未登記建物を相続した際の手続きの流れを解説!未登記のままは要注意
Tweet遺産相続の際、未登記の建物があったらどうしたらよいのでしょうか。未登記の建物を放置すると、建物の売却が難しくなったり、所有権が曖昧になって複雑な問題が生じたりする恐れがあります。そこで本記事では、未登記建物の相続について知りたい方に向けて、未登記建物を放置するリスクや、相続時の手続きの流れについて解説します。
目次
未登記建物とは
土地や建物といった不動産は、その存在を法務省にある「不動産登記簿」に登記(登録)され、誰でも閲覧できるようになっています。未登記建物とは、この不動産登記簿に登記がされていない建物を指します。より正確に言えば、不動産登記簿の「表題部」の登記がされていない建物のことです。
不動産登記簿の記載項目は、建物の所在や床面積などの物理的な情報が記載された「表題部」と、その建物の所有権や抵当権などの権利に関する事項が記載された「権利部」に区分されます。未登記建物はこの表題部に登記がない、つまり法務省の建物リストに存在自体の登録が成されていない状態というわけです。
通常、建物を建築したり購入したりする際、申請をすべき義務のある者が1カ月以内に表題部の登記をしなければならないことが、法律によって定められています(不動産登記法第47条第1項)。
しかし、現在でも法律に違反している未登記建物が数多く存在します。
未登記建物が存在する理由
表題登記をすることが法律で義務付けられているのに、どうして未登記建物が存在しているのでしょうか。それは、以下のような理由の場合が多いです。
- 住宅ローンを利用せずに建物を購入したため、銀行などに登記申請を指摘されなかった
- 建て替え時に登記するのを失念してしまい、古い建物情報が登記されたままになっている
通常、高額な住宅を購入・建築する際には住宅ローンを利用する方がほとんどだと思いますが、それを利用せずに自己資産だけで一括購入したような場合、特に銀行などから指摘を受けなかったため、登記されていなかったというケースがあります。また同じ土地内で建て替えをしたようなときにも、新しい建物の情報が登記されていないケースもあります。
いずれにせよ、法務局から催促されることもなく不便も感じないため、相続手続きや不動産売買の際の書類などで未登記建物と知ることが多いです。
建物を未登記のまま放置しないほうがいい理由
建物を未登記のまま放っておくこと、さまざまな問題が発生する可能性があります。主な問題を見ていきましょう。
所有権が証明できない
先述の通り、不動産登記簿には建物の所有権などを記載する項目があります。しかし、未登記建物のままでは自分がその建物の所有権をもっていることを法的に証明できません。所有権が不透明なままでは、その建物を売却したくても、売買契約が困難になるリスクが高いです。また、自分以外の相続人が建物の所有権を主張する、悪意ある第三者によって乗っ取られてしまうなどの問題が生じてしまうことにもなりかねません。
融資を受けられない
建物が未登記状態のままだと、銀行などから融資を受けられません。なぜなら、金融機関から融資をしてもらうには、不動産の抵当権設定の登記手続きをするのが前提条件になっているからです。
「建物は未登記だけれども、土地は登記している」という場合でも、融資を断られることがほとんどです。これは債務者以外の第三者から建物の所有権などを主張されて、債権回収が難しくなるリスクを踏まえてのことです。
そのため、相続した未登記建物を住宅ローンでリフォームしたい場合には、先に不動産登記(相続登記)を済ませておかなければなりません。
固定資産税を多く支払う可能性がある
登記の有無にかかわらず、建物を所有しているなら固定資産税を支払う必要があります。未登記のままなら固定資産税の支払いから逃れられるのではないかと思う方もいるかもしれませんが、自治体は現地調査などから建物の所有者を調べ、固定資産税の納付を求めてきます。その際、過去の納税していない分を請求される可能性があります。
また、未登記建物は土地に住宅が建っている場合に受けられる軽減措置が受けられません。そのため、本来の金額よりも多く固定資産税を支払っている場合があります。
相続人が増えていく
未登記建物の所有者が亡くなってそのまま放置しておくと、いざ登記をする際にまず相続人全員で遺産分割協議を行う必要があるため、所有者の相続人を探さなければなりません。相続人の連絡先が明確ならそれほど問題ありませんが、所在が分からない場合には、戸籍謄本などをたどって現住所を特定する必要があります。しかもその相続人も亡くなっていた場合には、その相続人の配偶者や子どもが次の相続人となるため、相続人の数が増えてさらに手続きが大変になります。
ほかにも放置期間が長ければ長いほど不動産登記に必要な書類を紛失していることが多いため、こうした書類をそろえる作業に手間がかかります。
法律的な罰則がある
不動産登記は、建物を所有した時点から1カ月以内に行うことが義務づけられています。この申請を怠った場合には、10万円以下の過料が課されるリスクがあります(不動産登記法164条)。
また、2024年4月から相続登記(相続による所有権移転登記)が義務化される予定であり、不動産を相続した場合には正当な理由なく登記をしないと、10万円以下の過料を科せられる可能性があります。過去の相続でも適用対象となり、改正法の施行日から3年以内に登記しなければいけません。
相続登記の義務化については、以下の記事もご覧ください。
未登記建物を相続した際の手続きの流れ
では、未登記建物が相続財産に含まれていた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。以下では、その手続きの流れを解説します。
1. 未登記建物を相続する人を決める
未登記建物を相続するためには、まずその未登記建物を誰が相続するのか確定させましょう。複数人の相続人がいる場合には、誰が建物を相続するのか遺産分割協議を行い、遺産分割について話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成して全員に署名と実印での押印をもらいます。
2. 建物表題登記の申請を行う
次に不動産登記の申請を行います。先述の通り、不動産登記には「表題部」と「権利部」という2つの項目がありますが、まず表題登記を申請して、新たな登記簿をつくります。
建物表題登記を申請する際には、主に以下の書類をそろえて必要事項を記入し、未登記建物が所在する地域の法務局へ提出します。
- 登記申請書
- 建物図面・各階平面図
- 建築確認通知書(検査済証)
- 施工業者の工事完了引渡証明書・資格証明書・印鑑証明書
- 被相続人の住民票
- 相続に関する書類(戸籍謄本や遺産分割協議書など)
3. 所有権保存登記の申請を行う
建物表題登記が完了したら、続いて未登記建物の所有権を公示するのに、所有権保存登記の申請を行います。所有権保存登記は権利部の箇所に該当します。所有権保存登記には、以下の書類が必要です。
- 登記申請書
- 所有者の住民票
- 住宅用家屋証明書
さらに所有権保存登記の手続きには、登録免許税がかかります。
このように建物表題登記、所有権保存登記どちらも専門的な知識を求められることが少なくありません。手続きに不安があるようならできるだけ早く、専門家に相談したり、手続きの代行を依頼したりするなど、対策を講じましょう。
おわりに:未登記建物を相続したら早めに対処を
不動産登記がされていないと、せっかく建物を相続しても売却できない、融資を受けられないなど数多くの問題が生じます。登記費用等を節約したいなら登記手続きを自分で行うこともできますが、必要書類をそろえるのには知識も手間もかかるため、専門家に相談するのがおすすめです。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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