相続の知識

【速報】貸付用不動産の相続税評価が見直しへ:相続専門税理士が解説

この記事の執筆者

天野隆
税理士法人レガシィ代表社員税理士・公認会計士。
株式会社レガシィ代表取締役会長。
宅地建物取引士、CFP。
慶應義塾大学経済学部卒業後、アーサーアンダーセン会計事務所・ヒューストン事務所を経て、現職。

 

 

この記事でわかること
・ 2027年1月から予定されている、貸付用不動産の相続税評価ルール見直しの概要
・「課税時期前5年以内」に取得・新築した貸付用不動産が、どのように評価されるのか 
・新ルールによって相続税評価額や納税資金にどのような影響が出るのか
・不動産小口化商品への影響と、今後注意すべきポイント
・2026年中に検討しておきたい生前贈与・相続時精算課税制度などの対応策

こんな方におすすめ
・賃貸マンション・アパートなどの貸付用不動産を所有している方
・近年、相続税対策を目的に不動産を購入・新築した方
・不動産小口化商品を保有している、または購入を検討している方
・不動産を活用した相続対策・生前贈与を検討している方
・2027年以降の相続税負担がどの程度変わるのか確認しておきたい方

1. 2026年9月公表:賃貸不動産を巡る相続税評価改定の背景とスケジュール

2026年9月18日、国税庁は不動産オーナーや投資家にとって「資産防衛の前提条件」を根底から覆す重要な通達案を公表しました。これは、かねてより税制改正大綱で議論されていた「市場価格と相続税評価額の乖離」を是正するための具体的ルール案です。

 

この案では、賃貸不動産を活用した従来の節税スキームに対する事実上の包囲網であり、相続税評価額への影響という私の視点から見れば、不動産保有戦略の「パラダイムシフト」と表現せざるを得ない変化だと捉えています。

 

制度改正のタイムラインと緊迫感

今回の改定スケジュールは極めてタイトであり、オーナーに残された猶予はほとんどありません。
2026年9月18日: 通達案の公表・パブリックコメント開始
2026年10月18日: パブリックコメント締め切り
2027年1月1日: 新ルールによる相続税・贈与税評価の適用開始

 

「時間的制約」が意味する決断の緊急性

注目すべきは、通達案の公表から施行までわずか3ヶ月半しかないという事実です。現時点の通達案を前提とすれば、2027年1月1日以降に発生する相続または実行される贈与には、例外なく新ルールが適用されます。 この「時間的制約」は、現在不動産を所有している方にとって、「現行ルールで資産を承継できる最後の機会」が刻一刻と失われていることを意味します。

 

戦略的視点に立つならば、2026年12月31日までの行動が、数千万円単位の納税額を左右する極めて重い決断となるでしょう。 次節では、改正の核心である「5年ルール」の具体的な内容と、新たな評価計算式の詳細について踏み込みます。

 

 

 

2. 改定の核心:「課税時期前5年以内」の貸付用不動産に対する取引価格評価

今回の改正がおこなわれると、いわゆる「タワマン節税」に代表される、時価と評価額のギャップを利用した節税メリットがなくなります。当局は、特定の条件下にある物件に対し、従来の「路線価・固定資産税評価額」による評価から、「取引価格(時価)」ベースへとシフトさせます。

 

新評価ルールの構造と「5年」の定義

新ルールは、「相続開始(死亡)または贈与の直前5年以内」に取得、あるいは新築した貸付用不動産を対象とします。単に「取得から5年」ではなく、「課税イベント(死亡・贈与)から遡って5年以内」かどうかがトリガーとなる点に注意が必要です。 評価額の計算式は、以下の通り明確に規定されました。

 

対象資産 新しい評価計算式
土地 取得価額 × 地価変動率 × 80%
家屋 (取得価額 - 減価償却費**[定額法]**) × 80%

 

※「80%」という係数は、実勢価格の変動等を考慮した「評価の余裕(安全余地)」として設定されています。
※例外規定: 収用や交換等による取得については、本ルールの適用除外となります。

 

評価差益の消滅と資金繰りへの激震

これまで、例えば21億円で購入した物件が相続税評価額では4.2億円(約5分の1)に圧縮されるようなケースがありましたが、今後はこの「評価差益」というものが消滅します。 新ルール下では評価額が市場価格の8割程度まで上がるため、想定していた相続税額が数倍に膨らむリスクがあります。

 

これは単なる増税ではなく、当初の納税資金計画が破綻し、手元のキャッシュフローを圧迫、最悪の場合は物件の売却を余儀なくされる「資金繰り危機」を招きかねません。 一般的な賃貸物件以上に甚大な影響が懸念されるのが、節税を主目的として組成されてきた「不動産小口化商品」です。

 

 

 

3. 不動産小口化商品への包囲網:節税スキームの終焉と出口戦略の崩壊

近年、相続税対策の「決定版」として急速に普及した不動産小口化商品は、今回の改正における最大のターゲットと言っても過言ではありません。

 

極端な評価圧縮の無効化

小口化商品の多くは、都心の高額物件を小口化することで「購入額の5分の1」といった極端な圧縮効果をセールスポイントにしてきました。

 

投資リターンの再計算と流動性リスク

ここで強調すべきは、投資リターンの前提崩壊です。
1. 実質利回りの低下: 節税効果込みでシミュレーションされていたトータルリターンが大幅に悪化します。
2. 二次流通市場の冷え込み: 最大の魅力である「節税効果」が消滅すれば、二次マーケットでの需要は激減します。


これは保有者にとって、「売りたくても売れない」あるいは「価格を大幅に下げないと売却できない」という流動性リスク(出口戦略の崩壊)を意味します。 制度の厳格化が避けられない中、2026年中に検討すべき唯一の戦略的対抗策を次節で提示します。

 

 

 

4. 2026年内の戦略的決断:生前贈与と相続時精算課税制度による「評価のロック」

2027年1月の新ルール適用を前に、不動産オーナーにとって2026年末までの期間は、現行の有利な評価額を法的に「固定」できる最初で最後のチャンスです。

 

相続時精算課税制度による「価格のロック」

最も検討に値する具体策は、2026年内における「相続時精算課税制度」を活用した生前贈与です。 この制度の最大の戦略的利点は、「贈与時の評価額」が将来の相続時に持ち戻される価額として確定する点にあります。

 

つまり、2026年12月31日までに贈与を完結させれば、2027年以降に新ルールが施行されたとしても、その物件の評価額は「贈与時の低い評価額」で固定されます。これにより、将来の相続時に新ルールによる高額評価を適用されるリスクを現通達が適用される今のうちに回避(ロック)することが可能になります。

 

「不作為のリスク」:4,500万円の落差

あるケーススタディでは、現行ルールで4.2億円と評価される物件を、2026年内に贈与(相続時精算課税活用)することで、将来の相続税負担を約4,579万円軽減できるという試算結果が出ています。 この4,500万円という数字は、単なる節税額ではなく、「2026年内に動かなかった場合に支払うことになるペナルティ(不作為のコスト)」と捉えるべきです。

 

もちろん、贈与には受贈者の事情や将来の資金計画も絡むため一概には言えませんが、この「税負担の落差」を無視することは、資産防衛の観点から極めて危険です。

 

 

 

5. 制度が変わる前に、現在の相続対策の点検を

今回の見直しは、単に不動産の評価方法が変わるだけではありません。

 

不動産を活用して相続対策を行っている場合には、

・現在の対策をこのまま続けてよいのか
・生前贈与を検討すべきか
・将来の相続税額はどの程度変わるのか
・納税資金は十分に確保できるか
など、資産承継全体を改めて確認することが重要です。

 

税理士法人レガシィでは、相続税の試算から生前贈与、遺言、 不動産を含めた資産承継まで、生前対策をご支援しています。 ぜひ一度ご相談ください。

 

・相続対策や現在の対策を検討したい方:レガシィの生前対策サービスはこちら

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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