NISAと贈与|気になる疑問や相続時精算課税による相続税対策を解説
TweetNISA口座の資産を贈与する方法には、課税口座に移管してから贈る、移管時の価格が取得価額になるなどの特徴があります。本記事では、NISA口座の資産を贈与する方法や、相続時精算課税制度とNISA口座を利用した効果的な生前贈与の方法、制度利用時の注意点などを解説します。
目次
自身のNISA口座をそのまま贈与することはできるのか?
NISA口座は、そのまま相手に贈与できません。受贈者が財産を受け取った場合の取得価額は、移管の際の時価で計算されます。
NISA口座の贈与は課税口座を通じて行う
NISA口座で保有している株式や投資信託などを、贈与の際に所有者のNISA口座からそのまま受贈者のNISA口座に移すことはできません。NISA口座同士での移管ができないため、まずは一般口座や特定口座といった課税口座に移してから贈与する必要があります。
親のNISA口座から子どものNISA口座に株式などを移す場合、そのままでは贈与ができないため、一旦親の課税口座に移してから子どもの特定口座などに資産を移管します。
取得価額は移管時の時価となるため注意する
前述の方法で資産の贈与を受けた場合、贈与された財産の一定額を超えた部分には贈与税が課税されます。受贈者が受け取った資産の取得価額は、移管された時点の時価です。NISAを課税口座に移管した際の含み益には税金がかからず、受贈者が受け取った時点の時価をもとに贈与税が計算されます。
贈与者が購入してから移管するまでに株式などの価格が上昇して含み益が出ていた場合でも、贈与者に利益分の所得税などの税金はかからず、その利益を含んだ移管時点の時価がNISA資産の評価額になります。
贈与者の課税口座から贈与によって受贈者の課税口座へ移管する際には、移管する時点の時価が取得価額になります。取得価額が一定額以内に収まっている場合には、課税対象にはなりません。
相続時精算課税制度とNISA口座を利用した生前贈与の方法
生前贈与の方法には、暦年課税制度や相続時精算課税制度などの方法があります。各制度にそれぞれ異なる特徴があり、生前贈与にNISA口座を利用した場合にはさまざまなメリットにもつながります。
そもそも相続時精算課税制度と暦年課税制度の違いは?
相続時精算課税制度とは、子どもや孫などの受贈者が、贈与税がかからない状態で2,500万円までの贈与を受け取り、相続時にまとめて相続税を納付する制度のことです。一方暦年課税制度は、毎年贈与税がかからない程度の少額の贈与を行い、相続財産を減額できる制度です。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、生前贈与をする際に2,500万円まで特別控除として非課税での贈与が認められる制度です。原則として60歳以上の父母や祖父母が、18歳以上の子どもや孫など直系卑属に対して財産を贈る際に利用可能です。贈与者が亡くなった際には、2,500万円まで贈与税を納付せずに受け取っていた財産と、相続財産との合計額に相続税がかかります。
制度を利用するには、贈与を受けた人が、最初に贈与された年の翌年2月1日から3月15日の間に「相続時精算課税選択届出書」と戸籍謄本などの書類を住所地の税務署長に提出しなければなりません。受贈者は、父、母、祖父、祖母などの贈与者ごとに届出をします。
ただし一度制度を使うと、翌年以降も対象の贈与者から受けるすべての贈与分に対して制度が適用されます。2024年1月からは、特別控除の2,500万円に加えて、相続財産には含まなくてもよい年間110万円の基礎控除額が設定されています。
暦年課税制度
暦年課税制度は、1月1日から12月31日までの1年の間、基礎控除の110万円までなら贈与税が非課税になる制度です。年間で110万円を超える金額にだけ贈与税がかかります。18歳以上の子どもや孫に贈る場合は特例贈与で、税率が低めに設定されています。これは高額になりやすい贈与税軽減に役立ちます。
基本的には相続前に基礎控除の範囲内で贈与した財産に相続税はかかりません。ところが、暦年課税制度では、相続直前に贈与を行う相続税逃れへの対応として、相続開始前に基礎控除の範囲内で贈与された財産を相続財産に含める生前贈与加算(持ち戻し)も定められています。定められていた生前贈与加算期間はこれまでは3年間でした。2024年1月の法改正によって期間が3年から7年に変わり、段階的な期間延長が決定しています。
2031年1月1日からは加算期間が7年間になるため、相続時前の7年の間、毎年生前贈与を行っていた金額も相続財産に加算されます。贈与額の管理負担を軽減する目的で、生前贈与額のうち100万円までは加算額に含まれません。さまざまな相続税対策があるなかで、相続の際のメリットが大きいのが、相続時精算課税制度とNISA口座を使用した生前贈与です。
方法1. 年間110万円までの贈与を行う
相続時精算課税制度を使用すると、年間110万円の基礎控除の範囲内で税金がかからずに生前贈与を行えます。保有する資産が多いと相続時に高額の相続税が発生してしまいます。生前贈与を行うことで、相続税の軽減が可能です。年間110万円の枠で税金をかけずに贈与できるため、相続財産を計画的に減らせます。従来の暦年課税とは異なり、相続時前に贈った財産を相続財産に加える持ち戻し期間が設定されていない点も大きなメリットです。
この制度を利用するには、贈与された初年度に「相続時精算課税選択届出書」を提出しなければなりません。あとで詳しく述べていますが、一度制度を使ったあとは暦年課税制度には戻せません。
方法2. 受贈者は贈与を受けた110万円をNISAで運用する
年間110万円までは非課税で贈与を受けられるため、資産を受け取った子どもがNISAの積立投資枠で運用すると、効率的に資産形成を行えます。NISAの「つみたて投資枠」は、年間の上限額が120万円です。受け取った110万円と自己資金の10万円を毎年投資していくと、贈与税や資産運用時の所得税といった税金がかからずに長期的な資産運用が可能です。
長期的な贈与と運用を続けることで、贈る側は相続財産を減らす相続税対策ができ、受け取る側は相続税負担の軽減と安全性が高い資産の長期運用を行えます。
相続時精算課税制度を利用する際の注意点
相続時精算課税制度の利用には注意点もあります。贈与額が年間110万円を超えた際に確定申告をしなければならない、暦年課税には戻せないなどの注意点も調べて、自分に合う制度かどうか確認することが大切です。
- 年間110万円を超える贈与を受けると贈与税申告が必要となる
- 暦年課税には戻せなくなる
- 相続時精算課税制度で贈与した不動産には小規模宅地等の特例が使えない
年間110万円を超える贈与を受けると確定申告が必要となる
相続時精算課税制度を利用する場合、毎年110万円の基礎控除額を超えて贈与を受けた際には、受贈者が贈与税の申告をしなければなりません。110万円を超えて贈与された金額は相続開始時に必ず相続財産に加算され、相続税の対象になります。贈与税の申告を期限内に行わなかった場合には、2,500万円の特別控除枠が利用できなくなり、20%の贈与税が課税されるため、注意が必要です。
暦年課税には戻せなくなる
相続時精算課税制度を使った場合、あとから暦年課税に戻すことはできません。ただし暦年課税の際に使用できる年間の非課税枠110万円が使用できなくなるのは、制度を利用している贈与者からの贈与に限られるため、ほかの人からの贈与に対しては暦年課税制度が使えます。メリットや注意点から、誰に相続時精算課税制度を使用した方がいいかをよく検討することが大切です。
小規模宅地等の特例が使えなくなる
相続時精算課税制度を利用して土地や建物を贈与した場合、小規模宅地等の特例が使えなくなります。小規模宅地等の特例は、相続時に一定の条件下で土地や建物を相続すると、土地などにかかる相続税評価額を最大で80%減額できる特例です。土地などを生前贈与した場合には、特例が使えず、逆に相続税が高額になるリスクがあります。土地の贈与を行う際には、小規模宅地の特例が使えるかどうかの判断に注意が必要です。相続税対策にどの方法を取り入れるべきか迷った場合は、専門家に相談するのがおすすめです。
生前贈与に関するご相談は税理士法人レガシィまで
NISA口座にある投資商品はそのまま贈与ができないため、一旦課税口座に移管してから贈与しなければなりません。生前贈与には複数の方法がありますが、相続時精算課税制度の基礎控除額とNISA口座を利用した方法はメリットが大きいとされています。
相続専門税理士法人レガシィは、累計30,000件を超える豊富な実績を持つ税理士法人です。相続のプロフェッショナルが生前贈与を含めた相続のサポートを実施し、的確なアドバイスやサービスを提供しています。相続を見越した贈与を検討している場合は、相続専門の税理士へお気軽にご相談ください。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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