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相続の知識

相続した不動産の売却を解説|手続きの流れ・税金・特例・注意点

相続した不動産を売却するには多くの手順を踏む必要があり、法律や税制に関する専門用語への理解も求められます。そこでこの記事では、相続した不動産を売却する際の手続きの流れや、発生する税金の種類、節税に利用できる特例などを解説します。

【相続した不動産の売却】手続きの流れ

不動産の相続から売却を完了するまでには、以下のような手続きが必要です。

  • 遺言の有無を確認する
  • 必要に応じて遺産分割協議を行う
  • 相続税を納付する
  • 相続登記を行う
  • 不動産を売却する
  • 売却益が出たら確定申告をする

ここでは、不動産の相続から売却・確定申告などの手続きを流れに沿って解説します。

遺言の有無を確認する

不動産を所有する親族(以下被相続人と記述)が亡くなった場合、まず遺言書があるかどうかを確認してください。法的に有効な遺言書が存在していれば、相続や遺産分割は遺言書に沿って行うことになります。一方、遺言書がない場合や、遺言書があっても法的に有効ではない場合、法定相続人が集まって遺産分割協議を行う必要があります。

無効な遺言書の例としては、遺言書を書いた日付がない場合や被相続人の署名や押印がない場合、相続する物件や預貯金の指定が不明瞭な場合や被相続人が認知症などで判断能力をなくした状態で誰かに内容を強要された場合などです。
そのため、遺言書が見つかっても、有効かどうかをしっかり確認することが重要です。自筆証書遺言の場合は、開封前に検認手続きが必要になりますので注意しましょう。

必要に応じて遺産分割協議を行う

遺言書がなかった場合や、遺言書があっても法的に無効だった場合、法定相続人による遺産分割協議を行う必要があります。法定相続人とは、主に被相続人の配偶者や子ども、親や祖父母、兄弟姉妹などです。
遺産分割協議を行うには、まずどのような種類の財産が、どのくらいあるかを確認しておくことが必要です。また、法定相続人全員の合意がなければ遺産の分割は実施できません。
遺産分割協議で決まった内容は協議書として内容を明確にし、法定相続人全員の署名と押印がある状態にしてください。ただし、法定相続人が遠方に住んでいる場合などは、郵送で署名や押印を取る方法もあるので、必ずしも全員が同時に集まる必要はありません。

相続税を納付する

相続した遺産の総額が、相続税の基礎控除額を超えた場合、相続した人は相続税を納める義務が発生します。
相続税の基礎控除額は【3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数】で算出されます。
例えば法定相続人が、被相続人の配偶者と子ども2人なら、基礎控除額は
3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
となります。
そのため、被相続人が残した預貯金や不動産などの遺産の総額が4,800万円を超えていたら相続税を払うことになり、4,800万円以下なら相続税は発生しません。なお、相続税の申告には期限があり、相続発生日(もしくは相続があったことを知った日)の翌日から10カ月以内とされているので、早めに対処することが大切です。

相続登記を行う

遺言書や遺産分割協議によって不動産を相続する人が決まったら、次は相続登記を行う必要があります。相続登記とは、被相続人から相続人へ不動産の名義を変更する手続きです。特に不動産を売却する場合、名義が被相続人のままでは売却手続きができません。
また、2024年4月1日以降は売却をしない場合でも相続登記が義務化されます。不動産の相続から3年以内に登記しなければペナルティが与えられる可能性もあるため、相続登記の手続きは非常に重要です。

相続登記の義務化の内容について、詳しくは以下もご覧ください。

不動産を売却する

相続した不動産を売却する方法としては、以下の3種類が代表的です。

  • 個人で親戚や知人に売却する(個人売買)
  • 不動産会社の仲介で売却する
  • 不動産会社に買い取ってもらう

個人売買は不動産会社への手数料支払いがなく、相続人のペースで売却活動ができるメリットがあります。とはいえ、煩雑な手続きをすべて自力で済ませないとならないので、慣れていない方にはおすすめできません。
不動産会社の仲介で売却する方法は、買い手の候補が多いことから比較的希望の価格で売却しやすく、面倒な手続きをプロに一任できるメリットがあります。その一方で、買い取ってもらう方法より売却までの時間がかかりがちです。
不動産会社に買い取ってもらう方法は、交渉相手が不動産会社だけなので売却が早く進みますし、面倒な手続きをプロに一任できるメリットがあります。ただし、金額的には仲介を利用して売却するより低くなりがちです。

売却益が出たら確定申告をする

不動産を売却して利益が出た場合、確定申告をして譲渡所得税を支払う必要があります。
税金の対象となる額は以下の式で算出できます。
【課税対象額 = 不動産売却額 - (取得費 + 譲渡費用)】

ただし、被相続人が住んでいた不動産を売却する場合、最高3,000万円の控除が受けられる場合があります。確定申告の際には、上記のような特例の申告も忘れずに行うことが必要です。なお、特例の詳細については後述します。

また、確定申告の時期は原則2月16日から3月15日で、申告が遅れると附帯税がかかるので、売却が成立したら早めに申告の準備をするようにしましょう。

不動産売却時の確定申告の詳細は以下の記事もご参照ください。

相続した不動産の売却にかかる税金

相続した不動産の売却に当たっては、以下のような税金が発生します。

  • 印紙税
  • 譲渡所得税と住民税
  • 登録免許税

印紙税は売買契約書を作る際に必要です。以下の表を見て必要な印紙を用意してください。

売買契約額 2024年3月31日
まで(円)
2024年4月1日
以降(円)
1万円未満 0 0
1万円を超え10万円以下 200 200
10万円を超え50万円以下 200 400
50万円を超え100万円以下 500 1,000
100万円を超え500万円以下 1,000 2,000
500万円を超え1,000万円以下 5,000 10,000
1,000万円を超え5,000万円以下 10,000 20,000
5,000万円を超え1億円以下 30,000 60,000
1億円を超え5億円以下 60,000 100,000
5億円を超え10億円以下 160,000 200,000

譲渡所得税と住民税は、相続した不動産を売却して発生した利益にかかる税金です。税率が不動産を所有していた期間で変わるので、以下の規則性で納税することになります。

  • 短期譲渡所得(不動産を売買した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合):39.63%
  • 長期譲渡所得(不動産を売買した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合):20.315%

登録免許税は、不動産を売却したか否かに関わらず不動産の名義を変更する際にかかる税金で、相続した不動産の固定資産税評価額 × 0.4%で算出されます。

相続した不動産の売却に使える特例

この項目では、相続した不動産を売却する際に利用できる特例を紹介します。

取得費加算の特例

被相続人から不動産を相続した際に相続税を払っていれば、相続税の額の一部を売却益から差し引くことができます。ただしこの特例を受けるには、売却するのが相続人であること、相続税申告期限の次の日から数えて3年以内に売却したことが条件となります。
取得費加算の特例を利用すれば、売却で発生した課税対象の所得を小さくできるので、確定申告の際に一緒に申告してください。

取得費加算の特例については、以下の記事もご覧ください。

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

被相続人が一人暮らししていた住宅が被相続人の死去によって空き家となり、その不動産を相続して令和9年12月31日までに売却した場合、最高3,000万円までの特別控除を受けられる可能性があります。ただし、令和6年1月1日以後に被相続人から不動産を相続した相続人の人数が3人以上である場合はそれぞれ2,000万円まで(例えば3人の場合は2,000万円x3人=6,000万円)になります。

この特例を受けるには、以下の条件などをすべて満たす必要があります。

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられている自宅で、家屋を除却して土地を売却する、又は必要な耐震改修をして家屋又は家屋とその敷地の土地を売却すること
  • 区分所有建物(マンションなどの部屋ごとに所有者が違う建物)として登記されていないこと
  • 相続直前まで被相続人が一人暮らししていた不動産であること(被相続人が老人ホームなどに入っていた場合は適用可能)
  • 相続の開始から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売ること

この特例を受ける場合も、売却益の確定申告を行う際に一緒に申告してください。なお取得費加算の特例との併用はできません。

参考:国税庁『被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』

相続した不動産を売却するときの注意点

相続した不動産を売るときには、注意すべき点が3つあります。

  • 特例を使う場合は相続から3年以内を目安にする
  • 取得費を明確にしておく
  • 現状のまま売却するかを検討する

それぞれについて詳しく解説します。

特例を使う場合は相続から3年以内を目安にする

取得費加算の特例、あるいは被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例を利用する場合、相続時点から3年以内の売却をおすすめします。これは上記の2つの特例に期限があり、3年以内であれば問題ないためです。
特に空き家に関する特例の場合、築40年以上の物件を扱うことになるので売却までに時間がかかることも予想されるため、早めの行動が重要です。

取得費を明確にしておく

被相続人が亡くなったことで不動産の取得費がわからないというケースがあります。どうしてもわからない場合は、売却額の5%を取得費として控除することが可能ですが、実際の取得費は5%より大きいことが多いので、しっかり調べることが節税につながります。
このため、不動産を相続する可能性がある場合、被相続人となる方に取得額を明確にしてもらっておくと便利です。また、分からない場合でも簡単にあきらめず、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

現状のまま売却するかを検討する

相続した不動産がどうしたら高く、早く売れるかの検討も重要です。
築年数や立地、面積や間取り、デザインや傷み具合などを踏まえて、買い手が多そうならそのまま売れば手間がかかりませんが、建物の魅力が薄ければ更地にして売るという選択もあります。その場合解体費用が発生しますが、そのまま売るとしてもハウスクリーニングなどの費用は必要です。

おわりに:相続不動産の売却では税金面の事前考慮がおすすめ

多くの場合、建物は時間の経過とともに価値が下がる傾向があり、節税に役立つ特例を受けるにも期限が存在します。そのため、相続した不動産を売却するのであれば、できる限り早く進めることをおすすめします。しかし、相続やそれに伴う不動産売却の手続きにはわかりにくい点が多々あり、税金のことで不安になることがあるかもしれません。

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相続時の不動産活用・贈与について、このような問題点を解決します。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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