相続税対策に不動産が使えるのはなぜ?節税方法や注意点
Tweet!令和8年度税制改正大綱にて、賃貸用不動産の評価見直しが発表されました。詳細は【2026年度税制改正】の項目をご確認ください。
相続税対策には不動産の活用が効果的です。その理由には、相続税を計算する際の評価額の違いなどがあります。この記事では、現金の相続と不動産の相続とでは何が違うのか、不動産相続時の相続税評価額から適用できる特例から、不動産を活用した節税方法、注意点まで解説します。
目次
相続税対策に不動産が使えるのはなぜ?
不動産が相続税対策として活用できるのは、不動産はその時価よりも相続税の計算対象となる「相続税評価額」が低い、特例が使えるなどの理由があるためです。
相続税は、相続財産が多いほど高い税率を適用するため、同じ額の資産を現金や預金で所有しているよりも、相続税の対象財産が時価よりも低く評価される不動産を所有することで、相続税の対象となる財産総額を抑えることができ、結果として相続税額を抑えられます。
不動産は現金より相続税評価額が低い
現金を相続する場合には、相続する金額がそのまま相続税の対象財産となります。一方、不動産の相続時には、まず相続不動産を金額にするといくらになるのかを示す「相続税評価額」を算出しますが、相続税評価額は、土地や建物の時価評価額よりも低くなるため、結果として相続税を節税できることがあります。
相続税評価額は、時価の8割程度です。時価と同額の現金を保有している場合よりも課税対象となる資産額が低く評価されることから、不動産の相続時には、同額の現金を相続する場合と比べて相続税が低くなります。
賃貸はさらに相続税評価額が低い
相続する予定の不動産を賃貸に出している場合、不動産の売却や自宅への改築といった別の目的での利用は困難です。利用方法が制限されることから、賃貸物件の場合にはさらに相続税評価額が減額されます。
自分の土地に賃貸物件を建てて賃貸に出しているケースでは、土地の相続税評価額が【自用地の相続税評価額-( 自用地の相続税評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)】の計算式で計算できます。
建物の場合には、【固定資産税評価額-(固定資産税評価額 × 借家権割合 × 賃貸割合 )】で相続税評価の計算が可能です。なお、借地権割合は国税庁の路線価図の中で対象の土地の路線価とともにアルファベットで示されている部分(A~G)です。借家権割合は一律30%と定められています。また、賃貸割合は入居者がどれだけ入っているかを表す割合です。それぞれの割合が高いほど、相続税評価額は低くなります。
小規模宅地等の特例が使える
小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たしている土地の相続税評価額を最大80%大幅に減額できる制度です。高額な不動産を相続した際に、自宅や事業収入などを手放さなければならない状況に陥ることを防ぐ目的で制定されています。
小規模宅地等の特例は、「被相続人の事業用宅地等」「被相続人等の居住用宅地等」の2種類の用途に該当した場合に適用できる可能性があります。
まず、事業用に使われていた宅地の場合、貸付事業以外の事業用宅地では400平方メートルまで評価額を80%減額可能、貸付事業用の宅地では200平方メートルまで評価額を50%減額可能といったケースがあります。次に、宅地を被相続人が居住用にしていた場合は、制度の適用によって330平方メートルまで80%の評価額減額が可能です。これらの要件に該当していると高い割合で評価額が減額できるため、高い節税効果が見込めます。
小規模宅地等の特例の詳細については、以下の記事をご覧ください。
不動産を活用した相続税対策の節税方法
実際に不動産を活用した主な相続税対策としては、賃貸物件の建築や、借入金での不動産購入、不動産を使用した事業の法人化があります。
所有している土地に賃貸物件を建てる
更地を所有している場合には、土地をそのまま相続するよりも、土地の上にアパートやマンションなどの賃貸物件を建ててから相続したほうが、相続税は節税できます。アパートなどを建築する初期費用はかかるものの、建築費用分もそのまま現金で相続するよりは、建物に組み替えて相続するほうが、節税効果が高まります。加えて、初期費用として借り入れた金額分は、相続財産から差し引ける点もメリットです。
賃貸物件が建てられている土地や建物は、借地権割合や借家権割合により割合分の減額が可能です。土地と建物が一定の要件を満たしている場合には「小規模宅地等の特例」も適用になり、相続税が大幅に減額されます。アパートやマンションの経営は、「小規模宅地等の特例」によって物件の固定資産税が減額されるメリットもあり、長期的に見ても節税効果が高い方法です。
借入金で不動産を購入する
相続税対策の土地活用には、無理のない程度に金銭を借り入れて不動産を購入する方法もあります。不動産購入のための借入金がある場合、その債務分が控除されます。相続財産の総額から借入金の金額が差し引かれるため、相続税評価額が減るわけです。
たとえば、相続税対策のため6,000万円を借り入れて不動産を購入し、不動産の相続税評価額が3,000万円だった場合、購入した不動産以外の相続財産に3,000万円までの債務控除枠の利用が可能です。相続財産に多額の現金も含まれているようなケースでは、無理なく返せる範囲であえて借入をすると、相続財産全体の評価額を下げられて相続税の節税につながります。
ただし、むやみに借金を作ればよいというわけではありませんので、相続専門税理士などの専門家に相談の上、実行するのがおすすめです。
不動産賃貸業の法人化
個人の財産を法人の財産にする方法が、不動産賃貸事業の法人化です。不動産賃貸事業を行なっている場合には、事業の法人化で不動産を法人の財産にすると、高い節税効果が得られます。現金や不動産など、個人が所有する財産が多いほど相続税は高額になるため、個人が株式会社などの法人を設立し、そちらへ財産を移すことで、相続する個人の財産を減らせます。
法人の設立時には、主に相続人が出資者になり、代表取締役や取締役に就任することが重要です。
これには、役員が物件を法人に販売し、売却額は長期間の分割払いにして法人から被相続人に支払われる形式にするなどの方法があります。家賃収入は法人が受け取ったあとに役員報酬の形で相続人が受け取れます。相続財産が法人所有になるため、相続財産を大幅に減少させて相続税を減らせる方法です。
【2026年度税制改正】貸付用不動産の評価方法が見直しへ
2026年度(令和8年度)税制改正では、相続税対策として利用されることが多かった「貸付用不動産」の評価方法が見直されることが発表されました。
これまで、賃貸マンションなどの貸付用不動産は、路線価評価や貸家建付地評価などにより、実際の市場価格よりも低い相続税評価額となるケースが多くありました。一方で、相続直前に不動産を取得して相続税を大幅に圧縮する事例も増えていたことから、評価方法の適正化が進められることになりました。
(4)相続税等の財産評価の適正化
相続税法の時価主義の下、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離の実態を踏まえ、その取引実態等を考慮し、次の見直しを行う。
① 被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
(注)上記の課税時期における通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額によって評価することができることとする。
② 不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産については、その取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
(注)上記の課税時期における通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等、事業者等が把握している適正な売買実例価額又は定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して求めた金額によって評価することができることとする。ただし、これらに該当するものがないと認められる場合には、上記①に準じて評価(取得時期や評価の安全性を考慮)する。
(注)上記の改正は、令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用する。ただし、上記①の改正については、当該改正を通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る。)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む。)には適用しない。
出典引用:令和8年度税制改正大綱(財務省)
見直しのポイント
- 対象:相続・贈与前5年以内に取得または新築した一定の貸付用不動産
- 内容:従来の通達評価額基準ではなく、市場価格を基準とした評価へ見直し
- 適用時期:2027年1月1日以後の相続・贈与から適用予定
今後の相続税対策における注意事項
今回の改正により、取得・新築から5年以内の貸付用不動産については、従来ほど大きな節税メリットを得られない可能性があります。
特に、相続直前の一棟マンション購入や借入を利用した短期的な相続税圧縮、タワーマンションを活用した節税などは、今後影響を受ける可能性が高いため、今後は長期保有を前提とした運用や賃貸経営としての収益性、相続後の管理・出口戦略まで含めた総合的な生前の不動産活用対策が重要になると思われます。
すでに実施しているご自身の対策で不安な点があれば、ぜひ信頼できる税理士等の専門家にアドバイスを仰いでみてください。
税理士法人レガシィとしての見解と対策については、以下の税制改正ページ「08 相続税等の財産評価の適正化」もご覧ください。
相続税対策で不動産賃貸業を法人化するときのポイント
相続税対策で不動産賃貸業を法人化する場合、法人の資本金を1,000万円未満にする、相続人を株主にするなどのポイントを押さえることが重要です。
資本金を1,000万円未満にする
相続税対策のため不動産賃貸業を法人化する場合には、設立する法人の資本金に注意が必要です。
資本金が1,000万円未満の場合、1年の課税売上高が1,000万円未満であれば、そもそも消費税の納税義務が発生しません。また、課税売上高が1,000万円を超えていても、法人設立から2年間は消費税の納税が免除されます。
ところが、資本金が1,000万円以上ある場合には、課税売上高がいくらであろうとも、設立した年度から消費税を納税しなければなりません。したがって消費税の節税のためには、設立の際の資本金を1,000万円未満に設定する必要があります。
相続人を株主にする
相続税対策が目的の法人化では、土地を所有している被相続人本人ではなく、相続人が株主になる必要もあります。土地の所有者が株主になると、土地が法人の所有になっても株式が手元に残り、相続時に株式の相続が生じるからです。
相続税額を減らすには相続財産を減少させなければなりません。株式を相続する場合には、高額な相続税額が発生するリスクもあります。相続税対策としては、各相続人に出資をしてもらい、相続人が株主になる法人を設立することがポイントです。
相続人を役員にしておく
設立した法人の役員は、相続人や相続人の家族にしておくこともポイントです。相続人が役員になっていると、法人の売上になったあとの家賃収入を役員報酬として分配できます。
被相続人が一人で家賃収入を受け取っている状態では、家賃収入によって被相続人の納税する所得税が高額になり、相続予定の財産も増加してしまいます。
また、相続人が家賃収入を法人から受け取れる状態になっていると、相続ではなく役員報酬の形で、不動産以外の財産の分配も可能です。なお、相続人全員を役員に就任させておくと財産の分配を平等に行えますが、学生や未成年を役員にした場合、実際に仕事をしていると税務署から判断されず節税対策にならないおそれもあり、注意を要します。
不動産を使った相続税対策における注意点
不動産を使用した相続税対策では、相続対策に使用した不動産の売却時期、賃貸経営でかかるランニングコストなど、ほかの支出が発生してしまうケースに注意が必要です。
相続対策の不動産を3年以内で売却しない
相続時に不動産を使って相続税対策をした場合には、相続税申告後3年以内に不動産を売却すると税務調査で問題視されるケースがあります。相続税対策のためだけの不動産活用だと税務署から判断されると、相続税の節税につながる控除などの適用は認められません。2018年4月以降に貸付を開始した宅地の場合には、貸付から相続までに3年以上の期間がないと「小規模宅地等の特例」が適用されないとされています。
税務調査は過去3年間を遡って実施されるため、相続税を申告してから3年以内に税務調査が入った場合、その時点で相続した物件を売却していると、税務署から「相続税対策」をしていたと判断されかねません。その結果、小規模宅地等の特例による控除が行えなくなり、相続税額が高額になってしまいます。相続税対策を疑われないためには、相続した不動産を申告後3年以上保有してから売却するなど、売却のタイミングに気をつけることが重要です。
ランニングコストを考える
賃貸物件は、長期間保有することを考慮して、ランニングコストにも注意しなければなりません。アパートやマンション経営では、物件の維持管理に費用がかかります。空室が出たり、家賃の滞納、自然災害などが発生したりすると家賃収入が減少します。
また、借入金で賃貸物件を購入した場合には、返済中に借入金の金利が上がり、予定よりランニングコストが増える可能性もある点を考慮しておかなければなりません。賃貸経営にコストがかかりすぎないかなどをよく検討して相続対策に取り入れることが重要です。
おわりに:不動産での相続税対策は専門家に相談するのがおすすめ
相続の際には、現金よりも不動産として相続したほうが、相続税の対象となる財産額を抑えられるメリットがあります。不動産の相続税評価額は時価よりも低く、相続時には控除や特例などが利用できることから、不動産での相続は効果的な節税を生み出せる可能性が高いです。
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<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
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