非上場株式(自社株)の評価方法見直しへ 変更の影響や今からとるべき対策とは
Tweet2026年8月20日に国税庁の有識者会議で、非上場企業の株式(自社株)にかかる評価の抜本的な見直し案が示され、その評価方法が約60年ぶりに大きく変わる可能性があります。本記事では、その内容と、今とっておくべき対策について解説しています。
この記事の執筆者
天野隆
税理士法人レガシィ代表社員税理士・公認会計士。
株式会社レガシィ代表取締役会長。
宅地建物取引士、CFP。
慶應義塾大学経済学部卒業後、アーサーアンダーセン会計事務所・ヒューストン事務所を経て、現職。
この記事でわかること
・非上場株式(自社株)の評価ルールが見直される背景
・新ルール案で検討されている変更点
・株価や相続税・贈与税への影響が大きい会社の特徴
・新ルールの適用が見込まれる時期
・改正前にとっておきたい対策
こんなかたにおすすめ
・非上場企業のオーナー経営者
・自社株を引き継ぐ予定の後継者
・利益や資産が積み上がり、自社株評価の上昇が心配なかた
・生前贈与や事業承継を検討しているかた
・顧問先の自社株対策を支援する税理士・専門家
目次
新ルール案の大きな3つの変更
新ルール案の柱は、大きく3つあります。
1.「会社規模区分」の廃止
1つ目は、「会社規模区分」を廃止する方向が示されています。現行制度では、総資産価額、従業員数、取引金額などをもとに、評価対象会社を大会社・中会社・小会社に区分します。原則として、大会社は類似業種比準方式、中会社は類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式、小会社は純資産価額方式によって評価します。今回の見直しでは、この会社規模による区分をなくし、規模にかかわらず共通の評価方式を適用する方向で検討が進んでいます。
2.「類似業種比準方式」の廃止
2つ目は、「類似業種比準方式」を廃止する方向が示されています。同業の上場企業の株価と比較する現行方式をやめ、評価対象の会社の実態だけをもとに評価する仕組みに切り替えることが検討されています。会計検査院の指摘を踏まえた見直しといえます。
3.新しい評価方法
3つ目は、新たな原則的評価方式として、簿価純資産を基礎に、過去数年間の平均利益から算定した超過収益を加減する「残余利益方式」の導入が検討されています(株式評価額=簿価純資産±数年分の超過収益の現在価値)。
現行の類似業種比準方式では、配当金額、利益金額、簿価純資産価額の3要素を用いて評価します。利益金額については、直前期1年間の金額または直前期以前2年間の平均額を選択できるため、一時的な役員報酬や役員退職金などによる利益の変動が評価額に影響する余地があると指摘されています。
新たな方式では、過去数年間の平均利益をもとにしつつ、非経常的な損益を修正した「正常利益」を用いる方向が示されており、一時的な損益操作による評価額の圧縮を難しくする狙いがあります。
非上場株式の評価の見直しの背景
非上場株式の評価が見直される背景には、大きく2つの理由があります。
1.類似業種比準方式により評価
1つ目は、会計検査院からの指摘で、現行制度では「類似業種比準方式」という、評価したい会社と同じ業種の上場企業の中から選定された標本会社の平均株価に、利益・配当・純資産の比準要素を比較・考慮して評価額を算定する仕組みが採られています。
ところが、会計検査院の調査では、類似業種比準価額が純資産価額に比べて相当程度低く算定される傾向が確認されています。その結果、会社規模によって評価額に差が生じることの公平性などが問題視されました。
自社株の評価についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
自社株の評価方法は? 評価額を下げる方法をわかりやすく解説
2.評価額圧縮スキームへの対応
2つ目は、評価額圧縮スキームへの対応です。配当を意図的に抑えたり、単年度の利益を調整したりして株式の評価額を抑える手法が広がり、国税庁は、会社規模や利益、株主構成などの操作による評価額圧縮に対応するとともに、会社規模の違いによって生じる評価上の不公平を解消する必要があるとしています。こうした問題を踏まえ、評価体系全体の抜本的な見直しが検討されています。
こうした2つの流れが合わさり、抜本的な評価方法の見直しが検討されています。
影響について
2026年8月20日付の日本経済新聞朝刊では、試算モデルをもとにした株価変化率の比較を報じています。それによると、従業員8人の工事会社は現行比で3.2倍、売上100億円規模の卸売業は1.8倍に評価額が跳ね上がる一方で、従業員7人の塗装業は0.9倍に下がり、従業員1人の事務代行会社にいたっては0.4倍まで下がるということでした。
新方式案では、簿価純資産に加えて、通常期待される利益を上回る「超過収益」が評価に反映されます。そのため、簿価純資産に対して高い収益力を持つ会社は評価額が上昇する可能性がある一方、低収益や赤字の会社に加え、保有資産の簿価が現行方式における相続税評価額を下回る会社などでは、他の条件によっては評価額が下がる可能性もあります。一律の増税・減税ではなく、会社ごとに影響が大きく異なる見直しといえます。
とりわけ、新方式によって評価額が上昇する会社では、将来の相続税・贈与税負担が増える可能性があるため、早めの確認が必要です。
新ルール案の適用時期はいつからか
今後のスケジュールですが、2026年中に有識者会議が最終取りまとめを公表したうえで、2027年度の税制改正大綱に反映される見通しと思われます。その後、2027年中に国税庁の通達が改正され、2028年1月から新ルールが適用される予定とみられています。
ただし現時点(2026年8月31日現在)ではあくまで見通しです。適用時期や経過措置によって対応が変わるため、国税庁の正式発表を継続的に確認する必要があります。
今検討すべき3つの対策
新ルール案の適用まではまだ時間があるように見えますが、対策は早いに越したことはありません。適用時期は現段階(2026年8月31日時点)では決まっていませんが、現行ルールが生きているのは2027年中までと予想されるため、それまでに次の3つの対策をお勧めしたいと思います。
1.評価額試算と生前贈与や株式移転
1つ目は、まずは現行方式と新方式案による評価額を試算することです。その結果を踏まえて、生前贈与、売買、事業承継税制の活用などを比較し、承継の方法や時期を検討します。現行方式による株式移転が有利と判断される場合には、現行ルールが適用されている間に承継を前に進めることも選択肢となります。
2.収益と資産の適正化
2つ目は、収益と資産の適正化です。新ルールでは直近数年間の平均収益力が評価に反映されることになりそうなため、目先の利益だけを考えるのではなく、中長期的にどう収益と資産のバランスを取っていくかを、今のうちから検討しておく必要があります。
新方式案では、一時的な役員報酬や役員退職金などの非経常的な損益を修正し、「正常利益」によって評価する方向が示されています。今後は一時的な損益調整による評価額への影響が限定される可能性があるため、中長期的な収益力と資産構成を踏まえて、株式移転や資本政策を検討することが重要です。
3.納税資金の確保
3つ目は、納税資金の確保です。自社株の評価額が上がれば、将来の相続税負担も重くなります。相続税・贈与税の納税資金や、会社・後継者が株式を取得する場合の資金を、早めに準備しておく必要があります。
いずれの対応策も、実際にどこまで着手すべきかは、会社の規模や業績、株主構成、後継者の状況によって大きく異なります。自社がどのパターンに近いのか、まずは現行ルールでの評価額と、新ルール案での想定評価額を試算し、影響度合いを把握しておくことが対応の第一歩になります。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表


