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相続の知識

株式交換とは?株式移転との違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説

株式交換とは、子会社に転ずる企業の株式を100%獲得して、支配関係を築く手段です。株式交換を検討している企業に向けて、株式交換の概要や種類、株式移転・株式交付・吸収合併などの類似する手続きとの相違点などを詳しくまとめています。併せて、株式交換で発生するメリット・デメリットも押さえておきましょう。

株式交換とは

株式交換とは、親会社に転ずる企業が、子会社に転ずる企業の株式をすべて獲得する手段です。子会社に転ずる企業の株式を親会社が100%占有するため、完全な支配関係が発生します。株式交換を執り行う際に、子会社に転ずる企業の株式を占める対価として、親会社の株式を付与することが通常です。そのほかの対価には、買い主にあたる親会社のさらに親会社の株式を付与したり、現金を提供したりする手段も考えられます。

株式交換の種類

株式交換には普遍的な形式のほか、いくつかの種類があります。以下より、「三角株式交換」「簡易株式交換」「略式株式交換」各々の定義を概説します。

三角株式交換

株式交換の対価は、普遍的には買い主にあたる親会社(買い主企業)の株式を付与しますが、その買い主企業のさらに親会社にあたる企業が占有する株式も付与できます。

例えば、親会社にあたる企業Aの傘下に置かれる企業Bが、企業Cを完全子会社化させる際、企業Cとの株式交換の対価は、買い主にあたる企業Bの株式ではなく、その親会社にあたる企業Aの株式を付与する手段です。

子会社に転ずる企業と買い主にあたる親会社(買い主企業)、買い主企業の親会社にあたる企業の3企業が関わることから、三角株式交換と呼ばれます。

2007年5月に施行された会社法では、対価の柔軟化が導入されており、日本でも三角株式交換の執行が認可されました。また、買い主企業の親会社が外国法人であっても、三角株式交換の対象です。外国企業と日本企業の間で三角株式交換が執り行われると、外国企業による日本企業の買収・合併が容易になります。

簡易株式交換

親会社に転ずる企業が対価として、自社の株式を付与する状況において、その株式の総額が自社の純資産額の1/5以下だった際には、簡易株式交換の形式が取り入れられます。

通常の株式交換では、株主総会での議決が欠かせません。しかし、簡易株式交換の形式を取り入れることで、株主総会での議決を経由せずに、完全子会社化を進められます。議決の省略を理由に、総会開催にかかる手間を減らしたり、手続きを迅速に進めたりできます。ただし、親会社に転ずる企業の1/6以上の株主が、簡易株式交換に反対した際には、株主総会の開催を省略できない点に要注意です。

略式株式交換

親会社に転ずる企業が、子会社に転ずる企業の議決権を90%以上占めている際は、略式株式交換が取り入れられます。略式株式交換でも、簡易株式交換と同じように、株主総会での議決の省略が可能です。

簡易株式交換を執り行えるか否かは、前述した通り、対価の資産に対する割合で決まりますが、略式株式交換では、親会社に転ずる企業と子会社に転ずる企業の両者が、株式交換の執行以前の支配関係の状態により決まります。

ただし、子会社に転ずる企業が公開会社であり、なおかつ対価に譲渡制限株式が付与されるケースと、親会社に転ずる企業が非公開会社であり、かつ譲渡制限株式が付与されるケースなどは例外です。この例外に該当する際は、株主総会での議決を省略できないため、通常の株式交換と同じ手段で手続きを進めましょう。

株式交換とほかの手続きとの違い

株式交換のほかにも、企業を完全子会社化させたり、株式を付与したりする手法がいくつかあります。以下より、「株式移転」「株式交付」「吸収合併」各々の定義と、株式交換との相違点を概説します。

株式交換と株式移転の違い

株式交換と株式移転は、「親会社に転ずる企業が存在しているか否か」の点で異なります。株式移転とは、親会社に転ずる企業が子会社に転ずる企業の株式をすべて占有する手段であり、この点においては株式交換と同じです。
株式交換では、既存の企業が親会社に転じ、子会社に転ずる企業を買収します。それに対して株式移転では、子会社に転ずる企業が自社の株式を獲得させることで、新しい親会社を設立します。

株式交換と株式交付の違い

株式交付は、子会社に転ずる企業の株式を獲得する目的や支払う対価の観点から判断し、株式交換と区別されます。株式交換は対象企業の株式を100%占有するため、完全子会社化を希望する際に取り入れられます。
一方、株式交付は、子会社に転ずる企業の株式を部分的に獲得する手段です。主に対象企業の組織再編のために取り入れるので、完全子会社化が目的ではありません。また、株式交換では現金の形で対価を付与できますが、株式交付での対価の付与は親会社の株式が前提です。

株式交換と吸収合併の違い

親会社による吸収合併も、親会社に転ずる企業が別の企業を支配する手段のひとつです。株式交換と吸収合併では、執行後の子会社の法人格に相違点があります。株式交換の執行後は、子会社に転じた企業の法人格は消滅せず、子会社の事業や組織は別法人として、そのまま残る形です。一方、吸収合併の執行後は、吸収される企業の法人格は消滅し、親会社に完全に併合されます。

株式交換によるメリット

ここまで、株式交換の種類や特徴、ほかの手続きとの相違点に関してまとめました。続いて、株式交換により得られるメリットを確認していきます。

事業承継時の相続税対策となる

株式交換は、企業の事業承継時の相続税対策として有利です。企業が事業承継を執り行う際に発生する相続税の金額は、その企業の株価による影響を受けてしまいます。事業承継前に株式交換を執り行えば、株価評価を引き下げられるケースが多く、高額な納税リスクを回避できる可能性もあります。

株主との譲渡契約が必要ない

「株式譲渡」も子会社に転ずる手段のひとつです。しかし、株式譲渡は株式を占有する個々の株主と、譲渡契約を結ぶことが求められます。株式交換は株主総会での議決を経由した後に、手続きを進められるので、株主譲渡の際に発生する株主との譲渡契約が不要です。

また、株主総会にて2/3以上の賛成を得れば、株式交換により強制的な少数株主の除外も可能です。ただし、少数株主の除外を主な目的とした株式交換には、認められないケースもある点に注意しましょう。

対価に柔軟性がある

対価に柔軟性がある点も、株式交換の特筆すべきポイントです。子会社に転ずる企業を買収する際に、株式交換を執り行ったら、対価として親会社の株式を支払います。現金ではなく、自社またはその親会社の株式を準備するだけなので、多額の資金を用意しなければならない状況を回避できます。

また、親会社に転ずる企業の株価が高いケースでは、より有利な条件のもと、子会社に転じる企業の買収が可能な点もメリットのひとつです。

売り手側企業の会社名を残せる

株式交換の執行後に子会社に転じた企業は、法律上、親会社とは別の法人として扱われるため、株式交換の執行以前に使用していた会社名を残せます。吸収合併とは異なり、組織や事業をそのまま引き継ぐことができるので、取引先や従業員からの抵抗感を軽減したり、独立性を担保したりできる点が魅力です。

株式交換によるデメリット

株式交換の執行には、いくつかの注意点も付随する点に注意が必要です。以下より、予想されるデメリットを概説します。

特定の事業だけの買収は不可能である

株式交換では、対象企業を完全子会社化させるため、特定の事業のみの買収は不可能です。子会社に転ずる企業に負債があった際、その負債も含めて引き継ぎましょう。

株価下落のリスクがある

株式交換により、各株主の1人当たりの持分比率が低下すれば、各株主の株式総会での影響力が弱まり、配当などの利益も減る「株式の希薄化」が発生します。株式の希薄化は、その企業の株式の評価が下がるので、結果的に株価下落のリスクが高まってしまいます。

手続きが煩雑である

煩雑な手続きも、株式交換の悩みのひとつです。株式交換を執り行う際は、会社法に則った手続きが求められるため、株主譲渡に比べて、手続きが複雑で時間がかかってしまいます。手続きを正確に進められないと、法的問題に発展するおそれがあることから、スケジューリングや各種書類作成の準備などが、非常に重要です。

株式交換に必要な手続き

株式交換に必要な手続き株式交換の執行には、必要な手続きが多く煩雑です。一例として、以下の流れを参考にしてください。

1. 株式交換契約の締約

親会社に転ずる企業と子会社に転ずる企業の合意から始まり、事前に取締役会の議決を経由します。契約書に登載される項目は、株式交換の獲得宣言や条件、効力発生日、株式の配分比率、善管注意義務、当事会社の情報などです。

2. 事前開示書類を提出

契約書や決算報告書など、株主や債権者による株式交換の判断材料となる書類です。契約内容や対価の相当性に関する事項、当事会社に関する事項、計算書類などに関する事項などが登載されています。

3. 株主総会の執行

1〜2週間前に株主に開催の通知を発送します。原則、議決権の過半数を占める株主の出席と、2/3分以上の賛成の獲得が必須です。

4. 事後開示書類を締約

株式交換の効力発生後の半年間、備え置きが求められます。手続きの経過・結果や差止請求・反対請求の状況、交換株式数などが登載されています。

このほかにも、会社の規模や状況に応じて、手続きが増える可能性もあります。

おわりに:事業承継なら相続専門の税理士に相談を

株式交換では、子会社に転ずる企業の株式を100%獲得し、その企業を別法人として扱いつつ、完全子会社化が可能です。株式交換の執行は、相続税対策や会社の独立性の面で多数の利便性を得られる一方、手続きは煩雑で株価が下がる危険性があります。株式交換を検討している企業は、実績の豊富な専門家に相談しましょう。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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