券に投資したりすると、税務署が調べればすぐに資産総額を割り出されてしまいます。しかしタンス預金であれば、国が資産総額を把握するのは容易ではなくなるため、誰にも知られず貯蓄できます。

タンス預金の6つのデメリット

1 利息がつかない

銀行に預けてある預金には、わずかですが利息が発生します。一部のネット銀行の普通預金ではメガバンクに比べて100倍ほどの利息がつくところもあるようですが、タンス預金は利息が一切つきません。

2 インフレが起こると価値が下がる

インフレが起きた場合、紙幣の価値が目減りします。
IMF(国際通貨基金)が予想する日本の今後のインフレ率は、2022年は1.205%、2023年は1.332%です。インフレ率が1.2%だと、去年1000円だったものが、今年は1012円になる計算です。
たとえば去年1億円で買えたものが、今年は1億120万円支払わないと買うことができないことになるため、実質的なタンス預金は120万円も目減りしたことになります。

3 旧通貨が無効となった場合、タンス預金は無価値となる

通貨切替により旧通貨が廃止され、タンス預金に価値がなくなった例は世界中にあります。たとえばインド政府は2016年、高額紙幣2種類を廃止しました。銀行と郵便局に旧紙幣をもち込んだ場合だけ新紙幣と交換できることにしたため、旧貨幣を所有していても無価値となりました。

4 災害や盗難のリスクがある

タンス預金は災害や火事、空き巣や強盗など盗難のリスクが高くなります。銀行預金であれば、例え震災で通帳やキャッシュカードを失くしてしまっても、運転免許証などの本人確認が取れる書類があれば、一定のお金を引き出すことができます。自宅の金庫などに保管していたタンス預金が津波で流されてしまっても、再び取り戻すことはできません。

5 どこに保管したか忘れることがある

長い時間が経過すると現金の保管場所を忘れてしまうということも考えられます。とりわけ認知症を患っている人はその可能性が高まります。家族に保管場所が伝わっておらず、隠し場所ごと処分してしまうということもあるでしょう。

6 遺産相続の際にトラブルの引き金になる

タンス預金の隠し場所を知っている相続人が無断でもち出した場合、その存在を証明する証拠がないため、ほかの相続人は引き下がらざるを得ないことになりがちです。
その一方で、遺産相続手続きが終わったあとにタンス預金が発見されるケースもあります。この場合、遺産分割をやり直しすることになり、相続税が発生したり、修正申告が必要になったりします。

タンス預金とマイナンバーの関係性

現在、マイナンバーは年末調整や確定申告など、所得税の申告の際に活用されています。また、贈与税や相続税の申告の際にも、マイナンバーが必要になります。
預貯金のマイナンバー登録も任意で実施されています。これが近い将来、国民に義務化される動きがあります。登録が義務化されれば、個人の銀行口座とマイナンバーが結びつき、国は金融機関に預金している個人の資産保有額を容易に把握できるようになります。
しかしタンス預金はマイナンバーに結びつけられないので、国に個人資産を知られることはありません。そのため今後、預貯金のマイナンバー登録が義務化されることになれば、自分の財産を政府に把握されたくない人がタンス預金を増やしていく可能性があります。

タンス預金は税務署に把握されている?!

人が亡くなった際、家族が市区町村役場に死亡届を提出します。この内容は税務署に通知されることになっています。税務署は過去の申告内容などから、亡くなった人にどれぐらい資産があるかおおよその見当をつけています。
国税庁は国税総合管理(KSK)システムを用いて、国民の収入や、国民がどういう財産を相続したかなどをデータベース化し、一括管理しています。年収、相続、不動産売却の収入などが国税庁のデータベースに入っていると考えてください。

この国税のデータベースと、実際に申告する金額の差が大きいと脱税の可能性が疑われます。被相続人に多額の資産があるのに相続税の申告がなければ、税務署は遺族に相続税を申告するよう問い合わせをします。それでも相続税の申告がなければ、調査を始めます。

税務署には強力な調査権限があるので、被相続人の預金口座の過去の入出金を調べることもできます。預金口座から多額の出金があれば、その使い道が問われます。不審な点があれば、自宅に訪問して財産がないかどうか捜査することもできるのです。
税務署が行う税務調査で未申告のタンス預金が見つかると、本来の税額のほかにさまざまな加算税がかかります。さらに隠していた金額が大きく悪質な場合は、国税局が検察に告発することもあります。

そのほか相続税の申告漏れなどがあった場合のリスクについては、「遺産相続の手続きに期限はあるの?期限を過ぎるとどうなる?なども併せてご確認ください。

おわりに:タンス預金はメリット・デメリットを理解したうえで実行しましょう

日本国内のタンス預金の金額は100兆円を超えていると考えられています。経済の先行きに対する漠然とした不安から、資産保全を目的に現金を保有している人が多くなっているようです。相続税対策としてタンス預金をしている人も少なくないでしょう。
亡くなった人から相続に受け継がれた資産は、それがタンス預金であっても法律上れっきとした相続となり、遺産総額によっては相続税を支払わなければなりません。相続した現金を申請しなかったり、少な目に申請したりすれば、加算税がかかるなど大きなリスクを負うことになります。
タンス預金にはメリットとデメリットがあるので、それを理解したうえでタンス預金をするか否かを決めましょう。また、相続税の節税対策を考えるのであれば、一人で闇雲に行うよりも「税金のプロ」である税理士に相談することをおすすめします。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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