不動産小口化商品とは?相続税の節税になる?令和8年度税制改正も踏まえて解説
Tweet相続税対策として不動産小口化商品が注目されていますが、「本当に節税効果があるのか」「令和8年度の税制改正でどう変わるのか」と疑問を持っている方も多いでしょう。本記事では、不動産小口化商品の仕組みやメリット・デメリット、令和8年度税制改正による影響をわかりやすく解説します。
目次
不動産小口化商品とは?
不動産小口化商品とは、複数の投資家から出資を募り、不動産を共同で運用する仕組みです。特定の不動産を1口数万~数百万円程度の小口に分割し、事業者が不動産の取得・運用を行います。少額から始められる手軽さや、資産分散・節税効果への期待から近年注目を集めています。
なお、令和8年度(2026年度)税制改正により、相続税評価方法の見直しが予定されており、2027年1月以降に相続または贈与により取得する財産から適用される見通しです。
不動産小口化商品の仕組み
不動産小口化商品では、投資家は出資額に応じた権利(持分や受益権など)を持ち、その物件から得られる利益の分配を受けます。一般的な運用の流れは以下のとおりです。
(1)出資と物件の取得
事業者が対象となる不動産を選定し、投資家から出資金を募ります。集めた資金をもとに不動産を取得します。
(2)管理・運営
物件の賃貸管理(修繕対応、入居者募集、契約手続き、家賃の回収など)はすべて事業者が行います。投資家が自ら管理に携わる必要はなく、手間がかからないことが特徴です。
(3)利益の分配
入居者からの賃料収入から管理費や修繕費などの諸経費を差し引いた利益が、出資比率に応じて投資家に定期的に分配されます。
(4)売却と元本の返還
運用期間が終了すると、事業者が物件を売却することが一般的です。売却益(キャピタルゲイン)が発生した場合は、出資割合に応じて投資家に分配されます。
不動産小口化商品の種類
不動産小口化商品は、契約の形態によって大きく「任意組合型」「匿名組合型」「信託受益権型(信託型)」などに分けられます。特に税務上の扱いが大きく異なるため、目的(収益重視か、相続対策か)に合わせた選択が求められます。
- 任意組合型
投資家と事業者が共同で事業を行う「任意組合」を組成する形式です。投資家は不動産の「共有持分」を実際に保有するため、相続時には現金ではなく不動産として評価されます。そのため、相続税の評価額圧縮を目的とした対策として活用されることが多いタイプです。
- 匿名組合型
投資家が事業者に対して出資を行い、事業者が生んだ利益の分配を受ける形式です。不動産クラウドファンディングなどで多く採用されています。投資家に所有権はなく、税務上は不動産ではなく、事業への出資に対する「持分(債権的権利)」として評価されます。そのため、不動産のような相続税評価額の圧縮効果は基本的に期待できません。
- 信託受益権型(信託型)
信託銀行などを受託者として不動産を信託し、その受益権を小口化して販売する形式です。投資家は不動産そのものではなく受益権を保有し、賃料収入や売却益に応じた分配を受けます。税務上は受益権として評価されるため、相続や資産管理の観点から活用されるケースもあります。
不動産特定共同事業法とは?
不動産特定共同事業法(不特法)とは、不動産小口化商品を取り扱う事業者を規制し、投資家を保護するための法律です。1995年に施行され、複数の投資家から資金を集めて不動産事業を行う際のルールを定めています。
不特法に基づき不動産小口化事業を行う場合、事業形態に応じて国土交通大臣または都道府県知事の許可(または登録)が必要です。任意組合型や匿名組合型など、形態ごとに求められる許可区分が異なります。また、事業者には投資家に対する重要事項の説明や情報開示が義務付けられており、契約内容やリスク、財務状況などを適切に開示しなければなりません。
不特法は、不動産投資商品に関するトラブル防止と投資家保護を目的として整備されました。投資を検討する際は、不特法に基づく許可の有無や許可番号、財務状況、運用実績などを確認し、事業者の信頼性を判断することが不可欠です。
2027年から税制改正の予定
令和8年度(2026年度)税制改正大綱により、不動産小口化商品の相続税評価方法の見直しが、2027年1月以降の相続や贈与による取得分から適用される予定です。詳細な評価方法は今後策定される政令や通達で明確化される見込みです。ここでは改正の概要を紹介します。
これまで不動産小口化商品は、投資家が不動産の共同持分を直接所有するため、相続税評価の際には「不動産」として評価されてきました。不動産は路線価や固定資産税評価額をもとに算定され、一般的に時価よりも低く評価されることが多いため、相続税の評価額圧縮につながるケースもありました。
しかし、2027年1月以降は、一定の不動産小口化商品について相続税評価の方法が見直され、原則として実勢価格(時価)を反映した評価〈相続税評価=実勢価格(時価)〉になることが見込まれています。これにより、従来のような相続税評価額の圧縮効果は限定的になる可能性があります。相続対策として不動産小口化商品の購入を検討している方は、税制改正の内容や適用条件を確認し、活用の是非やタイミングを十分に考慮する必要があります。
(不動産小口化商品の評価見直しは「二資産課税 3その他参照)
不動産小口化商品のメリット

不動産小口化商品には、相続税対策としての活用をはじめ、少額投資や管理の手間がかからない点など、一般的な不動産投資にはないメリットがあります。
相続税対策としての活用
不動産小口化商品(特に「任意組合型」)は、相続税評価額の圧縮につながる可能性がある点から、相続対策のひとつとして活用されてきました。ただし、前述のとおり、2027年以降は評価方法の見直しにより、その効果は限定的になる可能性があります。
- 節税の仕組み
現金で1億円を相続する場合、評価額はそのまま1億円となります。一方、同額で取得した不動産を相続する場合、相続税評価額は路線価や固定資産税評価額をもとに算出されるため、一般的に時価より低く評価される傾向があります。物件の立地や種類によって異なりますが、評価額は時価の6~8割程度となるケースもあります。任意組合型では不動産の共有持分を直接保有するため、不動産として評価され、結果として評価額の圧縮につながるケースがありました。
- 遺産分割が容易
現物不動産は切り分けが難しく、相続時にトラブルの原因となることがあります。小口化商品は口数単位で分割できるため、複数の相続人に分配しやすいという特長があります。
プロが選定した物件に投資できる
不動産小口化商品の多くは、不動産会社や不動産投資の専門家が、立地や収益性、将来性などを総合的に判断して選定した収益物件を対象としています。個人が単独で物件を購入する場合と比べ、専門的な視点で物件選定が行われる点が特徴です。
駅からの距離、周辺需要、テナント属性、想定利回りなど、さまざまな観点からリスクや収益性を検証したうえで商品化されます。そのため、個人が1棟物件を購入する場合に比べ、一定のリスク管理がされた投資対象に参加できる点はメリットです。
管理は運営会社に任せられる
不動産投資では、購入後の管理業務が負担になることがあります。例えば、
- 入居者の募集や契約手続き
- 家賃の回収や督促
- 物件の清掃や修繕対応
といった業務が発生しますが、これらの煩雑な管理・運営業務は運営会社が行います。投資家は、定期的な運用報告の確認と分配金の受け取りが中心となるため、手間をかけずに不動産投資に取り組めます。
リスクを分散できる
不動産小口化商品は、1口あたりの投資金額が比較的少額であるため、複数の物件やエリアに分散投資しやすいという特徴があります。1物件に集中投資する場合に比べて、空室の発生、災害やエリアの不動産市況の変化などによる影響を抑えられる可能性があり、リスク分散の効果が期待できます。
少額から不動産投資が可能
通常の不動産投資では、物件価格が数千万円~数十億円に上ることも多く、まとまった資金が必要です。一方、不動産小口化商品であれば、1口数万~数百万円程度でスタートできるものが多くあります。比較的少ない資金から不動産投資を始められる点は、大きな特徴のひとつです。
不動産小口化商品のデメリット

不動産小口化商品には、投資商品としてのリスクや制約も存在します。
元本保証がない
不動産小口化商品は預金ではないため、元本は保証されていません。
物件価格が下落すれば、売却時に出資額を下回る元本割れが生じる可能性があります。匿名組合型では、事業者が「優先劣後構造」などで投資家のリスクを軽減する仕組みを導入しているケースもありますが、それでも市場環境の悪化による損失をゼロにすることはできません。
また、匿名組合型は有限責任ですが、任意組合型は無限責任となる点にも注意が必要です。無限責任とは、出資額を超える損失が発生した場合、持分に応じて追加負担が生じる仕組みを指します。これにより、出資金以上の経済的損失を被るリスクがあるため、契約前にリスク許容度を十分に検討することが不可欠です。
利回りが低い傾向がある
不動産小口化商品は、直接投資と比べて利回りが低めに設定される傾向があります。
- 事業者の管理手数料や運営コストが差し引かれる
- 高利回りを狙った物件よりも、稼働率が安定している物件が選定されるケースが多い
想定利回りは商品によって異なりますが、年利3~5%程度に設定されているものが多く見られます。短期間で高いリターンを狙う投資には向かず、中長期での運用を前提とした投資に適しています。
中途解約が難しい場合がある
不動産小口化商品は、原則として運用期間中の中途解約はできない、または制限されるケースが一般的です。運用期間中に資金が必要になっても、自由に換金できない可能性があります。
また、持分の譲渡には、事業者の承諾が必要となる場合も多く、株式や投資信託と比べると、流動性は低い傾向にあります。
運用期間(数年~10年程度)を確認し、当面使う予定のない余裕資金で運用するのが鉄則です。
融資が利用できない
現物の不動産を直接購入する投資であれば、物件を担保に銀行からローンを組み、自己資金以上の投資を行う「レバレッジ効果」を狙えます。
しかし、不動産小口化商品は、原則として金融機関の融資を利用できません。 全額を自己資金で用意する必要があるため、借入を利用して投資規模を拡大したい方には不向きです。ただし、借入リスクを負わずに投資できる点は、保守的な運用を重視する投資家にとってメリットともいえます。
令和8年度の税制改正でどう節税に影響がある?

これまで不動産小口化商品(特に任意組合型)は、相続税対策の一環として広く活用されてきました。しかし、令和8年度(2026年度)税制改正大綱において、その評価ルールを根本から見直す方針が示されました。この改正により、これまでの節税スキームは大きな転換期を迎えることになります。
評価方法の見直しと節税効果への影響
現行のルールでは、不動産小口化商品の相続税評価額は、現物の不動産と同様に「路線価」や「固定資産税評価額」をベースに計算されます。不動産の評価額は、時価(実勢価格)の6~8割程度に算定されるケースも多く、現金に比べて相続税評価額を一定程度抑えることが可能でした。
しかし、2027年1月以降は、実勢価格との乖離が大きい取引への対応として、評価方法の見直し・適正化が図られる予定です。今後、具体的な評価ルール(時価要素の導入や基準化など)は政令・通達で明確化される見通しです。
この改正の狙いは、いわゆる「タワーマンション節税」の見直しと同様、過度な租税回避を防ぎ、課税の公平性を確保することにあります。時価相当額で評価されるようになると、これまでのように実勢価格より低い評価額で算定することが難しくなり、相続税評価額を大きく圧縮する効果は限定的になると考えられます。
適用時期と2026年までに検討したい対策
注意すべきは、この新ルールが適用されるタイミングです。改正案では、2027年1月1日以後に相続または贈与により取得する財産から適用される見通しです。
つまり、2026年12月31日までの贈与については、路線価や固定資産税評価額をベースとした評価が適用されます。そのため、2026年末までに相続時精算課税制度を活用して生前贈与を行えば、贈与時点の評価額で財産を移転することが可能です。将来その資産の価値が上昇した場合でも、相続時に再評価されないため、評価額の上昇による税負担の増加を抑えられる可能性があります。
ただし、相続時精算課税制度は、一度選択すると暦年贈与には戻せないといった制度の特性を理解したうえで活用する必要があります。また、贈与税と相続税では税率や仕組みが異なり、資産の内容や相続人の状況によって有利・不利は変わります。実際の活用にあたっては、個別にシミュレーションしたうえで判断することが重要です。
なお、事業者への名義変更手続きなどに時間を要するため、期限間近に贈与するのではなく、余裕をもって手続きを進めるようにしましょう。
今回の税制改正により、不動産小口化商品を「節税目的のみ」で購入するメリットは薄れます。
しかし、投資商品としてのメリットは存在するため、資産運用の一環として活用を検討する価値はあります。
不動産小口化商品と他の不動産投資との比較

「不動産に投資する」という目的は同じでも、手法によって初期費用や管理の手間、税務上の扱いは大きく異なります。不動産小口化商品が自分に適した選択肢かどうかを判断するために、ここでは、従来から行われてきた不動産を直接購入する投資や、REIT(リート)、クラウドファンディングといった主な手法との違いを整理します。
従来の不動産投資との違い
従来の不動産投資とは、一棟マンション・アパートや区分マンションを個人で直接購入し、所有・運営する投資方法です。不動産小口化商品とは、所有形態や必要資金、運用の手間などにおいて大きな違いがあります。
- 所有形態の違い
従来の不動産投資では、投資家自身が不動産の所有者(オーナー)となり、登記上も投資家本の名義で不動産を保有します。一方、不動産小口化商品では、複数の投資家が一つの不動産に出資する仕組みであり、スキームによって投資家が持つ権利の形態が異なります。主な形態は次のとおりです。
① 任意組合型<共有持分>
複数の投資家が任意組合契約を締結し、不動産を直接共有する形で保有します。投資家は出資割合に応じた共有持分に相当する権利を持ちます。
② 匿名組合型<事業利益の分配請求権>
投資家は不動産そのものを直接所有するのではなく、事業者が行う不動産事業に出資する形となり、出資割合に応じて収益分配を受ける権利を持ちます。
③ 信託型<信託受益権>
不動産を信託し、投資家は信託受益権を取得することで、信託財産である不動産から生じる収益を受け取る権利を持ちます。
- 投資額の違い
一棟マンションや区分マンションを購入する場合、通常数千万円から数億円規模の資金が必要となり、多くの場合は金融機関から融資を受けて投資を行います。対して不動産小口化商品は、数万~数百万円程度で投資できる商品も多く、現金での少額投資が可能です。
- 管理負担の違い
従来の不動産投資では、オーナーとして物件管理や入居者対応、修繕計画の立案など、さまざまな管理業務に関わる必要があります。管理会社に委託する場合でも、最終的な意思決定はオーナーが行わなければなりません。一方、不動産小口化商品では、物件の管理・運営はすべて事業者に任せ、手数料を負担する形で運用が行われます。
REITとの違い
REIT(リート:不動産投資信託)も、少額から不動産投資ができる金融商品として知られていますが、不動産小口化商品とは仕組みや運用特性が大きく異なります。
- 売買の仕組みの違い
REITの多くは証券取引所に上場されており、株式と同様に市場で自由に売買できます。そのため価格は日々変動し、市場の需給や金利動向、経済状況によって上下することがあります。
一方、不動産小口化商品は証券取引所のような市場で売買される仕組みはなく、基本的には運用期間満了まで保有する形態です。中途換金を希望する場合は、事業者による買取や他の投資家への譲渡など、所定の手続きが求められます。
- 投資対象の違い
REITは複数の不動産で構成されたファンド型の商品で、個別の物件を指定して投資することはできません。投資家は、運用方針や投資対象の種類(オフィス・住宅・商業施設など)をもとにREIT銘柄を選ぶ形となります。
これに対し不動産小口化商品は、特定の物件(例えば、特定エリアのオフィスビルや商業施設など)ごとに募集されるケースが多く、投資家自身が物件の内容を確認したうえで投資対象を選択できます。
つまり、REITは複数の不動産に分散投資するファンド型の商品であり、「銘柄(ファンド)」を選んで投資する仕組みです。
一方、不動産小口化商品は、個別の不動産ごとに募集されることが多く、投資家が物件そのものを確認したうえで投資対象を選択できる点が大きな違いといえます。
- 税務上の取り扱いの違い
上場REITの分配金は「配当所得」として扱われ、原則として申告分離課税(2037年まで税率20.315%)の対象となります。なお、私募REITなどの非上場REITについても、分配金は配当所得として扱われるのが一般的です。ただし、税務上の取り扱いは個別の商品によって異なる場合があります。
一方、不動産小口化商品(任意組合型など)では、収益が不動産所得として扱われ、減価償却費を計上できるため、課税所得の圧縮につながる場合があります。また、2027年1月に税制改正が適用される前までは、相続税評価額の圧縮効果が期待できる商品もありました。
運用スタイルの違いから見ると、REITは流動性が高く価格変動を踏まえて機動的に売買したい投資家に向いています。一方、不動産小口化商品は特定の物件に対して中長期で投資し、賃料収入を中心とした運用を重視する投資家に適した商品といえるでしょう。
不動産クラウドファンディングとの違い
不動産クラウドファンディングも、少額から不動産投資ができる近年注目の投資手法です。不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業に基づく小口化商品の一形態で、インターネットを通じて出資を募集する仕組みです。
- 法規制の違い
不動産小口化商品は「不動産特定共同事業法」に基づいて運営され、厳格な事業者要件や情報開示義務が課されています。一方、不動産クラウドファンディングの多くは、「不動産特定共同事業法」に基づく電子取引型不特事業として運営されています。一部の商品では、金融商品取引法の適用を受ける場合もあります。
- 手続きの違い
不動産クラウドファンディングは、インターネット上で申し込みから契約まで完結できる手軽さが特徴です。本人確認や投資申込、契約締結まですべてオンラインで行えます。対して不動産小口化商品は、重要事項説明や契約書の取り交わしなど、書面による手続きが必要になるケースが多く、対面での説明が行われることもあります。
- 運用期間の違い
不動産クラウドファンディングは数か月から2年程度の短期案件が中心で、短期的な資金運用に適しています。一方、不動産小口化商品は5年から10年、長いものでは20年以上の中長期運用を前提としており、中長期的な収益を目指す投資家向けの商品設計となっています。
- 税務上の取り扱いの違い
不動産クラウドファンディングの多くは匿名組合契約に基づく商品であり、分配金は原則として雑所得として扱われます。この場合、減価償却費を計上することはできません。一方、不動産小口化商品(任意組合型)では不動産所得として扱われるため、減価償却費を計上でき、所得税の軽減効果が期待できます。
不動産小口化商品の選び方・注意点

不動産小口化商品は、少額から不動産投資ができ、管理の手間も少ない一方で、商品ごとに仕組みや条件が大きく異なります。特に、運用期間や手数料、リスクの内容は、将来の資金計画や期待するリターンに大きく影響します。節税や資産運用を目的に検討する場合でも、これらのポイントを事前に十分確認し、自身の投資目的やライフプランに合った商品を選びましょう。
運用期間
不動産小口化商品は、原則として運用期間中の中途解約や自由な売却が難しく、満了まで資金を引き出せないケースが一般的です。運用期間は、数年程度の中期型から、10年~20年以上の長期型まで、商品によって幅広く設定されています。
そのため、「いつ、どの目的で使う資金なのか」といった資金計画と照らし合わせて商品を選ぶことが重要です。例えば、数年後の子どもの進学費用や、近い将来の住宅購入の頭金として活用する予定がある場合には、長期型の商品は適していません。一方、老後資金や長期的な資産形成を目的とする場合には、長期運用を前提とした商品も選択肢となります。
手数料
不動産小口化商品には、出資時の販売手数料や組成手数料(物件の取得や商品設計にかかる費用)、運用期間中の管理費や運営報酬、分配時の事務手数料など、さまざまなコストがかかります。これらの手数料は商品ごとに異なり、表面上の利回りだけで判断すると、実際の収益性を過大評価してしまうおそれがあります。
また、商品案内に記載されている利回りが「税引き前」や「手数料控除前」の数値である場合も少なくありません。提示されている利回りが、どの段階の数値なのかを確認することが重要です。比較の際は、各種手数料や想定コストを差し引いた実質利回りを基準に、複数の商品を横断的に検討しましょう。
リスク
不動産小口化商品は、比較的安定した運用が期待されることもありますが、元本が保証されているわけではありません。空室の増加や賃料下落、物件価格の下落などにより、元本割れが生じる可能性があります。また、途中換金が難しいことによる流動性リスクも、重要な注意点のひとつです。
さらに、運営会社の経営状況や管理体制に関する事業者リスクも確認ポイントです。商品によっては、事業者が倒産した場合の資産の保全方法など、リスク管理の仕組みが異なるため、その内容を事前に把握しておく必要があります。
出資前には、商品パンフレットや契約書、重要事項説明書を十分に読み込み、不明点があれば運営会社に問い合わせたうえで判断しましょう。
不動産小口化商品はどんな人におすすめ?

不動産小口化商品は、少額で手間をかけずに不動産投資をしたい人や分散投資を検討する人に特に向いている商品です。前述のとおり、現行の税制(2026年末まで)においては、相続税評価額の圧縮効果による節税にも利用されていましたが、税制改正によりその効果を期待することは難しくなりました。ご自身の投資目的や資産状況、ライフステージを考慮して検討してみてください。
少額から不動産投資を始めたい人
「不動産投資には興味があるが、数千万円~数十億円のローンを組むのは怖い」という方に適しています。不動産小口化商品の任意組合型では、数十万円程度の少額から、都心のオフィスビルや大型マンションなどの物件に投資できる商品もあります。また、匿名組合型では数万円程度から出資できる商品もあり、より少額から始められるケースもあります。
管理の手間をかけずに不動産投資をしたい人
投資目的で不動産を直接購入する場合、入居者対応や建物のメンテナンスなど管理の手間が発生しますが、不動産小口化商品では物件の管理・運営は運営会社が行うため、投資家自身が日常的な管理業務に関わる必要はありません。基本的に分配金を定期的に受け取るだけで済むため、本業に専念しやすくなります。
投資先の分散によってリスクを抑えたい人
すでに株式や債券、あるいは特定の不動産を持っている投資家が、ポートフォリオの分散先として活用するケースも増えています。不動産小口化商品は、少額から投資できるため、複数の商品や異なるエリア・用途の物件に分散して投資することも可能です。これにより、空室や物件価格の下落、災害などのリスクを分散できます。
不動産小口化商品をおすすめできない人とは?
短期的に高利回りを狙いたい人
小口化商品は中長期運用を目的としており、株式の短期売買やFX、暗号資産のような高い価格変動による利益は期待できません。
流動性(換金性)を重視する人
途中で売却したくても買い手が見つかるまで時間がかかる、あるいは中途解約に制限がある場合が多く、近いうちに現金化したい可能性のある資金での投資は避けましょう。
法人での不動産小口化商品の活用

不動産小口化商品は、個人だけでなく法人においても、資産運用やキャッシュフロー管理の観点から活用される場合があります。法人で保有することで、減価償却による損金算入や、将来の役員退職金計画との組み合わせが可能となるため、中小企業オーナーを中心に注目されています。
役員報酬・退職金との組み合わせ
法人で任意組合型の不動産小口化商品を購入した場合、出資持分に対応する建物部分の減価償却費を損金算入できる場合があります。これにより、会計上の利益を圧縮し、法人税の負担を抑えられる可能性があります。ただし、実態に即さない過度な節税目的と判断される場合には、税務調査で否認されるリスクもあります。なお、匿名組合型や信託受益権型では取り扱いが異なるため、契約形態に応じて税務上の確認が必要です。
また、不動産小口化商品を、将来の役員退職金支払いに充てる「資産形成手段」として活用することも考えられます。ただし、退職金としての支給額が法人税務上認められるには、就業規則や支給根拠の整備、合理的な算定が必要です。このようにして、法人段階と個人段階の双方で税負担を抑えながら、効率的に資産を移転することも可能です。
法人と個人の使い分け
不動産小口化商品は、法人と個人のどちらで保有するかによって、得られる税務メリットが異なります。法人で保有する場合には、減価償却費や各種経費を損金算入することにより、法人所得の圧縮を通じた節税効果が期待できます。また、資産を法人内に留めることで、オーナー個人の課税所得を抑えることも可能です。
一方、個人で保有する場合は、相続税評価額の圧縮が節税として利用されることがありました。
しかし2026年度の税制改正により、2027年以後の相続や贈与には、原則として時価評価が導入される予定であり、従来のような節税効果は期待できません。
オーナー経営者や資産管理会社は、法人と個人のどちらで保有するかを検討する際、節税・資産承継・キャッシュフローのバランスを踏まえることが求められます。
相続対策を考えるなら専門家への相談を
不動産小口化商品は、少額から都心の物件に投資でき、管理の手間を抑えることもできる資産運用の方法です。従来は相続税対策として用いられてきましたが、2027年(令和9年)から適用予定の令和6年度税制改正により、評価額の圧縮による節税メリットが制限される見込みです。そのため、現行制度が適用される2026年末までに対策を検討する場合は、制度の内容や適用時期を十分に確認したうえで、慎重に判断することが求められます。
改正内容を踏まえた物件選定や出口戦略、相続税対策については、専門的な知見が不可欠です。税理士法人レガシィの不動産コンサルティングを活用し、資産状況や将来設計に応じた対策を検討してはいかがでしょうか。
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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
