相続税の申告なら相続専門税理士法人レガシィ【公式】

相続の知識

相続税がかかる財産の額とは?相続税の申告が必要なケースについても解説

相続を控える家庭にとって、いざというとき慌てないように、前もって知っておきたいのは相続税のことでしょう。どれくらいの遺産があると相続税がかかるのか、相続税の基本と計算方法を知っておくと安心です。税額がゼロでも申告が必要なケースもあるので、それも含めてしっかり確認しておきましょう。

相続税とは?

相続とは、亡くなった人(=被相続人)の財産や、それに属する権利・義務などを一定の親族が引き継ぐことです。そして、相続財産が一定額以上ある場合、その財産を引き継いだ人にかかる税金が「相続税」です。

被相続人の財産は国内だけでなく海外にある人もいます。その場合でも、被相続人と相続人のどちらも日本国内に住所がある場合、原則として国内外すべての財産が相続税の課税対象になります。いずれも相続開始前の10年超にわたり国内に住所がない場合などは国内の財産のみが課税対象ですが、これに当てはまる人はごく少数です。

被相続人が海外に不動産や金融資産を所有していた場合も、大半の人はそれらが国内財産と合わせて相続税の課税対象になることを覚えておきましょう。

相続税がかかるのはどんなとき?

相続税がかかるのは、被相続人が一定額以上の財産を所有していた場合です。具体的にいうと、課税対象となる財産を合計した金額から、相続税の基礎控除を差し引いて、残った金額に相続税が課せられます。つまり、相続財産が基礎控除より少なければ、相続税はかかりません。

しかし、法改正により2015年(平成27年)1月から、基礎控除の金額がそれまでより4割引き下げられたため、改正前と比べると相続税の課税対象となる人は2倍くらいになっています。かつては相続税とは無縁だった家庭でも、親が都市部に土地付きの一戸建て住宅を持っているだけで、課税対象になるケースも増えています。

また、被相続人の財産を引き継ぐのは相続人(=法定相続人)であることがほとんどですが、遺言によって相続人以外の人が財産を取得することもあります。これを遺贈といいます。遺贈によって財産を取得した人も、相続税がかかる場合はその取得割合に応じて相続税を納めることが必要になります。

わが家は相続税がかかるのか、申告が必要になるかをあらかじめ確認しておくことは重要です。

相続税の申告が必要なときとは?

相続税の申告が必要になるのは、課税遺産総額が基礎控除の額を超える場合です。

基礎控除の額は、 3000万円+600万円×法定相続人の数 となります。

たとえば、父が亡くなり、法定相続人が配偶者である母と子ども1人なら、上の計算で基礎控除の額は4200万円、同様に母と子ども2人なら合計3人となるため、4800万円になります。

基礎控除の額は法定相続人の数によって異なるため、同じ遺産総額でも法定相続人の数が多くなるほど、相続税の負担は軽くなります。また、同じ家庭でも父母の一方が亡くなる一次相続と、そのあとに子どもだけが引き継ぐ二次相続では基礎控除が異なり、税負担は違ってきます。

一方、相続税には残された家族の生活を守るために「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」という制度があり、基礎控除を超える遺産があっても、これらを適用すると納税額がゼロになる場合もあります。その場合でも、申告だけは必要になります。

相続税の計算方法

相続税の計算は、遺産の総額を把握するところから、1人ひとりの納税額を算出するまで、4つの段階に分けて行います。以下、順に計算方法を説明するので、計算例と合わせて見てください。

<第1段階>最初に「遺産の総額」を把握する

遺産の総額は、相続人などが取得した財産それぞれの価格を合計して求めます。遺産にはさまざまな種類がありますが、その種類ごとに相続税独自の方法で求めた価額を出すことが必要です。預貯金なら相続開始日(通常は被相続人の亡くなった日)の残高ですが、株式や投資信託、土地、建物は財産評価基本通達に記載されたルールに基づき評価額を算出します。

このとき、死亡保険金や死亡退職金がある場合はみなし相続財産になります。それぞれ受け取った金額から「500万円×法定相続人の数」を非課税額として差し引くことができ、これを超える金額を相続財産に加算します。また、相続開始前3年以内に贈与された財産や、相続時精算課税制度を利用して贈与された財産がある場合は、それらも取得した人の財産に加えます。

こうして財産を受け取った人それぞれの課税価額を出してから、全員の課税価格を合計し、課税価格の合計額を計算します。

<第2段階>課税価格の合計額から基礎控除額を引いて、課税遺産総額を求める

遺産の総額がわかったら、そこから基礎控除の額を差し引いて、残った分が相続税を計算する際の課税遺産総額になります。ここからは計算例と一緒に説明します。

計算例/相続人が配偶者と長男、長女で、以下のとおりに財産を相続したと仮定します。

配偶者:自宅の土地・建物 6000万円、預貯金3000万円 合計9000万円
長男:株式と預貯金で合計3000万円
長女: 預貯金3000万円
課税遺産総額=1億5000万円

この場合、基礎控除額は法定相続人3人で4800万円のため、

課税遺産総額は [1億5000万円-4800万円]で計算し、1億200万円になります。

<第3段階>課税遺産総額をもとに、相続税の総額を計算する

課税遺産総額が出たら、それをいったん法定相続割合で分けて、1人当たりの取得額を出します。これは相続税の総額を出すために必要な計算で、実際の遺産の取得額とは関係なく、法定相続割合で、相続人ごとの取得額を出してから、それぞれ右の速算表を利用して算出税額を計算し、全員の算出税額を合計したものが、相続税の総額になります。

計算例/上の続きで計算すると、

1 法定相続割合で分けた1人当たりの取得額は

配偶者 1億200万円×1/2=5100万円
長男 1億200万円×1/4=2550万円
長女 1億200万円×1/4=2550万円

2 各人の取得額に対する算出税額は

配偶者 5100万円×30%-700万円=830万円
長男  2550万円×15%-50万円=332万5000円
長女 2550万円×15%-50万円=332万5000円

3 相続税の総額は

上の3人の算出税額を合計した金額で、1495万円になります。

<第4段階>相続税の総額を按分して各人の納税額を求める

相続税の総額は、実際に遺産を受け取った人が全員で負担すべき金額です。遺産を受け取った人が複数いる場合は、この総額を各自の実際の取得額に応じて按分し、1人ひとりが負担するべき相続税額を出していきます。たとえば、基礎控除を差し引く前の遺産総額に対し、その半分を取得した人は、相続税の総額の半分を負担し、1割しか取得していない人は相続税の総額の1割を負担するという考え方です。

計算例/上の続きで、相続税の総額にそれぞれの取得割合をかけた各人の納税額は

配偶者 1495万円×9000万円/1億5000万円=897万円
長男  1495万円×3000万円/1億5000万円=299万円
長女  1495万円×3000万円/1億5000万円=299万円

このようにして、それぞれの納税額が出たら、当てはまる税額控除がある人は、その控除額を引いて、最終的な納税額を計算します。

配偶者の場合、「配偶者の税額軽減」を利用できるため、実際に取得する遺産が法定相続割合以下か、1億6000万円以下なら、税額はゼロになります。そのため上の計算例でも、配偶者の納税額はゼロ。長男・長女に当てはまる税額控除がなければ、納税額はそれぞれ上のとおりで、このケースでは最終的に子ども2人の納税額はそれぞれ299万円、合計で598万円になります。

あわせて覚えておきたい「法定相続人」の決まり方

相続税の計算をする際には、基礎控除の額を左右する法定相続人の数がポイントとなるため、相続が発生したら、被相続人の戸籍謄本をもとに法定相続人になる人と、人数を早めに確定することが重要です。

被相続人の配偶者は常に法定相続人となります。配偶者以外は、法定相続人になる人の順位が決まっていて、第1順位は被相続人の子どもです。先に亡くなっている子どもがいれば、その子ども(被相続人から見て孫)が法定相続人になり、これを代襲相続といいます。孫が亡くなっている場合は何代でも代襲相続が可能です。

また、認知された子や養子がいる場合は、その子も相続人になります。ただし、養子は民法では何人でもなれますが、相続税の計算では、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までを法定相続人の数に含めます。

第1順位の子どもが誰もいなければ、第2順位は被相続人の父母、父母がいなければ祖父母になります。第2順位の人もいない場合は、第3順位は被相続人の兄弟姉妹になり、兄弟姉妹で先に亡くなっている人がいれば、その子ども(甥・姪)が法定相続人になります。第3順位の法定相続人は甥・姪までで、それ以上の代襲相続はできません。

この優先順位は配偶者がいても、いなくても同じで、1人でも順位の高い人がいれば、下位の順位の人は法定相続人になれません。

これを基本に、あらかじめわが家の法定相続人を確認しておくといいでしょう。

課税対象になる財産とならない財産がある

相続税を計算する際には、課税対象になる財産とならない財産があります。課税対象にならない財産については一定の種類が決まっているので確認しておきましょう。

課税対象になる財産とは

被相続人が所有していた財産は、基本的にすべて相続財産になりますが、相続税の課税対象として遺産の総額に加えるものには、本来の相続財産とみなし相続財産があります。

本来の相続財産とは、被相続人が所有していた現金や金(きん)、美術品、車などの現物資産のほか、被相続人の預貯金や株式といった有価証券などの金融資産、土地・家屋、借地権などの不動産、ゴルフ会員権・リゾート会員権、著作権、商標権などの権利も含まれます。

みなし相続財産とは、被相続人が亡くなったことによって支払われる死亡保険金や死亡退職金で、この2つには前に説明したように「500万円×法定相続人の数」の非課税額があるため、これを差し引いた金額を遺産総額に加えます。

さらに、相続開始前3年以内に贈与された財産や、相続時精算課税制度で贈与された財産がある場合は、その贈与額の合計を遺産相続に加算することが必要です。

これらをすべて合計した金額から、借金や相続開始日で未払いの固定資産税などの債務、葬式費用を差し引いた金額が、課税対象となります。

課税対象にならない財産とは

被相続人のもので、家族の誰かが引き継ぐとしても、相続税では非課税財産として、最初から遺産に含めなくてもいい財産があります。それが以下の財産です。

  • 生前から所有していた墓地・墓石、仏壇・仏具など
  • 公益事業(一定の条件を満たす幼稚園や養護学校など)のために使用されている財産
  • 国、地方公共団体、特定の公益法人などに対する寄付(相続税の申告期限までに寄付するもの)

相続税の節税には生前贈与も有効

以上のことから、相続税を抑えたり、相続税がかからないようにするためには、課税対象になる財産そのものを減らしたり、それらの相続税評価額を低くしたりすることがポイントになることはおわかりでしょう。課税遺産を減らすために、もっとも簡単な方法は生前贈与です。

相続開始前3年を超えた相続人への贈与は、相続税の課税対象となりません。また相続人ではない孫ヘの贈与も相続税の課税対象とはなりません。ただし、孫が遺贈(遺言による贈与)により財産を取得した場合には相続税の課税対象となります。

生前贈与は親から子や孫へ、早めに資産を承継することで、それらを有効に活用してもらうことにもつながります。贈与税の特例などを利用して上手に贈与すれば、贈与税だけでなく相続税の負担も軽減できます。

おわりに:相続税の節税対策は早めに実行するのがおすすめ

相続への備えは、いまや「終活」の1つとしても定着しつつあります。相続税についても基本の仕組みや計算方法を理解して、税額を抑えるための対策を検討しておくといいでしょう。残される家族の負担を減らすためにも、しっかり準備をしたいなら、遺産に関する評価額の試算や税額を抑えるための特例の使い方、生前贈与を含めた節税対策については、相続専門の税理士や税理士事務所に相談するといいでしょう。

当社は、コンテンツ(第三者から提供されたものも含む。)の正確性・安全性等につきましては細心の注意を払っておりますが、コンテンツに関していかなる保証もするものではありません。当サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、かかる損害については一切の責任を負いません。利用にあたっては、利用者自身の責任において行ってください。

詳細はこちら
この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

無料面談でさらに相談してみる