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相続の知識

公正証書遺言とは?作成方法や費用、必要書類について解説

遺言書は法律に則って正しく作成しないと無効となり、自分が亡くなった時に執行されないということが起こりえます。また、法的に有効な遺言書をつくったとしても、原本をなくしてしまっては遺言は執行されません。
そういった不測の事態を防ぐためにおすすめなのが、「公正証書遺言」です。
この記事では「公正証書遺言」のメリットとデメリットについて詳しく解説します。

公正証書遺言は公正役場で保存される遺言

遺言書には、「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の3種類があり、それぞれに作成方法、保存方法が異なります。自分で手書きして作成するものが「自筆証書遺言」で、内容を公開せずに秘密にしたまま遺言の存在を公証役場で証明してもらうのが「秘密証書遺言」です。
そして、「公正証書遺言」は遺言の法的有効性をチェックするなど、公証人の関与の下で作成する遺言で、原則として20年間、原本が公証役場で保存されます。

公正証書とは公証人が作成した文書

まず「公正証書」とは何でしょうか。「公正証書」とは、第三者である公証人が頼まれて作成する公文書のことです。公文書なので証明力と執行力があり、法的紛争が起こった際にも信頼性に優れているのです。

公証人とは法務大臣に任命された公正証書の作成者

公正証書を作成する公証人とは、国の公務である公証事務を担う公務員のことです。高い法律知識と豊富な法律実務経験を有することはもとより、中立・公正性が求められます。
原則として裁判官や検察官、法務局長などを長く務めた法律の専門家で、公募に応じた者が公証人法に基づいて法務大臣に任命されます。

公証役場とは公証人が在籍する役所

公証役場とは、公証人が在籍する法務省管轄の役所のことです。公証役場は全都道府県にあり、人口の多い地域に集中して設置されています。
病気などの事情で公証役場に足を運べない場合には、公証人に自宅や病院まで出張してもらうことができます。

公正証書遺言のメリット5選

「公正証書遺言」は安全性が高い遺言書です。自筆ではなく「公正証書遺言」を選択するメリットは、大きく下記の5つが挙げられます。

①遺言が無効にならない
➁遺言を紛失しない
③遺言が偽造されない
④遺言を自分で書く必要がない
⑤遺言の検認が必要ない

①遺言が無効にならない

遺言書は、法律上、その書式が厳しく定められていますので、正しく書かないと無効になってしまいます。せっかく書いた遺言書が、法的な要件を満たしていおらず、ちょっとした不備や誤りがあったために無効になる例は少なくありません。
たとえば、「自筆証書遺言」の場合、パソコンで作成したものや署名押印がないものは無効になります。また、日付を定めていない、たとえば「〇月吉日」というような表記のものも無効です。
また、訂正の仕方も手間がかかります。遺言内容が不明確であることを理由に遺言書が無効になったケースもあります。

一方、公証人が遺言書の作成に関わる「公正証書遺言」なら、こうした細かいミスを防ぎ、法的に有効な遺書をつくることができます。
また、「自筆証書遺言」は、遺言書が作成された時点で遺言者が認知症を発生していた場合に、十分な意思能力がなかったとされて無効になってしまう可能性があります。しかし、「公正証書遺言」ならば、公証人が遺言者と直接話をしながら作成するので、後から意思能力がなかったとされて無効になることはほとんどありません。

➁遺言を紛失しない

「自筆証書遺言」で多いトラブルの一つが「紛失」です。
家のなかで保管する場合、どこにしまったのか、うっかり忘れてしまったというミスだけではありません。保管場所を明確にして厳重に保管していても、災害などでなくなってしまうリスクもあります。なかには、家族によってわざと破棄や隠匿されてしまうことも少なくありません。
法的に有効な遺言書を作成したのに、いざという時になければ意味がありません。

「公正証書遺言」の原本は、公証役場に作成後原則20年間保管されます。公証役場で原本を保管してもらえるのは大きなメリットです。
そのため自筆証書遺言と異なり、紛失してしまうリスクがありません。

③遺言が偽造されない

「自筆証書遺言」で偽造が疑われる場合には、筆跡鑑定などで立証しなくてはいけなくなります。しかし、「公正証書遺言」は公証人が作成するので、偽造の心配がありません。

また、「公正証書遺言」は原則的に公証役場で作成することになっています。遺言書の作成時、公証人は遺言者の本人確認を必ず行うので、他人が遺言者の名を騙って偽造するということはありえないのです。

④遺言を自分で書く必要がない

「自筆証書遺言」は、遺言に添付する財産目録を除き、すべて「自筆」で作成しなければなりません。パソコンなどで作成することはもちろん、他人の代筆はほんの一部でもNGです。
ですから、何かの事情で文字が書ける状態ではなかった場合、「自筆証書遺言」は作成できません。

文字が書けない場合には、「公正証書遺言」を選択することになります。「公正証書遺言」なら、口頭で公証人に内容を伝えればいいので、文字が書けなくても遺言書を作成することができます。
また、言語や聴覚に障害がある方の場合は、通訳者の手話や筆談によって内容を伝えることが認められています。

⑤遺言の検認が必要ない

「公正証書遺言」は、家庭裁判所の「検認」の手続きが不要です。遺言の内容に従ってすぐに相続手続きを開始することができます。
検認とは、相続人に対して遺言書の存在を明確にして、偽造されることを防ぐための手続きのこと。「自筆証書遺言」を保管するために法務局の保管制度を利用していない場合、遺言者の死亡後、遺言書の保管者や遺言書を発見した人が家庭裁判所に当該遺言書を提出し、相続人の立ち会いのもとで、その内容を確認することをいいます。

「公正証書遺言」は作成した時点で法的な有効性も確認されているので、家庭裁判所の検認を受けることなくすみやかに相続手続きを開始できます。

公正証書遺言のデメリット3選

①証人が必要になる
②費用がかかる
③時間がかかる
という3点が代表的なデメリットといえます。詳しく見ていきます。

①証人が必要になる

遺言者が「公正証書遺言」を作成するためには、公証人以外に証人を2人以上用意しなければなりません。つまり、公証人と2人の証人が遺言の内容を知ることになります。それを一番のデメリットと感じる人も少なくありません。プライバシー保護の観点から「公正証書遺言」作成を諦める人もいます。
ただ、無効にならない遺言書をつくるために証人の役割は必要なのです。

証人の役割には、遺言者が人違いではない、という「遺言者の同一性の確認」、遺言者の精神状態は正常なのか、自分の意思で遺言内容を口述しているのかなどといった「遺言者の精神状態の確認」、公証人によって筆記された内容が、遺言者の口述した内容と合っているかという「公証人の筆記の正確性の承認」の三つを確認して、問題がなければ署名と押印をします。
もし、問題があったのに、証人が見逃して署名と押印した場合、遺言で相続分が減るなどの損害を被った相続人などから、損害賠償請求される恐れがあるのです。

また、証人は、遺言無効確認訴訟、あるいは遺言有効確認訴訟でも、証人として裁判所に出頭して証言を求められることがあります。正当な理由がない限り、証言を拒絶したり出頭しない場合は、10万円以下の罰金または拘留に処せられることがあります。

②費用がかかる

「自筆証書遺言」はもちろん無料で作成できますが、「公正証書遺言」を作成するにはある程度のお金が必要です。「公正証書遺言」の作成にかかる費用には、「必要書類の交付手数料」「作成手数料」「遺言書正謄本の交付手数料」があります。そして、場合によっては「証人手数料」「専門家報酬」もかかります。

まず「公正証書遺言」の申請のために必要な書類のなかには、印鑑登録証明書や戸籍謄本、住民票など、役所や法務局で交付を受けなければならないものがあります。それぞれ数百円程度の交付手数料がかかります。

公証人に支払う「公正証書遺言」の作成手数料は、遺言により相続、あるいは遺贈する財産の価額(目的の価額)をもとに計算されます。この財産は、公証人が証書作成に着手した時を基準として算定されます。
評価に関しては、不動産の場合は直近の固定資産評価額など、預貯金は現在の残高、株式などの有価証券や出資金はその価額によります。
目的価額が算定不能な場合には、手数料は1万1,000円となります。

目的の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 1万1,000円
500万円を超え1,000万円以下 1万7,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 2万3,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 2万9,000円
5,000万円を超え1億円以下 4万3,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 2万3,000円
1億円を超え3億円以下 43,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

(公証人手数料令第9条別表)

※財産の相続又は遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出し、これを上記の表に当てはめて、その価額に対応する手数料額を求め、これらの手数料額を合算して全体の手数料を算出します。 ※全体の財産が1億円以下のときは、上記によって算出された手数料額に1万1,000円が加算されます。

出典:日本公証人連合会

遺言者が病気などの事情によって公証役場に出向くことができない場合には、公証人が出張して遺言公正証書を作成してくれます。この場合の手数料は、公証役場で作成する場合の1.5倍となり、これに交通費の実費と日当(1日2万円、4時間まで1万円)が必要になります。

遺言公正証書は原本、正本および謄本が各1部ずつ交付され、「遺言書正謄本の交付手数料」として原本については、その枚数が4枚(横書きの公正証書にあっては3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円の手数料が加算されます。また、正本及び謄本の交付については、1枚につき250円の割合の手数料が必要となります。
「証人手数料」は、必要な証人を自分で2人手配する場合にはかかりませんが、公証役場で紹介を受ける場合には、1人につき5,000円~15,000円程度かかります。
「専門家報酬」とは、「公正証書遺言」の文案の作成を専門家に依頼する場合の報酬です。

このように、「公正証書遺言」には少なくとも数万円の費用がかかります。ただ、それで遺言の有効性を確保できると考えれば高くはないでしょう。ちなみに作成された「公正証書遺言」の原本は公証役場で保管されますが、保管の費用はかかりません。

③時間がかかる

「公正証書遺言」を作成する場合、費用とともにかかるのが、時間です。まず公証人と打ち合わせをして、証人を2人探し、必要書類を収集する必要があります。公証人との打ち合わせは、数回かかることになります。
しかし、この手間を省いて自分で作成してしまうと、最終的に遺言が無効になってしまうこともあるのです。また、無効にならなくても、遺言書の有効性が疑われたことで、訴訟が起こることもありえるのです。

公正証書遺言の4ステップ

公正証書遺言の作成の流れは以下の4ステップです。

①遺言書の内容を整理する
➁証人を用意する
③必要書類を準備する
④公証役場で遺言書を作成する
詳しく見ていきましょう。

①遺言書の内容を整理する

遺言は誰に何を相続させるかを決める重要な書類です。「公正証書遺言」を作成する際に、その場ですぐに決められるものではありません。あらかじめ遺言内容を整理しておきましょう。手続きにかかる時間を短縮できます。

同時に、遺言者の財産を明確にすることも大事です。
「特定遺贈」と「包括遺贈」のどちらを選択するかによって、遺言書の書き方も変わってきます。また、相続税や遺留分など、さまざまな要素を考慮しながら決めていきます。

ただ、どのような遺言の内容にするべきか、という点については公証人には相談できないので、自分自身で事前に検討しておくか、弁護士などの専門家にあらかじめ相談しておくことが大切です。

➁証人を用意する

「公正証書遺言」を作成する際には、第三者2名に証人として立ち会ってもらう必要があるので、あらかじめ証人を選んでおく必要があります。

証人は前述したとおり重要な責任をもっていますが、そのための特別な資格はありません。
ただし、「未成年者」「推定相続人および受遺者並びにこれらの配偶者および直系血族」「公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および使用人」は証人になれません。

「推定相続人」とは、その時点で相続が開始された場合に、相続人になると推定される人のことです。遺言書作成時に「推定相続人」でなければ、遺言書の作成後に相続人になったとしても問題ないのです。

少し遠い親族や友人に証人になってもらうのも一つの手ですが、なかなか責任が重い証人になってもらうのも気がひけます。なってもらえるような親族や友人がいない場合や、親族や友人に遺言の中身はもちろん、遺言を作成したことも知られたくない場合もあります。
そういう時には、税理士などの専門家に作成のサポートを依頼し、事務所スタッフなどの関係者に証人になってもらう方法もあります。

専門家に依頼するのも抵抗がある場合やどうしても証人になってくれそうな人が見つからない時などは、公証役場で証人の紹介を受けることができる場合があります。

③必要書類を準備する

「公正証書遺言」の作成には、以下の書類が必要となりますので、あらかじめ取り寄せておきましょう。

  • 印鑑登録証明書と運転免許証などの公的機関の発行した顔写真入り証明書といった、遺言者本人の本人確認資料
  • 遺言者と推定相続人との続柄が分かる戸籍謄本
  • 財産を相続人以外の人に遺贈する場合は受遺者の住民票。受遺者が法人の場合には資格証明書
  • 財産に不動産がある場合には登記簿謄本と、固定資産評価証明書など

そして、証人予定者の名前、住所、生年月日と職業をしっかり明記しておきます。 証人の本人確認資料も用意しておきます。

④公証役場で遺言書を作成する

①から③まで準備が整ったら、「公正証書遺言」を作成するために2人の証人と一緒に公証役場に出向きます。遺言公正証書の作成は、公証役場が開庁している平日の午前9時から午後5時までに行われます。事前の予約が必要になりますので、あらかじめ予約しておきます。

公証人に出張してもらう場合は、任意の場所に証人とともに待機します。
当日は、遺言者は実印、証人たちは認印を必ず持参します。

遺言の内容を公証人に伝えて、「公正証書遺言」を公証人に作成してもらいます。その後、公証人による読み聞かせによって遺言書の確認が行われます。あらためて遺言書を確認し、遺言者と公証人、証人のそれぞれが署名・押印します。

それらが済んだら、費用を支払って終了となります。所要時間は30分から1時間程度です。作成された遺言書の原本は、公正証書として公証役場で保管されます。

おわりに:公正証書遺言ならば遺言が無効になることを防げる

遺言書に不備があって無効になってしまうと、せっかく作成しても意味がなくなってしまいます。しかし「公正証書遺言」を選択したならば、その心配は無用です。
「自筆証書遺言」と比べて手間も時間も費用もかかりますが、法的に有効で無効にならない、紛失も免れる、遺産相続がスムーズに行えることなど、さまざまなメリットが得られます。

ただ、「公正証書遺言」を作成するには、事前準備や書類の取り寄せなど、煩雑な手続きが多くなります。かなりの労力を要するので、いろいろ不安な場合には税理士などの専門家に一度相談してみることをおすすめします。的確なアドバイスとサポートが期待できます。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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