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相続の知識

生前贈与で贈与税が非課税になる8パターン|110万円基礎控除や非課税制度を解説

相続税の節税対策として行うものの一つに「生前贈与」があります。自分がまだ生きている間に配偶者や子ども、孫に財産の一部をゆずることで相続財産を減らし、将来的に相続税の負担を軽くするという方法です。
ただし、贈与には「贈与税」がかかってくることがあります。贈与とは個人から個人へ無償で財産を渡すことをいいますが、その額によっては課税されてしまうのです。その贈与税を払うのは受けとった側、つまりは配偶者や子ども、孫なので相続税の節税対策の意図から離れてしまいます。
したがって贈与を行う際には「いくらから課税対象となるのか」ということをしっかり把握しておくことが大切です。贈与税にはさまざまな制度があり、非課税枠もそれに応じて設定されています。こうした制度を利用することがポイントだといえるでしょう。この記事では贈与税が非課税になる条件について解説いたします。

生前贈与による贈与税が非課税となる8パターン

贈与税は原則として「暦年課税方式」および「受贈者単位課税方式」によって算出します。受贈者が1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた額に対して課税するものですが、この場合年間110万円までの非課税枠が設定されています。贈与税額の計算は以下のようになります。

【贈与税額=(受けとった額−110万円)×税率−控除額】

税率や控除額は額によって異なりますが(後述します)、110万円以下の贈与であれば贈与税を払わなくてもいいわけです。この暦年課税を含めて贈与税が非課税になる制度があり、以下の8パターンが挙げられます。

  1. 暦年課税制度による110万円の基礎控除
  2. おしどり贈与による贈与税非課税制度
  3. 相続時精算課税制度による贈与税非課税制度
  4. 生活費や教育費による贈与税非課税制度
  5. 孫などの教育資金の贈与税非課税制度
  6. 住宅取得等資金の贈与非課税制度
  7. 孫などへの結婚・子育て資金の贈与税非課税制度
  8. 特定障害者に対する贈与税非課税制度

それぞれに解説していきましょう。また、国税庁のホームページにも詳細が記されているのでそちらも参考にしてみてください。

贈与税がかからない場合(国税庁)

暦年課税制度による110万円の基礎控除

先にふれた暦年課税ですが、非課税枠の110万円というのは、贈与の合計額に対して控除されるものです。たとえば父親と母親からそれぞれ100万円を贈与された場合、合計額の200万円から110万円を控除した(差し引いた)額の90万円に贈与税がかかってきます。両親からの贈与額はそれぞれ110万円以下ですが、個別の控除はしません。

税率に関しては「特例税率」と「一般税率」の2種類の税率がありますが、特例税率とは贈与を受けた年の1月1日時点で子ども・孫が20歳以上である場合に該当する制度です。

基礎控除額110万円

一般贈与 基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円
特例贈与 基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

おしどり贈与による贈与税非課税制度

通称で「おしどり贈与」と呼ばれる非課税制度は「夫婦間での居住用不動産を取得するための資金の贈与」のことを指します。20年以上にわたって婚姻関係を続けた夫婦であれば、居住用の不動産あるいはその購入のための資金は2,000万円までが非課税になるという制度です。暦年課税と併用をすれば2,110万円までの贈与を非課税とすることができます。なお「婚姻」とは法律上において認められた結婚のことなので、事実婚の場合はこの制度は使えません。

贈与は「夫から妻へ」でも「妻から夫へ」でもかまいません。ただし、贈与を受けた人は翌年3月15日までに贈与された不動産または贈与された資金で購入した不動産で暮らす必要があります。なお、この制度を使うには贈与税の申告が必要です。たとえ非課税枠の適用で贈与税を支払わなくてよくなっている場合でも申告はしてください。

相続時精算課税制度による贈与税非課税制度

「相続時精算課税」は、のちに相続が発生した時に相続税の課税対象とすることを条件にした課税方式です。受けとった財産の合計額から2,500万円までは特別控除額として差し引くことができます。したがって2,500万円以下なら贈与税はかからないということです。

2,500万円を超えた場合は、その額に対して一律20%の税率で課税されます。たとえば3,000万円の贈与を受けたとすると、課税対象は特別控除額を差し引いた500万円となり、その20%の100万円が贈与税となるわけです。非課税枠は大きいのですが、相続時精算課税は「相続時までの納税の先送り」であり、基本的に節税対策にはなりません。

なお、この制度を使うには贈与税の申告が必要です。たとえ非課税枠の適用で贈与税を支払わなくてよくなっている場合でも申告はしてください。また、一度、相続時精算課税を選択すると暦年課税は使えなくなるので注意が必要です。

 【2023年最新情報】相続時精算課税制度の見直し 

2022年12月16日に発表された「令和5年度 税制改正大綱」によって、相続時精算課税制度を選択した場合における制度の内容が以下の通り見直されることが決まりました。

①相続時精算課税の特別控除額2,500万円とは別に、基礎控除110万円が創設
②相続までに贈与財産が災害被害を受けた場合、相続時の財産評価額は再評価となる

適用時期は【令和6年(2024年)1月1日以降】です。


この見直しにより、より多くの人が相続時精算課税制度を活用しやすくなるのではないでしょうか。
詳細は下記の記事をご覧ください。

生活費や教育費による贈与税非課税制度

原則として生活費や教育費は贈与税の対象にはなりません。親が子どもの成長を支え、生活の面倒を見るのは当然のことで、生活や教育にかかるお金に対して課税をするのは適切なこととはいえないためです。また、夫婦間においても互いに助け合いながら生活をしていくため、やはり生活費への課税は適切ではありません。
ただし、生活費・教育費として贈与されたお金であっても、その使い道によっては生活費と認められないケースもあります。たとえば、次のようなケースです。

  • 不動産や車、株などの有価証券の購入に使う
  • 学資保険など生命保険の保険料に使う
  • 余った生活費を預貯金に回している

このような場合は贈与税の対象となるのでご注意ください。

教育資金の贈与税非課税制度

たとえば入学金や授業料、学用品の購入、修学旅行の費用など教育に関わる資金を贈与された場合は1,500万円までが非課税となります(塾や習い事、通学のための定期券代などは500万円までが非課税)。対象となるのは令和5(2023)年3月31日までに30歳未満であり、両親や祖父母から資金を贈与された人たちです。

この制度を使う場合は受贈者(贈与を受けた人)が金融機関で「教育資金口座」を開設をする必要があります。金融機関を経由して税務署に教育資金非課税申告書を提出することになるので、贈与された資金の管理はこの口座で行います。必要に応じて引き出せますが、その際には金融機関に教育費用の領収書を提出しなければなりません。

 ※ 2023年最新情報 

令和5年度税制改正大綱により、教育資金贈与の非課税制度において以下の内容が変更となりました。
● 適用期限が3年延長(2023年3月31日→2026年3月31日)
● 贈与された資金が30歳までに使いきれなかった場合、残額にかかる贈与税の税率は受贈者の年齢により「特例税率」か「一般税率」を判断だったが、改正後はすべて「一般税率」へ統一
● 贈与者が死亡した際の残額は相続税の課税対象、ただし対象外の条件(① 23歳未満である場合 ② 学校等に在学している場合 ③ 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合)に該当すれば課税されない
→ 対象外となる条件に該当しても、相続税の課税価格が5億円以上ある場合は課税

住宅取得等資金の贈与非課税制度

マイホームを購入する子や孫に対して、資金面でサポートを行うケースは多いといえます。その際に活用したいのが「住宅取得等資金の非課税の特例」です。令和4(2022)年1月1日以降に住宅の取得に関する贈与があった場合は、最大1,000万円までが非課税となります。
非課税限度枠は住宅の性能(耐震性やバリアフリーなど)によって変わってきます。

※令和4年度税制改正によって、住宅購入資金贈与の非課税枠は最大1,500万円 → 1,000万円に変更されました。

住宅購入資金贈与の最新情報については、こちらもご覧ください。

 

消費税が10%の住宅を取得した場合の非課税限度枠

住宅用家屋に係る契約の締結日 一般の住宅の場合 省エネ等の住宅の場合
2019年4月1日~2020年3月31日 2,500万円 3,000万円
2020年4月1日~2021年12月31日 1,000万円 1,500万円

上記以外の住宅を取得した場合の非課税限度枠

住宅用家屋に係る契約の締結日 一般の住宅の場合 省エネ等の住宅の場合
~2015年12月31日 1,000万円 1,500万円
2016年1月1日~2020年3月31日 700万円 1,200万円
2020年4月1日~2021年12月31日 500万円 1,000万円

なお、この制度を使うには贈与税の申告が必要です。たとえ非課税枠の適用で贈与税を支払わなくてよくなっている場合でも申告はしてください。

孫などへの結婚・子育て資金の贈与税非課税制度

子どもの結婚や子育て(孫)に使うために贈与された資金に対しては、1,000万円までが非課税となります。ただし、結婚のための資金の非課税枠は300万円までです。対象となるのは、令和5(2023)年3月31日までに20歳以上50歳未満で、両親や祖父母から資金を贈与された人たちです。

この特例を使う場合は受贈者が金融機関で、「結婚・子育て資金口座」を開設する必要があります。金融機関を経由して税務署に結婚・子育て資金非課税申告書を提出することになるので、贈与された資金の管理はこの口座で行います。必要に応じて引き出せますが、その際には金融機関に結婚・子育て費用の領収書を提出しなければなりません。

 ※ 2023年最新情報 

令和5年度税制改正大綱により、結婚・子育て資金贈与の非課税制度において以下の内容が変更となりました。
● 適用期限が2年延長(2023年3月31日→2025年3月31日)
● 贈与された資金が50歳までに使いきれなかった場合、残額にかかる贈与税の税率は、特例税率 → 一般税率へ変更

特定障害者に対する贈与税非課税制度

障害者に贈与をする場合の非課税枠は3,000万円または6,000万円です。
3,000万円までが非課税となるのは「特別障害者以外の特定障害者」です。

特別障害者以外の特定障害者

  • 児童相談所や知的障害者更生施設などで知的障害者とされた障害者
  • 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている障害者 など

一方、6,000万円までが非課税となるのは「特別障害者」です。

特別障害者

  • 児童相談所や知的障害者更生施設などで重度の知的障害者とされた障害者
  • 精神障害者保健福祉手帳の障害等級が1級の障害者
  • 身体障害者手帳が1級または2級の障害者 など

この制度を使う場合は信託銀行に資金を信託することが必要で、金融機関を経由して税務署に障害者非課税信託申告書を提出することになります。信託口座の資金は受贈者となる障害者の生活費や医療費として定期的に払い出されます。

生前贈与以外で贈与税を非課税にする方法

これまで解説してきた各種制度以外にも贈与税を非課税にする方法があります。ここでは「生命保険を活用した税金対策」と「ジュニアNISAを活用した税金対策」をとり上げることにしましょう。

生命保険を活用して税金対策をする

生命保険には非課税枠が設定されています。配偶者や子どもなどの法定相続人が死亡保険金を受けとる場合には、【500万円×法定相続人の数】が非課税となるのです。たとえば、配偶者と子ども2人なら【500万円×3人】で、1,500万円までが相続税において非課税となります。

この生命保険の非課税枠と暦年課税を組み合わせると、効率的な相続ができます。親を被保険者とした保険を子どもが契約し、親から贈与されたお金で保険料を支払う方法です。
贈与額を110万円以下に抑えると贈与税はかかりませんし、贈与されたお金を保険料として有効に使うことができます。親が亡くなると子は保険金を受けとることができ、相続税の支払いがある場合は、その負担軽減にもつながります。ただし、受けとった保険金から支払った保険料の差額に所得税(一時所得)が課されます。

ジュニアNISAを活用して税金対策をする

未成年の子や孫に贈与をする場合は「ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)」の活用も考えましょう。この制度は平成28(2016)年にスタートしたもので、子どもの将来に向けた資産の形成を支えることが目的です。
株式や投資信託などに投資したことで得られる売却益や配当金、分配金にかかる税金が年間80万円まで非課税となり、非課税期間としては5年間が設定されています。つまり最大で400万円までが非課税となるわけです。

対象となるのは日本に居住する0歳から19歳までの未成年で、銀行や証券会社、ゆうちょ銀行(郵便局)などの金融機関で専用の口座を開設する必要があります。口座の名義は未成年者本人ですが、運用・管理は親権者が行います。
贈与税の非課税枠に収まる額をジュニアNISAで運用すれば、節税をしながら資産形成を進められるというわけです。なお、この制度は令和5(2023)年に終了する予定となっています。

贈与税を非課税にする際の注意点

ここまで見てきたように、贈与税を非課税にする方法はいくつもありますが、活用する際に注意が必要な場合もあります。非課税になるはずのものが、そうならない(税務署から認められない)ケースもあるのです。そうした注意点についてもふれておきましょう。

毎年同額の贈与はしない

すでに解説しましたが、贈与税では毎年110万円までの贈与は非課税です。しかし「毎年同じ人物から同じ時期に同じ額を贈与されている」場合、税務署が「定期贈与」と判断する可能性が高くなります。
たとえば父親が娘の誕生日に100万円を10年間にわたって贈与した場合、「最初から1,000万円を贈与する意図があった」と税務署は考え、税務調査に入ることもあるのです。こうした事態を回避するには贈与額や贈与の時期を変更することがポイントとなります。

相続税よりも贈与税のほうが税率が高い

相続税と贈与税の税率を比較すると、贈与税のほうが負担が大きいことがわかります。たとえば最高税率で比べた場合どちらも55%ですが、贈与税は4,500万円を超えた時点でこの税率が適用されます(特例税率の場合)。一方の相続税は6億円を超えた時に最高税率となります。
相続税の負担を小さくするために生前贈与をしたとしても、より税負担の大きい贈与税を支払うことになってしまえば本末転倒です。この記事で解説した非課税の各種制度について理解を深めておくことが大切だといっていいでしょう。

  相続税 贈与税
最高税率 55%(6億円超) 55%(4,500万円超)
最低税率 10%(1,000万円以下) 10%(200万円以下)
基礎控除額 3,000万円+法定相続人×600万円 110万円

申告が必要な場合もある

贈与税の非課税制度のなかには、税務署への申告が必要なものもあります。以下の三つの制度を利用する場合は申告を忘れないようにしましょう。

  • 夫婦間での居住用不動産を取得するための資金の贈与(おしどり贈与)
  • 相続時精算課税
  • 住宅取得等資金の贈与非課税制度

おわりに:生前贈与をする際は、相続に詳しい税理士に相談しよう

配偶者や子ども、孫の相続時の税負担を減らすことを目的に行う生前贈与。贈与税にはさまざまな非課税制度が設けられており、それらを上手に活用すれば効果の大きい節税対策につながります。
ただし贈与税は相続税よりも税率が高いので、よくよく注意をしないとかえって税負担が増えてしまったという本末転倒なことにもなりかねません。その意味でも生前贈与に関する知識を深めておくことは大変重要になってくるわけです。たとえば、申告が必要なことを知らなかったために、ペナルティを科せられたりするケースも少なくありません。財産を贈る側も贈られる側も、ともに注意が必要です。なお、贈与に関する基本的な情報は国税庁のHPでも確認することができます。

【参考】国税庁ホームページ『贈与税』

また、贈与に詳しい税理士に相談をするのも有効な手段です。専門知識と実績が豊富な税理士は贈与税の計算や特例の活用、申告をサポートをするだけではなく、節税につながる有効なアドバイスもさまざまに提供してくれます。そのうえ、将来的に相続まで含めた節税対策の助言をしてくれる点でも大変に心強いといえます。より安心できる贈与税対策のためにも税理士へのご相談をおすすめいたします。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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