相続税の申告なら相続専門税理士法人レガシィ【公式】

相続の知識

相続登記の申請書の書き方は?記載例や綴じ方まで解説

この記事では、不動産を相続する際に発生する相続登記について、登記申請書の書き方や必要書類を解説します。2024年4月1日より改正法が施行され、相続登記は義務化されます。仮に相続登記を行わなかった場合は過料が科されるようになります。この記事を参考にして、適切に申請手続きを行いましょう。

相続登記とは「相続による所有権移転登記」

最初に、相続登記とは何か、なぜ相続登記が必要なのかについて解説します。
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった際に、不動産の名義人を相続人に変更する手続き(相続による所有権移転登記)のことを指します。
相続登記の申請は法務局に対して行いますが、これにより不動産の所有名義は亡くなった方から相続人に変更されます。不動産の所有者が更新されることで、不動産に関わる争いごとを避けたり、売買したりすることができるようになります。

相続登記は必ず必要?

相続登記は、2022年6月現在においては必ずしなければならない手続きではありませんが、2024年4月1日より改正法が施行され、相続登記が義務化されます。不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。義務化された後に相続登記を行わない場合、10万円以下の過料が課せられる可能性があります。また施行前の過去の相続にも適用されることとなっており、その場合は改正法の施行日から3年以内に手続きが必要になります。

改正の背景には「所有者不明土地」問題があります。所有者が不明な土地が放置されることで、土地の有効利用や災害の復興などが進まずに大きな問題となっているのです。
相続登記の義務化については、下記の記事で詳しく解説しています。

相続登記は誰がする?

相続登記の申請は、不動産を引き継ぐことになった相続人が行います。もしくは、相続手続きを依頼されている司法書士が相続人の代理人として申請することもできます。
申請者が誰になるのか、具体例を通して見ていきましょう。例えば亡くなった方(被相続人)が父、相続人が母(妻)・子(長男)・子(長女)の場合、以下の3パターンが考えられます。

①法定相続分に従う場合

法定相続分に従う場合は、妻が1/2、子(長男)が1/4、子(長女)が1/4の割合で相続します。この場合、申請者は原則全員です。ただ法定相続分登記はいわゆる保存行為のため、相続人のうちの1人が申請することも可能です。

②遺産分割協議に従う場合

遺産分割協議の結果、子(長女)だけが相続するとしましょう。この場合、申請者は長女になります。

③遺言書に従う場合

遺言書には「長男に不動産を相続させる」と記載があり、それに従うことにしました。この場合、申請者は指定された長男です。

以上のように、基本的には不動産を実際に引き継ぐことになった人が申請者となります。

相続登記に関する申請書の書き方

ここからは申請書の書き方(記載事項)について解説していきます。申請書を作成する際に、法律によって定められた形式はありません。形式よりも、必要な情報が正しく記載されているかどうかが重要です。
記載事項は、大きく分けて以下の9つの項目です。

①登記の目的
②登記の原因
③被相続人の名前
④相続人の名前・住所・電話番号
⑤添付書類
⑥登記識別情報の通知希望
⑦申請日と管轄法務局
⑧課税価格と登録免許税
⑨不動産の表示
⑩収入印紙(用紙に貼付のみ)

①登記の目的

ここからは記載すべき情報について、それぞれ見ていきましょう。まず登記の目的を記載する必要があります。目的は「所有権移転」もしくは「持分全部移転」のどちらかです。

「所有権移転」とは、被相続人が不動産の所有権を全部所有している場合を指します。
「持分全部移転」とは、被相続人が持つ権利が全ての権利ではなく、不動産の共有持分である場合を指します。この場合、「○○持分全部移転」として、○○部分には被相続人のフルネームを記載します。
共有持分とは、被相続人が所有している不動産の割合のことです。例えば被相続人Aさんと妻のBさんで半分ずつ共有している場合、A持分2分の1、B持分2分の1となります。

②登記の原因

次に、登記の原因を記載します。原因欄には被相続人が亡くなった日付を記載し、その後ろに「相続」と加えます。亡くなった日付を記載する際は、死亡診断書もしくは死体検案書を用います。この書類には「死亡したとき」という記載がありますので、被相続人が亡くなった日付として使用します。

また、死亡診断書は被相続人が死亡してから7日以内に市町村役場に提出する必要がありますが、その際に死亡診断書は返却されません。念のためにコピーをとっておきましょう。

③被相続人の名前

相続人の欄には、まず括弧書きで被相続人の名前を記載します。書き方は以下のような形です。
――――――――――――――
相続人 (被相続人 ○○ ○○)
――――――――――――――
その下に実際に不動産を相続する相続人の名前などを記載していきます。

④相続人の名前・住所・電話番号

不動産の新しい名義人になる人の名前・住所・連絡先の電話番号を記載します。連絡先を記載する理由は、申請手続きに不備があった際に法務局から連絡を受けるためです。日中に連絡がつながる番号にするのがよいでしょう。また、新しい名義人が複数人いる場合は、名前の前にそれぞれの持分を記載します。
以上が記載できたら、相続人の名前の横に印鑑を押します。印鑑は実印ではなく認印を使っても問題ありません。

⑤添付書類

添付書類の欄には「登記原因証明情報」「住所証明情報」と記載します。例えば前者の登記原因を証明するためには、相続関係説明図など相続があったことを証明する書類一式が必要になります。具体的な書類名を1つずつ記載する必要はありません。
また通常の相続登記の場合は上記の2つの記載で足りますが、これ以外に、例えば「評価証明書」などの必要書類があればそれも記載します。
申請時に必要な書類については後述していますので、そちらをご確認ください。

⑥登記識別情報の通知希望

登記識別情報とは、以前で言うと「登記済権利証」と呼ばれた書類と同等のもので、不動産の所有者であることを証明する番号あるいはその書類を指します。

【参考】法務局ホームページ『登記識別情報通知書 見本』

法務省が用意している登記申請書のテンプレートでは「登記識別情報の通知を希望しません」というチェック欄がありますが、これにチェックを入れてしまうとこの権利書の発行をしないことになってしまいますので、大抵は「希望する」と記載しておいた方が良いでしょう。
登記識別情報の番号は、不動産売却などの際に必要になります。クレジットカードなどと同じように、他人に知られないように大切に保管しておきましょう。

⑦申請日と管理法務局

申請書を提出する日付と、相続する不動産の所在地を管轄している法務局を記載します。管轄する法務局が分からない場合は、インターネット上で法務局のホームページから検索することができます。「管轄一覧」もしくは「地図」から探せるようになっています。

⑧課税価格と登録免許税

課税価格とは、固定資産評価額から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。
登記免許税とは、課税価格×0.4%の値から100円未満を切り捨てた金額のことです。

まず課税価格を記載します。固定資産評価額は、固定資産評価証明書もしくは固定資産税課税明細書に記載があります。例えば固定資産評価額が34,876,468円の場合、課税価格には34,876,000円と記載します。

次に登録免許税を記載します。課税価格が34,876,000円だとすると、34,876,000円×0.4%=139,504円です。100円未満を切り捨てて登録免許税は139,500円となります。

⑨不動産の表示

不動産の表示は、登記事項証明書通りに記載してください。必ず記載すべき要素は「所在」「地番」「地目」「地積」の4点です。また、土地だけでなく建物を相続する際には、「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」の5点も記載します。

⑩収入印紙(用紙に貼付のみ)

以上で申請書の記載は完了しました。次にA4サイズの白紙を用意して、登録免許税分の収入印紙を貼ります。収入印紙に押印する必要はありません。
収入印紙は郵便局やコンビニでも購入できますが、法務局の収入印紙売り場で購入するほうがよいでしょう。登録免許税は高額なので数百枚の収入印紙が必要となる場合があるためです。

法務局のホームページを見ると様式や書き方の基本が紹介されていますので、参考にしてみましょう。

【参考】法務局ホームページ『不動産登記の申請書様式について』

用紙については、国や行政機関が用意した公式のものがあるわけではありませんが、長期間保存できる、破れにくい白色のA4用紙を用意しましょう。黒色のボールペンもしくはパソコンで作成します。摩擦などで消えてしまうペンや鉛筆の使用は認められていませんので注意してください。

相続登記で用意する書類

相続登記の際に必要な書類は、主に以下のような書類です。

  • 登記申請書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(改製原戸籍、除籍謄本)
  • 被相続人の住民票の除票
  • 遺産分割協議書または遺言書
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 不動産取得者の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 収入印紙

必要書類は、遺産分割協議による相続なのか、遺言による相続なのか等によって、変わってきます。詳しくは下記の記事も参考にご覧ください。

相続登記申請書の綴じ方

登記申請書の必要事項をすべて記載し、ほかの書類も用意できたら、最後は書類を綴じるだけです。

書類は登記申請書を一番上にして、以下の順番で並べるのが一般的です。

  • 登記申請書、収入印紙貼付台紙
  • 委任状(代理申請する場合)、相続関係説明図
  • 原本の返却を受ける書類のコピー
  • 原本の返却を受ける書類の原本

原本の返却を受けられる書類には、戸籍謄本等や固定資産税評価証明書、印鑑証明書などがあります。これらは原本を返却してもらうためにコピーをとります。ただし戸籍謄本等については、枚数が多くすべてをコピーして提出するのは大変なので、相続関係説明図の提出をもって原本の返却を受けることができます。

綴じ方については、まず登記申請書と収入印紙貼付台紙を重ねて、ホチキスで綴じます。ここで書類の見開き部分に契印を押します。次に委任状や相続関係説明図がある場合は、上記の書類の下に重ねます。委任状や相続関係説明図はホチキスで綴じず、いったんそのままにします。契印もしません。
続いて原本の返却を受ける書類のコピーをホチキスで綴じ、それぞれのページに契印します。一番上の書類には「この写しは、原本と相違ありません」と記載します。

最後に、ここまでの書類をすべてまとめてホチキスで一つに綴じます。書類はかなり厚いはずなので、大型のホチキスを使用してください。戸籍謄本等やコピーをとった書類の原本は、ホチキスでは綴じずにクリアファイルに入れて提出します。

おわりに:相続登記申請書には、相続不動産の関連情報を細かく記載すること

相続登記申請書の書き方や必要書類、綴じ方などについて解説しました。相続登記には多数の書類が必要となるため、書類をそろえるだけでも大変だと感じた方も多いでしょう。しかし法改正により相続登記の申請が義務化されたため、手続きを避けることはできません。

ご自身で申請書の作成や書類の準備が難しい場合は、専門家に相談してみましょう。
税理士法人レガシィは相続に特化した税理士法人として、数々のお客様の相続対応をこなしてきています。相続税のみならず、相続登記などの手続きについても代行可能です。お客様の状況に合わせたオーダーメイドでの相続対応を提供していますので、ぜひ一度ご相談ください。

当社は、コンテンツ(第三者から提供されたものも含む。)の正確性・安全性等につきましては細心の注意を払っておりますが、コンテンツに関していかなる保証もするものではありません。当サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、かかる損害については一切の責任を負いません。利用にあたっては、利用者自身の責任において行ってください。

詳細はこちら
この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

無料面談でさらに相談してみる