原本還付とは?メリットから手続きまでわかりやすく解説
Tweet登記申請を複数行う方の中には、原本を発行する際のコストを抑えたいと考える方もおられるのではないでしょうか。原本還付を受けることにより、登記申請の際にかかるコストの削減が可能です。この記事では、原本還付の概要から対象となる書類、メリット、手続き方法、注意点まで紹介しているので参考にしてください。
目次
登記申請の原本還付とは
原本還付とは、手続き申請時に提出した書類の原本を返却してもらうことです。原本には「写しではない正式の文書」という意味合いがあり、主にコピーと区別するために使われる言葉です。
原本還付を受けると原本の処理を返却してもらえるため、繰り返しその書類を使うことができます。原本還付を受けるには、原本と写しをあわせて窓口へ提出しなければなりません。
相続登記の際には、写しとあわせて所定の形式で提出し手続きを行うと、原本を返却してもらえます。ただし、書類によっては原本還付を受けられないので注意が必要です。所定の手続きを正しく行えば、複数の場所に申請を行う場合でも必要書類を1枚で済ませられるケースがあり、別途書類を入手するために時間的・費用的コストを削減できるため、状況に応じて活用すると良いでしょう。
原本還付ができる書類
すべての書類が原本還付を受けられるわけではありませんが、他の相続手続きでも主に利用するような書類は原本還付が可能です。
個人
- 住民票の写し
- 戸籍謄本、改製原戸籍、戸籍の附票、除籍謄本
- 遺産分割協議書 など
法人
- 履歴事項全部証明書
- 現在事項全部証明書
- 代表者事項証明書 など
原本還付のメリット
原本還付を受けると書類を再利用できるため、取り直しの時間や手数料の節約が可能です。主に以下のようなメリットがあります。
書類取得の手間を削減できる
相続には登記以外にも様々な手続きが必要になります。例えば亡くなった方の銀行口座の名義変更・解約をする際には、戸籍謄本や住民票、遺産分割協議書などが必要になります。最初からすべての手続きを把握して準備ができていれば良いですが、もし途中でさらに必要な書類が出てきた場合、被相続人が遠方に住んでいたなど戸籍を取り直すのに手間がかかる場合もあります。都度原本還付を行なっておけば、そのような機会も少なくできるでしょう。
手数料の節約ができる
原本還付を受けることで、書類の交付を受ける際にかかる手数料を、余分に支払わずに済みます。たとえば、戸籍謄本を発行する場合、1通あたり450円(全員が除籍となった戸籍謄本は750円)の交付手数料がかかります。
原本還付を受けなければ提出先1カ所ごとに原本を発行しなければならず、すべてに450円(または750円)が必要です。原本還付を利用すれば、提出先が複数にわたる場合などでも、同一書類であれば1通分の手数料で済みます。
重要書類の原本保存ができる
原本還付を利用すれば、契約書や遺産分割協議書、承諾書といった重要な書類も手元に残しておけます。万が一、契約等でトラブルに発展した場合でも、当初の契約に基づいて話し合いができるため、不当な要求などを退けやすくなります。
原本還付を受けていなければ、確認のために書類を発行し直さなければなりません。手間と時間がかかり、トラブルになった場合には、書類を確認するまで不安な気持ちを抱えたまま過ごすことになることも考えられます。
原本還付の手続き方法
原本還付を受けるには、所定の手続きが必要です。書類の準備から提出までの具体的な手順を確認しておきましょう。
1.返却してもらいたい書類のコピーをとる
本還付を受けたい書類のコピーをとります。コピーがない、または内容が正しく印字できていないといった不備がある場合には、還付を受けられません。ただし、相続関係説明図を添付すれば、各相続人の関係性を把握できるため、すべての戸籍に関してコピーが不要となります。
相続登記のような相続人すべての戸籍謄本などを必要とする手続きにおいて、原本還付を受ける際に便利です。ただし、相続関係説明図は原本還付を受けられない書類にあたります。
2.書類に「原本還付希望」の旨を記載する
原本還付を依頼する際は、書類を所定の形式で提出しなければなりません。まず、還付を希望する書類のコピーを重ねます。コピーの1番上にくるものへ、「原本還付」と赤字、枠付きで記入します。さらに、「原本に相違ありません」の文言および「氏名」を記入の上、押印します。
次に、コピーを1枚折り返し、1枚目の裏面と2枚目の表面にまたがるように割印を行います。
割印は1枚目のコピーの押印に用いた印鑑を使用しなければなりません。同様にして、2枚目の裏面と3枚目の表面というように、すべてのコピーについて割印を行います。
本来なら原本還付を受ける書類が複数ある場合は、すべての書類のコピーについて1枚目と同様に必要事項の記入および押印が必要となるものの、割印によって省略可能です。
3.ホチキス留めして、原本と共に提出する
相続関係説明図を用いる相続登記の場合は、「登記申請書」、「相続関係説明図」、「書類のコピー」の順に上に重ねてホチキスで留めます。ホチキス留めは左端の2点に行うのが一般的です。原本還付を希望しない書類はコピーが不要なので、原本を綴じ込みましょう。書類が完成したら、窓口または郵送にて提出します。
4.完了後に原本を受け取る
書類を提出し、登記手続きが完了したら、窓口で原本を受け取れます。原則は窓口とされていますが、郵送による返却も可能です。郵送の場合は、提出時に登記申請書へそのことを記載しておかなければなりません。また、返信用封筒もあわせて提出する必要があります。
原本還付の注意点
原本還付はすべての書類について受けられるものではありません。目的の書類が原本還付の対象外でないかを確認しておく必要があります。原本還付を希望する場合は、登記申請時に手続きを行わなければ受けられないので注意しましょう。
原本還付がされない書類もある
初めにお伝えした通り、原本還付が認められていない書類もあります。登記用に作成する書類や、有効期限があり限定的な使い回ししかできない書類などは、原本還付を受けられません。たとえば、登記手続きを依頼する委任状は、登記にしか使えない書類であるため、原本還付を受けられないものに該当します。また、有効期限が3カ月以内である印鑑証明書などは再利用できる期間が限定的であり、取得も簡単にできることから、原本還付を受けられません。
原本還付の手続きは必ず申請時に行う
原本還付の手続きは、登記申請の際に行わなければなりません。登記申請後に申し出ても原本還付は受けられず、再度書類を発行することになります。原本還付を希望するなら必ず登記申請の際に忘れることなく手続きを行いましょう。万が一登記申請の際に原本還付を請求し忘れてしまった場合は、別途必要資料の交付手続きを再度行う必要があります。
おわりに:登記申請を行うなら原本還付を受けるのがおすすめ
登記申請の際に原本還付を受けると、原本が手元に返却されるため、複数箇所へ提出するときに手数料が節約できたり、契約内容などの重要事項をすぐに確認できたりします。相続登記においては、関係者の戸籍に関する書類を発行してもらわなければならず、枚数が多くなりがちです。
提出が複数箇所に上る場合には、原本還付で節約できる金額も大きくなることから、登記申請時には原本還付を受けることをおすすめします。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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