相続の知識

弔慰金は相続税の課税対象?香典や死亡退職金との違いを解説

家族が亡くなった場合、勤めていた会社から弔慰金を支給されるケースがあります。支給されたものの、相続税の課税対象になるのかどうか、気になる方もいるかもしれません。この記事では、死亡弔慰金が課税対象になるのか、香典や死亡退職金との違いなどについて解説します。

弔慰金(ちょういきん)とは?

弔慰金(ちょういきん)とは、亡くなった方の死を悲しみいたみ、その遺族を慰めるために渡す金銭です。一般的には、国や企業が支給するケースが多くを占めています。

国から支給される例としては、戦没者の遺族を対象とした「特別弔慰金」や、大規模な災害によって亡くなった方の家族を対象とした「災害弔慰金」という制度があります。

企業における弔慰金は、自社の従業員や役員などが亡くなった際、遺族に対して支給されるものです。ただし、福利厚生として慶弔金の制度を導入している企業でないと支給されません。なお、弔慰金は相続財産には当たらず、原則非課税です。

人が亡くなった際の金銭としては、「香典」や「死亡退職金」も故人の遺族へ渡される金銭です。遺族が受け取るのは同じですが、それぞれ意味や税制面で異なる点があります。

香典との違い

香典は、亡くなった方の通夜や葬儀の席において霊前に供える金銭のことです。かつての通夜や葬儀では、参列者がお香やろうそくを持ち寄るケースが一般的でした。しかし現代では葬儀に多大な費用がかかるようになったため、お香に代わり金銭を渡す形式に変化しています。

一般的に、弔慰金は国や企業が故人の遺族へ渡しますが、香典は法人や個人を問わず参列者が喪主に渡すものです。
また、香典は通夜の席、もしくは葬儀会場の受付で手渡します。一方、弔慰金は通夜や葬儀が終わり、遺族の生活が落ち着きを取り戻したタイミングで支給するケースがほとんどです。

死亡退職金との違い

死亡退職金とは、故人がもともと受け取るはずであった見込みの退職金で、一般的にその遺族が受取人に指定されています。遺された家族へ渡るのは弔慰金と同じであるものの、こちらは遺族が生活に支障を来さないようにという目的で支給されるものです。

なお、死亡退職金もすべての企業が支給しているわけではありません。制度を導入していることが前提であるため、そもそも制度がなければ支給されません。また、企業によっては功労金と呼ばれることもあります。

死亡退職金は弔慰金とは異なり、相続税の課税対象です。ただし、支給された全額が課税の対象となるわけではなく、遺された家族の生活保障としての意味合いが強い金銭であるため、非課税枠が設けられています。

【死亡退職金の非課税枠】
500万円×法定相続人の数

弔慰金の支給金額の決め方は?

どの程度の弔慰金が支払われるのかはケースバイケースであり、企業の規定によって金額はさまざまです。
支給金額の相場としては、個人の弔慰金であれば数万円から数十万円のようですが、役員や社長になると数百万円と高額になるケースもあります。

また、業務の従事中に亡くなったのか、それとも業務外で亡くなったのかによっても支給金額は変化します。たとえば業務を遂行しているときのアクシデントや通勤途中の事故、出張先での被災といったケースでは、支給される金額が多くなります。一方、業務とまったく関係がないところで亡くなった場合には、支給される金額が少なくなることが一般的です。
勤続年数によっても違いがある企業も多いようです。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、86.5%の企業が「慶弔見舞金制度がある」と回答した統計がでているので、ほとんどの企業には制度が存在すると言えるでしょう。気になる方は、ご自身やご家族の福利厚生制度について、規定を確認してみてください。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構『企業における福利厚生施策の実態に関する調査』

弔慰金は原則非課税だが、例外もある

支給された金銭が課税対象となる場合、法律に則って相当額を納税しなくてはなりませんが、弔慰金は原則として課税の対象にはなりません。
しかし、例外もあることを頭に入れておきましょう。

弔慰金の非課税枠

死者を弔い、遺された家族を慰めるための金銭であることから、弔慰金は基本的に相続税の課税の対象となりません。ただし、これはあくまで原則であり、多額の弔慰金を受け取るなど場合によっては課税対象になります。

弔慰金には非課税枠が設けられていますが、それを超過するケースでは死亡退職金等に加算され、課税対象になってしまいます。弔慰金の非課税枠は下記の計算方法で求めます。

【業務上での死亡であるとき】
普通給与の3年分(月給×36ヶ月分)

【業務外での死亡であるとき】
普通給与の半年分(月給×6ヶ月分)

たとえば、業務を遂行しているときや出張先の災害で亡くなったケースでは、月給の36ヶ月分に相当する金額までは非課税です。
業務時間外に亡くなった場合には、月給の6ヶ月に相当する金額に収まっていれば課税されません。この範囲を超えてしまうと、超過した分は死亡退職金等として扱われるため相続税の課税対象になります。

なお、ここでいう普通給与(月給)とは会社から毎月支払われるものを指し、給料や扶養手当、勤務地手当などを合計したものです。賞与は含まれない金額を指します。

課税金額の計算方法

会社から、弔慰金と死亡退職金の両方を支給されるケースも少なくありません。この場合は、弔慰金の非課税枠を超えた部分を算出し、死亡退職金等と合算します。そのうえで、死亡退職金等の非課税枠を超過した部分の金額が課税対象として扱われます。

例えば以下のケースにおける相続税の課税金額を計算してみましょう。

亡くなった方:男性社員(58歳)
月給:50万円
弔慰金:800万円
死亡退職金:4,000万円

  • 法定相続人は妻(配偶者)と子2人
  • 業務外の理由で亡くなった

まず前述した弔慰金の非課税枠は、今回業務外の理由で亡くなったことより【月給50万円×6か月=300万円】となり、課税対象となるのは【弔慰金800万円-非課税枠300万円=500万円】です。これを死亡退職金と合算すると、【4,000万円+500万円=4,500万円】となります。

一方、死亡退職金の非課税枠は【500万円×法定相続人の数】で計算します。つまり今回のケースでは【500万円×3人=1,500万円】となります。

最後に弔慰金の課税対象と合算した死亡退職金の合計から非課税枠を引くと、【4,500万円-1,500万円=3,000万円】となり、今回相続税の対象となる金額(みなし相続財産)は【3,000万円】ということになります。

相続税の申告方法

支給された弔慰金が非課税限度額を超える場合、その超える部分については、相続税の課税対象となるため申告しなくてはなりません。弔慰金・死亡退職金等の申告に用いる書式は、相続税申告書第10表(退職手当金などの明細書)です。

相続税申告書の仕様は統一されており、全国の税務署で入手できます。税務署が近くにない場合は、国税庁の公式サイトからダウンロードすることも可能です。

申告書には、故人が勤めていた会社の名称や所在地、受取年月日、受取金額、受取人の氏名などを記載する欄が設けられています。また、「課税される金額の計算」という項目が設けられているため、相続人の人数・氏名や算出した課税金額を記載しましょう。

参照元:国税庁『相続税の申告手続き』

各種申告書については、下記の記事でも解説していますので参考までにご覧ください。

弔慰金の注意点

弔慰金を受け取る際は、注意点があることを覚えておきましょう。国や自治体から支給されるケースがあること、複数社から支給されるときは計算が複雑になることの2点について解説します。

国や自治体から支給された場合

国や自治体から支給される公的な弔慰金もあります。たとえば、戦没者遺族を対象とした特別弔慰金をはじめ、災害で亡くなった方の遺族に渡すもの、国会議員が死亡したときに支給するもの、国外犯罪被害弔慰金と呼ばれるものなどです。

これらの公的な弔慰金は、国や各自治体が費用を分担して財源をまかなっています。いずれの弔慰金にしても原則非課税です。

複数社からもらう場合

弔慰金を複数の会社から支給される場合も考えられます。たとえば、故人が死亡時に勤めていた企業とは別に、以前勤めていた会社から支給されるようなケースです。

このケースでは、以前勤めていた会社から支給された弔慰金は退職手当金に該当しません。すでに退職済みの会社であるため、遺族の一時所得として扱われます。

死亡時に所属していた会社から支給された弔慰金については、非課税枠を超過していると相続税の課税対象となることに注意しましょう。

おわりに:弔慰金は高額になると相続税の課税対象となるため注意しよう

弔慰金は、故人を弔い遺された家族を慰める性質をもつ金銭であるため、原則非課税です。ただし、金額が高額となり設定されている非課税枠を超えた分に関しては、死亡退職金として扱われ相続税の課税対象になります。

故人が会社役員だった等により多額の弔慰金を受け取ったものの、どのように相続税を申告して良いのかわからないとお悩みの方は、相続専門の税理士法人レガシィへご相談ください。50年以上にわたる確かな実績があり、個々のケースに応じた適切なアドバイスが可能です。
初回無料面談を実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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