相続の知識

土地の無償返還に関する届出とは?借地権との関係やメリットなどを解説

土地の無償返還に関する届出とは、法人と個人、または法人同士の土地の賃貸借契約において、権利金の認定課税を避けることが可能になる手続きです。届出を行うことで、貸主・借主の双方にさまざまなメリットが得られます。本記事では、無償返還に関する届出の概要や届出を行うメリット、届出の際に知っておくべきポイントを7つ解説します。

土地の無償返還に関する届出とは

「土地の無償返還に関する届出」とは、土地の貸し借りを行う際、税務署に「将来的に土地を無償で返還する」と通告し、権利金の認定課税を受けないようにするために行う手続きのことです。これには、土地の貸借における借地権が大きく関係してきます。1つ1つ紐解いてみましょう。

借地権と権利金の認定課税

土地を貸借する場合、借りる側(借主)がその土地に建物を建築した場合には借地権が発生します。借地権は借主を保護する権利のため、通常は地代とともにその権利に対する金額(権利金)を貸す側(貸主)へ支払うことになります。この場合の地代の相当額は、原則その土地の更地価額のおおむね年6%程度の金額とされています。
逆に言うと、権利金を支払わないということは「借地権を贈与した」と認識されてしまい、そこには贈与税が発生してしまいます。それが「権利金の認定課税」です。

しかし、例えば社長が自らの所有する土地を、自身の法人へ貸して事業を行いたい場合などにも、法人が高額な地代を支払わなければならないことから、そのルールは疑問視されていました。そこで、借主が将来無償で土地を返還することを前提とした賃貸借契約を結ぶことで、権利金の認定課税を避けることができるようになりました。
その際に税務署で行う手続きが「無償返還に関する届出」なのです。

【参考】相当の地代とは

権利金を含めた相当の地代を支払えば、権利金の認定課税は発生しません。この相当の地代については、前述した「その土地の更地価額のおおむね年6%程度の金額」とされています。その土地の更地価額をどのように算出するかというと、以下のように定められています。

  1. その土地の近くにある類似した土地の公示価格などから合理的に計算した価額
  2. その土地の相続税評価額またはその評価額の過去3年間の平均額

出典:国税庁『相当の地代及び相当の地代の改訂』

また相当の地代は、おおむね3年以下の期間ごとに見直しを行う必要があるとされています。

無償返還に関する届出のメリット

届出書を提出することで、貸主・借主のどちらにおいても大きなメリットが得られます。ここからは、届出書を提出することで得られるメリットを、貸主および借主の双方からの視点で紹介します。

貸主のメリット①:相続税評価額を減額できる

相続においては、まず一番のメリットとして「相続税評価額の減額」があげられます。賃貸借契約を結んでいることにより、貸主の相続が起こった場合に「貸宅地」として評価することが可能となり、土地の相続税の評価額を減額できます。貸宅地とは借地権が設定されている土地のことであり、貸宅地として評価されることで、土地の相続税評価額を減額できる可能性が出てきます。そのうえ、貸付事業用の宅地等としての小規模宅地等の特例の対象にもなります。
ただし、地代が無償であるもしくは少額(固定資産税以下)しか支払われていない場合、賃貸借契約ではなく使用賃貸契約という別の契約になるため、貸宅地として評価されませんし、小規模宅地等の特例の対象にもなりません。

貸主のメリット②:所得税が軽減される

届出書を提出することで、貸主に課される所得税が軽減されます。元々貸主が受け取る権利金および相当の地代は、不動産所得として認識されるため、課税の対象となるのが原則です。そこで届出書を提出し、地代収入を固定資産税等の2~3倍以上に設定することで、貸主の納税負担が軽減できます。

借主のメリット:権利金の認定課税がされない

前述したとおり、権利金の認定課税を避けることができるのは借主にとって最大のメリットです。元々、この課税を回避するには、借主が相当の地代を貸主に支払わなければなりません。この支払いを避けるためには、無償返還の届出が必須ということになります。

無償返還に関する届出の手続き

では実際に土地の無償返還の届出の手続きをするにあたって、重要となるポイントを見ていきましょう。手続きにあたっては、主に税理士の方への内容となるかと思います。

提出先・期限

土地の無償返還に関する届出書の提出先は、土地所有者の納税地の所轄税務署です。つまり、貸主側の納税地を管轄する税務署になります。
届出書の提出期限は決められていないことが特徴です。規定には「遅滞なく」としか記載されておらず、具体的な期限は示されていません。しかし実際には、賃貸借契約を締結した法人の確定申告書の提出期限までとするのが望ましいとされます。

届出に必要な書類

手続きには、「土地の無償返還に関する届出書」という貸主と借主の連名で出す書類に加え、「賃貸借契約書」および「土地の評価額明細」も提出します。書類は2部ずつ税務署へ提出する必要があります。1部は貸主の、もう1部は借主の管轄税務署へ渡るためです。また契約をする2者(貸主・借主)に関しても、控えを持っておきましょう。

届出書の書き方

届出書は、基本的に土地所有者の名前や所在地などの事柄を順に記載するようになっていますが、1つ最初に記載者側で選択する項目があります。それは「借地権の設定等」もしくは「使用賃貸契約」の選択項目です。ここは必ず「借地権の設定等」を選択してください。仮に「使用賃貸契約」に〇をつけてしまうと、貸主の相続が起こった場合に貸宅地として評価がされず、相続税評価額の減額ができなくなります。

無償返還の届出の守るべきルール

ご紹介したように、届出書を提出することで多くのメリットが得られますが、この手続きを行って権利金の認定課税を避けるためには、いくつか守るべきルールがあります。

貸主・借主のどちらかが法人である

届出書の提出が行えるのは、貸主もしくは借主のいずれかが法人である場合に限ります。具体的には、以下の3パターンのうち、どれかに当てはまれば届出が可能となります。

  1. 貸主:個人 借主:法人
  2. 貸主:法人 借主:個人
  3. 貸主:法人 借主:法人

貸主・借主の双方が個人同士の場合は、届出書は提出できません。個人対個人で取引を行うのであれば、使用貸借契約で代替し、権利金の認定課税を避けることが可能です。

権利金の受け渡しが行われていない

無償返還の届出書が適用される条件として、借地権の設定に当たり、権利金もしくは経済的な利益などの受け渡しがされていないことが必須です。権利金の一部や何かしらの経済的利益を受け渡しが行われている場合、土地の無償返還に関する届出は適用できません。

土地を無償返還する旨を賃貸借契約書に記載する

無償返還に関する届出であっても、賃貸借契約の一種であることから、届出書に加え賃貸借契約書も一緒に提出します。この書面を作成する際に重要なのは、「土地を無償で返還する」という旨をしっかり明記することです。例えば、以下のような文章です。

第8条(無償返還について)
この契約を解除するときは、借主は貸主に対価を求めず無償で返還するものとする。

届出書に際した賃貸借契約は、貸主は借主から権利金をもらわない代わりに無償で返してもらうという契約です。必ずこの文言を漏れなく記載しなければなりません。

地代を無償にしない

届出書の適用には、地代を無償にしないことも重要です。仮に無償であっても権利金の認定課税を避けることは可能ですが、無償もしくは固定資産税等と同等の金額だと「使用賃貸契約」とみなされてしまいます。こうなると、前述したとおり相続が発生した際に「貸宅地」とされず、相続税評価額の減額がなされません。また、一定の要件を満たすことで土地の評価額を最大80%減額できる制度の「小規模宅地等の特例」が適用できなくなります。設定は、固定資産税等の2倍~3倍以上の金額にすることが推奨されています。

おわりに:土地の無償返還に関する届出は専門家に相談を

無償返還に関する届出を行うことで、権利金の認定課税を避けることが可能です。また、貸主にとっても、所得税の軽減に加え相続が起こった際に土地の相続税評価額が減額できるというメリットが得られます。しかし、無償返還に関する届出の際には、届出書の記載や提出期限、権利金の受け渡しが行われていないか、賃貸借契約書に記載するべき文章など、注意すべき点が多くあります。もしも届出に際して不安があれば、専門家に相談することがおすすめです。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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