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相続の知識

遺産分割調停のタイミングや進め方は? 有利に進めるにはどうするべき?

遺産分割協議で合意に達しなかった場合は、家庭裁判所の「遺産分割調停」を活用することになります。相続の調停では、調停委員を介して遺産分割の話し合いを進めることになります。この記事では、遺産分割調停のタイミングや進行、話し合いを有利に進める方法を紹介します。

遺産分割調停とは

相続人全員が参加して行う遺産分割協議を重ねても、相続財産の分割について合意に達しなかったり、相続人同士が対立して一部の相続人が協議に参加しなくなったりすることもあります。こうした場合、家庭裁判所に申立てて「遺産分割調停」によって遺産分割をすることができます。
遺産分割調停の申立てを行うのは、相続人のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です。裁判所にある遺産分割調停申立書に必要事項を記入し、必要な書類と費用を添えて提出します。

調停は家庭裁判所の審判官と二人以上の調停委員からなる調停委員会の立ち合いのもと行われます。調停委員を務めるのは有識者などです。審判官と調停委員は相続人一人ひとりの意見を聞いたうえで、法律的な観点から適切な助言を与えてくれます。

審判官と調停委員が相続人一人ひとりの意見を聞く形で話し合いが進みます。話し合いが成立すると、合意内容をまとめた書類が作成されます。これが「調停調書」です。調停調書は判決と同じ効力をもち、これに従って遺産分割が進められます。
調停で合意できない場合、遺産分割審判に移行することになります。

遺産分割調停のタイミングや進め方

遺産分割協議について詳しく知りたい人は下記をご覧ください。

遺産分割調停が行われる二つのパターン

遺産分割調停が行われるのは、おもに次の二つのケースです。

  1. 一部の相続人が音信不通で、遺産相続協議を開くことができない時
  2. 遺産相続協議で合意を得られない時

それぞれ次で詳しく説明します。

①相続人が音信不通

遺産分割協議は相続人全員の参加が義務づけられています。
海外や遠隔地に在住している、入院中である、高齢などの理由で直接参加するのが難しい人は、手紙やメールを使って意思表示することが認められています。近年ではWEB会議が使われるケースも少なくありません。

それでも相続人全員が揃わない、という場合はあります。
電話やメール、郵便などで連絡を取っても返事がない相続人がいる場合、遺産分割協議を開くことができません。そのようなケースでは、「不在者財産管理人」を選任し、本人に代わって遺産分割協議に参加してもらうという方法があります。この時点で、遺産分割調停も選択肢の一つとなります。

②遺産分割協議で合意を得られない

遺産分割協議の内容に反対し続ける相続人がいるなど、遺産分割協議を重ねても全員の合意が得られない場合、遺産分割調停に移ることを検討しましょう。

遺産分割調停のメリット

遺産分割調停を開く主なメリットは次の2点です。

  1. 相続人全員が冷静に対応できる
  2. 法的に公平な形で分割しやすい

それぞれ具体的には次のとおりです。

①相続人全員が冷静に対応できる

遺産分割調停では、家庭裁判所の審判官と二人以上の調停委員という中立な第三者を介して話し合いが行われます。当事者同士は直接顔を合わせることなく話し合いが進むため、対立する相続人であっても冷静な判断ができる場合が多いようです。高圧的な相続人の意見が通ってしまうというようなことも防げます。

②法的に公平な形で分割しやすい

家庭裁判所の審判官と二人以上の調停委員が、法律の観点から的確なアドバイスをしてくれます。調停委員は紛争解決などの実績がある有識者で構成されており、相続人だけで協議するよりも、公平な解決策が導き出される場合が多いようです。相続人全員が納得できるポイントが見つかるかもしれません。

遺産分割調停のデメリット

遺産分割調停にはデメリットもあります。主なものとしては次の3点です。

  1. 平日に集まる必要がある 
  2. すべての相続人が合意しなければ成立しない
  3. 手間と時間がかかる

次の記事で詳しく説明します。

①平日に集まる必要がある

遺産分割調停が開かれるのは、平日の日中だけです。平日に仕事のある人は、その時間に仕事を休んで家庭裁判所に行く必要があります。

②すべての相続人が合意しなければ成立しない

遺産分割調停も、成立するためには相続人全員の合意が必要です。自分が正しいと思っていても意見が通らないことはありますし、いくら調停委員が公平なアドバイスをしたとしても、一切譲歩しないという人もいるでしょう。

③手間と時間がかかる

遺産分割調停の申立てには、多くの書類を用意する必要があります。
遺産分割調停は1カ月に1回程度の間隔で開かれ、合意までには少なくとも4〜5回は話し合いを行わなければなりません。相続財産をどう分割するか決着するまでの審理期間は平均すると1年弱ですが、長期化すると2年以上続くこともあります。

遺産分割調停の手順・流れ

遺産分割調停は次のような手順で進んでいきます。

家庭裁判所へ遺産分割調停の申立て
    ▼
調停期日に出頭
    ▼
相続人全員の合意を得れば成立 ⇒ 相続手続き
    ▼
不成立の場合、遺産分割審判の手続きに移行

それぞれの手順について確認していきましょう。

遺産分割調停の申立て

相続人のうち、一人もしくは複数人が申立人となって、ほかの相続人を相手方として家庭裁判所に申立てを行います。

申立てに必要な書類

  • 遺産分割調停申立書

申立書と書式の記入例は、裁判所HPからダウンロードできます。

参考:裁判所ホームページ『遺産分割調停の申立書』

  • 遺産目録
  • 当事者目録
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍附票
  • 遺産に関連する資料など

費用

被相続人一人につき収入印紙1200円と郵便切手

調停期日に出頭

調停申立書が受理されると相手方に送達されることになります。家庭裁判所から調停を行う日(期日)が指定されるので、指定された日時に家庭裁判所へ出頭します。調停委員と遺産分割について話し合い、申立人の主張は調停員を介して相手方へ伝えられます。相手方の主張も同様です。

不成立ならば遺産分割審判を行う

相続人全員が遺産分割に合意すれば、遺産分割調停が成立します。一方、何度話し合いを続けても相続人全員の合意が得られなければ調停は不成立となり、遺産分割審判の手続きに移行します。

「審判」とは、当事者の主張・提出された書類に基づいて審判官が遺産分割の方法を決定することです。審判官は、財産の種類や各相続人の主張と根拠、事情などを確認したうえで、法律的に妥当と判断される分割方法を決定します。審判が終われば、その判断に従って、強制的に遺産分割することになります。

審判結果に納得がいかない場合は、2週間以内に不服申立てを行うことで、高等裁判所での判断を仰ぐことになります。

遺産分割調停を有利に進める方法

遺産分割調停を有利に進めるには、次の点に注意が必要です。

  1. 自分の主張を誠実に伝え、無理な主張は繰り返さない
  2. 挑発的な態度は控え、嘘をつかない
  3. 協議内容を事前にリストアップしておく

以下で説明していきたいと思います。

①自分の主張を誠実に伝え、無理な主張は繰り返さない

お金の絡む希望でも恥ずかしがらず、自分の主張をしっかり伝えましょう。ただし無理な主張を繰り返すと、調停委員の印象が悪くなるので注意が必要です。

調停委員は中立かつ公平な立場ではありますが、よく何を求めているかわからない、自分の都合ばかりで人の話を聞かない、というような態度では調整のしようもありません。調停委員に悪い印象を与えないことが自分の主張を通す近道です。

②挑発的な態度を取らない、嘘をつかない

精神的に追いつめられていたとしても、攻撃的になったり、挑発的な態度を取ったりしないようにしましょう。
調停を有利に進めたいばかりに嘘をついてしまうと、後々辻褄が合わなくなって嘘だと判明し、調停委員や裁判官の印象に影響を与えかねません。
柔軟な態度で調停委員の話をよく聞き、協力的な態度で調停に臨んでください。

③協議内容と必要情報を事前にリストアップしておく

調停委員や裁判官の前でうまく話す自信のない申立人は、伝えたい内容や協議内容を事前にリストアップしておくとスムーズに受け答えができます。法的な根拠をもって調停に当たったほうが有利に進む場合もあるので、事前に調べておくとよいでしょう。
場合によっては弁護士や税理士などの専門家に相談しておくと、調停委員に自らの伝えたいことをはっきりと届ける助けになります。

遺産分割調停は一人でもできる

調停というと非常に敷居が高いように感じるかもしれませんが、遺産分割調停は一人で挑んでも問題ありません。弁護士に依頼する費用がかからないため、費用を安く抑えることが可能です。
ただし、一人で非常に多くの書類を用意しなければならず、手間と時間がかかることに。忙しい人にはあまりおすすめできません。
また、相手の言い分が法的に妥当か、合意すると有利になるのか不利になるのかなど、客観的な判断が必要な場面では弁護士から意見をもらえたほうが心強いのは間違いありません。

遺産分割調停中の相続税申告はどうする?

遺産分割と遺産分割協議には期間制限がありません。相続が始まってから1年後、5年後でも手続きは可能です。ただし、その一方で相続税の申告・納税には「被相続人が亡くなった日から10カ月」という期限があります。そこを過ぎてしまうと、税額を減らす特例などが使えなくなる場合も。遺産分割調停中に相続税の申告をしなければいけない場合、通常の申告以上に注意が必要です。

まず被相続人の財産や相続人への生前贈与、債務などをきちんと把握し、申告が必要かどうかを判断しましょう。
申告が必要なのに調停が長引いてしまい、10カ月の申告期限までに申告が間に合わない時には、「分割見込書」を提出するという方法があります。

この「分割見込書」は、相続人が法定相続分で相続した形の「申告書」と「分割見込書」を作成して申告期限までに提出しておくことで、3年(相続開始からだと3年10カ月)以内に遺産分割協議が終了した段階で更生の請求を行い、特例を適用して多く支払っていた分があれば税金を取り戻すことができます。

相続手続きの期限について詳しく知りたい人は下記もご覧ください。

おわりに:遺産分割調停は有利に進めるポイントを理解してから挑みましょう

何らかの理由で遺産分割協議が設けられない場合や、遺産分割協議で相続人全員の合意が得られない場合は、家庭裁判所に申立てて「遺産分割調停」によって遺産分割を行うことができます。遺産分割調停にはメリットとデメリットがあるので、よく理解したうえで家庭裁判所へ申立てましょう。
とくに、解決までには1~2年の時間がかかるということは念頭に置いておいてください。また、それだけ時間をかけても、絶対に分割方法の合意に至るとも限りません。

調停に臨む場合は、しっかり調停委員の話を聞き、誠実な態度で話し合いに臨むことが自身の希望に近い結果を得ることの近道です。
遺産分割調停は一人で進められますが、法的知識があるほうが有利になる場面もあります。また、時間がない人や自身の主張の仕方に不安があるようであれば、弁護士や司法書士に依頼することも検討してみてください。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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