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相続の知識

【記載例あり】財産目録とは?必要なケースや書き方について解説

相続が発生したら、最初に行うのが遺産内容の把握です。被相続人の全財産を正確に把握したうえで、相続人同士が遺産分割について協議します。その際にあると望ましいのが財産目録です。この記事では、財産目録を作成する意図や書き方、注意点について解説します。

財産目録とは

財産目録とは、被相続人の相続財産について、どのような種類がどれだけあるかを一覧整理した書類です。プラスの財産だけではなく、マイナスの財産を含めて全ての財産を記載するため、相続方法の検討材料になったり、遺産分割協議をスムーズに進められたりと、相続人にとってもメリットがあります。

作成する主な状況としては、下記の2つがあります。
①被相続人が生前に作成する
②相続人が相続発生後に作成する

①の場合は、被相続人が遺言を作成する場合に一緒に作成することが多いでしょう。誰にどの財産を遺すか決めるために、財産全体を把握し整理することはとても重要です。以前は、自筆で遺言書を作成する場合、目録も全て手書きで書く必要がありましたが、2019年に法改正があり、手書き以外でも認められるようになりました。

②の場合は、被相続人が遺言書を残しておらず、相続人たちが遺産の全容を明らかにして、相続手続きを進めていく過程で作成することが多いです。特に相続税の申告においては、まず遺産総額が基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超えるかどうかの判断に必要になることでしょう。基礎控除額以内であれば、相続税の申告・納付は必要ありません。

財産目録を作成するメリット

財産目録を作成するメリット財産目録を作成すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここから主な3つのメリットを紹介します。

1. 総財産が明らかになり、相続税対策につながる

財産目録には、預貯金をはじめ不動産、有価証券など、全ての財産を記載します。遺産の内容によっては、相続するよりも生前に贈与した方がよい場合もあるため、生前の相続税対策にも活用できます。
例えば自宅を長男に、預貯金を次男に相続させたいと漠然と考えていても、不動産の評価額によっては現金が足りず、長男は相続税が払えないかもしれません。そのような場合に、事前に自宅の評価額を捉えておくことで、ある程度の現金を生前贈与しておく等の対策も検討できるでしょう。被相続人がご自身で目録を作成しておくことが、相続人の負担軽減にもつながるのです。

2. 相続放棄の判断材料になる

財産目録を作成することは、マイナスの財産の把握にも役立ちます。その結果、負債が多いと判明すれば、相続人が相続放棄するかどうかの判断材料になります。被相続人に多額の借金がある場合などは相続人の負担となるため、相続放棄も検討することになるでしょう。しかし相続放棄する場合、相続が始まってから3か月以内に手続きしなければなりません。
生前に被相続人が目録を作成し、相続人にも内容を共有してマイナスが大きいことが事前に分かっていれば、余裕をもって判断できるでしょう。

相続放棄について、詳しくは下記の記事もご覧ください。

3. 遺産分割協議をスムーズに行える

財産目録が事前にない場合、遺産分割協議の前に、まず財産を調査するところからスタートします。故人の財産がどれくらいあるのか、全容を把握するまでの作業は相続人にとって骨の折れるものです。身内の方が亡くなった後は、葬儀の手配から始まり、公的機関への手続きや法要の準備などやるべきことが多数あります。忙しさから相続人同士で疑心暗鬼になり、もっと財産があるのではないかと疑ったりして、関係が悪化してしまう場合もあります。財産目録を生前に作成して、全員が遺産の全容を把握していれば、そういったトラブルを回避しやすくなります。

また被相続人が作成していなかった場合でも、相続手続きにおいては財産目録があったほうがスムーズに進みますので、相続人自身で、もしくは税理士等の専門家に依頼して作成することをおすすめします。どのような場合に財産目録があると良いかは、次の章で解説していきます。

財産目録を作成した方がよいケース

財産目録を作成したほうが良いケース財産目録は必ず作成しなければならないものではありませんが、作成したほうがよいケースもいくつかあります。

遺言書に添付する場合

遺言書を作成する際に、財産目録も作成して添付する場合があります。遺言書は財産目録がなくても有効とされますが、財産目録があれば遺言書を簡便に作成できます。また、誰がどの財産を相続するのかを把握し、遺産分割協議や相続税申告をスムーズに進めてもらうためにも、財産目録があるとよいでしょう。

遺言書には、主に公証役場で公証人に作成してもらう「公正証書遺言」と、自分で書く「自筆証書遺言」があります。自筆証書遺言を作成する場合、以前は目録も含めて全て手書きする必要がありましたが、2019年の法改正によって、財産目録については手書きでなくてもよいことになりました。ご自身でパソコンを使って作成しても問題ありませんし、本人以外が作成することも認められています。自筆でない場合、目録の各ページに署名押印が必要ですが、形式は問われません。

限定承認をする場合

限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も相続する方法です。たとえば借金があることが分かっているけれど、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合などに利用されます。限定承認をしておいて、後から財産を調査した結果、プラスの財産が残れば相続人がこれを取得できるというメリットがあります。
限定承認の手続きを行うためには、相続の開始から3か月以内に、管轄の家庭裁判所へ申述書と一緒に目録を提出します。

限定承認については、こちらも参考にご覧ください。

遺産分割協議や相続税申告で使用する場合

相続人がひとりしかいない場合は不要ですが、複数の相続人がいて、かつ法定相続分以外の割合で遺産を分割する場合は、遺産を分けるための協議を行います。遺産分割協議を行う際、相続人全員が遺産の全容を把握する必要があります。一部の相続人しか知らない財産があると不公平になってしまいますし、万が一遺産分割後に把握していなかった財産が出てきた場合は、協議をやり直さなければなりません。目録によって遺産の内容が把握できれば、誰がどの財産をどのくらい相続するかを、相続人同士で話し合って決められます。

相続税申告の際にも、財産目録は有効です。相続税の申告書には、財産内容を一覧で記載するページがありますので、財産目録を用意しておけば、その通りに記載するだけで作業ができます。
また相続税の総額は遺産総額によって決まりますが、各相続人が支払う個々の相続税額は、全体の財産から見て、どのくらいの割合を相続するのかによって異なります。個々の納付すべき相続税額の概算を把握するのにも役立つでしょう。

財産目録に記載する内容

財産目録を作成する場合、何を記載すればよいのでしょうか。財産目録に決まった書式はありませんが、ここからは記載すべき内容をサンプルとしてご紹介します。大きく分けると以下の3つです。

  1. 作成日、署名押印
  2. プラスの財産
  3. マイナスの財産

1. 作成日、署名押印

まず記載が必要なのは、財産目録の作成日です。預貯金は年月が経ってもほとんど金額が変わらないと思いますが、不動産や有価証券などは、評価する時期によって価額が変わります。必ずいつ時点の評価額なのか分かるよう、作成日を記載しましょう。
また署名・押印も作成者のものが必須です。

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【記載例】
作成日:2022年8月1日 レガシィ太郎 ○印
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2. プラスの財産

次に、被相続人が所有しているプラスの財産を漏れなく記載します。一例にはなりますが、以下のような項目を記載していきます。

①預貯金、現金
②不動産(土地、建物)
③有価証券
④自動車、宝石、貴金属、骨董品など
⑤生命保険金

たとえば、預貯金については、金融機関名や支店名、口座番号、口座種別などを記載します。被相続人が生前に作成する場合は目録作成時、死後に相続人が作成する場合は被相続人の死亡時の残高が分かればよいでしょう。

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【記載例】

①預貯金、現金

金融機関の名称 支店名 口座種別 口座番号 残高(円) 備考
1 ○○銀行 △△支店 普通 0000000 10,000,000  
2 ××銀行 ■■支店 普通 9999999 30,000,000  
現金(預貯金以外で所持している金銭) 2,000,000  

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家や土地などの不動産を保有している場合、土地と建物を分けてそれぞれ記載します。所在や地番、地目、面積といった詳細の項目まで記載しましょう。

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【記載例】

②不動産(土地、建物)

所在 地番、家屋番号 地目、種類、構造 地積、床面積(㎡) 評価額 備考
1 〇〇市〇丁目 〇番 宅地 220.00 20,000,000 自宅
2 〇〇市〇丁目〇番地  〇番 居宅、木造瓦葺2階建 1階
60.12
2階
45.5 
10,000,000 自宅

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株式などの有価証券がある場合は、銘柄や保有数、証券会社名、口座番号なども記載しておきます。なお非上場株(自社株)がある場合は評価が難しくなるため、専門家に相談したほうが良いでしょう。

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【記載例】

③有価証券

種類 株式の銘柄,証券会社の名称等 数量 評価額(円) 管理者
1 上場株式 ○○株式会社 1000株 10,000,000 AAA証券
2 投資信託 ××ファンド 500口 10,000,000 BBB信託銀行

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自動車を持っていれば、車名や年式などを車検証で確認します。骨董品や美術品、宝石や貴金属なども財産に含まれます。これらを特定できる情報を記載しましょう。

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【記載例】

④その他の財産

種類 内容 評価額(円) 備考
1 自動車(メーカー名等) 多摩〇〇〇あ 99-99
車台番号:第〇〇〇〇号
3,000,000  
2 時計(メーカー名等) 製造番号:A12345678 2,000,000 自宅に保管
3 指輪(メーカー名等) 製造番号:P987654321 1,000,000 自宅に保管

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なお相続人が受取人となる生命保険は民法上の相続財産ではありませんが、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になることと、保険金の請求漏れなども起きやすいため、財産目録に予め記載しておくと良いでしょう。
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【記載例】

⑤生命保険

保険会社の名称 保険の種類 証書番号 保険金額(円) 受取人
1 ○○生命保険 終身保険 12345678 5,000,000 レガシィ花子

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マイナスの財産

被相続人にマイナスの財産があれば、それも全て記載します。負債というと消費者金融などからの借金だけをイメージする方も多いと思いますが、住宅ローンの未返済額なども負債に含まれます。主な項目は以下の通りです。

  • 借金
  • 住宅ローンの残債
  • 未納の家賃、税金、医療費、クレジットカード利用費など
  • 葬儀費用

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【記載例】

⑥負債、葬儀費用など

債権者名(支払先) 負債の内容 金額(円) 備考
1 ××銀行・・支店 住宅ローン 1,500,000 預貯金No.2から毎月2万円引き落とし
2 ○○葬儀社 葬儀費用 1,000,000  

葬儀費用は遺産から支払う場合が多く、その場合は負債として目録に記載します。相続税の計算の際には、葬儀費用を控除することができます。

詳しくは下記の記事もご覧ください。

財産目録を作成する場合の注意点

財産目録を作成する際の注意点について、おさえておきましょう。

署名押印は各ページに必要

財産の種類が多く、財産目録が2ページ以上になってしまうこともあるかもしれません。その場合、署名と押印はページ毎に必要になりますので注意しましょう。2ページを両面印刷にして印刷した場合でも、表と裏に1か所ずつ署名押印が必要です。

財産の特徴を明確に記載する

目録作成時には、記載されている財産がきちんと特定できるようにしておきましょう。曖昧な表記だと遺産の内容がよく分からず、遺産分割協議が難航してしまう恐れがあります。

財産の漏れがないようにする

もし記載内容に漏れがあることが遺産分割協議の後に発覚したら、協議をやり直さなくてはなりません。協議のやり直しには手間がかかりますので、最初の段階で漏れなく全財産を記載することが大切です。

財産目録を正確に作るためには、専門知識が必要です。相続において財産目録は非常に重要な書類ですので、作成に不安がある場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

おわりに:財産目録は相続において非常に重要

財産目録を作成するメリットや記載する内容、作成時の注意点について解説しました。遺言作成でも、遺産分割協議においても、どのような財産がいくらあるか把握することは非常に大切です。相続人同士で揉めないためにも、生前に作成しておくと安心です。

目録の作成においては、漏れや不備があると後々手間がかかってしまいますので、税理士などの専門家に相談しながら作成することをおすすめします。税理士法人レガシィは、相続税に特化した税理士法人として、長年にわたって相続税対応の実績があります。財産目録について迷うことがあれば、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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