相続の知識

車の所有者が死亡、相続時の名義変更方法とは?期限・手続き・必要書類を解説

遺産相続に際してはさまざまな手続きが発生しますが、その中のひとつに故人の車の名義変更があります。しかし、多くの人々にとって車の名義変更の正しい手順や必要書類、期限などは複雑で分かりにくいものです。そこで本記事では、所有者が死亡した車の名義変更の方法や自分で行う場合の流れ、注意点などを解説します。

所有者が死亡した車の名義変更は速やかに行おう

遺産相続によって新しく車の所有者になった方は、速やかに名義変更を行なったほうが良いでしょう。以下では、名義変更の期限や名義変更を行わなかった場合に生じる不利益について解説します。

名義変更の期限

車の所有者の死後の名義に関して、まず法律上いつまでに変更をしなければならないという定めは「道路運送車両法」第13条で定められています。

(変更登録)


第十二条 自動車の所有者は、登録されている型式、車台番号、原動機の型式、所有者の氏名若しくは名称若しくは住所又は使用の本拠の位置に変更があつたときは、その事由があつた日から十五日以内に、国土交通大臣の行う変更登録の申請をしなければならない。ただし、次条の規定による移転登録又は第十五条の規定による永久抹消登録の申請をすべき場合は、この限りでない。

出典:e-Gov法令検索『道路運送車両法第12条第1項』

この法律に従えば、車の所有者が死亡した後、その車を誰が正式に相続するのかが確定したならば、その相続人は15日以内に速やかに名義変更の手続きを済ませなければなりません。
申請をしなかった場合の罰則は、同法第109条において「五十万円以下の罰金」と定められていますが、実際には現実的ではない罰則とされるでしょう。ただし、罰則以外にも名義変更をしないデメリットはありますので、次の章で解説していきます。

名義変更をしないデメリット

名義変更を行わないままでいると、実務的な面でさまざまな不都合が生じます。
まず、車の名義変更を放置していると、車の売却や破棄ができません。というのも、名義変更なしでは、自分が車の正式な所有者であることを法的に証明できないためです。

さらに、万が一その車を運転中に事故を起こしてしまった場合、自賠責保険の範囲内でしか補償を受けられなくなってしまいます。つまり、名義変更をしないままでいると、事故に係わる多額の費用を自己負担しなくてはならないリスクが生じます。

名義変更は単なる形式上のものではなく、実務的にもリスクマネジメント的にも重要なことです。

所有者が死亡した車の名義変更方法

車の名義変更をする方法は主に3つあります。ここでは、それぞれのメリット・デメリットや費用などを紹介します。

自分で行う

車の名義変更は自分自身で手続き可能です。代行業者に依頼する場合は一定の費用がかかりますが、自分で行えば実費のみで数千円で行うことができるでしょう。とはいえ、名義変更に必要な書類や手続きについて調べ、準備し、陸運局などに足を運ぶ作業には手間暇がかかるのも確かです。自分で手続きをするかどうかは、自分にそうした時間や余力があるか検討した上で決めましょう。

行政書士に依頼する

第三者に名義変更手続きを頼む場合の選択肢としては、行政書士に依頼する方法もあります。行政書士は、必要な書類の取り寄せ、資料作成、手続きまでを全て代行してくれるので、包括的なサポートを受けることが可能です。また、車の名義変更だけでなく、相続全般に関わる手続きをまとめて依頼できるのも大きなメリットとして挙げられます。
行政書士に依頼する場合の代行費用は、1~5万円程度で見ておけば良いでしょう。その分、手続きに関する負担やリスクを大幅に軽減できます。

車のディーラーに代行してもらう

車の名義変更を自分で行うのが難しい場合は、車のディーラーや買い取り業者に代行を依頼するのがひとつの手です。必要書類は自分で準備しなければなりませんが、車の整備等にも精通しているため、対象の車の扱い方に関しての疑問点などもあれば、任せてしまったほうが安心です。もちろん運輸局などでの手続きも代行してもらえます。
ディーラーに名義変更を頼む場合の一般的な費用相場は、3万円から8万円程度です。

車の名義変更を自分で行う場合の手順

車の名義変更を自分で行う場合は、必要な手続きの流れを事前に把握しておくことが大切です。ここでは、その具体的な手順を解説します。

1. 所有者を確認する

最初に行うべきことは、車検証などを確認し、車の所有者が間違いなく故人であるか確認することです。というのも、場合によっては、ディーラーや信販会社などが法的な所有権を有していることもあるためです。これはたとえば、車がローンで購入されていた場合などが該当します。こうした場合、名義変更をするには、先にローンの完済を済ませなければなりません。

2. 相続人を決める

車の所有者が故人であった場合は、次に車の相続人を決定します。法的には、車は所有者の死後、一時的に相続人全員の共有財産という扱いになります。ここから遺産分割協議を経て、車を正式に承継する相続人を決定する形です。なお、共有名義のまま登録することも可能ですが、「名義変更に相続人全員の協力が必要」、「後に車の処分方法などでもめる恐れがある」などのデメリットがあります。

3. 必要書類をそろえる

名義変更手続きにはいくつかの書類が必要です。代表相続(または単独相続)を想定した場合の必要書類は以下の通りです。

▼必要書類

  • 戸籍謄本(故人の死亡や相続人全員が確認できるもの)
  • 遺産分割協議書(相続人全員の実印が必要)
  • 車検証
  • 新所有者の実印および印鑑証明書(発行3ヵ月以内)
  • 新所有者の車庫証明書
  • ナンバープレート
  • 委任状(本人が窓口に行けない場合)

なお、車の価値が100万円以下の場合、遺産分割協議書は以下の2点に代替できます。

  • 遺産分割協議成立申立書
  • 車の価値が100万円以下であることを証明できる書類

4. 適切な窓口で申請する

名義変更の申請窓口は車の種類によって以下のように異なります。

普通自動車の場合:管轄の運輸支局または検査登録事務所
軽自動車の場合:管轄の軽自動車検査協会事務所・支所・分室

管轄場所は、国土交通省や軽自動車検査協会のホームページで確認できます。手続きに要する費用は4,000円から5,000円程度です。手続きに際しては実印が必要なので、忘れず持参しましょう。これらの手続きを完了することで、故人名義の車が新しい所有者へ正式に名義変更されます。

おわりに:所有者死亡後の車の名義変更は速やかに

車の名義変更は、車の相続を法的に完了するための重要な手続きです。このプロセスは原則的に、所有者が変わってから15日以内に完了するよう法律で定められています。また併せて自動車保険について、契約者変更や契約内容の見直しもこのタイミングで進めると良いでしょう。相続人が複数人いる場合は、遺産分割協議で誰を相続人とするか、もしくは共有名義とするかを決める必要があります。その際、場合によっては相続人同士でもめてしまうこともあります。
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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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