相続税の早見表で概算を知ろう!計算方法についても解説
Tweet相続税は、「法定相続人の数」や「法定相続人と被相続人との関係」によって異なってくるため、一目で目安がわかる早見表は便利な存在といっていいでしょう。たとえば配偶者と子どもで相続をする場合や、子どもだけで相続する場合などに「相続税がいくらになるか」を簡単に把握することができるのです。
この記事では相続税早見表の使い方に加えて、相続税の計算方法についても解説します。
目次
相続税の早見表とは?
「相続税早見表」とは「相続税がだいたいいくらになるのか」を表にして示したものです。細かい計算は後でもいいので、ひとまずは概算を知りたいという人には使い勝手のいい表といえるでしょう。
相続税は「累進課税方式」を採用しており、相続する財産の評価額が高ければ高いほど、相続税額もまた増えていくという仕組みになっています。税率は一律ではないため、こうした早見表があると重宝するというわけです。
基本的な早見表の見方と使い方
相続税を算出するには、まず被相続人が遺した財産の評価額から基礎控除額を差し引いて、課税対象額を出す必要があります。その課税対象額を法定相続分の割合(法定相続人の立場によってあらかじめ決められている取り分の割合)に応じて配分していきます。そしてその額に応じた税率を適用することで相続税額を算出するという流れです。
その結果を一覧にしたのが「相続税早見表」です。
法定相続分の割合
配偶者と子どもが相続人である場合 | 配偶者1/2 子ども1/2(2人以上の時は全員で) |
---|---|
配偶者と親が相続人である場合 | 配偶者2/3 親1/3(2人以上の時は全員で) |
配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合 | 配偶者3/4 兄弟姉妹1/4(2人以上の時は全員で) |
法定相続分について、詳しくは下記の記事もご覧ください。
相続税早見表を使うと「相続人が誰で、何人いるか」のそれぞれのケースに応じて、相続税額を一目で把握することができます。法定相続人としては原則として被相続人の配偶者・子・親・兄弟姉妹が当てはまりますが、とくに多いのは配偶者と子が相続するケースです。
そのため、この記事で扱う相続税早見表も配偶者と子の相続を例に作成しています。
【ケース別】相続税の早見表と計算方法
ここからは、配偶者や子が相続をする場合を想定し、それぞれのケース別に相続税早見表を見ていくことにしましょう。とり上げるのは、以下のケースです。
- 配偶者のみが相続するケース
- 配偶者+子が相続するケース
- 子のみ(配偶者なし)が相続するケース
1. 配偶者のみのケース
例えば子どもがいない夫婦で夫が亡くなった場合、夫に兄弟もおらず両親(祖父母)もすでに亡くなっていたとなれば、法定相続人は配偶者である妻のみとなります。相続人が配偶者のみのケースでは、相続税早見表は必要ありません。というのも、相続税には「配偶者の税額軽減」という特例があり、これを使えば相続税がゼロ円になるからです。
「配偶者の税額軽減」とは、配偶者が取得する財産のうち、1億6千万円もしくは配偶者の法定相続分相当額のうち、いずれか多い金額までについては非課税となる特例です。配偶者のみが相続をする場合は、法定相続分が100%となるため、全額非課税となるわけです。
配偶者の税額軽減について詳しくは下記の記事もご覧ください。
2. 配偶者+子のケース
配偶者と子どもが相続する場合の法定相続分の割合はそれぞれ2分の1ずつです。配偶者が2分の1、残りの2分の1を子どもが相続します(子どもが複数いる場合は均等に割ります。たとえば、2人なら4分の1ずつ)。
配偶者と子どもが相続する場合の相続税早見表は以下のとおりです。なお、表内の税額は法定相続人が法定相続分の割合に応じて相続し、配偶者の税額軽減を行った場合の数字です。配偶者は1億6千万円と配偶者の法定相続分相当額のうちいずれか多い金額まで相続税がゼロ円なので(配偶者の税額軽減)、その金額までの相続税額は子どもに対する相続税のみとなります。
配偶者と子が法定相続人の場合の早見表
(単位:万円)
財産の評価額 (基礎控除前) |
配偶者 子ども1人 |
配偶者 子ども2人 |
配偶者 子ども3人 |
配偶者 子ども4人 |
---|---|---|---|---|
5,000万円 | 40 | 10 | なし | なし |
6,000万円 | 90 | 60 | 30 | なし |
7,000万円 | 160 | 113 | 80 | 50 |
8,000万円 | 235 | 175 | 138 | 100 |
9,000万円 | 310 | 240 | 200 | 163 |
1億円 | 385 | 315 | 263 | 225 |
1億5,000万円 | 920 | 748 | 665 | 588 |
2億円 | 1,670 | 1,350 | 1,218 | 1,125 |
2億5,000万円 | 2,460 | 1,985 | 1,800 | 1,688 |
3億円 | 3,460 | 2,860 | 2,540 | 2,350 |
3億5,000万円 | 4,460 | 3,735 | 3,290 | 3,100 |
4億円 | 5,460 | 4,610 | 4,155 | 3,850 |
4億5,000万円 | 6,480 | 5,493 | 5,030 | 4,600 |
5億円 | 7,605 | 6,555 | 5,963 | 5,500 |
5億5,000万円 | 8,730 | 7,618 | 6,900 | 6,438 |
6億円 | 9,855 | 8,680 | 7,838 | 7,375 |
6億5,000万円 | 11,000 | 9,745 | 8,775 | 8,313 |
7億円 | 12,250 | 10,870 | 9,885 | 9,300 |
7億5,000万円 | 13,500 | 11,995 | 11,010 | 10,300 |
8億円 | 14,750 | 13,120 | 12,135 | 11,300 |
8億5,000万円 | 16,000 | 14,248 | 13,260 | 12,300 |
9億円 | 17,250 | 15,435 | 14,385 | 13,400 |
9億5,000万円 | 18,500 | 16,623 | 15,510 | 14,525 |
10億円 | 19,750 | 17,810 | 16,635 | 15,650 |
11億円 | 22,250 | 20,185 | 18,885 | 17,900 |
12億円 | 24,750 | 22,560 | 21,135 | 20,150 |
13億円 | 27,395 | 25,065 | 23,500 | 22,450 |
14億円 | 30,145 | 27,690 | 26,000 | 24,825 |
15億円 | 32,895 | 30,315 | 28,500 | 27,200 |
20億円 | 46,645 | 43,440 | 41,183 | 39,500 |
30億円 | 74,145 | 70,380 | 67,433 | 65,175 |
40億円 | 101,645 | 97,880 | 94,115 | 91,425 |
50億円 | 129,145 | 125,380 | 121,615 | 117,850 |
3. 子のみ(配偶者なし)のケース
次に子どものみが相続をする場合を見てみましょう。子どものみの場合は配偶者がいないことから配偶者の税額軽減という大きな控除がなく、さらに法定相続人も減ります。そのため相続税の額も比較的多くなってきます。
子が法定相続人の場合の早見表
(単位:万円)
財産の評価額(基礎控除前) | 子1人 | 子2人 | 子3人 | 子4人 |
---|---|---|---|---|
5,000万円 | 160 | 80 | 20 | なし |
6,000万円 | 310 | 180 | 120 | 60 |
7,000万円 | 480 | 320 | 220 | 160 |
8,000万円 | 680 | 470 | 330 | 260 |
9,000万円 | 920 | 620 | 480 | 360 |
1億円 | 1,220 | 770 | 630 | 490 |
1億5,000万円 | 2,860 | 1,840 | 1,440 | 1,240 |
2億円 | 4,860 | 3,340 | 2,460 | 2,120 |
2億5,000万円 | 6,930 | 4,920 | 3,960 | 3,120 |
3億円 | 9,180 | 6,920 | 5,460 | 4,580 |
3億5,000万円 | 11,500 | 8,920 | 6,980 | 6,080 |
4億円 | 14,000 | 10,920 | 8,980 | 7,580 |
4億5,000万円 | 16,500 | 12,960 | 10,980 | 9,080 |
5億円 | 19,000 | 15,210 | 12,980 | 11,040 |
5億5,000万円 | 21,500 | 17,460 | 14,980 | 13,040 |
6億円 | 24,000 | 19,710 | 16,980 | 15,040 |
6億5,000万円 | 26,570 | 22,000 | 18,990 | 17,040 |
7億円 | 29,320 | 24,500 | 21,240 | 19,040 |
7億5,000万円 | 32,070 | 27,000 | 23,490 | 21,040 |
8億円 | 34,820 | 29,500 | 25,740 | 23,040 |
8億5,000万円 | 37,570 | 32,000 | 27,990 | 25,040 |
9億円 | 40,320 | 34,500 | 30,240 | 27,270 |
9億5,000万円 | 43,070 | 37,000 | 32,500 | 29,520 |
10億円 | 45,820 | 39,500 | 35,000 | 31,770 |
11億円 | 51,320 | 44,500 | 40,000 | 36,270 |
12億円 | 56,820 | 49,500 | 45,000 | 40,770 |
13億円 | 62,320 | 54,790 | 50,000 | 45,500 |
14億円 | 67,820 | 60,290 | 55,000 | 50,500 |
15億円 | 73,320 | 65,790 | 60,000 | 55,500 |
20億円 | 100,820 | 93,290 | 85,760 | 80,500 |
30億円 | 155,820 | 148,290 | 140,760 | 133,230 |
40億円 | 210,820 | 203,290 | 195,760 | 188,230 |
50億円 | 265,820 | 258,290 | 250,760 | 243,230 |
注1: 法定相続人が法定相続分により相続した場合の相続税額。ただし、配偶者がいる場合で遺産総額が3億円までの部分については、配偶者に対する相続税の額軽減を最大限適用しました。
注2: 相続税額控除等は配偶者に対する相続税額の軽減のみとして計算しました。
注3: 相続税早見表の税額は万円未満を四捨五入しているので、実際の相続税とは若干の相違があります。
相続税を実際に計算してみましょう
ここからは具体的な数字を用いて相続税の計算をしてみることにしましょう。
繰り返しになりますが、相続税はまず遺された財産の評価額から基礎控除額を差し引きます。そして残りの額を法定相続分の割合に応じて各法定相続人に配分し、それに応じた税率を適用して算出します。なお、基礎控除額の計算式および税率は以下のとおりです。
基礎控除額の計算式
【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】
相続税の税率
法定相続分の取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
遺産相続が2,000万円の場合の相続税の計算方法
まず、相続した遺産(遺された財産の評価額)が2,000万円だったケースを考えます。基礎控除額は基本的に最低3,600万円なので(法定相続人が1人の場合)、このケースでは基礎控除額以下に収まります。そのため相続税は課税されないことになります。
相続税の申告も不要です。
遺産相続が4,000万円の場合の相続税の計算方法
次に相続した遺産が4,000万円だったケースを考えてみましょう。法定相続人の人数に応じた基礎控除額は次のとおりになります。
法定相続人 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 |
---|---|---|---|---|---|
基礎控除額 | 3,600万円 | 4,200万円 | 4,800万円 | 5,400万円 | 6,000万円 |
この表を見ると、相続税が課税されるのは法定相続人が1人である場合に限られることがわかります(2人以上は基礎控除額が遺産額の4,000万円を上回るので課税されません)。 遺産額の4,000万円から法定相続人が1人である場合の3,600万円を差し引くと400万円です。もし法定相続人が配偶者なら、配偶者の税額軽減で相続税はゼロ円となります。
もし、法定相続人が子どもや親であれば10%の税率が適用されるので、相続税は40万円ということになります。
なお、小規模宅地の特例を用いて基礎控除額以下になった場合については、相続税の申告は必要になりますのでご注意ください。
相続税の早見表を使う時の注意点
相続税早見表はあくまでも相続税の大まかな額を目安として把握するためのものです。正確な税額を出すには配偶者の税額軽減以外に使える控除やそのほかの特例も活用しながら計算をしていく必要があります。
概算ではあっても「相続税がこれくらいになる」ということがあらかじめわかっていれば、納付の準備も進めやすくなるというものです。その意味においても、上手に相続税早見表を活用しましょう。
おわりに:相続税の概算は、早見表を使えば事前に確認できる
相続税の支払い義務が生じる可能性の高い人にとって、最も気になるのは「相続税がいくらになるのか」ということでしょう。相続税は相続した財産の評価額と法定相続人の数、被相続人と法定相続人との関係などによって異なってきます。さらに各種控除や特例などを組み合わせながら細かく計算していくことが必要です。
そうした細かな計算はひとまず脇に置き、とりあえずはだいたいの目安がわかればいいという人にとって便利なのが「相続税早見表」です。この記事では、その相続税早見表についての基本的な知識と活用方法をお伝えしました。ぜひお役立てください。
相続税早見表でだいたいの相続税額の見当がついたはいいものの、思っていた以上に税額が大きくなることがわかって心配や不安を抱いたという人もいるのではないでしょうか。そうした場合は、相続税に関する実績が豊富な税理士にぜひ相談をしてみてください。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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