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相続の知識

相続問題の具体的な事例とは? 遺産相続のトラブルを回避するための対策法10選を紹介

相続問題で最も多いのは遺産分割に関することです。問題が解決できない場合、身内で裁判に発展するケースも少なくありません。この項目では、遺産相続で起こるトラブルの実例を挙げ、相続問題を解決するための対策法を紹介します。

目次

相続で問題になりやすいケースは大きく分けて3パターン

遺産相続で問題が起こりやすいケースを絞り込むと次の三つになります。そのうち最もトラブルになりやすいのが①の遺産分割です。
1 相続人の間で遺産分割について対立が起こる
2 高額な相続税が負担になる
3 納税時に現金化できる遺産が少なく資金難に陥る

①相続人の間で遺産分割について対立が起こる

遺産分割の争いは相続財産の額にかかわらず発生しており、遺産分割に関する調停・審判申立ては、近年増加傾向にあります。相続財産の額にかかわらず、と述べましたが、相続トラブルの大半は5,000万円以下の資産規模で起きているという事実があります。つまり、資産家といわれるような莫大な財産をもっている人の相続人だけが、もめているわけではありません。自分には関係ないと思っていても、いざその日がくれば、もめてしまう可能性が高いのではないでしょうか。
のちに詳しく紹介しますが、遺産分割でよく対立が起こるのは、不動産に関してです。不動産は評価方法が複雑なうえに、現物でどう分割すればよいか悩んでしまうものです。
この後で、よく起こりがちなトラブルの事例を10個詳しく説明します。

②高額な相続税が負担になる

財産を所有していた人が亡くなった時、相続人となった人は、相続した財産が一定額以上の場合に「相続税」を支払わなければいけません。相続税の納税は原則現金で納めなければならないため、相続税が相続人の大きな負担になることがあります。

③納税時に現金化できる遺産が少なく資金難に陥る

相続財産が不動産だけで、預金が少ない場合は、納税資金を準備しなければならない事態に直面します。不動産を売って現金化するには時間がかかります。また、売りたい値段で売れるかどうかはわかりません。そのため、相続人が相続税を支払うために自分たちの預金をとり崩して工面することも少なくありません。

相続によく起こりがちなトラブルの事例10選

相続でもめるケースには共通点があります。よく起こりがちなトラブルの事例を10個挙げて説明します。

①不動産の相続で対立が起こる
②遺言書の内容に明らかな不公平がある
③親子や兄弟姉妹が遺産分割の配分でもめる
④相続人の人数が多いことでトラブルに発展する
⑤特定の相続人が遺産を独占する
⑥被相続人の同居家族などが遺産を使い込んでいた
⑦介護などで寄与分が問題となる
⑧前妻および前妻との子が出てくる
⑨被相続人に借金があることが明らかになった
⑩事業の後継ぎが問題となる

①不動産の相続で対立が起こる

たとえば亡くなった方(被相続人という)名義の戸建住宅に同居していた相続人がその土地と建物を引き継ぐ場合、ほかの相続人へは不動産価額から割り出した現金を渡すことになります。不動産の価額の指標が複数存在するため、どの値を採用するのかで不公平感を覚える相続人が登場しても不思議ではありません。

②遺言書の内容に明らかな不公平がある

遺産相続では「法定相続よりも遺言による相続が優先される」という大原則があります。
被相続人が、たとえば「内縁の妻(夫)にすべての財産をゆずる」といった内容の遺言書を残していた場合、遺言に従うと本来は遺産を受け継ぐ権利のある人が、まったく受け取れないという事態が生じ、家族がもめるケースも多く見られます。

③親子や兄弟姉妹が遺産分割の配分でもめる

被相続人が運営していた賃貸アパートを、長男、長女、次女の三人の子で分割したケースがあります。分割方法が決まらず、三人共同で相続することになったものの、次女は収入が少ないため固定資産税を払いたくないと主張。長男は自分がアパート経営の所得税を払うから、長女と次女には固定資産税を払ってくれるよう要望し、兄弟姉妹は対立状態になったそうです。このような争いごとは日常茶飯事となっています。

④相続人の人数が多いことでトラブルに発展する

相続人が集まって遺産の分割を話し合う「遺産分割協議」は、すべての相続人の同意が必要です。ところが、相続人の人数が多いと全員の合意を得ることが難しくなります。
相続人の数が多い場合、疎遠で互いにあまり知らない者同士で話し合いをすることになりがちです。もともと親しくしていなかったこともあり、「ほかの相続人には遺産を渡したくない」と考える人も出てくるため、もめるケースが多くあります。

⑤特定の相続人が遺産を独占する

被相続人の長女が「親の介護をしたから遺産はすべて私が相続します」と主張したり、長男が「土地と家屋は、長男である私が自動的に受け継ぐもの」と言い張ったりすることがあります。特定の人が遺産を独占しようすると、ほかの相続人との間で摩擦が起こり、紛争に発展するケースが少なくありません。

⑥被相続人の同居家族などが遺産を使い込んでいた

被相続人と同居していた子や親、孫などが、遺産分割協議が開かれる前に貴金属や美術品を勝手に売却するというケースがあります。ほかにも祖父が認知症を患い、判断能力がなくなっていた際に、孫が祖父のキャッシェカードで買い物をしていたというケースもあります。

⑦介護などで寄与分が問題となる

被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人に、相続分以上の財産を取得させるための制度で「寄与分」というものがあります。
被相続人に長男、長女、次女の三人の相続人がいたとします。被相続人が亡くなるまで長年、次女が被相続人の介護に努めてきました。長男と長女は面倒を一切みてきませんでした。このような場合、法定相続割合で遺産を分けると不公平が生じます。そこで次女は寄与分を主張できるのですが、これに対して長男や長女が「自分たちは介護にかかるお金を払ってきたから、次女の寄与分は認めない」と主張することもあり、トラブルになりがちです。

⑧前妻および前妻との子が出てくる

相続人調査によって、被相続人の前妻の子がいることがわかり、遺産相続協議が紛糾することがあります。法定相続人でない前妻および相続人である前妻との子と、ほかの相続人が遺産を巡って激しく対立するケースは少なくありません。

⑨被相続人に借金があることが明らかになった

相続人は被相続人のプラスの財産とマイナスの財産の両方を受け継ぐことになるため、財産調査により借金が発覚することはよくあります。その場合、マイナスの財産がプラスの財産より多ければ、相続しない(相続放棄)という選択肢も考慮しなければなりません。

⑩事業の後継ぎが問題となる

事業の後継ぎ(事業承継)が問題になるケースもあります。事業承継とは、被相続人が営んでいた事業を特定の相続人が承継することです。
事業を承継する相続人と、それ以外の相続人との間で不公平感が生まれ、トラブルが起こりやすいのです。

相続問題の対処に有効な10の方法

先に「相続によく起こりがちなトラブルの事例10選」で紹介した相続問題の解決方法を次に説明します。

①不動産を遺産分割する方法を整理しておく

不動産の遺産分割には、下記の4種類があります。

  1. 遺産を現物のまま分ける「現物分割」
  2. 遺産をすべて売却してお金で分割する「換価分割」
  3. 一部の相続人がすべての遺産を相続するかわりに、ほかの相続人に対して相続分に応じた金銭の支払いをする「代償分割」
  4. 不動産などの遺産を相続人間で共有する「共有分割」

自分たちが抱えている問題を解決するためにはどの分割方法が最適なのか、それぞれの方法のメリットとデメリットを整理しておきましょう。

「代償分割」については、こちらの記事もご覧ください。

②遺言書の有効性を調べる

遺言書は形式面の要件を満たしていないと無効となります。また、作成時の判断能力(認知症を患っていた場合、判断能力に疑問が生じる)、さらには作成時の状況(誰かに脅され、書かされたケースなど)により、遺言書自体が無効とされる場合があります。遺言書の有効性に関し、正しい知識を得ておきましょう。

③家族間での遺産の配分率を把握しておく

相続割合は、配偶者がいる場合と配偶者がいない場合とで計算方法が大きく異なります。配偶者がいない場合は、相続人の数で均等割りします。配偶者がいる場合の相続分は、相続人の組み合わせによって異なります。

配偶者がいる場合の相続分

相続人の構成 相続人 法定相続分
①配偶者と子ども 配偶者 1/2
1/2
②配偶者と父母(祖父、祖母) 配偶者 2/3
父母(祖父、祖母) 1/3
③配偶者と兄弟姉妹 配偶者 3/4
兄弟姉妹 1/4

トラブルを回避するために、こうした相続割合を事前に理解しておきましょう。

④法定相続人の範囲を把握しておく

相続人になれる範囲と相続順位は民法で定められています。
被相続人の配偶者=常に相続人
第1順位=子、子がいない場合は孫、子と孫がいない場合はひ孫
第2順位=父母、父母がいない場合は祖父母
第3順位=兄弟姉妹、兄弟姉妹がいない場合は甥・姪
第1順位の該当者がいない場合には第2順位に、第2順位がいない場合には第3順位に、相続人の順位は移動します。法定相続人の範囲を把握しておきましょう。

法定相続人の範囲と優先順位

⑤遺留分侵害額請求権を使う

遺言書で、特定の相続人へ過剰な相続財産の取り分が指定されているケースでは、「遺留分侵害額請求権」を使うことも検討しましょう。
民法では、遺言書に受取人として名前が書いてなくても、法定相続人が相続できる最低限度の相続分を「遺留分」として規定しています。つまり、たとえ遺言があったとしても、特定の人が遺産をすべて独り占めするということはできないのです。
遺留分を主張するには、遺留分を侵害している人に対して、自分の取り分を請求する意思表示が必要です。遺留分の請求手続きを「遺留分侵害額請求」といいます。遺留分が認められているのは、被相続人の配偶者、直系卑属(子、孫、ひ孫など)、直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母など)だけです。

⑥不当利得返還請求を使う

被相続人の同居家族などが遺産を使い込んでいた場合には、「不当利得返還請求」を使うことができます。これは法律上の正当な理由もなく利益を得て、他人に損失を及ぼした人から、不正に取得した利益(お金)を返還してもらうように請求することです。
取り戻せる金額は、その相続人の法定相続分(民法で決められた取り分)までとなっています。たとえば、使い込みの金額が1,000万円だとしても、相続人の法定相続分が500万円であれば、500万円までしか取り戻せません。

⑦寄与分の有効範囲を整理する

寄与分が認められるのは、相続人および被相続人の親族だけです。ただし相続人でも相続放棄者、相続欠格・廃除を受けた者や、相続人および被相続人の親族に該当しない内縁の妻や事実上の養子は、生前、被相続人に対して貢献していたとしても、寄与分の主張ができません。こうした寄与分の有効範囲を整理しておきましょう。

⑧新たに出てきた相続人の遺留分にも配慮する

前妻の子や認知された子には、最低限の遺産取得分としての遺留分が認められます。被相続人が、現在の家族にすべての財産を残す遺言をすると、ほかの子どもたちが遺留分侵害額請求を起こす可能性が高まります。これは新たなトラブルを生むことになるので、遺言をする時には遺留分に配慮する必要があります。

⑨相続の放棄も検討する

被相続人の財産のうち、マイナスの財産がプラスの財産より多いことがわかり、それを相続したくない時は、被相続人の権利や義務を放棄し、財産の一切を相続しない方法を選ぶことができます。
相続人が遺産の相続を放棄することを「相続放棄」といいます。相続放棄をすると、法律上最初から相続人として存在していなかったことになるので、遺留分もなくなります。

ただし、たとえば被相続人に多額の借金があって相続放棄をした場合、その債務は別の相続人に引き継がれることになります。したがって、相続放棄をする場合は、ほかの相続人全員とよく相談して行う必要があります。

⑩被相続人の生前から事業を引き継いでおく

事業承継が遺産相続問題に発展することを避けるためには、経営者が元気なうちに誰かが事業の承継を行っておくことが重要です。相続人が承継人となり、経営者から事業所を生前贈与してもらうのも選択肢の一つです。事業を承継する相続人には事業承継に関する資産を集中させるのがよいでしょう。
それ以外の相続人は、なるべく事業に関係のない預貯金などの資産を渡すようにするのがよいでしょう。

他人事じゃない? 相続トラブルの対象額は大半が5,000万円以下

裁判所が公開している『司法統計データ』(2019年度版)によると、遺産を巡る争いで裁判(調停)になったのは1万2,779件。当事者の数は、3人の場合が最も多く3,631件。続いて2人が3,256件、4人が2,055件の順番になっています。つまり、ごく一般的な2~4人の相続人による相続トラブルが、全体の約7割を占めているのです。
また、全裁判のうち遺産額5,000万円以下が76.76%となっていることから、相続トラブルは富裕層だけに起こる問題ではないことがわかります。

出典:裁判所ホームページ『平成31年/令和元年度 司法統計 家事事件編』

相続の問題を未然に防ぐための対処法三つ

最後に相続問題を未然に防ぐための対処法を三つ紹介します。
①財産目録を作成しておく
②法定相続人との間で合意しておく
③遺産額に応じて節税対策をしておく

①財産目録を作成しておく

被相続人がどんな財産をもっていたかを調べ、プラスの財産とマイナスの財産を確定します。負債が多い場合には、相続放棄をしたい人が出てくるため、住宅ローンや借入金などマイナスの財産も明らかにします。
相続財産を確定したら、それを一覧できる財産目録を作成しましょう。この財産目録が正確でないと、のちのちトラブルの原因となります。後からどんどん財産が出てきた場合は、また手続きのやり直しをしなければならないことにもなります。
ただし、この作業はかなりの労力と時間が必要なうえ、高度な専門性が求められます。相続税申告では、国税庁が定めた財産評価基本通達に則った評価方法で評価額を計算する必要があります。これを税務のことに詳しくない一般人が行うのは、時間や知識の点から実質的には不可能に近いと思われます。相続に詳しい税理士など専門家に相談することをおすすめします。

②法定相続人との間で合意しておく

相続財産の分割は、複数の法定相続人が利害調整をすることです。被相続人が存命、健在のうちに法定相続人全員で話し合いをもち、合意形成をしておくことはきわめて有効です。ただし、合意をしておくだけでは法的な効力をもたないので、法的効力を求めるなら、遺言の作成をしましょう。

③遺産額に応じて節税対策をしておく

遺産額に応じた節税対策の一つは、さまざまな控除制度を使って相続財産にかかる相続税を安くすることです。たとえば住宅に関するものであれば「小規模宅地の特例」があります。
相続税を納税する段階で納付資金が不足する事態にならないためにも、納税資金対策、分割対策、そして節税対策を進めることをおすすめします。

税理士に相談するのも有効な手段

相続問題は、遺産分割と相続税に精通している人に相談を依頼し、アドバイスをしてもらうのがよいでしょう。相続専門の税理士事務所であれば、可能な限りの節税アドバイスもしてくれるので相談や依頼するメリットは大きいでしょう。
「相続税申告の相談は税理士がベスト! 相続に強い税理士の選び方」については、こちらの記事もご覧ください。

おわりに:遺言書を活用して相続の問題に備えよう!

この記事では相続に関連してよく起こるトラブルと、それらを事前に防ぐ方法を紹介してきました。回避方法は概要をご紹介しましたので、詳しくはそれぞれに特化した記事も合わせてご覧ください。
相続で問題になりやすいケースで3パターンを紹介しましたが、一つ目の遺産分割については、被相続人が生きているうちに、相続人同士でよく話し合っておくことが大切です。亡くなった後ではわかりにくいことがたくさんあり、調べるのにも多くの労力と時間が必要になってきます。さらに後から後から知らなかった事実が発見されれば、また一からやり直し、ということにもなりかねません。

問題になりやすいケースの残り二つのパターンについては、相続に詳しい税理士などに相談することが最も手っ取り早い回避方法になるでしょう。相続税の計算や節税方法などはかなり複雑です。被相続人のすべての財産を調べることも専門的な知識が必要です。これも被相続人が生きている間から相談しておけば、相続が起こる前に贈与しておくなど、有効な手段が得られるかもしれません。
相続の問題の多くは遺言書で解決できます。ただし、遺言書の内容に明らかな偏りがある場合は精査が必要です。これも相続問題に強い税理士事務所に相談するのがよいでしょう。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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