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相続の知識

不動産の相続税対策には法人化が有効?メリット・デメリットを解説

不動産の相続税対策には法人化が有効と耳にするものの、具体的にどのようなメリットがあるのかわからない、といった方は少なくないはずです。本記事では、不動産を法人化する方法や得られるメリット・デメリット、押さえておくべき注意点などを解説します。

不動産の法人化をする3つの方法

まず不動産を法人化する方法には、不動産所有方式とサブリース方式、管理委託方式の3つがあります。どの方式を選ぶかによって節税効果が大きく変わるため、特徴を理解したうえで検討を進めましょう。

不動産所有方式

不動産所有方式とは、建物を設立した法人の名義にする方法です。法人名義にすることで不動産は法人の所有となり、家賃収入を法人の売上として計上できるため、節税効果の高い手法です。
当該方式では、法人と入居者が賃貸借契約を交わします。法人は入居者から得た家賃収入を役員報酬として、不動産オーナーやその家族に支払います。
なお、本方式では建物のみ法人名義とするのが一般的です。土地を法人化した場合、譲渡所得税が発生するケースがあるためです。

サブリース方式(一括転貸方式)

サブリースとは一括借り上げを意味します。サブリース方式は、個人で所有する土地や建物を設立した法人によって一括借り上げする方法です。この方式では、物件の転貸を行う法人とオーナーとのあいだで賃貸借契約を交わします。
法人は転貸した入居者から得た収入を、オーナーに保証賃料として支払います。オーナーに支払われる金額は85~90%が相場と言われているため、家賃収入の10~15%ほどが法人の所得です。

管理委託方式

管理委託方式とは、土地や建物などの不動産を個人で所有したまま、管理業務のみを法人に委託する方式です。外部の管理会社へ委託するのではなく、自分で立ち上げた管理会社で自己所有の物件を管理します。
この方式では、オーナーは入居者と賃貸借契約を、自ら立ち上げた法人とは不動産の管理業務委託契約を交わします。オーナーは入居者から得た家賃収入を得て、法人には物件の管理費を支払うことで所得の分散が可能です。

相続税対策における不動産法人化のメリット

不動産の法人化によって得られる、相続税対策におけるメリットがいくつかあります。主なメリットを解説していきます。

財産を分散させられる

不動産を相続する際には、その金額によって相続税が発生します。不動産を含む相続財産の総額が相続税の基礎控除額を超えているケースにおいて、相続税の納税義務が発生するのです。評価額が高額になることが多い不動産においては、その相続税も予想外に高くなり、納税資金不足に陥ることも少なくありません。

しかし、上記はあくまで個人のケースです。法人が有する財産は相続税の対象とならないため、法人化によって財産を分散させることができれば、相続財産額をそもそも基礎控除額内に収められたり、相続税を軽減できたりする可能性が高まります。

また、不動産の法人化は所得税の節税対策にも有効です。所得税の税率は、所得の額に応じて5~45%と変化します。つまり、所得が多ければ多いほどより多くの所得税を納めなければなりません。一方、法人税は税率の上限が23.2%と定められているため、所得によっては大幅な節税が可能です。

役員報酬が生前贈与の代わりになる

相続税対策として、自身が存命のうちに子どもなどへ財産を譲っておこうと考えるケースは珍しくありません。ただし、このような行為は生前贈与となり、基本的には年間110万円を超える金額の贈与には贈与税がかかります。(※暦年贈与課税の場合)
一方、法人を設立して、家族に役員報酬を支払う形をとれば、贈与には該当しません。年間110万円までという上限もないため、役員報酬を生前贈与の代わりにして資産を移転することができます。

相続時の遺産分割をしやすくなる

不動産の相続は物理的に分割が難しいことから不平等が発生しやすく、相続人の間でトラブルとなることもあります。例えば、1軒の戸建てを3人で平等に分けようとすると共有名義にする必要がありますが、実際に住むのはそのうちの1人になって不平等が発生したり、誰かが売却したいと思ったときに残り2人が反対するとできなかったりと、なかなか思うように事が進まないことがあります。

一方、不動産を法人化すると、遺産を株式化できます。1軒の戸建てではなく、300株の株式といった具合に株式化できるため、遺産分割が容易であり、トラブルの回避にもつながります。
また、相続発生後に生じる各種手続きを簡略化できるのもメリットです。個人がアパートなどの物件を所有、運用していたケースでは、相続後に家賃の振込先変更や契約更新など、さまざまな手続きをしなくてはなりません。あらかじめ法人化しておけば、法人名義の口座を利用でき、窓口もすでに存在しているため手続きが容易です。

相続税対策における不動産法人化のデメリット

いくつものメリットがある一方で、デメリットも複数あることを覚えておきましょう。具体的なデメリットの例としては、法人化に費用や手間がかかる、赤字でも納めるべき税金がある、長期所有していた物件を売却する際の税率が高い、の3つが挙げられます。

法人化に費用・手間がかかる

法人化するには登記の手続きをしなくてはなりません。また、登記にはさまざまな書類が必要となり、それらを作成するだけでも相当な手間です。以下、法人化に必要な書類を整理しました。

  • 登記申請書
  • 収入印紙を貼りつけた台紙
  • 登記すべき事項
  • 定款
  • 取締役の就任承諾書
  • 払込証明書
  • 印鑑届書

これらの書類を作成しなければならないばかりか、自身で登記するのなら法務局へも出向かなくてはなりません。司法書士に代行してもらう方法もありますが、その場合は別途費用が発生します。
また、法人へ不動産を譲渡する際には譲渡所得が発生し、所得税負担が大きくなるおそれがあるほか、たとえ社員が自分一人であっても、各種社会保険への加入義務も生じることから金銭的負担が増加します。

赤字でも支払う税金がある

個人事業主の場合、事業で赤字となり課税所得金額が0円であれば、所得税や住民税の納税義務が発生しません。一方、法人は赤字であっても法人住民税を納める必要があります。
法人住民税は、法人が地方自治体に納める地方税です。税額は法人税割と均等割の2方法で算出され、前者は法人税の税額に基づき算出されます。こちらは、法人税の納税義務がない、すなわち赤字の際には発生しません。

一方、均等割は黒字赤字関係なく課税される税金です。均等割は資本金などの額と従業員の数で区分されています。たとえば、資本金などの額が1,000万円以下で、従業員数が50人以下のケースでは、都道府県民税均等割として2万円、市町村民税均等割として5万円がかかり、合計7万円を納税する必要があります。

出典:総務省『法人住民税』

長期所有の不動産売却時の税率が高い

個人の場合、不動産を売却した際の所得税率や住民税率は、物件の所有期間によって決まります。
所有期間が5年以下なら所得税率は30%、復興特別所得税率0.63%、住民税率は9%となり合計39.63%、5年超なら所得税率は15%、復興特別所得税率0.315%、住民税率は5%の合計20.315%です。

一方、法人の場合は所有期間に関係なく、実効税率に基づき税額が算出されます。実効税率とは法定実効税率を指し、法人税の算出に用いられる税率のことです。実効税率の算出は、法人税率や地方法人税率、住民税率、事業税率、特別法人事業税率などを用いて行います。
仮に実効税率が30%なら、個人における長期譲渡所得は20%であるため、法人のほうがより多くの税金を納めなくてはなりません。

法人化する際の注意点

法人化を検討する前に、いくつか覚えておくべき注意点があります。

  • 株主を相続人にする
  • 3年以内は相続税対策になりにくい
  • 法人化のタイミングを見極める

法人化してから後悔しないよう、重要な注意点を押さえておきましょう。

株主を相続人にする

法人化にあたり、株主を子どもなど相続人にすることで、将来的な相続税の減額が可能です。親を株主にした場合、故人となり相続が発生すると所有していた株式が相続財産となってしまい、相続税が課されてしまいます。手間とコストをかけて法人化し、財産を分散した効果が減少してしまうため注意が必要です。

また、相続人を子どもなどにすることで、認知症対策としても有効です。認知症になった場合、これまで通り財産の管理を行うのは容易ではありません。子どもを株主にしておけば、万が一自分が認知症になってしまっても、各種手続きや金銭の管理を任せられます。

3年以内は相続税対策になりにくい

法人が建物を取得してから3年以内は通常の取引価額で評価されるため、自社株の評価額も高まります。自社株の評価額は高ければ高いほど、相続発生時に多額の税金が発生するため注意が必要です。

法人化して建物を取得し、3年以内に相続が発生したとなると、相続税評価額が減額されないため、自身の体調も考慮したうえでの判断が求められます。持病を患っておりいつ重篤な状況に陥るかわからないなど、3年を超えないうちに相続が発生するかもしれないのなら、慎重に検討を進めましょう。

法人化のタイミングを見極める

個人の所得税は累進課税となっており、所得金額に応じて税率が変化します。所得金額が900万円を超えると33%、1,800万円を超えると40%となっているのに対し、法人税率は23.2%(年800万円超の部分)と一律です。

そのため、法人化の目安としては、所得が900~1,000万円を超えたタイミングがよいと考えられます。なお、住民税や所得税の課税対象は不動産運用で得た利益だけでなく、副業で得た収益や給与所得なども含まれます。法人化を検討する際には、不動産所得以外の所得も考慮しつつ考えましょう。

法人化のタイミングを誤ると、節税どころかコスト倒れにもつながりかねません。運用している物件の規模が小さく、所得もそれほど多くないにもかかわらず法人化すると、かえって納める税金が増えるおそれがあります。所得1,000万円超をひとつの目安とし、ほかの所得も考慮しつつ慎重に検討を進めましょう。

おわりに:不動産の法人化は慎重に検討を

相続税対策としての法人化は、相続税や所得税、贈与税の節約につながるだけでなく、遺産分割をしやすくなるメリットもあります。一方、法人化に手間とコストがかかる、赤字でも発生する税金がある、株式を遺産分割して株主が複数になってしまうなど、デメリットがあることも押さえておきましょう。

相続専門の税理士法人レガシィでは、税務部門だけではなく不動産部門を所有しており、相続時の不動産活用や不動産に関わる相続税の生前対策コンサルティングなども実施しています。相続にあたって不動産を法人化するかどうかでお悩みなら、ぜひ一度ご相談ください。

不動産コンサルティング

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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