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相続の知識

相続による事業承継のリスクとは?相続時のトラブル事例や事前対策

事業承継を相続で進めるケースでは、自社株の分散や高額な相続税の発生など、さまざまなトラブルが発生しがちです。後継者が安心して事業を引き継ぐには、適切な事前対策が求められます。本記事では、後継者が事業承継を相続で進める場合のトラブル事例や、具体的な事前対策などについて解説します。

事業承継とは

事業承継とは、企業のオーナー社長が組織や事業を後継者へ引き継ぐ行為です。組織の経営権を引き継ぐだけに留まらず、これまで培ってきたノウハウやネットワーク、顧客情報といった知的資産、株式や不動産、運転資金などの資産も承継します。

事業承継の代表的な手法は、親族内事業承継と社内事業承継、M&Aを利用した第三者への承継です。親族内事業承継は、自社の従業員や取引先など関係者に受け入れられやすいこと、後継者を育成する期間を確保しやすいことがメリットです。一方、親族のなかに組織を引き継げる能力、適性を有する人材がいない、といった状況に直面するケースもあります。

相続による事業承継時でよくある3つのトラブル事例

相続による事業承継でありがちなトラブルとして、高額な相続税の発生が挙げられます。また、株式の分散によって経営が難しくなる、分散した株式を買い取りたくても評価額が高すぎて買い取りができない、といったトラブルも起こり得ます。それぞれのトラブル事例を見てみましょう。

1. 株式評価が高く相続税が高額となってしまった

オーナー社長の死亡に伴う事業承継では、自社株が相続財産として扱われるため、相続税の課税対象です。上場株式なら、取引相場に基づく株価評価ができますが、非上場企業の自社株は国税庁が策定している「財産評価基本通達」に沿って株式を評価するのが一般的です。

企業組織として順風満帆な組織運営を行い、業績の向上と資産増加に伴い、自社株の価値は高まります。業績がよい企業ほど株式評価が高くなり、結果的に相続税が高額になる問題が発生します。

適切な自社株対策を行っていないと、多額の相続税を納付できないおそれがあるため注意が必要です。運転資金や設備資金などの資金に手をつけなくてはならず、その後の組織運営に悪影響を及ぼしかねません。

2. 株式が分散し経営が困難になってしまった

オーナー社長が遺言書を遺さず、誰に経営権を譲るのかを明言しない、あるいはできないまま亡くなったケースでは、株式の分散問題が発生しがちです。オーナー社長の妻や子どもなど、複数の法定相続人が発生するケースにおいては、株式が分散し経営が難しくなる状況が起こり得ます。

自社株には、会社の方針などを決める議決権、支配権の機能を有します。そのため、後継者である長男が経営権を引き継いだとしても、次男に法的割合で株式が渡ってしまうと、次男も会社の支配権や拒否権を有してしまうため、組織運営に何かしらの影響を与えかねません。

このケースでは、組織にとって重要な決定を長男が下そうとしても、次男から拒否権が発動されてしまうかもしれません。その結果、長男は自由に事業の方向転換などを行えず、組織の業績が悪化するおそれがあります。

3. 株式評価が高く株の買い取りが難しくなってしまった

自社株が分散した場合、改めて買い取りする手法が挙げられます。たとえば、次男に渡った株式を後継者である長男が買い取ることで、長男は組織の確固たる支配権を手に入れられます。

しかし業績がよく純資産も豊富で、株式評価が高くなってしまった場合、買い取りしたくても資金が足りずにできないといった問題が発生します。分散した株式を、後継者個人ではなく法人として買い取る場合も同様です。

オーナー社長に必要な事業承継における7つの事前対策

事業承継でさまざまなトラブルが発生する場合に備え、適切な事前対策を進めておくことが大切です。対策を施すことで、高額な相続税の発生や自社株の分散による事業への悪影響などを回避できます。

1. 自社株の評価を事前に算定する

自社株の株価を算出することで、相続にどの程度の影響があるのかを把握できます。非上場株式の株価は、以下の3つの方法で算出します。

①純資産価額方式
②類似業種比準方式
③配当還元方式

基本的には、①純資産価額方式と②類似業種比準方式のどちらか、もしくは併用して算出するのが一般的です。
純資産価額方式は、会社が解散したときに株主がどれくらいの金額を受けとれるのかを計算する方法です。類似業種比準方式は、自社に事業内容が類似する上場会社の株価および資産状況を参考に、株式の評価を行う方法です。

ただ算出に関しては非常に複雑な計算が必要になりますので、自社の顧問税理士や事業承継に詳しい相続(資産税)専門の税理士に相談をするのがおすすめです。株式以外にも、どのぐらいの資産があり相続の対象となるのかを確認しておくと、スムーズな事業継続に役立ちます。

自社株(非上場株)を含めた株の相続税評価については、以下の記事も参考にご覧ください。

2. 自社株の評価額を低下させる

自社株の評価額が高すぎる場合、相続税や贈与税の金額が高くなるため、後継者が多大な金銭的負担を負うリスクがあります。このようなリスクを回避するには、自社株の評価額を下げる方法を検討してみましょう。相続財産を占める株式価値の割合を下げることによって、評価額を下げられます。

代表的な方法のひとつが、先代経営者や役員への退職金支払いです。退職金の支払いによって、組織が保有する資産を減らせるため、株式の評価額を下げられます。

役員報酬を引き上げるのも有効な手法です。ただ、役員報酬が会社や事業の規模に見あわないなど、適正と判断されないおそれもあるため注意が必要です。ほかにも、配当金を引き下げる、不動産を購入する、大幅な設備投資を行う、不良債権を処分するなどの方法も有効です。

3. 遺産分割のバランスを検討する

自社株も遺産に含めて相続するのなら、誰に何をどの程度遺すのかを検討しておかないと、のちのちトラブルの種となりかねません。遺産分割のバランスに問題があると、自社株が複数の相続人へ分散してしまい、経営の不安定化を招きます。

後継者が安心して事業を引き継げるよう、自社株が分散しないよう配慮するのが基本です。株主総会で後継者が支配権を発揮できるよう、後継者へは3分の2以上の株式を承継しましょう。

後継者へすべての自社株を相続したいのなら、遺産分割で親族がトラブルにならないよう、配慮しておくことも大切です。後継者の長男が自社株をすべて取得し、なおかつほかの資産まで多く相続するとなると、ほかの相続人から不満が噴出しトラブルに発展しかねません。

4. 相続税の納税財源を確認する

高額な相続税が発生し、納税ができないとならないよう、財源の確認をしておきましょう。自社株の株価を算出したうえで、相続する親族に支払い能力があるかどうかを確認します。
後継者が自社株を相続して会社を引き継ぐ場合、ほかの相続人が、故人の不動産や預貯金などの金融資産を相続するケースも多くあります。そのため、現金や預貯金を相続できなかった後継者が納税財源不足に陥り、納税が難しくなるケースも珍しくありません。

5. 家族・親族の資産状況によっては贈与なども検討する

株式の生前贈与によって相続財産を減らすことができるため、相続税対策として有効です。生前のオーナー社長が、後継者に対し贈与税が発生しない範囲で自社株を贈与していく方法です。

ただし、株式を含む財産の贈与は、贈与税の課税対象となるケースがあるため注意しましょう。
具体的には、年間に110万円を超えた贈与が発生すると課税の対象です。贈与税が発生した結果、後継者の負担がより大きくなるリスクも考えられるため、事前の入念なシミュレーションと計画的な贈与を心がけましょう。

また、贈与を受けないほかの相続人が不満を抱くリスクにも注意が必要です。生前から、スムーズな事業承継と相続税対策のためであると相続人たちへ丁寧に説明しておくと、こうしたトラブルの発生を抑制できます。

6. 事業承継税制について把握しておく

事業承継税制とは、事業承継によって発生する税負担を軽減できる制度です。事業承継に伴う多額の相続税、贈与税の発生によって企業の経営が圧迫されるリスクを軽減するため、2009年の税制改正に伴い創設されました。
中小企業や非上場企業は相続税や贈与税の納税猶予を受けられるほか、納付免除も可能です。
2018年にはさらなる税制改正によって要件が緩和されたため、より利用しやすくなっています。

ただし、当該制度を利用するには一定の条件を満たさなくてはなりません。先代経営者や後継者、会社がそれぞれ満たすべき厳格な条件が定められており、相続税と贈与税でも要件が異なります。都道府県知事の認定を受けなくてはならない、複雑な承認手続きをしなくてはならないなど大変なことも多いため、利用する際は専門家へ相談したうえで検討を進めましょう。

7. 公正証書遺言を作成しておく

公正証書遺言とは、公証役場の公証人によって作成された遺言書です。作成に費用が発生するものの、2名の証人が立ち会いのもと作成し、公証役場で丁寧に保管されるため、高い遺言能力を発揮します。

遺産の分割方法や自社株の扱い、相続の方針などを公正証書遺言として遺すことによって、相続人たちによるトラブルの発生を抑制できる点がメリットです。また、自筆証書遺言の場合、形式の不備で内容が無効と判断されるケースがありますが、公正証書遺言ではそのようなリスクを回避できます。

なお、公正証書遺言の作成に立ち会う証人は誰でもなれるわけではありません。民法で定められた証人以外の人が証人になってしまうと、遺言書も無効になるため注意が必要です。また、公正証書遺言作成には、遺言者の実印や印鑑登録証明書、証人の確認資料など数多くの文書を要するため、専門家への相談のもと進めることをおすすめします。

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おわりに:事業承継のトラブル回避には事前対策が必須

高額な相続税の発生や株式の分散など、事業承継ではトラブルが発生しがちです。専門家のアドバイスのもと、事前に適切な対策に取り組むことで、スムーズな事業承継を実現できます。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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