相続の知識

相続で不動産取得税はかからない!生前贈与など課税対象となるケースや計算方法

不動産取得税は土地や家屋を取得した場合には課されますが、相続によって不動産の所有権を得た場合には原則として課税されません。本記事では、不動産取得税はどのような場合に課されるのか、税額の計算方法、不動産を相続した場合に課される税金について解説します。不動産を相続した、あるいはその予定がある方はぜひ、参考にしてください。

相続では、原則として不動産取得税はかからない

不動産取得税とは文字通り、土地や家屋といった不動産を取得した際に課される税金のことです。取得した人が、取得した不動産の所在地の都道府県に納付する地方税です。

このときの「取得」とは所有権の取得を意味し、有償なのか無償なのかは問われません。つまり、不動産を購入した場合や贈与された場合、さらには家屋などを建築した場合にも不動産取得税が課されます。ただし、相続で取得した場合には、一部の例外を除いて不動産取得税が課されることはありません。以降では、どのような場合に不動産取得税が課されるのかなどについて解説します。

贈与を受けた場合は不動産取得税が必要

相続も贈与も財産が継承される点では同じですが、相続が死亡をもって発生するのに対して、贈与は【贈与者の存命中】に発生する点が異なります。

相続時には「相続税」が、贈与時には「贈与税」が課されます。ただし、不動産の贈与に関しては、贈与税の配偶者控除が設けられており、婚姻期間20年以上である配偶者からの居住用不動産の贈与が2,000万円まで非課税になります。また相続時精算課税制度の適用を受けた場合には、贈与税が最大2,500万円まで非課税になります。ただし制度名の通り、相続時に相続税の課税対象財産に加算して、精算しなければなりません。

不動産の贈与では、こうした制度を利用して贈与税を節税できますが、上述した通り、贈与で土地や家屋を取得した場合には不動産取得税を納付する必要があります。

不動産取得税の課税対象となる3つのケース

不動産の相続では原則として不動産取得税は課されませんが、相続とは別で課税対象となるケースもあります。それが、以下の3つの場合です。

  1. 相続人以外が特定遺贈を受けたとき
  2. 不動産を死因贈与されたとき
  3. 不動産を生前贈与されたとき

1. 相続人以外が特定遺贈を受けたとき

民法では、相続が発生した際の法定相続人の範囲と順番、相続分が定められています。法定相続人とは、被相続人の遺産を相続する権利を持つ人のことです。法定相続人の範囲に含まれるのは、被相続人の配偶者、被相続人の血族(子、親、兄弟など)です。法定相続人が相続で不動産の所有権を得た場合には、前述した通り、不動産取得税を課されることはありません。

ただし、法定相続人ではない第三者が特定遺贈によって不動産を得た場合には、不動産取得税が課されます。まず遺贈とは、被相続人の遺言書によって特定の人に財産を譲ることです。中でも特定遺贈は、特定の財産を指定して譲ることを指します。このとき、遺贈された人は「相続人」ではなく「受遺者」と言います。

特定遺贈であっても、財産の移動する先が法定相続人である場合には、不動産取得税は課されません。また特定遺贈のほかに、財産を特定せず全体の財産割合を指定して譲る「包括遺贈」がありますが、この場合は法定相続人であるか否かにかかわらず、不動産取得税は課されません。

遺贈については、以下の記事もご覧ください。

2. 不動産を死因贈与されたとき

死因贈与とは、被相続人の死亡によって効力が発生する贈与契約です。
たとえば「私が死んだら、この建物をAさんのものとする」といったような内容が該当します。一見、相続と変わらないようにも思えますが、呼称が示す通り、法的には贈与であって相続ではないため、この場合は課税対象となります。

3. 不動産を生前贈与されたとき

生前贈与とは、贈与者が生存しているうちに、所有している財産を別の人に譲ることです。生前贈与には、贈与者の意思を正しく反映して財産の継承を行える、節税効果が期待できる、相続時の分割トラブルを回避できるなどといったメリットがあり、関心を持つ人が増えています。ただし、死因贈与と同様、生前贈与も相続ではなく贈与であることから、不動産取得税が課されます。

なお相続発生前3年以内の贈与は、相続税の課税対象とされるルールがあります。また令和5年度税制改正大綱によって、2024年1月1日以降の贈与より、相続発生前7年以内の贈与に変更されることが決まりました。
生前贈与はこのような注意点も把握したうえで、計画的に実施しましょう。

生前贈与を活用した節税対策については、下記の記事でも解説しています。

不動産取得税の計算方法

不動産取得税の税額は、以下の計算式で算出できます。

【不動産の課税標準額 × 税率】

税率は不動産の種類や用途によって異なり、土地および家屋(住宅)の場合は3%、家屋(住宅以外)は4%です。東京都主税局のサイトには「不動産取得税計算ツール」が用意されており、参考額ではあるものの、不動産取得税額のほか、家屋の特例控除額などを簡単に計算できるようになっています。こうしたサイトなどを利用すれば、およその納税額を知ることができます。

【参考】東京都主税局『不動産取得税計算ツール』

住宅および住宅用土地の取得に対しては、申告することによって不動産取得税の軽減制度の適用を受けられます。たとえば新築家屋を取得した場合の不動産取得税額は、

【(固定資産税評価額-1,200万円)× 3%】

であり、本来、納税すべき額に比べて36万円が軽減されます。評価額が1,200万円未満の不動産の場合は、評価額を限度額として控除され、認定長期優良住宅の場合は控除される額が1,200万円から1,300円になります(※2024年3月31日までの特例)。

軽減制度の適用を受けるには、いくつかの要件を満たす必要があります。新築住宅の場合には、述べ床面積が50 m2以上240 m2以下である必要があります(※一戸建て以外で貸家の場合には40 m2以上240 m2以下)。

不動産を相続した場合にかかる税金

土地や建物を相続した際には、原則として不動産取得税は課されませんが、課される税金があります。それは「相続税」と「登録免許税」です。

相続税

土地や建物などの不動産を相続した場合には相続税が課されます。相続税の税率は法定相続分に応じた取得金額によって変動し、たとえば3,000万円超5,000万円以下の場合は20%、5,000万円超1億円以下の場合は30%などとなっています。ただし、相続税にも法定相続人の数に応じた基礎控除が認められています。計算式は次の通りです。

【3,000万円+法定相続人の数 × 600万円 】

たとえば法定相続人が4人の場合には、総額で5,400万円の基礎控除が認められます。基本的には、相続財産全体から基礎控除額を引いたうえで、相続税を計算する流れになります。

相続税の計算については、以下の記事もご覧ください。

登録免許税

不動産の相続によって課されるもうひとつの税が「登録免許税」です。不動産の名義を被相続人から相続人に変更する相続登記を行う際に課税されます。計算式は次の通りです。

【対象不動産の固定資産税評価額 × 0.4% 】

たとえば評価額が1億円であれば、40万円が課税されます。従来、相続登記の実施に関しては法的な規定はありませんでしたが、民法の改正にともなう不動産登記法の改正によって、令和6年(2024年)4月1日から義務化されることになっています。相続や遺贈によって不動産の所有権を取得したことを認知した日から3年以内に相続登記を行わない場合には、10万円以下の過料が課されることがあります。

登録免許税は、一定の条件に該当すれば免税措置が適用されます。計算方法については、以下の記事をご覧ください

登録免許税が免税になるケース

登録免許税が免税になるのは、以下のケースです。
(1)相続で土地を取得したものの、相続登記をしないうちに相続人が死亡した場合
(2)不動産の価額が100万円以下の土地である場合
免税の適用を受けるためには、申請書に法令の条項を記載する必要があります。ただし、これらの免税は、租税特別措置法による令和7年(2025年)3月31日までの時限措置です。

登録免許税は、一定の条件に該当すれば免税措置が適用されます。計算方法については、以下の記事をご覧ください
【参考】税務署「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について」

おわりに:不動産の相続税については専門家に相談

相続で不動産を取得した場合には、原則として不動産取得税が課されることはありません。ただし、法定相続人以外が特定遺贈を受けたとき、死因贈与されたとき、生前贈与されたときの3つのケースでは不動産取得税が課されます。不動産の所有権をどのように取得したのかで課される税金は異なります。さらに利用できる軽減制度などもあり、わかりづらい点が数多くあります。

相続や贈与などで不動産を取得した場合には、まず専門家に相談することをおすすめします。税理士法人レガシィは、相続専門税理士法人として60年の歴史があり、経験豊富な税理士が多数在籍しております。不動産の相続でお困りごとがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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