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相続の知識

贈与税のかしこい節税対策|贈与税の制度や特例を解説

国税庁では贈与税のことを「個人から財産をもらった時にかかる税金」として位置づけており、たとえ親子間や夫婦間であっても例外なく課税されることになっています。その贈与税は、すべての贈与に課税されるのではなく、税負担が軽くなる制度や特例もさまざまに設けられています。贈与を行う際には、そうした仕組みに対して理解を深め、上手に活用することが欠かせません。場合によっては贈与税をゼロにすることもできるので、贈与を考えている方はぜひチェックしてください。
この記事では贈与税の制度や特例を解説し、かしこい贈与税の節税対策のヒントを提供していきます。

贈与税は受贈者が納める税金

贈与税においては財産を渡す人のことを「贈与者」、渡される人のことを「受贈者」と呼んでいます。このうち贈与税を納める義務がある人は「受贈者」の方です。たとえば親から子に財産が渡されたら、子が贈与税を払うということです。夫から妻への贈与であれば、妻が贈与税を払います。
贈与の目的の1つとして「財産をあらかじめ移転させておくことで相続税の負担を減らす」ということもあり、贈与税の負担が受贈者にかからないようにすることも大切なことになってきます。

贈与税は相続税の補完税

贈与税に対して「家族間(親子や夫婦)でのお金のやりとりなのに、なぜ税金がかかってくるのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。その理由として、贈与税には「相続税を補完する」という役割のあることが挙げられます。
相続税は亡くなった方(被相続人という)の財産を受け継ぐ時にかかってくるものですが、すべての相続で発生するものではありません。一定の額以上になると課せられるもので、それ以外は発生しません。
そうなると、生前の贈与を通して財産の移転をしておけば、誰もが相続税を0円にできることになります。つまり無条件に贈与を許せば、相続税そのものが発生しなくなるというわけです。
相続税には「富の再分配・格差是正」という役割があり、誰もが相続税を払わなくなれば、その役割を果たすことができなくなります。そのために、贈与税が補完的なものとして設けられているのです。

贈与税は相続税よりも税率が重い

贈与税と相続税では、贈与税のほうが税負担がより多くなるように設定されています。たとえば最高税率はともに55%ですが、課税価格には大きな差があります。
相続税の場合、6億円を超える時に最高税率が適用されるのですが、贈与税は4,500万円※を超えた時点で最高税率が課せられます。
※直系尊属からの贈与に適用される特例税率の場合
最低税率にしても税率はともに10%ですが、相続税は1,000万円まで、贈与税は200万円までとなっています。

基礎控除額も差が付けられています。相続税の場合の基礎控除額は【3,000万円+法定相続人の数×600万円】。たとえば妻と子ども二人を相続人としたら【3,000万円+3人×600万円】で4,800万円までが0円となります。一方、贈与税の基礎控除額は毎年110万円です(暦年課税の場合)。
こうして比較すると、生前に財産を移すよりも相続時に財産を移したほうが有利なことがわかります。ただし、相続は一生に1回だけで時期を選べませんが、贈与は時期を選んで何度でもできます。110万円の控除額やこの後にお伝えする特例をうまく活用すれば、効果的な贈与税対策を講じることができます。

贈与税と相続税の比較

  相続税 贈与税
最高税率 55%
(6億円超)
55%
(特例税率は4,500万円、
一般税率は3,000万円超)
最低税率 10%(1,000万円以下) 10%(200万円以下)
基礎控除額 3,000万円+法定相続人の数×600万円 110万円

かしこく贈与税を節税する方法

贈与税には税負担が軽くなる制度や特例がさまざまに設けられています。その仕組みを知り、上手に活用することで贈与税をかしこく節税することができるのです。ここからはそうした制度や特例について解説していくことにしましょう。
お伝えするのは以下の6つです。

  • 生活費・教育費としての贈与
  • 結婚・子育て資金の一括贈与
  • 暦年贈与
  • 贈与税の配偶者控除
  • 相続時精算課税制度
  • 障害者への贈与

生活費・教育費としての贈与

原則として、生活費や教育費など暮らしに必要なお金に贈与税はかかりません。親が子どもの成長を支え、生活の面倒を見るのは当然のことなので、生活費・教育費に課税をするのは妥当なこととはいえないためです。また、夫婦間においても互いに助け合いながら生活をしていくため、生活費への課税は適切ではありません。

ただし、一般的な社会通念とはかけ離れた金額の場合、生活費や教育費として認められない可能性もあります。たとえば、進学や就職などで離れて住む子に対して、月々100万円の生活費を仕送りするといったケースが挙げられます。また、一括して多額の生活費を贈与した場合も、贈与税の対象として税務署からみなされることがあります。
なお、次のような場合にも贈与税の対象となるので気を付けましょう。

  • 不動産や車、株などの有価証券の購入に使う
  • 学資保険など生命保険の保険料に使う
  • 余った生活費を預貯金に回している

結婚・子育て資金の一括贈与

子どもの結婚や子育て(孫)に使うために、一括贈与をするケースも少なくないでしょう。この場合、1,000万円までが非課税となります。ただし、結婚のための資金の非課税枠は300万円までです。対象となるのは、令和5(2023)年3月31日までに20歳以上50歳未満で、両親や祖父母から資金を贈与された人たちです。

この特例を使う場合は、受贈者が金融機関で「結婚・子育て資金口座」を開設しなければなりません。金融機関を経由して税務署に届け出ることになり、贈与された資金の管理はこの口座で行います。必要に応じて引き出せますが、その際には金融機関に結婚・子育て費用の領収書を提出しなければなりません。

<結婚・子育て資金の一括贈与の対象となる方>

  • 受贈者が贈与者の直系卑属(子・孫・ひ孫など)であること
  • 受贈者が20歳〜50歳未満であること

※50歳になった時点や契約が終了した時点で贈与金が残っていた場合には贈与税の課税対象となります。また贈与者が亡くなった時点で贈与金が残っていた場合は相続税の課税対象となります。

 ※ 2023年最新情報 

令和5年度税制改正大綱により、結婚・子育て資金贈与の非課税制度において以下の内容が変更となりました。
● 適用期限が2年延長(2023年3月31日→2025年3月31日)
● 贈与された資金が50歳までに使いきれなかった場合、残額にかかる贈与税の税率は、特例税率 → 一般税率へ変更

暦年贈与

贈与税は原則として1年間(1月1日から12月31日まで)の贈与の合計額に対してかかり、基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に規定の税率と控除額を適用して算出します。これを「暦年課税方式」といいます。つまり、贈与額が110万円を超えない限りは贈与税を支払うこともありません。この贈与の方法が「暦年贈与」です。

通常、贈与は親や祖父母など血のつながりがある人たちや配偶者からのものとなりますが、それ以外の他人から贈与を受けることもあります。その場合は暦年課税方式をとることになります。
なお、贈与があった時は、それが証明できるようにしておくことも大切です。受贈者が管理している口座への振込や「贈与契約書」の作成などが、その証拠となります。

贈与税の配偶者控除

「贈与税の配偶者控除」とは通称「おしどり贈与」と呼ばれるもので、配偶者に対して居住用の不動産、あるいはその購入資金を贈与した場合は2,000万円までが非課税になります。条件は20年以上連れ添った(婚姻関係にある)夫婦であること。法的な関係にない事実婚は対象外となります。

贈与は夫と妻のどちらの配偶者からでもかまいません。贈与を受けた配偶者は翌年3月15日までに、対象となる不動産に暮らす必要があります。なお、この特例を使う際は、非課税枠の適用で贈与税を支払わなくても良い場合であっても、申告が必要となってきます。また、贈与税の基礎控除額110万円をあわせて使うこともできるので、2,110万円までが非課税となります。

相続時精算課税制度

「相続時精算課税」とは2,500万円までの贈与に対して、贈与税がかからない制度です。60歳以上の直系尊属(両親や祖父母など)から20歳以上の子や孫に贈与が行われる際に利用することができます。なお、2,500万円を超えた場合は、超えた分の額に対して一律20%が課せられます。

非課税となる2,500万円までの贈与は、のちに相続が発生した時に相続財産として加算されます。したがって「相続時までの納税の先送り」という言い方ができ、基本的に節税対策にはならないと考えられています。なお、2,500万円を超え贈与税を支払った部分についても、相続発生時には相続財産として加算されますが、支払った贈与税は相続税から控除することができます。

この制度を使うには贈与税の申告が必要です。たとえ2,500万円以下の贈与であっても申告をしてください。また、一度相続時精算課税を選択すると、同じ贈与者からの贈与で暦年課税は使えなくなります。

 【2023年最新情報】相続時精算課税制度の見直し 

2022年12月16日に発表された「令和5年度 税制改正大綱」によって、相続時精算課税制度を選択した場合における制度の内容が以下の通り見直されることが決まりました。

①相続時精算課税の特別控除額2,500万円とは別に、基礎控除110万円が創設
②相続までに贈与財産が災害被害を受けた場合、相続時の財産評価額は再評価となる

適用時期は【令和6年(2024年)1月1日以降】です。


この見直しにより、より多くの人が相続時精算課税制度を活用しやすくなるのではないでしょうか。
詳細は下記の記事をご覧ください。

障害者への贈与

障害者に贈与をする場合には、3,000万円と6,000万円の非課税枠が設定されています。
3,000万円までが非課税となるのは「特別障害者以外の特定障害者」であり、一方6,000万円までが非課税となるのは「特別障害者」です。特別障害者とそれ以外の特定障害者の違いは以下のとおりです。

特別障害者以外の特定障害者

  • 児童相談所や知的障害者更生施設などで知的障害者とされた障害者
  • 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている障害者 など

特別障害者

  • 児童相談所や知的障害者更生施設などで重度の知的障害者とされた障害者
  • 精神障害者保健福祉手帳の障害等級が1級の障害者
  • 身体障害者手帳が1級または2級の障害者 など

この制度を使う場合は信託銀行に資金を信託し、金融機関を経由して税務署に届け出ます。信託口座の資金は受贈者となる障害者の生活費や医療費として定期的に払い出されます。

ほかにも障害をもつ方に対しては、税制面で配慮が行われています。下記国税庁のホームページもご参照ください。

参考:国税庁ホームページ『障害者と税』

おわりに:贈与税の制度や特例について正しい知識を身に付けよう

贈与税は、制度の仕組みや特例を知ることで税負担を大きく軽減させることができます。贈与を検討している方にとって、贈与税に関する理解を深めることは大変重要になってくるわけです。この記事では少しでもそのヒントになるようなものをお伝えいたしました。

もし贈与を進めていくうえで分からないことや難しい点があった場合は、実績の確かな税理士に相談をしてみるのも有効な手段です。専門知識の豊富な税理士は贈与税全般に関してさまざまなアドバイスを提供してくれるだけではなく、各種手続きのサポートから将来の相続を見据えた節税対策まで大いに役立ってくれます。より安心できる贈与税対策を講じたいという方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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