【保存版】相続に所得税はかからない場合が多い! 所得税がかかる場合を解説
Tweet相続で取得した財産は相続税の課税対象となるので、所得を対象とした所得税の申告は原則必要ありません。そのため相続人が所得税の確定申告をすることはあまりありませんが、いくつかのケースでは所得税の納付が必要になります。この項目では、相続で所得税がかかるケースを説明します。
目次
相続した遺産に所得税はかからないが、相続税がかかる
相続で財産を取得した場合、相続税の課税対象となります。
相続税とは、財産を無償でもらうことを課税対象としたもので、相続または遺言による財産の 譲与(遺贈)により財産を受け継いだ場合にかかる税金です。相続した財産が一定額以上の場合、相続税を申告し、支払う義務があります。ただし、相続財産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば課税されません。
所得税は、得られた収入を課税対象としたもので、事業所得や給与などの収入がある場合に所得に対してかかる税金です。相続した財産はその年の所得にはならないので、確定申告で所得税を納める必要はありません。
それでも、相続した後に相続人が所得税の確定申告を行い、納付が必要になるケースがあります。以下、詳しく解説します。
相続の際に所得税がかかる場合4選
相続の際に所得税がかかり、確定申告が必要となるケースは次の四つです。
①亡くなった方(被相続人という)に所得があった場合
②相続した遺産が、家賃収入など固定の収入を生む場合
③不動産や株式などの遺産を売却した場合
④死亡保険金を受け取った場合
このうち①は被相続人の確定申告で所得税を納税、②~④は相続人自身の確定申告で所得税を納税します。
①被相続人に所得があった場合
被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までに所得があれば、その所得に所得税がかかるため、相続人は被相続人に代わって確定申告と納税が必要となります。
1月1日から死亡した日までに確定した所得金額と税額を相続人が計算し、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に所管の税務署に申告し、納税を行います。これを「準確定申告」といいます。
準確定申告が必要になるのは通常、次の場合です。
- 個人事業(自営)を行っていた場合
- 家賃収入があった場合
- 2カ所以上から給与を受けていた場合
- 給与収入が2,000万円を超えていた場合
- 給与所得や退職所得以外の所得が合計で20万円を超えていた場合
- 公的年金などの収入が400万円を超えていた場合
- 貸付金の利子収入を受け取っていた場合
- 一時所得(保険の満期金など)があった場合
- 譲渡所得(不動産の売却など)があった場合
また医療費控除の対象となる高額の医療費を支払っている場合や寄附金控除の対象となる寄附を行っている場合には、義務はありませんが、準確定申告をすることで所得税の還付を受けることができます。
相続人が二人以上いる場合は、各相続人が連署により準確定申告書を提出することになります。ただし、ほかの相続人の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。この場合、当該申告書を提出した相続人は、ほかの相続人に申告した内容を通知しなければならないことになっています。
なお、提出期限までに準確定申告を提出しなかった場合には、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されることがあるので、注意しましょう。被相続人が給与や年金収入のみで源泉徴収されている場合、準確定申告をすると所得税が還付されることがあります。
準確定申告の詳しい手続き方法などについては、下記の記事も併せてご覧ください。
②相続した遺産が、家賃収入など固定の収入を生む場合
相続人が賃貸マンションやアパート、駐車場などの賃貸不動産を相続した場合、相続発生日以降の賃貸収入は、相続人の収入となるため、相続人が自身の確定申告を行わなければなりません。
たとえば賃貸アパートを所有していた父親が4月30日に亡くなった場合、1月1日から4月30日までの賃貸料に関する不動産所得は、父親に代わって相続人が準確定申告をします。5月1日以降12月31日までの不動産所得は、その賃貸アパートを相続した相続人が翌年3月15日までに確定申告することになります。
なお、相続人が複数いる場合、遺産分割協議により誰が賃貸物件を相続するか決めることになります。遺産分割が決まるまでは、それぞれの相続人が法定相続分により賃貸料収入を得たことになるため、相続人全員が不動産所得の確定申告をする必要があります。
不動産所得の金額は、次のように計算します。
不動産所得の金額=総収入金額-必要経費
③不動産や株式などの遺産を売却した場合
相続人が相続した土地や建物、株式などを売却し、利益が出た場合には、その利益に対して所得税がかかります。売却日の翌年3月15日までに確定申告をする必要があります。 資産の譲渡による所得を「譲渡所得」といい、課税対象となります。譲渡所得税は、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課税される所得税です。 譲渡所得については以下の計算式で求められます。
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
不動産の売却による譲渡所得の復興特別所得税を含む所得税率は、被相続人が資産を取得してからの保有期間によって異なります。
保有期間 | 所得税率 |
---|---|
長期(所有期間が5年を超える場合) | 15.315% |
短期(所有期間が5年以下の場合) | 30.63% |
不動産の譲渡所得にかかる所得税と住民税(地方税)は、事業所得や給与所得と分離して計算することから「分離課税」と呼ばれています。不動産を譲渡して利益が出た場合、その利益を譲渡所得として住民税と所得税が課せられます。
不動産売却にまつわる税金には、次の特例があり、控除を受けられます。
①相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
②居住用の家を売却した場合の3,000万円控除
③10年超所有の家に対する軽減税率の特例
⑤平成21(2009)年に取得した土地を平成27(2015)年以降、平成22(2010)年に取得した土地を平成28(2016)年以降に譲渡した場合の1,000万円控除
⑥居住用の家を買い替えた場合の特例
⑦相続した空き家を売却した場合の3,000万円控除
これらの控除に関しては「相続から不動産売却までにかかる税金は? 6種類の税金と節税に関する6つの特例を紹介」の記事をご参照ください。
④死亡保険金を受け取った場合
死亡保険料の負担者と保険金受取人とが同一人の場合、一時所得または雑収入として課税されるため、確定申告が必要になります。たとえば被相続人の相続人である子どもが、被相続人に死亡保険をかけており、その保険金の受取人が子ども自身であった場合などは、このケースに当たります。
また、未支給年金は相続人の一時所得として取り扱われるため、やはり確定申告が必要になります。ただし、一時所得には50万円の特別控除がありますので、未支給年金を含めたその年の一時所得が50万円以下である場合には必要ありません。
死亡保険金は、受取方法によって一時所得か雑所得として課税されます。
一時所得になる場合
死亡保険金を一時金で受領した場合には、一時所得として課税されます。 一時所得の金額は、受け取った死亡保険金の総額からすでに払い込んだ保険料または掛け金の額を差し引き、さらに一時所得の特別控除額50万円を差し引いた金額です。課税の対象になるのは、この金額をさらに半分にした金額となります。
雑所得になる場合
死亡保険金を年金で受領した場合には、公的年金など以外の雑所得になります。 雑所得の金額はその年中に受け取った年金の額から、その金額に対応する払込保険料または掛け金の額を差し引いて計算します。
所得税の確定申告の方法3種類
所得税の確定申告の方法には大きく分けると次の三つがあります。
①税務署の相談窓口で行う
②e-taxによる電子申告
③税理士に依頼する
①税務署の相談窓口で行う
確定申告書は、在住している地域の税務署の相談窓口に行けば、職員に相談しながら作成することができます。ただし、申告に必要な書類がないと申告自体ができないので、事前に調べて準備しておく必要があります。
②国税庁の「e-Tax」で電子申告を行う
窓口を訪れる時間がない場合でも、国税庁のホームページより電子申告で所得税の確定申告を行うことができます。ある程度ITの知識に自信があるという方は、おすすめです。
e-Tax | 国税電子申告・納税システム
③税理士に依頼する
「忙しくて時間がない」「書いた内容が正しいのか不安」「面倒くさい」と感じている人は、税理士に依頼するのも一つの方法です。手数料はかかりますが、手間と時間はかかりません。なにより「税金のプロ」なので安心して依頼できます。
とくに収入金額が多い場合や、申告内容が複雑な場合は、税理士に依頼するとよいでしょう。自分で書類を作成した場合、計算ミスや記入ミスによる追徴課税が発生する可能性も高くなりますが、税理士に依頼すればそのような事態は防げますし、可能な限りの節税アドバイスもしてくれるのでメリットは大きいでしょう。
相続財産を寄附することで所得税の節税ができる
相続した財産を特定の対象先へ寄附した場合、寄附金控除が適用され、相続財産から除外されます。この場合、確定申告は義務ではありませんが、申告すれば所得税の寄附金控除の適用を受けることができ、節税になるので申告をおすすめします。
<寄附金控除の対象となる主な寄附先>
国、都道府県、市区町村、日本赤十字社の支部、公益財団法人、公益社団法人、学校法人
社会福祉法人、認定NPO法人、政党、政治資金団体
おわりに:相続にかかる税金に困ったら税理士に相談しよう
この記事では相続税と所得税は別物であり、考え方が違うことをご紹介しました。とはいえ、相続した不動産を売却するなどして利益が出る場合は所得税の申告が別途必要になってきます。そして、被相続人に所得があった場合などは、被相続人の所得に対する準確定申告と、相続した以降で生じる相続人自身の確定申告の二種類の確定申告が必要になるわけです。あらかじめ考え方の違いを知っていれば、混乱することは少なくなるでしょう。
相続税と所得税は、このように異なる考え方とはいえ、密接にかかわってくる事柄ですので、注意する必要があります。
確定申告も相続税申告も相続人が個人でできる範囲には限界があります。また、申告には期限があり、短期間のうちに必要な書類を集め、申請書類を作成しなければいけません。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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