姻族関係終了届とは? いつ・どんなときに・誰が行う届出なのかを解説
Tweet配偶者の死後、その両親(義理の父母)や兄弟姉妹(義理の兄弟姉妹)などの親族との関係を法律的に解消するための届出を「姻族関係終了届」といいます。姑や舅など配偶者の血族との縁を切りたい時に提出します。この項目では、この姻族関係終了届がなぜ必要か、提出方法などについて詳しく説明します。
目次
姻族関係終了届とは?
姻族関係終了届は、夫婦のどちらかが死亡したあと、生存している側が配偶者の血族(配偶者の両親、祖父母、兄弟姉妹、従兄弟姉妹など)との関係を終了させるために役所に提出する届のことです。 姻族関係終了届が役所に受理されて姻族関係が終了すると、たとえば義理の父母の扶養義務がなくなるなどの変化があります。「死後離婚」とも呼ばれています。
まず、姻族関係終了届を理解するための要点を見ていきましょう。
姻族関係終了届の要点
姻族関係終了届の要点は以下の通りです。- 本人の意思決定によるものであり、姻族の了解は必要ない
- 本人の本籍地もしくは住居地の市区町村に「姻族関係終了届」を提出するだけで手続は終了
- 配偶者の死亡後なら、提出期限はなく、いつでも提出できる
- 配偶者の遺産を相続していても、相続分を返却する必要はなく、そのまま受け取ることができる
- 姻族関係終了届が受理されれば、配偶者の血族の扶養義務を負うことはない
- 死亡した配偶者との間に子がいる場合、その子どもと配偶者の血族との関係は変わらない
- 姻族関係終了届で姻戚関係を終了した場合、戸籍の身分事項欄に「姻族関係終了」と記載されるが、姓と戸籍はそのまま継続する
- 相続権や遺族年金の受給資格に影響はない
- これによって旧姓に戻る、また戸籍から抜けることもない
- 死亡した配偶者の血族が姻族関係終了届を提出することはできない
- 終了させた姻族関係を復活させることはできない
以降でもう少し詳しく見ていきたいと思います。
「姻族」について知っておこう
結婚すると法律上、配偶者との婚姻関係とともに、配偶者の両親や祖父母、兄弟姉妹、従兄弟姉妹、叔父叔母などの血族との姻戚関係が結ばれます。姻族とは、結婚によってつながった親戚関係のことをいいます。俗にいう「義理の父母」「義理の兄弟姉妹」などがこれにあたります。
配偶者と離婚すれば、自動的に配偶者の血族との姻族関係も終了します。
一方、婚姻関係にある配偶者(夫、妻)が死亡した場合、死亡をもって婚姻関係は終了しますが、配偶者の血族との姻戚関係は配偶者が亡くなったあともそのまま継続します。つまり、姻族のままでいることになります。
そのほかの親族関係については、下記もご覧ください。
死後に離婚する目的と効果
姻族関係終了届はどのような目的で行われるのか、どのような効果があるのかを説明します。
姻族関係終了届の目的
配偶者の死後、義父母や義兄弟姉妹との関係を断ち切る目的で実施されます。
実際問題として、普段から嫁姑(舅)問題で頭を悩ませていたり、配偶者の親族と折り合いが悪かったりする人は、精神的な苦痛を味わい続けることになります。親しくしていなくても義父母の介護を命じられたり、お墓をどうするかで義父母ともめたりという事態も見受けられます。配偶者が死亡してしまったら、もうその配偶者の親族とは関わりたくないと思う人もいることでしょう。
こうした煩わしい問題を解決する目的で「姻族関係終了届」が使われています。
姻族関係終了届の効果
1 姻族関係の終了に伴い、扶養義務がなくなる
直系血族(父母、子、祖父母、孫など)と兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があります。
姻族はこれに含まれないので、嫁と亡夫の親(舅・姑)の関係では、原則として扶養義務を負いません。ただし、特別な事情がある場合のみ家庭裁判所が義務を負わせることができるとされています。
特別な事情とは、死亡配偶者の相続時に生存配偶者が死亡配偶者の父母に長期間扶養されていた場合などです。そこで、もし亡夫の父母(舅・姑)の扶養義務を負わされたとしても、姻族関係終了届が受理されれば、扶養義務は発生しなくなります。
2 同居している場合の互助義務が消滅する
民法には、同居の親族は互いに扶け合わなければならないと定められています。そのため、同居する場合、親族という扱いになる配偶者の三親等(曽祖父、曾孫、叔父叔母)以内の血族との間には、姻族関係が続いたままだと互助義務が生じます。これを拒むには、姻族関係終了届の提出が必要です。
3 祭祀承継者をほかの人に代わってもらえる
妻や夫が、死亡した配偶者の家の祭祀承継者になっている場合、姻族関係終了届によって姻族関係を終了させると、死亡配偶者の家の人などに祭祀承継者を引き継ぐことになります。
姻族関係終了届の制度を使える人
この制度を利用できるのは、夫を亡くした妻、または妻を亡くした夫に限られています。事実婚(内縁の妻、内縁の夫)の場合は利用できません。そもそも姻族関係が成立していないからです。
姻族関係終了届を使うタイミングと提出期限
姻族関係終了届を役所に提出するタイミングは、配偶者が死亡し、死亡届が市区町村役場に提出されたあとであればいつでも大丈夫です。
葬儀のあとすぐに提出すると角が立つと考えるなら、一周忌などの機会に提出するとよいでしょう。提出の期限はありません。
姻族関係終了届に必要な準備・書類
姻族関係終了届は、本人の本籍地、または居住地の市区町村役場に提出します。
必要な書類
- 姻族関係終了届 1通
- 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 1通 ※本籍地に提出する場合は不要なことが多い
- 印鑑(認印可)
- 届出の持参者の身分証明書(運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど)
姻族関係終了届の用紙については、市区町村役場(所)やそのホームページから入手してください。
なお、本籍地以外の役所に提出する場合は、届出の書類が2通必要になることがあります。
姻族関係終了を望む本人が持参せず、誰かに頼んでもかまいません。その場合の委任状は不要です。また、郵送で提出することもできます。
姻族関係終了届の制度を使うメリット・デメリット
姻族関係を終了させるメリット、デメリットとしては、次のような点が挙げられます。
メリット
- 義父母との関係がうまくいっていない場合は、精神的な苦痛から逃れることができる
- 扶養を命じられるかもしれない事態や同居の場合の互助義務が消滅する
- 祭祀承継者をほかの親族に引き継いでもらえる
- 子と配偶者の両親との血縁関係は保たれたままとなる
- 亡くなった配偶者の遺産は相続できる
- 遺族年金は受給できる(ただし、再婚して支給の要件を満たさなくなった場合は遺族年金の支給は停止されます)
デメリット
- 亡くなった配偶者の親族を頼ることができなくなる
- 住まいや墓は自分で用意することになる
- 義父母や義兄弟姉妹と顔を合わせる場合に気まずくなる
姻族関係終了届の制度を使うときの注意点
このように、デメリットよりメリットの目立つ姻族関係終了届ですが、終了させた姻族関係を復活させることはできないので、実行する際には冷静な判断が必要です。
姻族に対して連絡がいくわけではないので、届出をしても今までの関係を維持できる場合もあるでしょう。ただし、何かの機会に戸籍を確認されるとバレる恐れがあります。そこからトラブルに発展する可能性も。
事前に説明しておくのか、そこまでして関係の終了が必要なのか、よく考えてから届出をしてください。
とくに注意が必要なのは、亡くなった配偶者の親に子の面倒を見てもらっていたり、義父母から経済的な援助を受けていたりする場合。以降援助を受けられなくなる可能性があり、住まいや収入の確保など経済的な自立が必要となります。
配偶者が亡くなってから時間が経っていない場合は、法事の費用をめぐってトラブルになる可能性もあります。死後すぐに手続きをしてしまうと、配偶者側の血族の心理を荒立てる可能性もあるので注意してください。
また、姻族関係終了届はあくまで姻族関係を解消するためのものです。戸籍や姓には変化がありません。結婚前の姓に戻したい場合は、市区町村役場に「復氏届」を提出する必要があります。復氏届では、結婚前の戸籍に戻るか、新しくつくる戸籍に移ることができます。ただし、妻が復氏届を提出しても、子の姓と戸籍は変わりません。
子を自分の戸籍に入れたい場合は、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出して許可を得て、市区町村役場に「入籍届」を提出する必要があります。
メリットとして姻族関係終了届を提出しても相続を受けることができると説明しました。つまり、亡くなった配偶者が大きな債務を抱えていた場合はそれも併せて相続することになります。それを避けるためには「相続放棄」や「限定承認」が必要です。 相続の方法に関する詳細は、下記の記事もご覧ください。
おわりに:姻族関係終了届の制度は姻族関係を戻すことはできません。使うときは慎重に考えてからがおすすめ
配偶者の両親などとトラブルを抱えている人は少なくないと思います。そうしたトラブルを解決する方法の一つとして、姻族関係終了届の存在はぜひ知っておいてください。
姻族関係終了届は、夫婦のどちらかが死亡したあと、生存している配偶者が配偶者の血族(配偶者の両親、祖父母、兄弟姉妹、従兄弟姉妹など)との縁を切りたい場合に使用します。姻族との互助義務などを解消し、わずらわしい関係を避けられる場合があります。
たとえこの届出をしても、遺産は相続できますし、遺族年金の受け取りも可能です。戸籍の身分事項欄に姻族関係終了と記載されますが、姓と戸籍はそのまま継続します。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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