相続の知識

マンションの生前贈与にかかる税金は?節税対策や相続との比較

マンションを子に生前贈与したいが税金がいくらかかるのかわからない、相続まで待つべきか迷っている、という方は少なくありません。

マンションの生前贈与では贈与税だけでなく、不動産取得税や登録免許税も発生するため、事前に全体像を把握しておくことが大切です。本記事では、マンションの生前贈与で発生する税金の種類と計算方法、活用できる節税制度、相続との損得比較、さらに現物のマンション贈与と購入資金の贈与ではどちらが得かまで、具体的な金額例を交えながら解説します。

マンションの生前贈与で発生する税金は?

マンションを生前贈与する際には、複数の税金が発生します。代表的なものは以下の通りです。

  • 贈与税:マンションの評価額に応じて課税される
  • 不動産取得税:不動産を取得した際に都道府県が課税する
  • 登録免許税:名義変更の登記手続きに必要な国税

贈与税(名義変更の場合でも課税対象)

親から子へマンションの名義を変更する行為は、たとえ対価のやり取りがなくても無償で所有権が移転する以上「贈与」に該当し、贈与税の課税対象になります。

さらに、贈与の意思が明確でなくても、名義変更によって実質的に所有権が移転したと判断されれば課税されるケースがあります。たとえば、親が高齢になったため管理上の理由で子の名義に変更した場合でも、贈与とみなされる可能性があるため注意が必要です。

なお、口頭での贈与も法律上は成立しますが、後のトラブルを防ぐためには贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。贈与契約書があれば、贈与の時期や内容を客観的に証明でき、税務調査の際にも有力な証拠となります。

不動産取得税・登録免許税

マンションの生前贈与では、贈与税のほかに不動産取得税と登録免許税も発生します。これらは贈与税とは別に納める必要があるため、トータルのコストを把握しておくことが欠かせません。

不動産取得税は、不動産を取得した人に対して都道府県が課税する地方税で、原則として固定資産税評価額の4%が課税されます。ただし、住宅用不動産については2027年3月31日までの特例措置により3%に軽減されています。

登録免許税は法務局で所有権移転登記を行う際に納付する国税で、税率は固定資産税評価額の2%です。

ここで注意したいのが、相続による名義変更との違いです。相続の場合、不動産取得税は非課税となり、登録免許税の税率も0.4%に軽減されます。生前贈与は相続に比べてこれらの税負担が重くなるという点を理解したうえで、総合的に判断することが求められます。

マンションの贈与税の計算方法

贈与税の金額を正確に把握するためには、まずマンションの評価額を算出し、そのうえで税率を適用する必要があります。計算の流れを2つのステップに分けて確認していきます。

  • マンションの評価額を「土地部分」と「建物部分」に分けて算出する
  • 算出した評価額から基礎控除を差し引いたうえで、該当する税率を適用する

マンションの評価額を算出する手順

マンションの贈与税を計算するには、まず「土地部分」と「建物部分」のそれぞれの評価額を求めなければなりません。

土地部分の評価額は「路線価×敷地全体面積×持分割合」で算出します。路線価は国税庁のホームページで公開されており、マンションが面する道路ごとに設定されています。敷地全体の面積に敷地権割合と自分の持分割合を乗じることで、区分所有者としての土地の評価額を求めることが可能です。

建物部分の評価額は、固定資産税評価額をそのまま用います。固定資産税評価額は毎年届く固定資産税課税明細書で確認できるほか、市区町村の窓口で固定資産評価証明書を取得して確認することもできます。

なお、2024年1月1日以降に贈与されたマンションについては、区分所有補正率を乗じる必要がある点にご注意ください。区分所有補正率は、タワーマンションなどで市場価格と評価額の乖離が大きかった問題を是正するために導入された仕組みで、高層マンションほど評価額が引き上げられる傾向にあります。評価にあたっては、全部事項証明書と固定資産税課税明細書の2つの書類を事前に取得しておくとスムーズです。

国税庁「No.4602 土地家屋の評価」

贈与税の基本計算式と税率

マンションの評価額が確定したら、次のステップとして贈与税額を計算します。基本的な計算式は以下の通りです。

贈与税額=(贈与財産の評価額-基礎控除110万円)×税率-控除額

贈与税の税率には「特例税率」と「一般税率」の2種類があります。親から子への贈与のように直系尊属から18歳以上の者への贈与には、税負担が軽くなる特例税率が適用されるのが特徴です。これに対し、直系尊属以外からの贈与には一般税率が適用され、同じ評価額でも税負担が重くなります。

たとえば、評価額2,000万円のマンションを親から子に贈与した場合、特例税率を適用すると贈与税額は約585.5万円です。

計算式:(2,000万円-110万円)×45%-265万円=585.5万円

金額が大きくなるほど税率が上がる累進課税であるため、後述する各種の非課税制度を活用して課税額を抑える工夫が必要です。

国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」

贈与税の節税対策として活用できる制度

マンションの生前贈与にかかる贈与税は高額になりがちですが、税法上にはいくつかの節税制度が用意されています。代表的な制度は以下の3つです。

  • 暦年贈与の基礎控除(毎年110万円以下の持分を非課税で移転)
  • 相続時精算課税制度(累計2,500万円まで贈与税が非課税)
  • 配偶者控除の特例(婚姻20年以上の夫婦間で最大2,000万円まで非課税)

それぞれの制度には適用条件やデメリットもあるため、仕組みを正しく理解したうえで自分に合った方法を選びましょう。

暦年贈与の基礎控除(毎年110万円以下の持分)

暦年贈与とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額が110万円以下であれば贈与税がかからない仕組みです。マンションの場合、毎年110万円以下に相当する持分を少しずつ贈与していくことで、非課税のまま所有権を移転できます。

ただし、この方法ではマンション全体の移転が完了するまでに長い期間を要するのが難点です。たとえば評価額2,000万円のマンションの持分を毎年110万円分ずつ移転する場合、完了まで約18年かかる計算になります。親の年齢や健康状態を考慮すると、早めに贈与を開始しなければ間に合わないケースもあります。

また、毎年同じ時期に同じ金額を贈与し続けると「定期贈与」とみなされ、贈与の合計額に一括で課税されるリスクがあります。これを避けるには、贈与の時期や金額を毎年少しずつ変える、贈与のたびに贈与契約書を作成するといった工夫が求められます。

国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」

相続時精算課税制度(2,500万円まで)

相続時精算課税制度は、60歳以上の直系尊属から18歳以上の者への贈与について、累計2,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。マンションを一度にまとめて贈与したい場合に有効な選択肢といえます。

2024年の税制改正では、この制度に年間110万円の基礎控除が新設されました。これにより、110万円以内の贈与であれば申告不要となり、相続発生時に相続財産へ加算する必要もありません。改正前は少額の贈与でも申告が必要だったため、使い勝手が大きく向上したといえます。

ただし、一度この制度を選択すると暦年課税に戻すことはできません。加えて、相続が発生した際には過去に贈与した財産の評価額(110万円の基礎控除を除いた部分)が相続財産に加算されます。贈与税は非課税でも相続税の課税対象にはなるという点を把握しておきましょう。

国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」

配偶者控除の特例(2,000万円まで)

婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合、最大2,000万円の配偶者控除が使えます。暦年贈与の基礎控除110万円と合わせると、最大2,110万円まで非課税で贈与できる計算です。

たとえば、評価額2,000万円のマンションを配偶者に贈与した場合、配偶者控除2,000万円と基礎控除110万円を合わせると控除額が評価額を上回るため、贈与税はゼロになります。配偶者間のマンション贈与において効果的な節税対策です。

ただし、適用は同じ配偶者から一生に一度のみです。また、贈与を受けた後も引き続きそのマンションに住む見込みがあることが要件となっているため、売却を前提とした利用はできない点に留意してください。

国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」

生前贈与と相続はどちらが得?判断するためのポイント

マンションを次の世代に引き継ぐ方法として、生前贈与と相続のどちらが得かは多くの方が気になるところです。判断にあたって押さえておきたいポイントは以下の2つです。

  • 相続税の基礎控除や税率と比較して税負担を試算する
  • 2024年の税制改正による生前贈与加算の7年延長の影響を把握する

これらを総合的に検討することで、自分の状況に合った最適な方法を見極めることができるはずです。

相続税の基礎控除と比較して税負担を試算する

相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人数」という大きな基礎控除が設けられています。たとえば法定相続人が2人(配偶者と子1人)の場合は4,200万円、3人(配偶者と子2人)の場合は4,800万円まで非課税です。

マンションを含む遺産の総額がこの基礎控除内に収まるのであれば、相続のほうが有利になる可能性が高いといえます。贈与税の基礎控除は年間110万円のため、相続税の基礎控除との差は大きいことがわかります。まずは遺産の全体像を把握し、基礎控除を超えるかどうかを試算することが判断の第一歩になります。

国税庁「No.4152 相続税の計算」

生前贈与加算の7年延長が損得に与える影響を把握する

2024年1月1日以降の暦年贈与について、相続財産への持ち戻し期間が従来の3年から7年へ段階的に延長されます。つまり、相続開始前7年以内に行われた暦年贈与が相続財産に加算され、相続税の課税対象になります。

ただし、延長された4年分(4年目~7年目)の贈与については合計100万円までは加算対象外となる緩和措置が設けられています。しかし、この改正により暦年贈与を活用した相続税対策の効果は以前より低下したといえます。

そのため、今後は早期から計画的に贈与を始める、相続時精算課税制度の新しい基礎控除を活用するといった、より長期的な視点での贈与設計が重要になってきています。

国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」

生前贈与と相続それぞれが有利になるケースを整理する

生前贈与が有利になりやすいケースとしては、将来値上がりが見込まれるマンション、賃貸収入を生む収益物件、相続人同士の争いを避けたい場合などが挙げられます。贈与時点の評価額で税額が確定するため、値上がりが予想される不動産ほど早めの贈与が節税につながります。
また、賃貸マンションの場合は贈与後の家賃収入が受贈者のものになるため、親の相続財産の増加を抑える効果も期待できます。

相続が有利になりやすいケースとしては、遺産総額が基礎控除内に収まる場合や、小規模宅地等の特例(居住用の土地であれば評価額を最大80%減額)を使えるケースが挙げられます。

どちらが得かは家族構成、遺産総額、マンションの評価額や将来性など個々の事情によって大きく異なります。最終的な判断は税理士などの専門家に相談したうえで行うことをおすすめします。

現物のマンション贈与と購入資金の贈与はどちらが得?

マンションを子に渡す方法には、現物のマンションをそのまま贈与するケースと、マンションの購入資金を現金で贈与するケースの2つがあります。結論から言うと、多くの場合は現物のマンション贈与のほうが税負担は軽くなる傾向にあります。

その理由は、現金を贈与するとその金額がそのまま課税対象になるのに対し、マンションの現物贈与では路線価や固定資産税評価額で評価されるためです。一般的に、路線価や固定資産税評価額は市場価格(時価)よりも低くなる傾向があり、評価額と時価の差額の分だけ課税対象額が圧縮されます。

ただし、2024年以降は区分所有補正率の導入により、特にタワーマンションの高層階では評価額が引き上げられています。以前ほど大きな節税効果は期待しにくくなっている点には注意が必要です。

また、マンションの購入資金として金銭を贈与する場合には「住宅取得等資金の非課税制度」を利用できる可能性があります。この制度を活用すれば、一定額まで贈与税が非課税になるため、金銭贈与でも税負担を抑えることが可能です。制度の詳細については、下記の関連記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

マンションの生前贈与で失敗しないための注意点

マンションの生前贈与には節税効果がある一方で、事前に把握しておかないと思わぬトラブルにつながるリスクもあります。以下は、失敗を防ぐために知っておきたい3つの注意点です。

  • 贈与後に親の生活資金が不足しないか事前に確認する
  • 他の相続人とのトラブルを防ぐ「特別受益」の知識を持つ
  • 贈与契約書を作成し名義変更の登記手続きを確実に行う

贈与後に親の生活資金が不足しないか事前に確認する

一度贈与した財産は、原則として取り戻すことができません。そのため、マンションを贈与する前に親側の老後資金が十分に確保できているかを慎重に確認すべきです。特にマンションが主要な資産である場合、贈与後に施設入所や介護費用が必要になったときに資金が不足するリスクがあります。

こうしたリスクへの対策として、「負担付贈与」という方法も選択肢に入ります。これは親の生活の面倒をみることを条件として贈与を行うもので、万が一条件が守られなければ贈与を解除できる場合もあるため、選択肢の一つとして検討するとよいでしょう。

他の相続人とのトラブルを防ぐ「特別受益」の知識を持つ

マンションを生前贈与された人は、相続が発生した際に「特別受益者」として扱われる場合があります。特別受益とは、相続人の中で特定の人だけが生前に多額の財産をもらっていた場合に、相続分の計算においてその贈与分を考慮する仕組みのことです。

この仕組みにより、マンションの贈与を受けた人は相続時の取り分が減る可能性があるほか、他の相続人から不満の声が上がり、遺産分割協議がまとまらなくなるケースも珍しくありません。

トラブルを未然に防ぐためには、贈与を行う前に家族間で十分に話し合っておくことが重要です。また、遺言書を作成して「特別受益の持ち戻しを免除する」旨を記載しておけば、相続時の調整を回避できる場合もあるため、あわせて検討してみてください。

贈与契約書を作成し名義変更の登記手続きを確実に行う

贈与の事実を証拠として残すためには、贈与契約書の作成と法務局での所有権移転登記を速やかに行う必要があります。契約書には贈与者・受贈者の氏名、贈与する物件の情報、贈与の日付を明記し、双方が署名・押印するのが基本です。

名義変更の登記手続きは自分で行うこともできますが、書類の不備を防ぐためには司法書士に依頼するのが一般的です。また、贈与税の申告期限は贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までとなっていますので、期限を過ぎないよう早めに手続きを進めてください。

マンションの生前贈与に関するよくある質問

マンションの生前贈与に関して、多くの方が疑問に思うポイントをQ&A形式でまとめました。

Q. 贈与税が払えない場合はどうなりますか?

A. 贈与税を一括で納付することが難しい場合は、「延納制度」を利用することで最長5年間の分割納付が認められています。延納を申請するには、申告期限までに税務署に申請書を提出し、担保を提供しなければなりません。なお、延納期間中は利子税(本則年率6.6%、特例割合の適用により軽減される場合あり)が発生するため、分割にするほどトータルの負担は増える点にご注意ください。

何も手続きをせずに贈与税を滞納してしまうと、延滞税や加算税(無申告加算税・過少申告加算税など)が追加で課されます。支払いが難しいとわかった時点で、できるだけ早く管轄の税務署に相談することが重要です。

Q. 贈与後に名義を元に戻したい場合、贈与税はどうなりますか?

A. 基本的に、一度成立した贈与を後から取り消して、贈与をなかったものとすることはできません。

贈与後に名義を元に戻した場合であっても、錯誤があったことや申告・決定前であることなどの事情が認められた場合には、「贈与がなかったもの」として取り扱われ贈与税が課されない可能性があります。

ただし、この取り扱いは個別事情を踏まえて判断されるものであり、名義を戻せば必ず認められるものではありません。

実際に該当するかどうかは状況によって異なるため、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

マンションの生前贈与は全体像を把握したうえで専門家に相談を

マンションの生前贈与では贈与税に加えて不動産取得税や登録免許税も発生するため、トータルのコストを事前に把握しておくことが大切です。暦年贈与の基礎控除や相続時精算課税制度、配偶者控除の特例を活用すれば税負担の軽減も見込めますが、生前贈与と相続のどちらが有利かは個々の事情によって異なります。最終的な判断は専門家に相談したうえで行いましょう。

「税理士法人レガシィ」は、相続専門の税理士法人として50年以上の歴史があり、相続税申告実績は累計1.5万件を超えます。土地評価に関する豊富なノウハウを活かし、不動産の贈与・相続にも対応いたしますので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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