相続税の申告なら相続専門税理士法人レガシィ【公式】

相続の知識

相続登記とは?手続きの流れや費用をわかりやすく解説

亡くなった人から相続により、土地・家屋などの不動産を引き継いだ場合は、その不動産を法務局(登記所)で登記することが必要です。その手続きの仕方を確認しましょう。

相続登記とは、「相続する不動産の名義変更」のこと

不動産の登記とは、法務局で管理する登記簿に、どこにあるどんな土地・建物に関して、所有者がだれで、担保としてどこからいくらの借り入れがあるかといった情報を記録するものです。これによって第三者に対し、その不動産の権利を明らかにする制度です。

相続で不動産を取得したら、亡くなった人の名義で登記されていた土地または家屋を自分の名義に変更する「所有権の移転登記」を行うことで、名実ともにその不動産の所有者になったことを証明できます。相続後に、その不動産を売却したり、賃貸活用したりする際も、先に相続登記を済ませておくことが必要です。

相続登記の流れ4ステップ

不動産の登記は、その不動産の所在地を管轄する法務局で行います。不動産登記の専門家である司法書士に依頼するケースも多いですが、もちろん手順を知っていれば自分でもできるので、まずは流れを確認しておくと良いでしょう。

1.相続する不動産を確認する

亡くなった人が不動産を所有していたら、その不動産の状態、権利関係などを確認します。自宅などに登記事項証明書(登記簿謄本)があれば、それで確認できますが、なければ管轄の法務局で入手して調べることもできます。現在はオンラインでの閲覧や申請も可能です。

不動産は、土地、家屋に分けて登記されているので、まずはそれぞれの所有者を確認します。土地は一つの敷地として利用していても、登記簿ではいくつかの筆に分かれていることがあり、一筆ごとに登記されているので、それぞれの面積もチェック。家屋は床面積のほか、どういう建物か、構造などを確認しましょう。

亡くなった人の所有していた土地・家屋が、配偶者や他の親族との共有名義になっていたら、相続できるのは亡くなった人の「持分」だけになります。また、敷地につながる私道が近隣世帯との共有名義になっている場合や、区分所有マンションの敷地も、亡くなった人の持分が登記簿に記載されているので、その持分を相続し、名義を変更することになります。

2.遺言または遺産分割協議で引き継ぐ人を決める

遺産相続については、遺言書があればそれが優先されるため、その遺言で不動産を引き継ぐ人を確認します。遺言書がない場合は、相続人による遺産分割協議で遺産の分け方を話し合い、不動産についてもだれが引き継ぐかを決めることになります。決めた内容に全員が合意したら、それを遺産分割協議書にまとめ、相続人全員の署名・捺印をします。

以後は、不動産を引き継ぐことになった人が、必要な書類を集めて相続登記の準備を行い、手続きをすすめます。

3.相続登記に必要な書類を収集、作成する

相続登記に必要な書類は、亡くなった人の戸籍関係の書類や、相続人に関する書類、対象となる不動産の固定資産評価証明書など、複数あります(詳しくは後で説明します)。

登記申請書は法務局のホームページで書類の様式をダウンロードでき、記載例もついているので、それをもとに必要事項に記入して作成し、用意します。

現在は法務局で実施する「法定相続情報証明制度」を利用し、法定相続情報一覧図の写しを入手すると、その写しが相続登記のほか、金融機関の相続手続きにも利用できるなど、大変便利です。相続登記の申請時に、一緒にこの制度を利用して一覧図の写しを入手することもできます。提出した戸籍関係の書類も返却されるので、申請前に相続関係がわかる一覧図を作成しておきます。

4.管轄の法務局へ申請する

対象の不動産の住所地を管轄する法務局へ行き、不動産登記の窓口を探して、登記申請書と添付書類一式を提出して申請します。登記申請には登録免許税の納付が必要で、先に別の窓口でその分の収入印紙を購入し、申請書に貼り付けて提出します。

法務局での書類の審査と登記には1週間~10日くらいかかります。無事に登記が済んだら、登記識別情報の通知や登記完了証を受け取れるので、そのまま大切に保管します。

相続登記の2つの方法

相続登記に限らず、不動産の登記の仕方には、「単独登記」と「共有登記」の2つの方法があります。その違いも押さえておきましょう。

1人で相続するなら「単独登記」

遺言または遺産分割協議により、亡くなった人が所有していた土地・建物を1人の人が引き継ぐときは、その人の名義に所有権を移転する単独登記になります。所有者が1人のため、その土地・建物を担保に融資を受ける、売却するなどの判断も1人で行え、以降の手続きもスムーズにできます。

2人以上で相続するなら「共有登記」

前述と同様に、遺言や遺産分割協議によって兄弟姉妹などが共有で不動産を引き継ぐケースもあります。その場合は共有登記になり、それぞれの持分(所有割合)を明記して登記します。たとえば、兄弟2人で半分ずつ相続する場合は、それぞれの氏名と「持分100分の50」という割合を記載します。共有名義で登記するときも、司法書士に依頼して同時に登記の申請ができます。

ただし、不動産を共有すると、次の相続が起こったとき、相続人が増えて権利関係が複雑になるケースもよくあります。売却・活用の際も持分のある人全員の合意を得ることが必要になり、手続きなども煩雑になります。広い土地であれば、最初に分割して、それぞれで単独登記をするといった方法もあるので、共有名義はできるだけ避けることも検討しましょう。

相続登記に必要な8つの書類

①登記申請書

申請書は法務局のホームページからダウンロードすることができるので、事前に状況別の書類の様式を取得し、記載例を参考に作成しましょう。

【参考】法務局:不動産の所有者が亡くなった

②不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)

所有権の移転登記を行う土地・家屋などの情報を確認し、申請書に記入するために、現状の登記事項証明書を手元に用意します。その不動産の表示に関する番号や所在地などは登記簿通りに記入します。自宅などにない場合は、管轄の法務局にオンラインや郵送で申し込み、取得できます。

③遺言または遺産分割協議書

遺言により相続する場合は、その遺言書も用意しますが、自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認済証明書が必要です。公正証書遺言は現物、法務局の保管制度を利用した自筆の遺言書は「遺言書情報証明書」を入手し、提出します。

遺産分割協議によって相続する場合は、相続人全員の実印を押した遺産分割協議書と、それぞれの印鑑証明書も必要です。

なお、相続人が1人で遺言書もない場合は、どちらも必要ありません。

④被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本

最初に被相続人の死亡時の戸籍謄本を入手し、その戸籍がどこから移されたのかを確認します。確認できたらひとつ前の戸籍謄本を本籍地の役所で入手し、同様にさかのぼって出生時までの戸籍謄本を入手します。遠方の役所は、郵送で取り寄せることもできます。高齢の人の場合、戸籍は何度か改正されているので、改製原戸籍謄本も必要です。

⑤被相続人の住民票の除票

被相続人の最後の住所地の役所で入手します。

⑥相続人全員の戸籍謄本、住民票

相続人が、それぞれ本籍地のある役所から戸籍謄本を入手します。法定相続情報証明制度を利用して相続関係一覧図の写しを入手する際は、相続人全員の住民票も必要です。

⑦法定相続人の印鑑証明書

遺産分割協議によって相続した場合、遺産分割協議書に押印する際に使用した印鑑が実印であることを証明するための書類です。相続人それぞれが印鑑登録した役所で入手します。

⑧固定資産評価証明書

申請に必要な登録免許税を計算する際に必要な書類です。その不動産がある地域の役所などで入手します。東京23区の場合は都税事務所。いずれも窓口のほか、郵送での取り寄せもできます。

相続登記に必要な費用は「登録免許税」と「司法書士の報酬」

相続した不動産を登記する際は、上で説明した必要書類の入手費用のほかに、登録免許税がかかり、司法書士に依頼する場合はその費用もかかります。

①登録免許税

不動産の登記に必要な登録免許税は、その不動産の取得方法などで異なります。相続により取得し、所有権の移転登記をする場合の登録免許税は、次のように計算して求めます。

土地・建物それぞれ→固定資産税評価額×1,000分の4 (千円未満は切り捨て)

この金額の収入印紙を法務局で購入し、登記申請書に貼付して提出します。

②司法書士の報酬

不動産登記の手続きは、その専門家である司法書士に依頼すると、必要書類の入手から申請書の作成、法務局への提出まで任せられ、手続きがスムーズにすすめられます。その場合、書類の入手費用や郵便代、交通費などの実費に加え、司法書士の報酬がかかります。

司法書士の報酬は平均6万~10万円程度ですが、登記する不動産が複数あったり、手続きする法務局が数か所にわたる場合などは高くなるため、事前に見積もりを取って確認しましょう。

登記の完了までは1週間~10日程度かかり、完了後に以下の書類を受け取ります。

  • 登記識別情報通知書
  • 登記完了証
  • 戸籍謄本などの原本一式の還付

司法書士に依頼すれば、完了予定日に法務局の窓口でこれらを受け取り、自宅などに郵送してもらえる点も便利です。

相続登記に期限はないが早めに済ませよう

不動産の登記については、これまで法律的な期限が定められていなかったため、手続きが面倒だったり、相続で揉めたりして、所有者死亡後はそのまま放置されるケースもありました。しかし、相続後にきちんと登記をしていないと、次のように困る事態が出てきます。

相続登記をしないデメリット3選

所有権の移転登記をしていない不動産の大きな問題は以下の3つです。

相続する不動産の売却・賃貸ができない

土地・建物などの不動産を相続しても、所有者の名義が元のままだと、その不動産を売却して換金したり、賃貸に回したりすることはできません。当面はそのまま引き継いで居住する場合でも、将来、建て直しをする際や、住み替えで売却する際にも、登記簿で所有者の名義が本人であることが必要になります。

相続する不動産を担保に融資を受けることができない

自分名義の土地などがあれば、それを担保に金融機関から借り入れをすることができます。家の建て直しや、別の不動産の購入時にローンを組む際にも、相続した不動産は所有権の移転登記を行い、自分の名義に変更しておくことが不可欠です。

新たな相続が発生したら、相続人の確定が大変になる

相続登記をしないうちに、次の相続が発生したら、相続人の数が増えて権利関係が複雑になり、余計な手間や費用がかかることになります。実際に、父が亡くなったことで所有不動産の相続登記を行おうと思ったら、その不動産の名義が祖父のままだったというケースもあります。そのような場合は、祖父の代にさかのぼって遺産分割をやり直し、登記の手続きも2回行う必要があります。

こうなると、相続人を確定して連絡を取り合うのも困難になり、その不動産の活用もできなくなります。管理する人の手間や固定資産税にも影響するので絶対に避けたいところです。

【最新情報】相続登記の義務化がスタート予定

前述のとおり、相続登記についてはこれまで法的なルールが定められておらず、相続登記の義務化に関する法案が2021年4月21日に参院本会議にて可決・成立し、2024年までに施行される予定でしたが、ついに2021年12月に施行日が「2024年4月1日」と定められました。

相続登記については、相続により取得することを知ってから3年以内に登記申請を行うことが義務付けられ、違反すると10万円以下の過料が課されます。10年たっても遺産分割が決まらない場合は、法定相続割合で分割することも定められます。

また、所有権を登記した人が引っ越して住所を変更したり、結婚などで氏名が変わったりした際にも、住所・氏名変更の登記が必要で、この申請は2年以内と定められ、違反すると5万円以下の過料になります。

これらは改正法の施行後に新たに相続する人が対象になります。施行前に相続が発生する場合は、一定の猶予期間を定めて適用することも予定されていますので、これから相続を迎える人は十分な注意が必要です。

相続登記の義務化については、こちらもご覧ください。

おわりに:複雑な書類作成や手続きは専門家に相談しよう

相続登記は、申請方法や書類を確認し、しっかり準備して法務局で手続きすれば、自分で行うこともできます。しかし、相続に伴う手続きは不動産だけでなく、金融機関などの複数箇所にわたることも多いため、多忙な人にとっては負担が重くなります。また、遺産分割協議書や登記申請書の不動産の表示は登記簿通りに記載しないとならないため、間違いや記載漏れがあると、やり直しで二度手間になることもあります。

心配なら、最初から司法書士に相談し、任せることを検討しましょう。相談できる司法書士に心当たりがない場合は、税理士など専門家のネットワークで、紹介してもらうこともできます。

当社は、コンテンツ(第三者から提供されたものも含む。)の正確性・安全性等につきましては細心の注意を払っておりますが、コンテンツに関していかなる保証もするものではありません。当サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、かかる損害については一切の責任を負いません。利用にあたっては、利用者自身の責任において行ってください。

詳細はこちら
この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

無料面談でさらに相談してみる