相続の知識

相続不動産を売却すると確定申告が必要なの? 基本知識や必要書類をわかりやすく解説

不動産を相続したものの、「遠方でとても自分が住んだり使ったりはできないから現金化したい」と考える人は少なくないでしょう。売却してそのお金を分割するというやり方で相続を行うケースもあると思います。しかし、そんな時に気になるのが所得税とそれにともなう確定申告!譲渡所得があった場合、確定申告は必要です。この項目では、確定申告の方法や必要となる書類を紹介します。

不動産を売却すると確定申告が必要な場合がある

土地や建物を売却して利益が出た場合には、その利益に対して「所得税」がかかります。
不動産の売却で利益が出た場合には、売却日の翌年3月15日までに、在住地域の税務署へ確定申告し、納税しなければなりません。

資産の譲渡による所得は「譲渡所得」といいます。譲渡によって得た収入から、かかった費用などを引いたものです。

式で表すと、次のようになります。
――――――――――――――――――――――――――――――
譲渡所得 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 )
――――――――――――――――――――――――――――

またこのとき、3000万円控除など、不動産の種類よっては控除を受けることができる場合があります。
3000万円控除については下記の記事もご覧ください。

つまり、特例が適用できる場合は、
――――――――――――――――――――――――――――――
譲渡所得 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) -控除
――――――――――――――――――――――――――――

ということになります。

そして、譲渡所得税はここに税率をかけるので、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
譲渡所得税=譲渡所得×税率
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
で表されます。

なお、この税率については、不動産の所有期間によって変わります。

税率

区分 所得税 復興特別所得税 住民税
長期譲渡所得(5年超) 15% 0.315% 5%
短期譲渡所得(5年以下) 30% 0.63% 9%

表で示したそれぞれの税率の合計が、実際の税率です。つまり、長期所有の場合20.315%、短期所得の場合39.63%ということになります。

また、3000万円控除が適用された場合、売った年の1月1日時点でマイホームの所有期間が10年を超えていると、税率も軽減されます。

課税長期譲渡所得金額 所得税 復興特別所得税 住民税
6000万円までの部分 10% 0.21% 4%
6000万円を超える部分 15% 0.315% 9%

これも同様に計算すると、6000万円までの部分で14.21%、6000万円超の部分で20.315%ということになります。

売却益が譲渡損失となった場合(マイナスになる場合)かつ税金の特例を利用しない場合は、確定申告を行う必要はありません。

確定申告とは?

事業所得や給与などの収入がある場合、その所得に対して所得税がかかります。そのため、その年の所得を計算して税務署へ申告しなければなりません。その時の手続きが確定申告です。

会社員の場合は、会社が毎月の給料から所得税を源泉徴収し納税を代行してくれます。原則として確定申告は必要ありません。概算で天引きしているので、払いすぎたり足りなかったりした分を整える年末調整が必要になります。
ただし、会社員でも20万円を超える副業所得がある人や、2000万円以上の収入がある人など、一定の条件に当てはまる場合には、確定申告をしましょう。確定申告の義務はありませんが、医療費控除や寄附金控除が適用できる方は確定申告をすることにより所得税の還付を受けることができます。

確定申告をしないと税金が課せられる

確定申告は期間が決まっています。基本的には2月16日〜3月15日です(2021年は4月15日まで延長)。申告の義務がありながら決められた期日までに申告をしなかった場合、附帯税がかかってきます。

かかってくる附帯税はおもに次の二つです。期日を過ぎた場合、基本的にこの両方がかかると思っておいてください。

無申告加算税

無申告加算税は、確定申告をしなかった場合の加算税です。本来納めるべき税額に加え、その税額に応じた金額を支払うことになります。納付する税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合で、本来の税額とは別に納付することになります。
税務調査が行われる前に自分から申告をした場合は5%、調査の通知以後、更正・決定前に自ら期限後申告書を提出した場合には50万円までは10%、50万円を超える部分は15%の税率になります。申告をしなくとも税務調査は行われますので、高額な加算税を支払わないように、申告はきちんと行うことが大切です。
悪質な場合には、重加算税という最高40%の非常に重い加算税がかかる場合もあります。

延滞税

期限後に申告を行うと、原則として法定納期限の翌日から申告書を提出する日までの日数に応じて延滞税が課されます。申告書の提出が遅れれば遅れるほど、延滞税が増えることになります。利息のようなものだと思ってください。

不動産を売却する際に必要な書類

不動産を売却する際には、多くの書類が必要になります。不動産会社に売却を依頼する時と、買主に引き渡す時に必要な書類を見ていきましょう。

必要な書類は物件の種類によって異なってきます。それぞれ以下の表のとおりです。
〇は必要、△は必要な場合がある、−は不要な書類です。

売却に必要な書類(不動産会社に売却を依頼する時)

書類 マンション 一戸建て 土地
登記簿謄本または登記事項証明書 〇 〇 〇
物件購入時の売買契約書 〇 〇 〇
物件購入時の重要事項説明書 〇 〇 〇
登記済権利証または登記識別情報 〇 〇 〇
土地確定測量図・境界確認書 △ 〇 〇
固定資産税納税通知書および固定資産評価証明書 〇 〇 〇
物件の図面 〇 〇 ー
設備の仕様書 〇 〇 ー
建築確認済証および検査済証 △ 〇 ー
建築設計図書・工事記録書 △ − △
マンションの管理規約または使用細則 〇 − −
マンション維持費関連書類 〇 − −
耐震診断報告書 △ △ −
アスベスト使用調査報告書 △ △ −

売却に必要な書類(買主に引き渡しをする時)

書類 マンション 一戸建て 土地
本人確認書類 〇 〇 〇
実印 〇 〇 〇
印鑑証明書 〇 〇 〇
住民票 △ △ △
銀行口座の通帳(銀行振り込み先情報) △ △ △
物件のパンフレット △ △ △

※不動産会社に売却を依頼する時に必要な書類と共通するものは省略しています。

また土地を売却後、確定申告をする場合に必要な書類は、以下の通りです。

土地売却後の確定申告をする場合に必要な書類

必要書類 入手場所
①確定申告書B様式(譲渡所得がある場合) 税務署
②確定申告書第三表(分離課税用の申告書) 税務署
③譲渡所得の内訳書 税務署
④譲渡した土地の全部事項証明書(所有権移転後のもの) 法務局
⑤売買契約書のコピー 【譲渡時】 (自主手配)
⑥譲渡費用(仲介手数料など)の領収書コピー 【譲渡時】 (自主手配)
⑦売買契約書のコピー 【取得時】 (自主手配)
⑧取得費用の領収書コピー 【取得時】 (自主手配)
⑨そのほか、源泉徴収票やマイナンバーなど確定申告に必要なもの (自主手配)

①確定申告書B様式

所得の種類にかかわらず利用できる申告書です。確定申告書B様式の書類は、税務署で入手できるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。

②分離課税用の申告書

不動産売買で得た所得は、事業所得や給与所得とは分けて税額を計算する必要があります。
これを「分離課税」といい、確定申告では第三表という用紙に記入します。入手は税務署のほか、①と同じく国税庁のホームページからダウンロードできます。

③譲渡所得の内訳書

売却不動産の所在地、売却額、経費などについて記入する用紙です。基本的には不動産売却後に国税庁から郵送されてきます。

④土地の全部事項証明書(登記簿謄本、登記事項証明書)

登記簿謄本(登記事項証明書)は、該当する不動産を管轄している法務局(支局、出張所)で入手できるほか、パソコンからオンラインでの申請も行えます。オンラインで請求した場合には、窓口での手続きと比べて手数料が安く済みます。法務局は、市役所のように必ず各市町村に設置されているというわけではないので、事前に確認しておきましょう。

法務局に出向く場合は、申請書へ必要事項の記入を終えたら、登記印紙を貼って提出し、取得申請を行います。印紙代については1通につき通常600円ですが、印刷枚数によって変動する場合があるようですので、詳細は窓口でご確認ください。

⑤⑥⑦⑧不動産取得時と売却時の資料

確定申告には、不動産購入時および不動産売却時の売買契約書や不動産仲介会社へ支払った仲介手数料の領収書などが必要となります。領収書はコピーでも問題ありません。
また、固定資産税の清算書、登記費用、そのほか取引時にかかった費用の領収書もあれば用意しておきましょう。

(1)不動産を取得した時の資料

  • 売買契約書
  • 取得した時の仲介手数料などの領収書
  • 登記費用など取得費用の領収証

など

(2)不動産を売却した時の資料

  • 売却時の仲介手数料などの領収書
  • 測量費、相続登記費用など売却費用の領収証
  • 売却後の土地・建物の全部事項証明書

など

確定申告手続きの流れ

確定申告の期限は基本的に2月16日〜3月15日です。これは不動産の売買があった場合でも変わりません。譲渡所得があった場合には、以下に示した基本的に必要な書類より、集めなければならない書類の数が多くなることがわかると思います。早めに準備を進めておくようにしましょう。

基本的に必要な書類

  • 確定申告書B
  • 身分証明書類(マイナンバーカード、通知カードと運転免許証など)
  • 控除証明書(生命保険料、社会保険料など)
  • 源泉徴収票(給与、年金など)

確定申告の一般的な流れは次のようになります。

必要書類を集める
▼
確定申告書を記入する
▼
税務署(郵送も可)・e-Taxで申告する
▼
納税(または還付を受ける)

e-Taxとはインターネットで国税の申告や納付ができるサービスです。マイナンバーカードが必須ですが、確定申告期間は税務署が非常に混み合うので、有効活用したいところです。以前はICカードリーダーが必須でしたが、最近はスマホでも利用できるようになっています。

なお、不動産の売買にはあまり関係ありませんが、税金を払いすぎている場合の「還付申告」は期間をすぎても問題ありません。

おわりに:必要書類をそろえて確定申告をしよう

土地や建物を売却して利益が出た場合には、その利益に対して所得税を払わなければいけません。そのため確定申告が必要となります。
確定申告をしなかったり、期間内に間に合わなかったりした場合は追加の税金が課せられます。不動産の売買は大きな金額の所得になることも少なくありませんから、くれぐれも注意してください。
また、譲渡所得を得た際の確定申告には、登記簿謄本や売買契約書、領収書など多くの書類が必要となるので、できる時に入手したり、整理したりしておきましょう。忙しくてできない場合には、税理士に依頼するのも一つの方法です。
税理士に依頼する場合は、事前に必要資料を案内してくれるので、余裕をもって書類を揃えることができます。

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この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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