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相続の知識

遺産分割協議書に預金はどうやって書くの?分割方法や端数についても解説

相続が発生し、遺産分割協議書を作成するときに、預貯金額を明記するべきなのでしょうか?
この記事では、遺産分割協議書に預金額を記載する場合のメリットやリスク、書き方について解説します。
ぜひ最後まで読んで、遺産分割協議書を作成する際の指針にしてください。

遺産分割協議書とは?

相続が発生した際、遺言書がなく、複数の相続人がいる場合に、誰がどの遺産をどれくらい相続するかについて、相続人同士で協議を行います。これを遺産分割協議といいます。そこで協議した相続の内容を明記した書類が、遺産分割協議書です。

協議書を作成する法律上の義務はありませんが、協議のうえで決定した相続内容について、後から不満を言う相続人が出てくるなどのトラブルが発生することも考えられます。そのような事態を避けるためにも、相続人全員が合意したことを証明するために作成します。
また、引き継いだ不動産や自動車の名義変更など、相続の手続きに際して提出が求められることがあります。

どのようなときに必要になるかは、下記の記事もご覧ください。

【預金の分け方別】遺産分割協議書の記載例

遺産分割協議書には、誰がどの遺産を相続するかといった、具体的な相続の内容を記載します。ほとんどの方の場合、相続財産の中に預金が含まれているかと思いますが、どのように分けるかによって遺産分割協議書への記載方法が変わってきますので、ここでは分け方別の記載例を見ていきましょう。

①1つの預金口座を1人で相続する場合

例えば相続人が3名いて、3つの預金口座をそれぞれ1口座ずつ相続する場合は、相続する相続人の名前とその口座情報を明記します。口座ごとに金額が大きく異なると不公平さが生じてしまいますが、一番手続きが簡単な方法です。

【例】
1.相続人Aは、以下の遺産を取得する。
(1)預貯金
〇〇銀行〇〇支店 普通預金
口座番号:〇〇〇〇〇〇〇〇

②1つの預金口座を複数人で分ける場合

被相続人の口座がひとつしかなく、複数の相続人で分ける場合、方法としては以下の2種類があります。

(1)被相続人の口座から、各相続人の取得割合に応じて、各相続人の口座に振り込んでもらう
(2)代表相続人を決めて、その人へ一旦全額を引き継ぎ、その後に各相続人へ振り込む

遺産分割協議書にはどの方法を使うのかを記載します。また具体的な金額は書く必要はないですが、相続人ごとの取得割合や手数料の取り扱いなどを記載しておきましょう。

【例】
以下の遺産については、Aが3分の2、Bが3分の1の割合でそれぞれ取得する。

Aは相続人を代表して以下の遺産の解約および払い戻しの手続きを行い、このうちBの取得分をBが指定する口座に振り込んで引き渡すものとする。
なお、振込手数料はBの負担とする。

(1)預貯金
〇〇銀行〇〇支店 普通預金
口座番号:〇〇〇〇〇〇〇〇

③複数の預金口座を複数人で分ける場合

被相続人が多くの預金口座を持っていた場合、それらを複数人で分けていくのは手続きがかなり大変です。ここで利用できるのが「代償分割」という方法です。

「代償分割」とは、不動産などの物理的に分けられない財産を相続する際に、該当の財産を相続した相続人が、財産を取得しなかった相続人に現金を支払うなどして債務負担することをいいます。例えば、遺産が4,000万円相当の実家のみで相続人がAさん・Bさんの2人だった場合、平等に財産を分けるとして、Aさんが4,000万円相当の実家を相続し、AさんがBさんに半分の2,000万円の現金を渡す、といったような方法です。そのため、通常は預貯金の分割では利用されず、不動産が対象になります。

しかし預金口座が多数にわたる場合は、相続人1人1人の口座へ各金融機関から振り込み手続きをするのは非常に手間がかかります。また、代償分割の記載をせずに勝手に1人の相続人がまとめて預金を引き出し他の相続人に分配すると、代償金を支払った際に贈与とみなされ、贈与税を徴収されてしまう可能性もあります。

そのため、複数の預金口座を複数人で分ける場合、かつ手続きをスムーズにしたいという場合は、代償分割にする旨を確実に明記しておきましょう。以下がその例文になります。

【例】
相続人Aは、以下の遺産を取得する。
(1)預貯金
1. 〇〇銀行〇〇支店 普通預金
口座番号:〇〇〇〇〇〇〇〇
2. □□銀行□□支店 普通預金
口座番号:××××××××

相続人Aは、(1)に記載の遺産を取得する代償として、Bに対し、1,000,000円を20XX年XX月XX日までに支払うものとする。

預金を相続する際のよくある質問

ここからは預金を相続する際に、疑問を抱きがちなポイントをQA形式で見ていきましょう。

Q.預金を分けた際の端数はどうする?

A. 1円以下の端数については、相続人同士で承諾が取れていれば特に遺産分割協議書に記載する必要もありません。例えば1000万円の預金を3名で等分したい場合、必ず割り切れないので端数が発生するかと思いますが、そこは分ける方同士である程度金額を決めて記載するか、「3分の一ずつ取得」などと割合を記載していれば問題ないでしょう。

Q.預金残高は記載したほうが良い?

A. 結論から言うと、遺産分割協議書に必ずしも金額を書く必要はありません。なぜなら、相続人同士で合意した内容の記載があればよく、被相続人の預金残高がいくらなのかを明記することは、協議書が適正だと認められる要件ではないからです。
複数の口座に預金がある場合や、預金以外にも不動産などの遺産がある場合は、ひとつひとつ金額を調べるのも手間がかかります。そのような場合には、書かなくても特に問題はありません。

記載する場合のメリット

メリットとしては、遺産が現金や預金しかない場合に記載しておくと分かりやすい、という点です。記載する場合は、まずは被相続人の口座を管理している金融機関の窓口へ行き、残高証明書を発行してもらいましょう。発行には手数料がかかります。
故人の預金通帳を確認することで、残高の確認もできますが、最近ではネット銀行を利用している人も増えており、通帳を発行していない銀行もあります。通帳がない場合は、銀行に依頼して残高証明書を発行してもらえば、確実に金額を把握できます。

記載する場合のデメリット

口座の利息などで金額が変動するリスクがあるので注意が必要です。利息の発生などにより遺産分割協議書を作成した後に預金の金額が変わってしまうと、内容を修正しなくてはいけなくなり、手間がかかります。金額を書かない場合は、銀行名や口座番号など金額以外の情報を記載します。

預金以外の項目など、遺産分割協議書の書き方については、下記の記事もご覧ください。

Q.名義人が亡くなると預金が凍結されるって本当?

A. はい、本当です。被相続人の口座は、その口座を管理している金融機関が被相続人の死亡を知った段階で凍結されてしまいます。遺産分割が完了するまで、遺族は凍結された口座からの引き出しができません。遺産分割の後に預金を引き出したいときは、口座の相続と凍結解除を行いたい旨を金融機関に伝えて対応してもらいましょう。

詳しくは下記の記事もご覧ください。

Q.遺産分割協議完了前に預金を引き出すことはできる?

A. 上限額はありますが、できます。
葬儀費用などを相続人の財産から用意できない場合や、相続人が被相続人に生活を頼っていた場合などは、被相続人の口座がいきなり凍結されてしまうと相続人が困ってしまいます。
そのような状況への対応策として、2019年7月に預貯金の仮払い制度ができました。遺産分割の成立前でも、一定の金額であれば、相続人が被相続人名義の口座から預金を引き出せる制度です。ただし、引き出せる金額には上限があります。

注意点として、この制度を使うと相続放棄ができなくなる可能性があります。引き出した預金の全額を被相続人の葬儀費用にあてれば問題ありませんが、自分の生活のためなどで使ってしまうと、単純承認したとみなされ、相続放棄できなくなります。特に被相続人に借金がある場合は、相続放棄できないと借金ごと引き継ぐことになってしまうので注意が必要です。

また、引き出した金額を葬儀費用にあてた場合は、必ず領収書を取っておくなど、慎重に実行する必要があります。被相続人の口座にあったお金の使い道が不明確になってしまうことで、後々相続人同士でトラブルに発展してしまうことがあるためです。

預貯金の仮払い制度を利用するかどうか迷ったら、税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。

Q.預金の相続に必要な書類は?

A. 遺言書の有無と金融機関によって提出する書類が異なります。
遺産分割が完了した後に故人の預金を引き出すには、必要書類をそろえて金融機関に提出する必要があります。以下は必要書類の一例ですが、実際に引き出す際は各金融機関に確認しましょう。

遺言書の有無に関係なく必要な書類

  • 被相続人の戸籍謄本
  • 被相続人の通帳やキャッシュカードなど

遺言書がある場合に提出する書類

  • 遺言書
  • 検認調書もしくは検認済証明書
  • 相続人の印鑑証明書(遺言執行者がいる場合は遺言執行者のもの)
  • 遺言執行者の選任審判書謄本(遺言執行者がいる場合)

遺言書がない場合に提出する書類

  • 遺産分割協議書(ない場合、相続関係届出書)
  • 相続人全員分の戸籍謄本
  • 相続人全員分の印鑑証明書

おわりに:預金口座の残高は必ずしも書かなくてOK

遺産分割協議書に預金の分割について記載する場合、預金の具体的な金額を必ずしも書く必要はありません。相続財産が現金やひとつの口座の預金しかない場合などは記載した方が分かりやすいですが、利息の発生や誤記に注意する必要があります。遺産分割協議書の内容を後で修正することになると手間がかかるので、不安や疑問がある場合は相続の専門家に相談しましょう。

相続税に関するお困り事がある場合などは、税理士に相談することをおすすめします。
その際は、相続専門 税理士法人レガシィへぜひご相談ください。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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