役員の死亡退職金とは?税金や規定がない場合についても解説
Tweet取締役・監査役などの役員が死亡した場合に遺族に支給される死亡退職金には、受け取る時期により「みなし相続税」や「所得税」が課税されます。本記事では、役員退職金と通常の退職金との違いや金額の目安、課される税金の種類、役員退職金の規定がない場合のポイントについて解説します。
目次
役員の退職金とは
役員退職金とは、おもに取締役や監査役であった役員が受ける退職金のことです。通常の退職金規定にかかわらず「過去の勤務の対価」として受け取るものを指します。
退職金には、役職を降りて退職した後に受ける「生存退職金」と、在任中に死亡した後に遺族に対して支給される「死亡退職金」の2種類があります。以下では、通常の退職金との違い、また弔慰金との違いをまとめました。
通常の退職金との違い
従業員が勤務先から支給される通常の退職金は、会社の就業規則である退職金規定に基づき支給されます。退職金に関する規定は従業員とのトラブルを避けるために設けていることが一般的です。一方、役員退職金は、退職金規定に関与せず支給できます。しかし、支給や支給時期については記載された定款か、株主総会の決議が必要です。定款に退職金規定を定めている企業は少数であり、多くは株主総会において決議しています。ただし、株主総会の決議により役員退職金が支給されないこともあります。
弔慰金との違い
役員在任中の死亡により支給される死亡退職金以外に、「弔慰金」というものがあります。弔慰金は、故人に対する弔いと遺族の慰めという意味合いが強く、生存していれば受け取ることができた退職金に見合い、遺族の生活を支えることなどが目的です。
原則として弔慰金は非課税となりますが、高額な弔慰金を支給される場合などにおいて、非課税限度額を超えてしまうと課税対象となります。
また、非課税限度額は、死亡原因により異なります。業務上の場合は死亡当時の「月額報酬×36ヶ月」、業務以外であれば死亡当時の「月額報酬×6ヶ月」が非課税限度額です。
死亡退職金の金額と税金
在任中の死亡後に支給される死亡退職金の目安額はどのくらいなのでしょうか。課税対象となる税金の種類と併せて紹介します。
死亡退職金の目安額
一般的に役員の退職金は
- 最終報酬月額:退職する前月の報酬金額
- 役員在籍年数:役員であった年数
- 功績倍率:役職別の功績の度合い
これら3つの要素を用いて計算されます。功績倍率については、一般的に同規模および同業種の他企業のデータを活用し計算されます。
死亡3年以内の退職金は相続税
死亡により本来受け取れるはずの退職金を、死亡後3年以内に相続人が受け取った場合、「みなし相続財産」として相続税が課されます。これは、死亡後3年以内に支給が決まった退職金も該当し、「被相続人の死亡を契機として支払われる金銭」として、相続税の対象となります。
これには非課税枠があり、非課税限度額は【500万円×法定相続人の数】です。
死亡3年後の退職金は所得税
死亡日から3年後に受け取った(支給が確定した)退職金は、相続税の対象にはなりませんが、所得税(一般所得)の対象となります。しかし、死亡日から3年経って退職金を受け取ることは稀なケースです。相続税よりも所得税のほうが節税できるとして受け取り時期を遅らせると、税務調査で指摘される可能性があります。
役員退職金の規定がない場合
役員退職金は一般社員の退職金制度とは異なる規定を設けていることが多いです。しかし、会社にその規定がない場合はどうしたらよいのでしょうか。2つのポイントを解説します。
株主総会で決める必要がある
そもそも、役員に退職金を払わなければならない法律は定められていません。そのため、「取締役委任契約」や「退職慰労金支給規定」などに規定がない場合、株主総会において決議する必要があります。しかし、株主総会の決議が得られない場合、役員には退職金請求権そのものが発生しません。もし、決議を得ていないにも関わらず不当に退職金を受け取った場合、無効として返還を求められるおそれがあります。
従業員も兼ねている場合は請求する
従業員は、就業規則に退職金規定があることで退職金を受け取ることができます。役員ではあるものの、実態は従業員と変わりない職務を請け負っていた場合、請求すれば認められるケースもあります。ここで重要なのは、従業員に該当するかという点です。過去の裁判例において、会社の指揮命令のもと労務を提供していたか、あるいは報酬の労務対価性、支払い方法、公租公課の負担の有無などを鑑みて判断すると示されました。総合的に判断した結果、従業員も兼ねていると認められた場合は、退職金を請求できる可能性があります。
おわりに:役員死亡退職金は時期によって税金が変わる
役員の死亡退職金は、在任中に死亡した場合に遺族に支払われるものです。受け取る時期によって「相続税」か「所得税」のいずれかが課されます。死亡退職金についての相続税手続きが難しい場合は、相続専門の税理士に相談することをおすすめします。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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