相続の知識

奥行価格補正率とは?土地評価額の調べ方や対象の土地をわかりやすく解説

土地を相続する際の相続税は土地の評価額をもとに支払うことになります。この土地の評価額を出す際に用いられる補正率のひとつに、奥行価格補正率があります。奥行に問題があり利用に制限が出る土地へ補正を行う数値のことです。奥行価格補正率を用いると相続税が減額される場合があるため、知っておきたい事柄になります。

奥行価格補正率とは

奥行価格補正率とは、路線価が決められている地区にある土地で、奥行距離に問題がある場合に一定の減額補正を行うために使用する数値のことです。路線価とは国税庁が決めた道路に面する土地の一平方メートルあたりの価格のことで、毎年7月ごろに発表されるものになります。路線価は市場価格や売買価格とは異なり、土地の相続税や贈与税などを決める際の土地の評価などに使われます。

土地の奥行が長すぎる、短すぎるなどで用途が限られてくる土地は、正方形や長方形のいわゆる「整形地」の土地と比べて価値は低いと考えられます。そのため奥行による価値を正当に評価するために奥行価格補正率が用いられ、土地の評価額が減額されます。

道路からの奥行が長い、短いといった一定の基準に該当する土地を相続するにあたっては、この奥行補正率を用いて土地の評価額を算出することが重要になります。奥行に問題があることにより評価額が下がる場合は、相続税が減税となるためです。相続税の節税をするためにも相続する土地が奥行補正対象にならないかどうかを確かめることが大切です。

奥行価格補正の対象となる土地

土地の相続税評価額を算出するための計算方法には「路線価方式」と「倍率方式」という2つがあります。路線価(主要道路につけられた1㎡あたりの価格)が設定されている地区では【路線価×土地面積(×補正率)】から路線価方式で算出、路線価が設定されていない地区では【固定資産税評価額×倍率】の倍率方式で求めます。
奥行価格補正率は、前者の路線価が決まっている土地へのみ適用されます。

また奥行価格補正率には、その土地を活用できる種類として定められている「土地区分」も関連してきます。具体的な区分としては「ビル街地区」「高度商業地区」「繁華街地区」「普通商業・併用住宅地区」「普通住宅地区」「中小工場地区」「大工場地区」の合計7種類です。
土地区分によって、その補正率が変わってきます。補正率は、国税局の定める「奥行価格補正率表」をもとに調べます。

奥行価格補正率の調べ方

奥行価格補正率の調べ方

 

では実際にどのように奥行価格補正率を確かめるのか、その方法を解説していきましょう。

STEP1:路線価図で対象の土地を調べる

まずは、対象の土地が路線価図でどの地区区分にあたるのかを調べます。路線価図とは7つの地区区分、および路線価が記載されたもので、国税庁が公表している「路線価図・評価倍率表」のサイトで確認できます。

このサイト上で調べたい土地のある都道府県をクリックし、市区町村や地名、路線価ページ番号を選択していくと路線価図が表示されます。
路線価図には、道路に数字やアルファベットが書かれた記号が表記されています。地図上に記載されている記号が地区区分を表し、数字は路線価になります。路線価の後ろのアルファベットは借地権の割合になりますが、奥行価格補正を行う際には利用しないものになります。

【参考】国税庁 『財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』

路線価図の見方と記号の意味

路線価図を見る際には、土地の地区区分を示す記号について理解しておく必要があります。
7つの地区区分はそれぞれ、ビル街地区は横長六角形、高度商業地区は横長楕円形、繁華街地区は八角形、普通商業・併用住宅地区は円形、普通住宅地区はなし、中小工場地はひし形、大工場地区は長方形の記号で表されています。そのため、記号の形状から土地の地区区分を判断できます。

路線価図の見方と記号の意味

 

出典:国税庁『財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』

また各記号の内側に記載されている数字、路線価は千円単位で記載されています。
路線価図を見ていくうちに、記号の中に斜線が描かれたものや記号内の上や下の部分が黒く塗りつぶされたものがあることに気づくかも知れません。この斜線や塗りつぶしは該当の路線価が適用される範囲を表しています。

路線価図の見方と記号の意味1

 

出典:国税庁『財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』

路線価図の基本的な考え方としては、道路上に記載される記号内の数値を道路両側に面する土地の路線価とします。しかし、記号内に斜線、黒塗りがある場合はそれぞれ適用範囲が異なってくるため要注意です。それぞれについて簡単に解説します。

  • 道路を挟み記号の片側のみに斜線が入っている場合:斜線のない側のみに記号内にある路線価が適用されることを意味します。
  • 片側が黒く塗りつぶされている場合:塗りつぶされている側の道路沿い、およびその反対に位置する土地が対象です。
  • 両側が黒く塗りつぶされている場合:道路沿いのみが適用になります。
  • 片側が黒塗りで片側が斜線の場合:黒塗り側の道路沿いのみに適用されます。

2つ以上の道路に面している土地で、それぞれの地区区分、路線価が異なっているといった場合は複雑になります。

STEP2:土地の奥行を調べる

次に土地の奥行について調べていきます。奥行は、「想定整形地の奥行」もしくは「算出した奥行(面積/間口距離)」のどちらか短い方を採用します。

想定整形地では、道路から土地のすべてを含めるような長さの垂直線を引いて長方形もしくは正方形をつくり、その奥行距離を使用します。
それに対して奥行を算出する場合は、土地の面積を道路に面した側の長さで割り出したものになります。

ほとんどの土地はきれいな四角形ではなく、いびつな形をしているため奥行の算出には困難が伴います。コストはかかりますが、正確な数値を出すためにも土地家屋調査士など専門家に測量を依頼すれば確実です。

それでももし自分で確認したいという場合は、精度が高いとされる「地図(14条地図)」を法務局で取り寄せて調べるという方法があります。ただ「地図(14条地図)」を利用する際は、地図を作製した年代に注意しなければいけません。古い時期に作成された地図の場合は現状と異なっている可能性が高いためです。

STEP3:奥行価格補正率表で補正率を調べる

地区区分と土地の奥行といった必要な情報を収集できたら、国税庁の奥行価格補正率表が表示されているサイトへアクセスして該当する奥行補正率表を求めていきます。

奥行価格補正率と他の補正は併用できる

奥行価格補正率は、単独で使用する以外に「奥行長大補正」「間口狭小補正」「不整形地補正」「がけ地補正」といったほかの4種類の補正との併用できます。ほかの補正をかけ合わせればさらに土地の評価額を下げることも可能です。それぞれについて簡単に紹介します。

①奥行長大補正:奥行の長さが間口の2倍以上の長さがある土地に適用される補正です。短い土地には適用されません。「地区区分」および「奥行距離/間口距離」によって補正率が変わります。

②間口狭小補正:間口が狭い土地の価値を補正します。「地区区分」および「間口距離」により補正率が変わります。

③不整形地補正:土地の形が三角や多角形、旗竿地になっているなどの不整形地を補正します。「地区区分」および「不整形地面積/間口距離」により補正率が変わります。

④がけ地補正:平たんな部分とがけ地が混合されている土地や、斜面の上にある土地が受けられる補正です。「がけ地の方位」と「がけ地の地積/総地積」で補正率が決定します。

最新の奥行補正率表に関しては、次の章で解説します。

【最新版】奥行価格補正率表

奥行価格補正率表とは、商業エリア、住宅地が入るエリア、工場エリアに入る全部で7種類の地区区分ごとに、それぞれの奥行距離に基づいた補正率を2m~4m単位で記載した表です。

奥行価格補正率表は、2006年版(~平成18年分)、2007年版(平成19年分~)、2018年版(平成30年~)などがありますが、今のところ2018年に改正された表が最新版になります(※2023年9月現在)。
補正率を調べる場合は、最新版の表を使用することが大切です。

参考:国税庁『奥行価格補正率表』

奥行価格補正率を使った土地評価額の計算方法

奥行価格補正率を使った土地評価額の算出方法を見ていきます。
実際に計算する計算式としては、【路線価/㎡ × 奥行価格補正率 × 地積(土地の面積)】を使用します。それぞれに数値を当てはめれば価格を出せます。路線価図に表示されている路線価は千円単位となっているため、ゼロの数に注意する必要があります。
例えば400Dと記載があるものは400,000円/㎡のことです。

ここでは、奥行価格補正率を適用することによりどのくらい土地の評価額が下がるのかについて例を挙げます。
普通住宅地区、土地面積50㎡、奥行距離5m、路線価400,000円(借地権割合D)の場合を計算してみます。

① 5m の奥行について奥行価格補正率表から補正率を調べると0.92 になります。
② 計算式に数字を当てはめて土地の評価額を求めます。
【路線価400,000円 × 奥行価格補正率0.92 × 土地面積50㎡=相続税評価額18,400,000円】

補正率を使用しない場合は、400,000円×50㎡=評価額20,000,000円になるため、奥行価格補正を使用すれば評価額を160万円も下げられることが分かります。これが相続税の軽減へつながります。

おわりに:奥行価格補正が使えれば相続税評価額は下げられる

奥行価格補正率とは、奥行が短すぎるもしくは長すぎる、奥行距離に特徴がある土地の評価額を下げられる補正方法です。奥行価格補正率により土地の評価が下がれば、相続税の減額が可能となるものの、土地の奥行距離の計測、路線価図の確認など複雑な事柄への対応が含まれます。

このような難解な相続税の土地評価は専門家に相談すると安心です。相続専門の税理士法人レガシィは50年以上の歴史があり、特に土地の評価においては長年の経験によるノウハウが豊富にあると自負しています。土地の相続に関するお悩みがある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

当社は、コンテンツ(第三者から提供されたものも含む。)の正確性・安全性等につきましては細心の注意を払っておりますが、コンテンツに関していかなる保証もするものではありません。当サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、かかる損害については一切の責任を負いません。利用にあたっては、利用者自身の責任において行ってください。

詳細はこちら
この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

税理士法人レガシィ社員税理士武田利之の画像

武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

相続の相談をする老夫婦のイメージ画像

無料面談でさらに相談してみる