相続の知識

おひとりさまの老後に備える!女性の方がリスク高?今からできる対策方法

おひとりさまの老後には、経済面や健康面などさまざまなリスクがつきまといます。快適で楽しい老後を過ごすために、知っておきたい老後のリスクを解説します。認知症や孤独死といった深刻な問題において、今からできる有効な方法もあわせて紹介します。

おひとりさま老後のリスクとは

結婚に対する価値観が多様化してきた現在、いわゆる「おひとりさま」で老後を迎える方が増加しています。また結婚をしていても、配偶者が先に亡くなってしまえば、自動的におひとりさまになります。つまり、どんな状況下の方でも、ある日突然「おひとりさま」となることはあるのです。

おひとりさまには自由にお金や時間が使えるというメリットがありますが、老後においてはデメリットも多々あります。まずは、おひとりさまにおける老後のリスクについて確認しておきましょう。

①経済的なリスク

総務省統計局「2019年全国家計構造調査」によると、65歳以上・無職の単身世帯の一ヵ月あたりの支出および実収入額は以下のようになっています。

65歳以上・無職の単身世帯の一ヵ月あたりの支出および実収入額

  男性 女性
平均支出額 162,603円 149,145円
平均実収入額 149,802円 128,908円
差額 -12,801円 -20,237円

平均支出額の算出にあたっては、衣食住にまつわるお金や交際費などの日常的な支出に加え、税金や社会保険料などの支出も含まれています。単身世帯の実収入の多くは、公的年金である国民年金や厚生年金から構成されています。統計からわかるように、男女ともに支出が収入を上回っており、この差額分を貯金で賄わなければなりません。

ここで「100年生きると仮定しても、65歳からの35年間なら不足分である840万円(2万円×12カ月×35年)だけ貯めれば大丈夫なのでは?」とも考えられます。しかし、統計での支出における家賃分は、全体の支出の約1割である14,000円ほどしか計上されていません。これは持ち家で家賃が不要の場合も含まれているためで、賃貸住まいの場合だと月々の支出額は増加します。また厚生年金未加入の場合には、さらに収入が不足します。
おひとりさまの経済的なリスクを回避するには、まとまった貯金を準備しておくことが重要です。

②健康面のリスク

1人暮らしで不安を感じるのは、病気になったときです。
内閣府男女共同参画局の調査(高齢者の自立した生活に対する支援に関する監視・影響調査中間的な論点整理)によると、男性は脳卒中などの脳血管疾患が原因で要介護となる場合が多い一方、女性はリウマチや認知症、骨折・転倒などによって要介護になることが多く見られます。老化で体力や気力も落ちているため、通院も大変であり、一人暮らしにより病気の発覚が遅れる恐れもあります。脳卒中のように一秒を争うような疾病の場合は、孤独死のリスクも高まるでしょう。

要介護となった場合などに頼れる身内が近くにいないという人は、ぜひ健康なうちに高齢者施設や介護保険サービスなどを調べておくと安心です。

③孤独死のリスク

おひとりさまの老後において、大きな不安事項は「孤独死」です。孤独死は年々増加しており、東京都福祉保健局のデータ(東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和2年))によると、令和2年の東京都23区における孤独死(自宅住居で亡くなった単身世帯)の数は8,950件で、そのうち65歳以上の割合が6,311件と約7割を占めています。

経済的な不安も孤独死に関係しており、生活に余裕がなくなると体調の不調は見過ごすようになるため、病気の早期発見ができなくなる恐れがあります。また精神面においても、趣味に没頭している間は寂しさを感じにくいですが、一人暮らしは人とのコミュニケーションが少なくなるので、ふとした瞬間に孤独を感じやすくなりがちです。体の健康だけでなく、心の健康維持にも努めましょう。

おひとりさまの老後対策1【経済的なリスクへの対応方法】

豊かな老後を過ごすためには、まずは老後の資金を確保することが不可欠です。ここでは老後資金の貯蓄額の目安や運用方法について紹介します。

貯蓄を行う

前述のデータからわかるように、高齢者の一人暮らしでは収入より支出の総額のほうが毎月約1〜2万円多く、公的年金だけでは老後の生活は維持できません。特に賃貸暮らしの人、厚生年金受給額が少ない場合や受給できない場合は、収入が大幅に減ることになり、生活費の大部分を貯金で賄わなくてはなりません。公的年金受給額や生活における支出は人によって異なるので、若いうちから計画的に資金を貯めていくことが重要です。

「iDeCo(確定拠出型年金)」は貯蓄とは少し異なりますが、一定の金額を積み立てて運用していき、60歳~75歳までにまとまった資金を受け取ることができる制度です。60歳まで解約ができないことから『自分で作る年金』とも呼ばれ、つい無駄遣いをして貯金ができない人にも有効です。
また運用益が非課税になること、積み立てた金額は所得控除の対象となることから人気が高く、運用商品も候補の選択肢から自分で選ぶことができます。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、老後資金形成の選択肢のひとつとなるでしょう。

【参考】国民年金基金連合会『iDeCo公式サイト』

投資を行う

老後資金を増やすには、投資も有効です。投資には、投資信託や株式投資、外貨定期預金、NISAなどがあります。すでに運用中の方も多いでしょうが、貯金の利息率が低い現在では、毎月少額からでも投資により資産運用をすることがおすすめです。

NISAは2024年度から非課税保有期間が無期限となるうえに、投資枠も最大年間360万円(積立投資枠年間120万円・成長投資枠年間240万円)に拡大します。通常の定期預金や株式売買では利益の約2割が税金として差し引かれるため、非課税で運用できるNISAは資産運用には最適な方法のひとつです。

【参考】金融庁『NISA特設Webサイト』

おひとりさまの老後対策2【健康面のリスクへの対応方法】

楽しい老後を過ごすためには、心身ともに健康であることが一番です。ここではおひとりさまの老後対策として、病気にならないための対策と、万一病気になってしまった場合の対策について紹介します。

認知症予防にコミュニティなどへ参加する

認知症は、記憶障害や理解力の低下、うつ状態などさまざまな症状を引き起こします。おひとりさまの老後を快適に過ごすためには、認知症にならないように対策を取ることが大切です。認知症予防に効果的な対策としては、以下のようなものがあげられます。

  • 運動不足防止のために、日常的に散歩やストレッチなどで体を動かす
  • 脳トレをする
  • コミュニティへの参加などにより、会話を増やす

運動は血流を改善し、脳内の神経物質の量を増加させるとともにニューロンの成長を促す効果があります。また、体力がつくことで自信もつきます。
特に「会話」は認知症予防に大きく影響を与えると言われており、配偶者が亡くなったことで会話量が減り、一気に病状が加速する方も多いのです。そのような場合にも備えて、日頃から複数のコミュニティに入っておくことをおすすめします。1つしかコミュニティがないと、いざ関係性にストレスがかかったときに逃げ出せません。複数所属することで、安心感や適度なストレス、また活動内容の多様性などが生じ、健康面でも良いとされています。

かかりつけ医を決めておく

高齢者が健康的な生活を送るために欠かせないもののひとつが、かかりつけ医です。定期的にかかりつけ医に診察してもらうことで、ささいな症状から思いがけない病気の発見につながることがあります。
かかりつけ医は地域に密着しており、最新の設備を持つ大病院とは異なりますが、最新の医療情報にも詳しく、地域の保健福祉との密接な連携もしています。かかりつけ医に相談すれば、これまでの診察履歴から総合的な診断や専門医の紹介などを受けることが可能です。

万が一の入院用バッグを準備しておく

一人暮らしの場合は、万が一に備えて入院用のセットを用意しておくと良いでしょう。健康保険証やお薬手帳など医療関係で必要な書類をひとまとめに整理したファイルを作成しておいたり、バッグに数日分の着替えや緊急連絡先を入れておいたり、予めまとまっていると安心です。
入院時には身元保証人や身元引受人を求められますが、必ずしも家族や親戚じゃないとだめということはありません。身近に頼れる人がいる場合は事前に相談し、入院費や健康保険の費用などお金の話もしておくことが重要です。

介護施設や老人ホームについて調べておく

高齢になると脳卒中や転倒のリスクが高まるため、元気だったはずなのに、ある日突然「寝たきり」の状態になってしまうことも少なくありません。寝たきりとは、介護レベルでいうところの「要介護5(生活全般にわたって全面的な介助が必要)」とされるレベルです。
このような突然の事態に備えて、事前に介護施設や老人ホームなどについても調べておきましょう。一番気になるのは費用のところかと思いますが、老人ホームには公的施設と民間施設があり、利用料金は施設の形態によって異なります。また介護レベルの段階によって入居できる施設が限られる場合もありますので、条件などについても元気なうちに概要を把握しておきましょう。

要介護1 要支援状態から、手段的日常生活動作を行う能力がさらに低下し、部分的な介護が必要となる状態
要介護2 要介護1の状態に加え、日常生活動作についても部分的な介護が必要となる状態
要介護3 要介護2の状態と比較して、日常生活動作及び手段的日常生活動作の両方の観点からも著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要となる状態
要介護4 要介護3の状態に加え、さらに動作能力が低下し、介護なしには日常生活を営むことが困難となる状態
要介護5 要介護4の状態よりさらに動作能力が低下しており、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態

出典:厚生労働省『介護保険制度における要介護認定の仕組み』

おひとりさまの老後対策3【孤独死のリスクへの対応方法】

配偶者や子どもがいない(もしくは先立たれた)ため、万が一死亡してしまった場合、生前の情報を共有して後の手続きを依頼できる宛を確保しておくことも考えておく必要があります。そういった場合を想定して、健康なうちに対策を講じておきましょう。

身元保証人・身元引受人を決める

「老後は誰にも迷惑をかけない」と決めていても、入院や介護施設への入所には身元引受人が必要です。親族で頼れる人がいる場合は、元気なうちにお願いをしておきましょう。身元保証人には支払い責任がともなうので、場合によっては断られることがあります。そのような事態に陥らないためにも、資金をしっかり確保したうえで、日頃から親族との関係性も良好に保つことが大切です。また親族ではなく友人でも問題ありませんので、お互いに何かあったら身元保証人を引き受けてくれるような友人関係を築けると理想です。

引受人となってくれそうな人がいない場合、まずは「地域包括支援センター」に相談してみましょう。人口2~3万人につき1カ所設置されており、65歳以上であれば、保険・医療・福祉などの面で総合的に相談にのってくれます。身元保証会社の紹介などもしてもらえることが多いので、近くの支援センターを探してみることから始めてみましょう。

見守りサービスを検討する

一人暮らしでは、もしものときに発見する人がいないことも懸念点として考えられます。そのような場合は、まず地域の民生委員に相談してみましょう。民生委員とは、厚生労働大臣から委託されている地域福祉のボランティアを行う方々です。地域によっては、高齢単身世帯の家に訪問する活動を行っているところもあります。
また民間企業の「見守りサービス」も併せて検討してみましょう。見守りサービスとは、例えばドアや冷蔵庫の開閉をセンサーで察知して登録者にお知らせを送ったり、定期的な訪問をしてそのときの様子を親族などに報告してくれたりするサービスです。離れて暮らす親の見守りとして利用されることが多いですが、おひとりさまでも親しい友人・近所の人を通知先に設定することで、安心して過ごすことができます。

生前整理をおこなっておく

生前整理も、おひとりさまの老後には大切なことです。生前整理というと終活の印象が強いですが、人生の節目に少しずつおこなうことが重要です。生前整理では家の中の不用品の片付けや不動産関係書類の整理、資産運用の見直しなどをおこないます。こういった作業は時間と体力が必要なため、元気なうちに取り掛かることをおすすめします。

生前整理の詳しい内容は下記にまとめていますので、参考にしてください。

死後事務委任契約を交わす

老後の対策として、亡くなったあとの手続き準備もしておきましょう。死後は葬儀だけでなく、健康保険や年金の返納手続き、住居の遺品整理、公共サービスの解約・清算手続き、財産分与など様々な手続きが発生します。
死後の手続きについては、親しい友人や専門家に委託をすることができます。それが「死後事務委任契約」です。財産管理はできないものの、主な手続き全般を代行できます。ただし専門家の場合は数百万円の報酬が必須です。友人等へ依頼する場合も、かかる費用+お礼の金額を試算して「預託金」として預けておきましょう。

葬儀はどのような形態が良いのか、誰に財産を相続するのか、どのような財産があるのか、負債はあるのか、また友人知人の連絡先などは「エンディングノート」にまとめておくとスムーズです。
遺贈を考えている場合は、意向にあった遺贈先を決めておきましょう。

相続税の試算をする

長年おひとりさまで暮らしてきた方は、財産が多く残っていることも多いです。お世話になった友人や兄弟姉妹の子(甥・姪)などに良かれと思って財産を遺しても、じつは多額の相続税がかかってしまうケースもあります。特に不動産はその価値が大きいことから、不動産だけを譲り渡してしまうと、それに伴う税金が現金で必要になります。相続した方が資金難となることもありますので、相続税がどれくらいかかるのかについても事前に試算しておくと良いでしょう。
相続専門の税理士法人レガシィでは、相続税の試算サービスを実施しております。興味のある方は、ぜひお問い合わせください。

税理士法人レガシィ『生前対策』

まず相続税について知りたい方は、以下の記事も参考にご覧ください。

おわりに:おひとりさまの老後対策はケース別に判断

おひとりさまの老後は準備が大切です。生活資金の確保・日頃の運動習慣による健康維持・生前整理にエンディングノートなど、元気なうちにやっておくべきことは多くあります。

おひとりさまの老後対策について、詳しくは『この1冊で安心!おひとりさまの終活まるわかり読本~身の回りの整理から葬儀・相続の準備まで~』でも解説しています。50年以上の歴史がある【相続専門】税理士法人レガシィが監修しており、よくある疑問に対するケーススタディの形で進んでいくため、身近な疑問への回答書としても使える一冊です。
安心して老後を迎えるためにも、ぜひ読んでみてください。

【目次】※一部抜粋

  • もし私が1人で死んだら誰が遺体を引き取るの?
  • クレジットカードは私が死んだら勝手に解約される?
  • 受け継ぐ人がいないけど、このままお墓に入って大丈夫?
  • 発見が遅れたらペットを道連れにしてしまうかも
  • もし認知症になったら、財産管理はどうしたらいい?
  • いざという時に使えるウェブサイト・連絡先一覧
  • 準備は万端?最期へ向けてのチェックリスト

この1冊で安心!おひとりさまの終活まるわかり読本 身の回りの整理から葬儀・相続の準備まで

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この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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