相続の知識

「重畳的債務引受」は負債のある相続で重要!メリット・デメリットを解説

相続財産には、預金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も含まれます。相続財産の一部としてこうした債務を引き受ける時には、「重畳的債務引受」や「免責的債務引受」という方法を使う場合もあります。聞きなじみがなく、よくわからないという人も多いでしょう。
そこで今回は、重畳的債務引受や免責的債務引受について説明しながら、相続財産に負債が含まれているケースの対応も見ていきます。事業承継にも関係するので、そこも含め解説します。

重畳的債務引受とは「第三者が債務者と一緒に債務を引き受けること」

一般的に、債務者が負っている債務を第三者が引き受ける方法には、2種類あります。

1 重畳的債務引受(ちょうじょうてき さいむひきうけ)

債務を引き受ける人(引受人)が、債務者と連帯して同等の債務を負う。「併存的債務引受」とも呼ばれています。

2 免責的債務引受(めんせきてき さいむひきうけ)

引受人が債務を負うことで、債務者の返済義務が免責される。

相続人が複数人いるケースで、一人に債務をまとめたいような場合には、上の2つの債務引受の方法を使うことになります。

重畳的債務引受のポイントは「連帯」

被相続人がもっていた債務は、民法上は相続人が法定相続分どおり承継することになります。遺産の分け方を決める遺産分割協議によって、債務を誰が相続するかも決めることができます。ただし、遺産分割協議で負担者を指定しても、債権者との合意がなければ、意味がありません。
債権者の合意が得られて、債務を法定相続分以外の形で相続する場合、上で述べた「免責的債務引受」か「重畳的債務引受」を選んで契約を結ぶことになります。

「重畳的債務引受」は、引受人と債務者が連帯債務を負う形式の債務の引受方法です。債務者も債務に対する責任は免除されません。
相続でいうと、相続人全員に分配される債務を、一人の相続人が引受人となって引き受けるものの、ほかの相続人の債務も免除されないということになります。

相続において重畳的債務引受が果たす役割

「重畳的債務引受」の契約で、特定の相続人が債務を全て承継した場合でも、ほかの相続人にも連帯義務は残ったままになります。

例えば、A氏が2,000万円の債務を残して死亡した場合、通常妻が1,000万円、長男500万円、次男500万円の割合(法定相続分)で債務を負うことになります。
しかし、長男が妻、次男の債務を重畳的引受した場合、長男は、妻の負担分、次男の負担分についても含め、2000万円を返済することになります。
ただ、妻と次男もそれぞれの負担分を免責されてはいません。長男が支払い能力を失った場合には債務を返済しなければなりません。

また、債権者は妻、次男に対しても支払いを請求できます。

重畳的債務引受で連帯債務者に適用できる「求償権」

重畳的債務引受の契約を締結した場合、「求償権」が生じるか否かについて見ていきます。
「求償権」とは、連帯債務者の中の一人が他の連帯債務者の分まで肩代わりして弁済した場合、肩代わりした人が他の連帯債務者に対して「肩代わりした分の返済」を求めることができる権利です。重畳的債務引受では、債務者と引受人それぞれの負担部分の割合を設定することができます。

重畳的債務引受は、債務の「引受人」と元々の「債務者」が連帯して債務を負担するものですので、求償権が認められます。設定していた負担部分の割合を超えて弁済した場合には、ほかの連帯債務者に求償することができます。

例えば、2,000万円の債務で重畳的債務引受が行われ、それぞれの負担部分を、引受人が60%、債務者(引受人以外の相続人)が40%とした場合において、引受人が2000万円全額を弁済した場合、引受人は負担部分の割合60%(1,200万円)を超えて弁済した「800万円」を他の相続人に求償することができます。
引受人が債務者の負担分も一部支払った場合などは状況によって計算が複雑になりますので、専門家に相談した方が良いでしょう。

重畳的債務引受と免責的債務引受の違い

重畳的債務引受と免責的債務引受はどちらの債務引受とも、債務者が負う債務を第三者が引き受けることを指します。ここでは2つの違いについて説明していきます。

①免責的債務引受では債務が連帯ではなくなる

重畳的債務引受と免責的債務引受の一番の違いは、債務者の債務が免除されるかどうかです。重畳的債務引受では、債務を引き受ける側が債務者と連帯して、同等の債務を負担し、債務者も債務は免除されません。
一方、免責的債務引受では、債務は債務者から引受人に完全に移転し、債務者は債務が免除されます。つまり、免責的債務引受では、引受人が弁済能力を失った際に、債務者に返済の義務はありません。

②契約が有効になるタイミングが異なる

基本的に債務引受は「債権者」「債務者」「引受人」の三者の契約ですが、債務引受の契約方法によって、効力の生じる要件は若干異なります。この場合は三者が契約当事者のため、契約時に効力が生じます。
また、「債務者と引受人の間の契約」の場合、債権者が契約当事者でないため、債権者の承諾を得た時に契約の効力が生じます。この要件については、上記2つの契約方法で同じです。
一方、「債権者と引受人の間の契約」の場合は、両者で要件が違います。

重畳的債務引受:契約時に効力が発生
免責的債務引受:債権者が債務者に通知したタイミングで契約の効力が発生

③免責的債務引受では求償権が発生しない

重畳的債務引受は債務者も債務が免除されないので、債務の引受人が負担部分の割合を超えて債務を弁済した場合は、求償権が発生することになります。債務者に対して求償できます。
一方、免責的債務引受の場合は、引受人だけが債務を追うため、引受人と債務者の間で求償権は発生しません。

重畳的債務引受の特徴

相続財産に借金などの債務が含まれていると、民法上は相続人が法定相続分どおりに負債を相続することになります。つまり全ての相続人が債務者になります。

この場合、遺産分割協議書を作成し、負債の相続人を決めると同時に、重畳的債務引受や免責的債務引受の契約を締結する場合があります。契約が成立すると、特定の相続人が負債を相続したことを主張できるようになります。

重畳的債務引受のメリット

  • 債権者:連帯債務者が増えることで、債務者の資金力不足による貸し倒れのリスクを軽減できる
  • 債務者:引受人との連帯債務となることによって、負担を減らすことができる
  • 引受人:免責的債務引受と違って債務者が免責されるわけではないので、全て負担をしなくて済む。また、設定していた負担部分の割合を超えて弁済した場合は、ほかの債務者に求償することもできる。

重畳的債務引受のデメリット

  • 債権者:基本はない
  • 債務者:基本は連帯債務によるメリットが大きいが、免責摘債務引受と比較すると債務がすべて免責されるわけではないというデメリットがある。
  • 引受人:連帯債務となるため、債務者の負担を一緒に背負うことになる。

免責的債務引受の特徴

遺産分割協議書だけでは債権者に主張できませんが、免責的債務引受の契約を締結すれば、債権者にも主張できるようになります。
免責的債務引受の契約が成立すれば引受人が一切の債務を負担することになるので、仮に引受人が支払えなくなっても、債務者は支払う義務を負いません。債務者にとっては、非常に大きなメリットがあります。

免責的債務引受のメリット

  • 債権者:債務者よりも引受人のほうが明らかに資金力がある場合は、貸し倒れリスクを軽減できる
  • 債務者:引受人の債務となることによって、免責される
  • 引受人:債務者を助けることができる

免責的債務引受のデメリット

  • 債権者:引受人の資金力不足による貸し倒れリスクが増加する
  • 債務者:基本はない
  • 引受人:債務者の負債をすべて負担する必要がある

債務を相続することの注意点

債務引受について見てきましたが、実際に相続財産に負債が含まれている場合は、いくつかの課題や懸念点がでてきます。
相続財産に負債が含まれている場合に考える必要がある項目について見ていきます。

相続における債務の扱いを把握しておく

相続財産に借金など債務がある場合は、民法上、債務は相続人が法定相続分に応じて相続することになり、全ての相続人が債務者になります。債権者は、債務者である各相続人に対して、法定相続分に応じた金額の弁済を求めることができます。

相続放棄を行うことで相続人でなくなった場合は、プラス財産もマイナス財産(債務)も放棄することになりますから、債務の弁済を求められることはありません。
プラス財産よりマイナス財産のほうが多い場合は、相続放棄は有力な選択肢として検討してみるのがよいでしょう。

遺産分割協議書だけでは債権者に主張できない

債務がある場合は、民法上、その債務は相続人が法定相続分に応じて相続することになります。遺産分割協議において相続人が合意すれば、債務も遺産分割を行ったり特定の相続人が全債務を相続したりすることはできますが、そのことを債権者に主張するには、それらをまとめた遺産分割協議書だけでは不十分となり、重畳的債務引受や免責的債務引受の契約をきちんと締結しなければなりません。
債権者は遺産分割協議にかかわらず、法定相続分で返済を求める場合があります。

債務引受の契約では債権者の承諾が必要となる

遺産分割協議書は、相続人の間で遺産をどのように分割するかを取り決めたものなので、これだけでは債権者などの第三者には内容を主張できません。
債権者に主張するには、重畳的債務引受や免責的債務引受の契約を締結することになりますが、契約をすることで「債権者」にとって不利になる場合もあります。そのため、債務引受の契約を締結する場合は、債権者の承諾が必ず必要になります。

おわりに:重畳的債務引受は連帯して債務に対処する方法

重畳的債務引受とは、第三者である引受人が債務者の債務を肩代わりするものということを見てきました。一般家庭で負債があるケースのほか、相続でも用いられることがあります。

債務がある場合は、遺産分割協議書を作成して重畳的債務引受や免責的債務引受の契約を締結する以外に、限定承認を行う、相続放棄を行うなどの選択肢も含めて多角的に検討しないといけません。相続放棄について詳しくは別の記事にもまとめていますので、参考にしてください。

相続は、個々の状況によって望ましい対応がまるで異なってきます。さまざまな方法のなかから最適な選択が行えるように、相続に詳しい税理士にご相談することをお勧めします。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修  天野 隆税理士法人レガシィ 代表

<総監修  天野 隆>税理士法人レガシィ 代表

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