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相続の知識

土地の分筆登記とは?費用の相場や必要書類をわかりやすく解説

相続した土地に複数の相続人がいる場合や、土地の使い方を部分的に変更したい場合、土地を分けて登記し直す「分筆登記」により解決可能です。分筆するメリットやデメリット、注意点などを解説します。ただし、あくまで基本的な解説であり、個別のケースでは手続きや必要書類が異なる可能性もあるため、専門家への相談も検討しましょう。

土地の分筆登記とは

土地の分筆理由土地を数える際の単位は「筆(ひつ)」です。「分筆(ぶんぴつ)」=「土地を分ける」の意味となります。逆に土地をまとめることを「合筆(ごうひつ、がっぴつ)」と呼びます。

分筆と似た言葉として「分割」もありますが、両者の違いは登記の有無です。

「分筆」は、新たな地番で登記されることになります。例えば、○○町2丁目15番が、○○町2丁目15番1と○○町2丁目15番2などに登記変更されます。分筆する際は、国家資格を持つ土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。

一方、「分割」は登記変更をしません。建築基準法に従う必要はあるものの、土地を図面上で区切るだけであり、建築士などに依頼することも可能です。例えば、親が居住する家の敷地の一角に子が家を建てる場合などが該当します。この場合、子の家が建っている部分の土地の所有者は、親のままです。

分筆する理由としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 土地の相続人が複数人いる
  • 土地の一部だけを売りたい
  • 土地の一部の利用方法を変更したい
  • 土地を担保にしたい

ひとつの土地を複数人で相続する場合、相続した土地をどうしたいか意向は異なることがほとんどです。分筆して相続するなら、後日土地の売却や家の新築をそれぞれ自由に行えます。

また、持っている土地の一部を売却したり、地目変更したりしたい場合もあります。例えば、土地の一部を月極駐車場としたり、負債を返すために売却したりするといったケースなどです。

さらに、事業の資金調達や住宅ローンなどで借入をする際に、所有する土地を抵当に入れる場合、土地の一部だけで十分な資産価値があるなら、分筆してその土地だけを抵当に入れることも可能です。そうすることにより、もし返済不能に陥った場合でもすべての土地を失わずに済みます。

土地の分筆登記を行うメリット

分筆登記を行うメリットには、以下のような点が挙げられます。

  • 相続後の活用トラブルが回避できる
  • 地目変更によって土地の新しい活用ができる
  • 税金が安くなる可能性がある

相続後の活用トラブルが回避できる

ひとつの土地を複数人で相続する際、分筆せずに複数人の共有名義にすることも可能です。ただし、共有名義にすると、名義人全員が合意しなければ、土地の売却や家の新築ができなくなってしまいます。家を建てたい、土地を売却したいなど、相続人によって意向が異なる場合は、分筆して相続することでトラブルを回避できます。
相続時には同じ意向だったとしても、将来的に誰かの気持ちが変わったり、子孫の代になり合意が難しくなったりする可能性もあります。よって、分筆登記して相続した土地を自由に活用できるのは大きなメリットです。

地目変更によって土地の新しい活用ができる

土地には田や畑、山林、宅地などの地目(用途)が設定されています。ひとつの土地の地目は、23種類ある用途の中からひとつだけです。そのため、土地の一部を別の用途で活用したい場合は分筆登記し、分筆した土地に新しい地目を設定しなければいけません。また、田や畑などの農耕地の地目変更は、農業委員会に許可を取る必要があるため注意しましょう。

農地の相続については、下記の記事もご覧ください。

税金が安くなる可能性がある

立地によっては税金を安くできる可能性があります。土地の評価額を算出する際には、路線価(道路に接する1㎡あたりの価格)が用いられます。路線価は交通の便が良い道路や基幹道路において高くなる傾向があるため、土地が地域の基幹道路に接していると評価額が高くなり、その分固定資産税や相続税も高くなります。
分け方にもよりますが、基幹道路に接している土地を分筆した場合、基幹道路に接しないようにした土地は評価額が下がることがあります。固定資産税や相続税・贈与税は評価額が高いほど多くなるため、これによってトータルの税金を下げることが可能です。分筆登記には費用がかかるものの、長い目で見ると節税できる可能性があることも分筆のメリットです。

土地の分筆登記を行うデメリット

土地を分筆すると、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。分筆を検討している土地が以下の状況に当てはまらないか確認しておきましょう。

  • 売却が難しくなることがある
  • 土地の活用方法が難しくなる
  • 固定資産税の特例措置が適用できなくなる

売却が難しくなることがある

広すぎる土地は分筆することで売却が容易になることがありますが、分筆により土地が狭くなりすぎたり、正方形や長方形以外のいわゆる「不整形地」(旗竿地、三角形や台形の土地など)になったりすると、売却が難しくなることがあります。

土地の活用方法が難しくなる

売却しないケースでも、分筆により土地の使い勝手が悪くなる可能性もあります。接道義務ゆえに旗竿地のような形状になったり、家を建てるにも建ぺい率の関係で小さな家しか建てられなかったりするかもしれません。実家が住宅街に囲まれた1つの住宅地で、その土地を子2人で分筆した場合、1人1人の狭い土地の中ではさらに活用方法が限られてしまうでしょう。いくら平等に分けられるといっても、相続人全員が活用しやすい状態を確保できるか、分筆前に考えておく必要があります。

固定資産税の特例措置が適用できなくなる

住宅用地に対する特例措置により、家が建っている土地は固定資産税が軽減されます。しかし分筆すると、家が建っていない土地には特例措置が適用されなくなり、結果的に分筆前よりも固定資産税が上がってしまうことがあります。

特例措置が適用できる場合、固定資産税や都市計画税の課税標準額は基本的に以下のようになります。

小規模住宅用地の土地面積 固定資産税 都市計画税
200平方メートル以下 6分の1に減額 3分の1に減額
200平方メートルを超える部分 3分の1に減額 3分の2に減額

土地の分け方によっては、課税負担が大幅に増えるため注意が必要です。

土地の分筆登記にかかる費用の相場

土地の分筆登記には主に以下のような費用がかかります。

1.登録免許税

分筆登記の際に法務局に支払う費用で、1筆1,000円です。分筆後の土地の筆数に応じて支払います。

2. 土地家屋調査士への報酬

通常支払う費用

  • 分筆登記申請の依頼料:5万円程度(自分で申請する場合は不要)
  • 測量費:10万円~
  • 境界標設置費:3~10万円程度

状況に応じて支払う費用

  • 筆界※確認書作成費:10万円~
  • 官民境界確定図作成費:10万円~

(※筆界:登記された土地の境界線)

上記を踏まえると、状況別の費用合計額の相場は以下のようになります。

分筆状況 費用合計(相場)
依頼内容が複雑ではない場合(境界がすでに確定している等) 15万~30万円程度
確定作業をして筆界確認書を作成する必要がある場合(隣地所有者との土地の境界が確定していない等) 数十万円
官有地との境界確定が必要、または土地の面積が広大な場合 80万円~100万円以上

これらの費用は、土地を売りたい場合は売主が、土地の一部を買いたい場合は買主が負担するのが一般的です。

土地の分筆登記に必要な書類

土地の分筆登記の際に必要なのは、以下の書類です。

書類名 概要
登記申請書 申請者の住所、氏名、申請年月日、登記の目的、登録免許税額などを記載
地積測量図 測量ソフトで作成され、用紙の強度やサイズ、文字の大きさ、太さまで法令で厳正に定められている
境界確定資料 隣地所有者の筆界確認書など
地形図 土地家屋調査士が申請の際に添付するもので、公図(法務局が公開する地図)に分筆された境界線を入れた書類
(委任状) ※本人が申請する場合は不要

土地の分筆登記を行う場合の手続きの流れ

土地の分筆登記は、主に以下のプロセスで進みます。また、土地の境界線が確定していると2週間ほどで完了するケースもありますが、境界確定測量が長引くと数ヶ月かかるケースもあります。

1. 土地家屋調査士との面談、依頼

初めに行うのは土地家屋調査士への依頼です。複数の土地家屋調査士と面談し、見積もりや対応から判断して、希望に合う土地家屋調査士と契約しましょう。
必須ではありませんが、土地の面積や形状などの情報が記された地積測量図や、境界線が記された境界確認書を面談の際に準備しておくと、より具体的な計画の立案と正確な見積もりが出ます。

2. 土地家屋調査士が情報収集

契約を結ぶと、土地家屋調査士は法務局や役所で分筆予定の土地の公的な資料を集めます。情報収集には依頼者の同行は必要ありません。

3. 境界確定測量と筆界確認書の作成

最も時間がかかる作業で数カ月を要します。隣地所有者などの立会いのもと、土地家屋調査士が分筆前の土地を確認し、必要であれば境界確定測量を実施し、新たに筆界確認書を作成します。これらの作業には隣地所有者の協力も必要なため、事前に事情を説明する必要があります。その際は、土地家屋調査士だけではなく、依頼者も同行したほうが理解を得やすいでしょう。

4. 分筆案の作成と境界標の設置

分筆する当事者で分け方を話し合いますが、土地の活用方法によって適した分け方は異なります。
用途に応じて、建築士や不動産業者、または土地の相続に特化した専門家(税理士など)への相談が推奨されます。
決定したら土地家屋調査士に報告し、分割ポイントに境界表を設置します。

5.書類の作成と登記申請

土地家屋調査士が必要書類を作成し、法務局に分筆登記します。土地の所有者を変更する場合、司法書士にも依頼する必要があります。

土地の分筆登記を行う際の注意点

土地の分筆登記を行う際の注意点は、主に以下の3つです。

2筆以上の土地をまとめて、または連続で売却できない

土地を複数売ったり、頻繁に売ったりできるのは、認可を受けた業者のみです。認可を受けていない個人が2筆以上の土地を売却すると事業性があると判断され、「宅地建物取引業法」違反で罰せられる可能性があります。売却から一定期間が経過すれば問題ないとされることもありますが、明確には定められていません。

接道義務などの建築基準法を守る

どんな形でも自由に分筆ができるわけではありません。旗竿地で道路に接している部分が2m未満だったり、道路に接していなかったりする土地には家を建てられませんので、建築基準法をきちんと確認する必要があります。その点でも、専門家に相談することがおすすめです。

地域の条例も守る

建築基準法よりも、もっと厳しい条件の接道義務や、建物を建てられる面積が条例で定められている自治体もあります。地域の条例に通じた土地家屋調査士に依頼しましょう。

土地の分筆登記は自分でできる?

分筆登記は、自身で申請することも法的に不可能ではありません。
しかし、手続きは複雑で手間もかかります。境界が確定していなければ境界確定測量が必要になり、登記の際に添付する地積測量図の作成には測量ソフトが用いられます。このように分筆には専門知識が必要なため、土地家屋調査士に依頼するのが基本です。また土地の所有者が変わる場合は権利登記の手続きがあるので、司法書士にも相談しましょう。

おわりに:相続した土地の分筆登記は慎重に検討を

相続や土地活用の多様化に分筆は有用です。ただし、税金が高くなったり、逆に活用方法が限定されたりしないかに注意する必要があります。分筆登記は手続きが複雑で手間もかかります。分筆について理解することは重要ですが、実際に手続きを自分でするかは状況により判断しましょう。

効果的に分筆のメリットを得るためには、専門家への相談が推奨されます。土地家屋調査士に依頼するほか、相続が絡んでいるケースには相続に特化した税理士への相談も検討しましょう。相続でお困りの際は相続税申告で数多くの実績を持つ相続専門・税理士法人レガシィへご相談ください。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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