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相続の知識

「相続税のお尋ね」は無視してもいい?書き方と対応方法を徹底解説!

相続が開始してしばらく経つと「相続税についてのお知らせ」または「相続税の申告等についてのご案内」という文書が税務署から届くことがあります。これらの「相続税のお尋ね」は、相続税の申告が必要になる見込みの高い相続人に送付されるものです。
本記事では、相続税に関する「お尋ね」が送られてくる理由、適切な対処法について解説します。

「相続税についてのお尋ね」とは?なぜ送られてくる?

相続税を申告する可能性が高い相続人を対象に、税務署から送られてくるお知らせが「相続税についてのお尋ね」です。相続税以外でも、申告内容について税務署から個人に対して行う問い合わせは「お尋ね」と呼ばれています。2015年(平成27年)に相続税法が改正されてからは、これまでの「相続税についてのお尋ね」から、より相続人の状況に適した「相続税についてのお知らせ」と「相続税申告等についてのご案内」の2種類に分けられています。

「相続税についてのお知らせ」は、相続税を申告する可能性がある広範囲の相続人を対象としたものです。一方、より申告の可能性が高い相続人に届くのが「相続税申告等についてのご案内」です。そのため「相続税申告等についてのご案内」が届いた場合には、税務署から『相続税の申告が必要な可能性が高い』と判断されているということになります。ただし、どちらのお知らせを受け取った方も、基本的には内容をきちんと確認し対処することをおすすめします。

これらの「お尋ね」は、おおむね相続が開始して半年ほど経ってから届けられるケースがほとんどです。被相続人が亡くなり、親族が市区町村役場へ死亡届を提出すると、その情報は「相続税法58条」に基づき税務署へ通知されます。

相続税法 第五十八条
市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡又は失踪に関する届書を受理したときは、当該届書に記載された事項を、当該届書を受理した日の属する月の翌月末日までにその事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない。

出典:e-Gov 法令検索

通知を受けた税務署は、被相続人の過去の確定申告、不動産の登記情報、金融機関へ問い合わせなどを行い、調査した内容から保有していた資産を把握できるようになっています。
つまり、相続税における「お尋ね」は、一定の財産があると税務署が判断した相続人に申告を促す意味合いで送られてくるのです。

相続税のお尋ねがこない場合は?

ここまで読んだ方は「相続税のお尋ねが来なければ、相続税の申告は必要ない」と考える方も多いと思いますが、中には実際に申告の必要があっても「お尋ね」の通知が郵送されてこないケースがあることも知っておきましょう。またお尋ねが届いたからと言って、必ず相続税申告が必要なわけでもありません。
自分で遺産総額を計算した際に、基礎控除額とほぼ同等のラインで相続税申告が必要かどうか判断しきれない場合には、早めに専門家へ相談しておいたほうが安心です。
相続税がいくらからかかるのか、基礎控除額等について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

なお「お尋ね」は被相続人の住所に郵送されるため、親族が気づかないまま申告期限を過ぎてしまうケースも考えられます。相続税申告は、相続の開始(被相続人の死亡)を相続人が認知した翌日から10か月以内です。
期限を過ぎてしまうと「無申告加算税」として、本来の納付額に5〜20%加算されるだけでなく、延滞税もかかってくるため注意しましょう。

いつまでに提出しなければならない?

税務署の内部調査により、ある一定の基準で選出された相続人に送られてくる「お尋ね」には、それぞれ回答期限が明記されています。ただし、お尋ねの回答は義務ではありません。あくまでも税務署側で状況を把握するため、また相続人に相続税申告の存在を知らせるため、期限までに回答することが促されているだけです。

例えば、すでに税理士に相談をして相続税申告の準備をしている場合などは、焦って回答する必要はないでしょう。しかし、まだ何も手を付けていないという方は注意が必要です。
前述した通り、お尋ねが送られてくるのは相続開始から6か月以上経った頃で、相続税申告の期限は相続開始から10か月以内です。つまり、お尋ねが送られてきた時点ですでに「相続税申告期限まで残り3~4か月」ということになります。
もし申告・納税が必要な場合には急いで準備を進めなければならないということになりますので、やはりお尋ねが届いた時点で相続財産の調査・整理をして回答した方が良いでしょう。

申告の有無をチェックするための「相続税の申告要否検討表」が同封されている場合は、そちらで財産内容の整理をしましょう。現時点で相続税の支払いが必要なほど財産がないと感じられている方も、相続人が把握していない別の財産が存在する可能性も十分に考えられます。

国税庁のWebサイトには、相続税申告の要否をオンライン上でチェックできる「相続税の申告要否判定コーナー」が設置されています。「お尋ね」の文書が届いていない方も、あらかじめ申告の要否を自分で確認しておくとよいでしょう。

国税庁 相続税の申告要否判定コーナー

「相続税についてのお尋ね」と「相続税の申告書」は違う

「相続税の申告等についてのご案内」に同封されている「相続税の申告要否検討表」には、被相続人の基本情報から相続人の人数、被相続人名義となっている不動産まで詳細な内容を記載します。しかし、相続税の申告が必要な場合には、これとは別に相続税の申告書も提出しなければなりません。
申告書の書式は、国税庁のWebサイトから入手できます。「お尋ね」が相続の開始から半年後に送られてきた場合、残りの4カ月で申告手続きの準備から納税までを行わなければなりません。

国税庁相続税の申告書等の様式一覧(令和3年分用)

「相続税についてのお尋ね」を無視したらどうなる?

税務署からの「お尋ね」には、回答期限が設けられています。しかし、相続税が発生しないと確実にわかっている場合や、すでに申告を終えているのなら、提出しないまま放置しても問題にはなりません。なお、申告の準備を進めている段階で送付されてきたら、相続税の申告書と一緒に提出するとより丁寧です。

相続税の申告は不要な場合でも、回答した方がいい

「お尋ね」の回答期限までに必要事項を記載して返送することは、申告の必要がないと明らかに示すことにもつながります。適切に対応しておけば、把握できていない財産があとで発見されたとしても、回答時点での虚偽ではないと証明できるのです。
また「お尋ね」を放置したのちに申告義務があると判明した場合、税務署の調査した内容に基づいて相続税が決定する可能性もあります。さらに、無申告が故意であったと判断されれば、もっとも重い「重加算税」が課せられるケースもあります。
これらのリスクを避けるためにも、税務署からの「お尋ね」にはきちんと対応した方が良いでしょう。

もし間違えた内容で回答してしまったら?

「相続税の申告等についてのご案内」と一緒に提出した「相続税の申告要否検討表」へ誤った内容を記載してしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか。
この場合、最終的な相続税の申告書に正しい内容が記載されていれば問題はありません。ただし、あまりに誤差が大きい場合には、税務調査の対象となる可能性があります。故意に財産を隠した悪質なケースと判断されてしまえば、ペナルティとして40%の重加算税も言い渡されかねないため注意しましょう。

「相続税の申告要否検討表」の書き方

ここからは「相続税の申告要否検討表」の書き方について、項目ごとに詳しく説明していきます。一見複雑に感じるかもしれませんが、どのような情報を記載する必要があるのかだけでも把握しておけば、スムーズに申告の準備を進めていけるはずです。

なお「相続税の申告要否検討表」の様式は、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。

国税庁 相続税の申告要否検討表(提出用)

1.亡くなられた人の住所・氏名・生年月日・亡くなられた日
まず、住所と氏名、生年月日と被相続人が亡くなった日を記載してください。

2.亡くなられた方の職業及び勤め先の名称
亡くなる直前の職業、生前の主な職業に分けて勤め先の名称などを記入します。

3.法定相続人の基本的な情報と人数の合計
法定相続人について記載する項目です。ここでは、民法により規定された法定相続人を記載するため、相続を放棄した方も含めた情報が必要です。相続人の氏名と住所、続柄を記載します。被相続人に離婚歴がある場合、現在の親族が知らない法定相続人が存在する可能性もあります。のちのトラブル対策として、親族の調査を依頼することも検討してみましょう。

4.被相続人名義の不動産情報
被相続人の名義となっていた土地の種類・所在地・面積・路線価・倍率・評価額を記載します。
ここでは、被相続人が先代から受け継いで名義変更していない不動産も調べて記入しなければなりません。国税庁のWebサイトにある「路線価図・評価倍率表評価額」を参照して、路線価と倍率を記入します。なお、路線価が定められていない場合には、固定資産税評価額を記入してください。評価額の概算は[路線価×面積]または[固定資産税評価額×倍率(建物は1.0倍)]の計算式で求められます。

路線価について詳しくは、下記の記事もご覧ください。

5.亡くなられた人が保有していた株式、公社債、投資信託
株式などの状況について記載する項目です。銘柄・数量・金額について、亡くなった日の状況を確認する必要があるため、被相続人が取引を行っていた証券会社などに問い合わせて記入しましょう。

6.亡くなられた人の預貯金・現金
こちらもなくなった日の状況についての記載が求められます。金融機関にある財産だけでなく、自宅に保管されていた「手許現金」も含めた額を記入します。なお、亡くなった人の口座から、葬儀費用として直前に引き出した現金も計上しなければなりません。

7.相続人が受け取った生命(損害)保険金・死亡退職金
生命保険または損害保険、死亡退職金を支払った会社の名称と支払われた額を記載します。相続人が受け取ったこれらの保険金や退職金は、一定額が非課税となるため[生命(損害)保険金の合計額-法定相続人の人数×500万円]もしくは[死亡退職金の合計額-法定相続人の人数×500万円]の計算式に当てはめて、それぞれの課税分を算出してください。

8.その他の財産
上記の4~7に該当しない書画骨董や自動車、貸付金などについて、財産の種類・数量・金額を記載します。書画骨董や自動車は、専門家に評価してもらう必要があるため、専門の業者に依頼して見積もりを受け取るようにしましょう。

9.相続時精算課税を適用した財産の贈与について
「相続時精算課税」とは、相続税と贈与税をまとめて課税する制度です。生前贈与の場合、2,500万円までが非課税となる一方で、贈与する方が亡くなった際には、この財産も相続税の課税対象となります。贈与を受けた相続人の氏名・財産の種類・金額をそれぞれ記入します。

10.被相続人が亡くなる前3年以内に受けた相続時精算課税以外の贈与
上記9以外の贈与をうけた相続人がいる場合、その方の氏名・財産の種類・金額を記載します。

11.教育資金または結婚・子育て資金の一括贈与で受けた非課税の適用
これらの資金を直系尊属から一括で贈与されていた場合、使い切らずに残っている資金も確認しなくてはなりません。贈与を受けた方の氏名・資金の種類・管理残高の合計額を記載しましょう。なお、一定の金額までは相続財産に加算されない特例制度が設けられています。

12.被相続人の債務と葬式費用
銀行からの借入金、未納となっている固定資産税や住民税がないかを調べ、借入先の名称・金額を記載します。また、葬儀費用の概算もここに記入し、これらの合計額を算出してください。

13.相続財産の概算
ここまでに記載した内容から、相続税がいくらであるかを概算します。ただし、上述したように、相続する財産の額と基礎控除額の差が小さいときには、申告の要否をさらに検討する必要があります。相続税に詳しい専門家へ相談するなどして、不安が残らないようにしておきましょう。

おわりに:相続税のお尋ねは無視せずに、しっかり回答する方が自身のリスク防止につながる

相続が開始してから送られてくる税務署からの「お尋ね」には、「相続税についてのお知らせ」と「相続税の申告等についてのご案内」の2種類があります。回答は義務づけられていないものの、きちんと対応しておくことで、その後のリスク防止につながります。ただし、お尋ねの回答をするためには相続する財産額の計算が求められるため、不動産や株などを相続される方は、その財産評価が必要になってきます。
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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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